決算書はここだけ読もう〈2021年版〉

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決算書が図解でよくわかる

新型コロナウイルスによる影響は、企業における2020年3月期の決算にどのように表れたのでしょうか?本書では、ソフトバンク、オリエンタルランド、任天堂など話題企業12社の決算書を分析しています。また、巻末のドリルを通して知識の定着が図れます。ビジネスや投資にも役立つ知識が満載なので、企業研修用テキストや自習教材にもおすすめの1冊です。

矢島 雅己 (著)
出版社 : 弘文堂 (2020/9/2)、出典:出版社HP

はじめに

本書の初版当時(2004年1月刊)、経理マンを目指す人向けの簿記や決算業務を解説する経理入門書はありましたが、“決算書の読み方”に視点を置いた書籍や雑誌はありませんでした。「決算書を自分で作らないが、理解できるようになりたい」、そんな人向けに“決算書の読み方”を解説することを目指したのが本書の始まりです。

というのも、原稿を書くそれまでの数年間、二世経営者向けの経営講座や商工会議所主催のビジネスマン向け決算書講座の講師を行っていました。その際作りためた資料をもとに語り口調で原稿を起こし、全項目を見開きで構成し図解するなど、さまざまな工夫をしました。この甲斐あってか本書は、ビジネスマンはもとより、主婦、一般投資家の皆さんからもご支持をいただけるものとなりました。また、いくつかの大学、短大、専門学校では授業の教材として本書を使い、多くの企業では研修用教材として利用していただいています。

本書が初版以来、多くの方に読み継がれ、決算書を理解する一助となってきたことを大変うれしく思っています。しかし、本書のテーマである「決算書を読む」ということになると、理解の段階は道半ばです。実際の決算書に表われた科目や数値から、企業の状況や施策を想像できるようになることが重要です。

2012年度版より実在する企業の決算書をどう読むか、何を読みとるべきかをプラクティスするコーナーを新しく設け、業界他社比較も試みました。同一業界の中で各企業の現状や経営方針の違いが決算書にどう映っているか、企業や経済ニュースを思い浮かべながら決算書を比較する中で推定していこうと試みました。

解説本の域を脱し、「決算書を読む」実践教材として、より活用できるものを目指しています。

こうした試みも決算書初心者向けであり、最新の会計基準への準拠を優先するものではありません。企業の活動や実態を数値で表現したのが決算書ですので、基準が違えば数値で示される企業の姿も異なるのは当然です。この点が気になるようでしたら、本書は卒業です。

ウィズコロナの時代、企業も個人もまた社会そのものも行動変化が求められます。しかし、そんな時代であっても企業業績は決算書にまとめられます。来年度は新型コロナウィルスの影響と企業の対応した姿が決算書に現れるはずです。時代を越え、今後も読者の皆様からの声を活かしつつ、いろいろ工夫を加え刊行し続けたいと考えております。ご意見をいただけますと幸いです。

2020年9月
公認会計士 矢島雅己

矢島 雅己 (著)
出版社 : 弘文堂 (2020/9/2)、出典:出版社HP

目次

Part1 なぜ「決算書」はあるのだろう?
01 決算書とはなにか
会社の健康状態がありのままにわかる…それが決算書!
あなたの会社は健康ですか?/決算書の読みどころ/なぜ「決算書」があるのか
02 決算書の基本はこの3つ
決算書で重要なものは3つある
決算書は経営者の通信簿/貸借対照表/損益計算書/キャッシュフロー計算書
03 決算書は世界標準!?
会社の「数字」が読めれば、外国企業だって恐くない
決算書は数種類ある/会社の活動を数値化する意味

Part2 貸借対照表から始めよう
01 全体像から見てみよう
まずは図でイメージをつかもう
貸借対照表にはなにが書いてあるか/返す必要のないお金・返す必要のあるお金/貸借対照表の右と左の残高は必ず一致する
02 流動資産と固定資産って?
「現金化」されるのはいつか…という視点で見よう
勘定科目とはなにか/流動するもの・固定されているもの/現金化までの距離を知る
03 資金バランスはここまでわかる
資産の部をよく見ると…
出金と入金のタイムラグ/運転資金は不良娘/固定資産は放蕩息子
04 固定資産と減価償却
放蕩息子もいつかは帰る?
固定資産の現金化/減価償却とはなにか
05 減価償却の計算
減価償却は会社にとってメリット
減価償却を具体的に見てみよう
06 資本の調達先はここを見る
調達先を見た後は、左と右を比べてみよう
貸借対照表の右側にあるもの/左と右を比べてみよう/固定資産は自己資本でまかなえるか
07 財産状況を見極めよう
資金のバランスを一瞬で読みとる方法
資金バランスの4つのタイプ/勘定科目の持つ意味
08 流動資産でわかること
流動資産から「当座資産」を読みとろう
流動資産の中身/貸借対照表では流動性と換金性が重要/当座資産とはなにか/流動資産はここを読む
09 決め手は「現金化」だ!
勘定科目を見るときは、必ず「現金化」の視点で
固定資産の分類/負債および純資産の分類/不思議な勘定科目/正常営業循環基準
10 貸借対照表にだまされるな!
「本当に資産?」と疑うことも大切
貸借対照表にある落とし穴/落とし穴はどこにあるのか/落とし穴を避けろ
11 落とし穴には要注意!
ルールはあるが、守られていない可能性もある
貸借対照表の落とし穴を避けるポイント/中小企業はルールを破る(?)
12 中小企業には推理力で!
中小企業の貸借対照表はこう読もう
中小企業の決算書の読み方/必要なのは推理力/推理のポイント/貸借対照表の着目点

