日本一わかりやすい健康経営 ー超人手不足社会でも会社が強く、元気になる初めての実践ガイド

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日本の未来を明るくする

「健康経営」の本は、とにかくわかりにくいという不満を解決してくれる本です。この本はまるで謎解きをしていくようなワクワクする内容です。とても端的に、それぞれの立場で進めていくことが明確になっており、わかりやすい構成となっています。経営者はもちろん従業員や家族も読むべき内容です。

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なぜ、今、健康経営なのか?

大学病院を辞めて予防医療に9年間取り組んできた医者の私が、なぜ「健康経営」に真剣に取り組んでいるのか? 私の中には 「健康経営」への取り組みをきっかけに本物の予防医療が広まって、会社の未来も日本の未来も明るいものに変わっていけるとい う強く大きな確信があるのです。

2011年を境に日本は大きな岐路に立たされてきました。大震災によって私たちの中に、助け合って分け合って共に生きる、「共生する」考え方が育ち始めました。育ち始めたというよりは、 蘇ってきたという表現の方がピッタリくるかもしれません。
この時代に健康経営をどう捉えるかによって、会社だけでなく日本そのものが全く違った10年後を迎えることになるのです。

健康経営とは「社員を家族のように大切にすること」。この元気になった社員が会社の経営を元気にしてくれ、同時に地域の医 療費・介護費を抑制してくれる。まさに日本の未来を明るくするために天から舞い降りてきた千載一遇のチャンスだと感じている のです。

私が「このままでは医療財政破綻で、日本は沈没する」と確信したのが1995年、23年前のことです。社会保障破綻のシナリ オはすでに厚生労働省のデータでも示されていました。ただ、そのことを問題視する声を聞くこともないまま、私たち一般人は、 つい最近まで「どうにかなる」と感じてきた、あるいは感じさせられてきたのです。1995年の時点で、全てのデータが、近い 将来、年金も医療保険も介護保険も破綻することを示していたにもかかわらず。

超高齢社会は確実に進み、2016年には65歳以上の人口が27.3%となりました。高齢化率は世界No1です。また、高齢化 の中で病気の治療や介護の必要な高齢者がどんどん増加し、医療費の自己負担が上がり、4割負担、5割負担になる可能性も出て きています。年金の受給開始年齢は65歳から70歳、75歳と上がり、安心して年も取れない時代がすぐに訪れることは、経済に詳し くない医者の私にも分かります。「なるかもしれない」という予想ではなく、確実に少子超高齢社会の到来と社会保障の破綻の方 向に向かっているのです。

それなのに、国も私たち国民も有効な手立てを講じないまま、問題を先送りしてきました。その結果、2018年、見事に予想 通りの事態が訪れました。社会保障は毎年40兆円近い税金での補填なしには成り立たない状況。これを赤字国債で補っているので す。年金受給年齢も70歳になり、いずれ年金はスズメの涙ほどになり、生涯現役で働かなくては生活できない時代がすぐそこまで来ています。

日本における医療費や介護費の増加も、会社での社員の体調不良、メタボ、メンタル不調の増加も、その根本的な原因は同じだ と考えているのです。今日まで、「病気にならない」「メタボにならない」「メンタル不調にならない」「うつにならない」「介 護の世話にならない」といった予防医療の実践的な取り組みがないまま、「病気になった人を見つけて治療する」早期発見・早期 治療という現代医療のみをつづけてきたのです。その結果、病人が増え続けています。車でたとえれば、事故車を見つけて修理し ているのと同じです。そもそもの事故の原因の究明が必要なことは、誰が考えても当たり前のことです。原因を解決していかない かぎり事故も病気も減らないのです。

そして、超高齢化と少子化の時代が到来し、社会保障は支えられる側の増加と支える側の減少で、コマのように頭でっかちになり、とても不安定なだけではなく、何もしなければすぐにでも倒れてしまいそうです。
会社の社員も高齢化し、病気やメンタル不調の社員が増加し、家族の介護で仕事に集中できず、生産性も低下してきています。 日本の1人当たりの労働生産性はOECD加盟国の中でなんと1位なのです。ショックでした。

元気な社員
元気な経営陣
元気な家族
元気な高齢者

これなしに日本の未来はありえません。もちろん会社の未来もありません。そしてこの元気を実現するためには、「ヒト」とい う人的資源=人財を健康にする予防医療的なアプローチが不可欠だということ。