Part3 損益計算書はここがツボ
01 5つの利益を知ろう
1年間の「利益」はどのくらい?
損益計算書とはなにか/2つの損益計算書/損益計算書でわかる利益は5つ
02 読みこなすポイントは比較
年ごとの比較と同業他社との比較をしてみよう
実際の損益計算書が持つ意味/年次ごとに比較するのが一番/同業他社との比較をしてみよう
03 年ごとに比べてみよう
利益を段階的に見ていくのがコツ
年次比較をしてみよう/増収か減収か/当期利益に目を向ける/段階利益比較で増収減益の犯人を捜す
04 「利益」を深く読んでみよう①
数字の異常があるならば、ここを疑おう
売上総利益の読み方/営業利益の読み方
05 「利益」を深く読んでみよう②
損益計算書の構造を確認して読もう
経常利益の読み方/税引前当期利益の読み方
06 同業他社との比較も重要
損益計算書に加えて貸借対照表も利用して比較しよう
同業他社との比較をしてみよう/比較に使う数値①—自己資本比率/比較に使う数値②—経常利益率/比較に使う数値③—流動比率/その他の数値

Part4 キャッシュフロー計算書を読みこなそう
01 キャッシュフロー計算書って?
お金の流れを示す大切な決算書
血液検査の結果表?/キャッシュフロー計算書とはなにか
02 なぜ読めなければならないのか
キャッシュとはすぐに使える現金のこと
キャッシュフロー計算書からわかること/キャッシュとはなにか/キャッシュフロー計算書を作成する会社
03 現金は日夜動くもの
動いているような、いないような存在=現金
勘定合って銭足らず…/カネは天下の回りモノ?/現金は形を変える
04 「資金収支」を読みこなそう
キャッシュがないと会社は大変!
利益と資金収支は違うもの/キャッシュフローは資金収支を示す/損益計算書とキャッシュフロー計算書の違い
05 具体例で考えてみよう
損益計算書とキャッシュフロー計算書は違う
具体的に考えてみよう/決算書ではどうなるか/キャッシュフロー計算書の利点:
06 これがキャッシュフロー計算書だ!
キャッシュフローは4つに分けて読もう
実際のキャッシュフローはこうなっている/営業活動によるキャッシュフローとはなにか/投資活動によるキャッシュフローとはなにか
07 利益の実態を把握しよう
キャッシュフロー計算書から会社の利益はわかる
財務活動によるキャッシュフローとはなにか/期首と期末のキャッシュ残高と期間の増減/キャッシュフローで利益の実態を把握する
08 連結決算とはなにか
親会社の儲けが子会社の損で成り立ってもしょうがない
親会社の利益=子会社の損失?/「連結」という考え方
09 「キャッシュ」はここを読もう
3つの活動はこう分ける
営業活動によるキャッシュフロー/投資活動によるキャッシュフロー/財務活動によるキャッシュフロー
10 企業のタイプはばっちりわかる
キャッシュフローを上から見ていこう
キャッシュフローで企業のタイプを見よう/3つの数字を見れば、会社の危険度がわかる
11 あなたの会社はどのタイプ①
プラスとマイナスでここまでわかる
あなたの会社はどのタイプ?その1
12 あなたの会社はどのタイプ②
ここまでわかれば、キャッシュフローは大丈夫
あなたの会社はどのタイプ?その2/キャッシュフローを読むということ

Part5 さあ! 決算書を読んでみよう
01 貸借対照表と損益計算書を比べよう
2つを比べてわかることも多い
決算書を読む練習をしよう/貸借対照表と損益計算書を読んでみる
02 「なぜ?」の理由を見つけよう
決算書から見つかった疑問にはこう対処
資産の部を見てみよう
03 会社の財務状況をつかもう
貸借対照表と損益計算書をフル活用!
会社の状況を読み取ろう
04 キャッシュフロー計算書はこう使う
会社のキャッシュフローはどうなっている?
キャッシュフロー計算書からわかること/キャッシュフロー計算書で目立つ数字

Part6 経営分析の基礎を知ろう
01 決算書からわかる経営の姿
決算書からわかること、わからないこと
経営分析の世界へ
02 比較でわかる、強みと弱み
年次比較と同業他社比較を確認しよう
年次比較でトレンドを知る/井の中の蛙では生き残れない
03 総資本経常利益率と当座比率
「比率」を使ってわかること①
健全経営のための分析比率/総資本経常利益率/当座比率
04 固定比率と自己資本比率
「比率」を使ってわかること②
固定比率/自己資本比率/自己資本の充実策

part7 あなたの会社の収益性」はどうですか?
01 会社を支える事業とは?
「収益」をあげるには「メシの種」が必要
「会社の「メシの種」/収益性とはなにか
02 投資効率をどう読むか
どれだけの資本を使って、どれだけの利益が生まれるのか
投資効率は資本利益率を見ればわかる
03 資本利益率とは何だろう?
会社全体は総資本経常利益率で、株主の立場は自己資本当期利益率で
総資本経常利益率/自己資本当期利益率
04 収益性はどうすればあがるのか
資本の回転率や利益率をあげれば収益性もあがる
総資本利益率と総資本回転率/ROEとはなにか
05 「効率」は回転率で読む
さまざまな回転率を出して、バランスを見てみよう
総資本回転率の分析手順/いろいろな回転率を出してみよう
06 「利益」の視点で収益性を見る
売上利益率があがれば、収益性もあがる
売上利益率は段階的に検討しよう/売上総利益率にご注意を
07 売上利益率の変化にはこう対応しよう
「利益」をあげるための方策を決算書は教えてくれない
売上総利益率をあげるには/その他の利益率
08 コストダウンは2つに分ける
コストリダクションとコストコントロールに分けて考えよう
コストダウン/金融コストは低いほどよいのか
09 販管費削減でも収益性は高まる
売上のうち大きな割合を占める販管費にも目を向けてみよう
販管費はどうするか/人件費は頭が痛い?

Part8 「生産性」はこう調べよう
01 ヒト、モノ、カネ、そして情報
経営資源をどう活かすかがカギとなる。
「ヒト、モノ、カネ、情報」は会社の財産/商売の原点は、不変なり!
02 企業の付加価値とはなにか
付加価値=企業の存在感
付加価値を計算してみよう/生産性の行き着く先
03 生産性の分析をしてみよう
「生産性」は従業員一人あたりで見る
労働生産性分析は従業員一人あたりで/労働生産性の分解
04 生産性向上のキーポイント
固定資産の活用と人件費を見てみよう
設備投資を評価する指標/設備投資効率とは/労働分配率と生産性

Part9 「安全性」と「資金繰り状態」も決算書でわかる
01 なぜ、「安全性」を調べるのか
安全性は会社の返済能力
安全性に関心を持とう/安全性は会社の持久力
02 流動比率で安全性を見る
安全性は流動比率を見るのが第一歩
流動比率による分析/流動比率は高いほどよいのか/流動比率の落とし穴
03 流動資産の正体をつかめ
流動資産が持つリスクを知っておこう
流動資産の項目とその注意点
04 当座比率でなにを見るのか
十分な支払能力の有無は当座比率で調べる
当座比率で支払準備の度合いがわかる/当座比率の理想的な数値/当座比率にも落とし穴はある
05 設備投資の妥当性はどう見る?
減価償却費を基準にしたり、固定比率で見てみよう
過大な設備投資は事故のもと/固定比率/固定長期適合率とはなにか
06 「含み損益」の持つ意味
「含み損益」を念頭におかないと正しい経営分析はできない
安全性確保のための基本姿勢/貸借対照表は大化けする/含み益を加味して経営分析
07 安全性分析は2つの視点で
「静態分析」と「動態分析」の両方で安全性は分析しよう
静態分析と動態分析で安全性分析を強化する/動態分析と経常収支比率とは?
08 財務マネジメントの達人を目指そう
「安全な会社」を作るためには財務に精通した人が必要
損益と資金繰りはどこが違う?/資金繰り表とはなにか/経理部門と財務部門

Part10 成長する会社はこんな会社だ
01 成長力ある会社を見抜こう
成長力も出資者が重視すべき要素の1つ
夢なき会社に明日はナシ/会社の将来を見る方法
02 損益計算書から成長性を読む
売上高と経常利益の伸び率を見よう
成長性を測る2つの視点/経常利益の伸びを見る
03 単に「太る」のは「成長」とは言えない
総資本は増加の「内容」に注目しよう
総資本増加率は会社の体重計/なぜ会社が太ったのか?/健全な成長かどうかは付加価値が示している

Part11 「損益分岐点」はここにある
01 どれだけ売れば利益が出るのか
損益分岐点は企業活動にとって重要なファクター
損益分岐点分析で企業活動の実態をつかむ/損益計算書の限界/固定費と変動費が損益分岐点分析のモト
02 損益分岐点の求め方
損益分岐点は売上高と費用が一致する点のこと
限界利益はなにを示しているか/損益分岐点を計算してみよう/安全余裕度で経営の余裕度を知ろう

Part12 決算書を読むための心構え
01 決算書の構造を理解しよう
「いつ」「だれから」集めて、「どう」使ったお金なのか
決算書を読む前に/決算書の国際基準
02 投資家への決算情報
上場会社の投資判断は複数の情報を読み比べる
決算情報は複数ある/決算短信/計算書類等/有価証券報告書

プラクティス—実在12社の決算書を読もう

付録
Ⅰ 決算書—総まとめ
Ⅱ 分析の視点
Ⅲ 決算書ドリル

索引

矢島 雅己 (著)
出版社 : 弘文堂 (2020/9/2)、出典:出版社HP