「予防医療には日本(会社)の未来を明るくする力がある!」
健康経営は会社を通して、社員と経営者を元気にし、家族を元気にし、会社を元気にする、そして日本中に予防医療を普及する絶好のチャンスだと感じているのです。

この「健康経営」を実現するためには、経営陣が社員を家族のように大切にすること。家族がガンになったら大変です、家族がうつになったら大変です、子供がいじめ(ハラスメント)に遭ったら命がけで守ってあげたいはずです。家族の幸せと同じように 社員の幸せ(健康と豊かさ)を考えることで、社員は会社の繁栄を考え、そこにやりがいを感じて仕事をする。その結果、モチベ ーションが上がり、生産性が上がり、収益が上がる。会社と社員は共に生きているという「共生」の考えなしに健康経営は成り立 ちません。社員は自動車や機械のように老朽化したら使い捨てできるものではありません。長時間労働すればカラダが壊れます。 ハラスメントを受ければココロが折れます。長年ケアをして大切に付き合うパートナー的な存在なのです。
そのためには社員のカラダとココロが元気でなければならない。だから予防医療的なアプローチなしに、実現できるはずがない のです。

理想論だという人もいるかもしれません。でもここへ向かわない限り、会社と日本の明るい未来がないとしたら。ここは百歩譲 って、明るい未来を目指して、みんなで一緒にできることからチャレンジしてもいいのではないでしょうか。

この本は、私が実際に「健康経営」の顧問をしている会社での具体的な進め方をまとめたものです。できるだけシンプルで分か りやすいように、またどの章から読んでもらっても楽しめるようにしました。みなさんの会社で「社員と経営者が元気になる」 「会社の生産性が上がる」ためのエッセンスが詰まっています。「健康経営」を成功に導くための実践的なガイドブックとしてお役に立てれば、これ以上の幸せはありません。

金城実

contents

序文 なぜ、今、健康経営なのか?

第一章 これでいいのか健康経営
◆健康経営が目指すことは何か?
健康経営の本当の意味をご存じですか?
あなたの会社の健康経営実践度をチェック
健康経営という考え方はアメリカで誕生
健康経営の意味を理解していない健康経営優良法人も?
◆健康経営とは社員を家族のように大事にすること
健康経営、こんな取り組みをしていませんか?
健康経営の本当のインセンティブは何か
やるべきことは労働環境改善と社員の健康増進サポート
その取り組みでは健康経営が実現できない理由
健康診断では病気は減らない
健康経営の目的を理解しなければ社員は動かない
◆社員の健康と会社の経営は直結している
社員を大事にすることがなぜ経営にとって良いのか?
1人の社員が3カ月病欠すれば、最低でも300万円の損失
社員の長期病欠による「見えない」三つの損失
社員が疲弊すると生産性は低下する
元気な社員と不健康な社員、どちらが欲しい?
今年元気な社員が来年も元気とは限らない
設備や機械のメンテナンスをするのになぜ大切な社員の健康管理をしないのか
予防医療(セルフケア)にかかる費用は治療費の100分の1
◆健康経営は会社の明るい未来への投資
健康経営で生産性を1・5倍に
良い人材は健康経営企業に集まる時代
労働力人口が800万人減少健康経営は会社生き残りの切り札

第二章 日本の未来から見た健康経営の意味
◆世界ナンバー1の超高齢社会・日本の衝撃
医者の私が企業の健康経営実現に力を入れる理由
人口動態から読み解く日本の近未来
2050年には高齢人口が4割に
「棺桶型」人口ピラミッドの社会とは?
◆超高齢化する日本の未来を明るくするには
超高齢社会で何が起きるのか―医療費の側面から
医療費はもっと抑えることができるはず
予防医療で健康人口を増やし医療費を削減
健康経営の大きなポテンシャル

第三章 健康経営を成功させるには「予防医療」が不可欠
◆健康な身体を作るのは治療医学ではなく予防医療
大学病院で現代の医学に取り組んだがガンの死亡者数は増えていた
先端医療で治療するより、予防医療で病気にかかる人を減らせ
70年代後半から予防医療を国策で進めたアメリカ
アメリカではガンの死亡率が低下している!
◆現代医療(治療医学)は必ずしも健康に結びつかない
ガン検診で見つけられるのは10ミリ以上のガン
治療医学は対症療法 血圧の薬を飲んでも動脈硬化は治らない
予防医療は症状を根本的に治せる
セルフケアは適度な運動と適切な食事から
セルフケアでガンの発症時期も先に延ばせる?
◆予防医療への理解がまだまだ浅い日本
ファッション化した日本の健康ブーム
日本人の楽観的すぎる健康観
「まあまあ元気」の意識を変える
◆予防医療が目指すのは長寿ではなく健康長寿
医療や介護を受ける時期を先へ延ばしていこう
予防医療の重要ポイントはメタボ対策
「クラシックカー」を目指すのが予防医療

第四章 健康経営プロジェクトに向けて準備!
◆健康経営プロジェクトをスタート
健康経営でやるべきことはシンプル
プロジェクトにはチームとスケジュールが必要
健康経営プロジェクトの年間スケジュール
◆健康経営実現で大事なのは準備
チームを結成し健康経営の目標を共有
健康経営成功のカギは社長による「健康経営宣言」
健康経営宣言は会社の内外で繰り返す
健康経営宣言を繰り返すことでコーチング効果も

第五章 労働環境を改善して社員を元気にしよう
◆労働環境改善の第一歩は現状チェックから
職場の疲労度をチェックする
職場のストレス度をチェック
仕事量、自由度、人間関係がストレスに影響
◆長時間労働削減への取り組み 残業時間はイエローカードです
日本の労働生産性は世界4位 長時間労働は効率が悪い
起床から2時間が過ぎたら「酒気帯び運転」状態
起床5時間後の仕事の質は飲酒運転状態
長時間労働を削減するには会議時間を短縮すればいい!
スタンディングで会議を効率的に
長時間労働削減と同時に残業代の補填も必要
コラム●アメリカではスタンディングデスクが人気に
◆ハラスメントはどのように撲滅していくか
ハラスメント撲滅宣言のポスターを社内に
何がハラスメントなのかを明確に示そう
ハラスメントは連鎖する

第六章 健康経営プロジェクトセルフケア実践編
◆健康診断表から問題点、課題をチェック
前年と比べて数値の変動はないか
BMIと体脂肪率から万病のもと「肥満」傾向がわかる
体重ではなく体脂肪率で判断せよ
血圧から血管や血液の状態も見えてくる
課題や気になることを書き出し改善目標を立てよう
コラム●詳しい健康改善アドバイスが欲しい人はDr.セルフチェックを
◆日々取り組むセルフケアを設定する
毎日続けられる運動と食生活の心がけを一つずつ
会社で社員みんなで運動をするのも効果的
「カラダ改善計画&記録シート」に社員全員で記録していこう
◆セルフケアの取り組みのヒントを紹介
ヒントその1 腕振り体操
ヒントその2 バンザイストレッチ
ヒントその3 ゆっくり階段上り
ヒントその4 1日1食は伝統的な日本食を
ヒントその5 箸置きを使ってゆっくり食事
ヒントその6 ベルトが腹八分目を教えてくれる
ヒントその7 食べ過ぎた時は3日間でプラスマイナスゼロに
ヒントその8 お風呂で代謝アップ、免疫力アップ
コラム●私が勧めるメタボ対策 脂肪を落とすことより筋肉をつけることを考えよう

第七章 健康経営実現はセルフケアの習慣化にかかっている
◆社員にセルフケアを実践してもらうには?
セルフケア定着には社員への声かけが必須
記録シートを使って社員とコミュニケーションを
定期的チェックで継続に向けてブッシュ
実行率が高い社員やチームは表彰を
習慣になるには最低3カ月かかる
◆健康経営プロジェクトとしての目標設定は?
健康経営プロジェクト1年目、評価の基準は?
1年で10名の社員がセルフケアを実践するようになれば大成功
10%の「イニシエーター」と連携しよう
3年目に30%達成で健康経営の成功が見えてくる
◆セルフケアの習慣化には認知行動療法を!
命令されたこと、頑張ることは続かない
行動を継続するには自己決定と自己効力感が必要
「目標達成率100%」のセルフケアを設定
続けるコツは「少し物足りない」目標設定
セルフケアの取り組みでは完璧主義はやめよう
「セルフモニター」で自己効力感を高める
担当者はポジティブな働きかけを繰り返そう
コラム●セルフケアを続けるためのヒント集

おわりに