課題ごとに解決! 健康経営マニュアル

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健康経営実践のコツがわかる

健康経営は大企業だけでなく中小企業にも普及し始め、関心も高まりつつあります。この本では、健康経営に取り組むための基礎知識はもちろんのこと、顕彰制度の表面的な情報ではわからない時間や労力、コストに見合った効果を出すための実践的手法やコツをわかりやすく解説しています。

亀田 高志 (著)
出版社 : 日本法令 (2018/4/17)、出典:出版社HP

はしがき

本書を手に取っていただいたあなたは何らかの形で健康経営に関与するか、実際の担当を担う役割にあるか、助言、指導を行う立場にある方だと思います。あるいは近い将来に職場の健康管理やメンタルヘルス対策に携わる可能性があり、実務に役立つ知識を得たいと考えているかもしれません。
そうした方々に健康経営の顕彰制度で示されている表面的な情報ではわからない、時間や労力、コストに見合った効果を出すための実践的な手法とコツをわかりやすく紹介するのが、本書の目的です。

健康経営を企業等で展開していく際には、やりっ放しにせず、堅実に効果を上げていくことを目指すべきです。失敗すると取り返しがつかない面もありますから、本書では、健康経営を本格的に進めていくにあたって知っておくとよいポイント、課題、基礎知識と実務上のコツを解説しました。最初から通しで読んでいただいた後に、健康経営を推進できる、一通りの知識とスキルが身につくことを目指しています。そのためにとっつきやすく読める具体的な場面も描いてみました。

本書の読者として想定しているのは、健康経営に関する対応を迫られている企業等の管轄部門や責任者、担当者の方、健康保険組合で企業等と連携して健康経営を進める立場にある方です。あるいは、東京商工会議所による健康経営アドバイザー制度で資格を取得した、ないしその予定である社会保険労務士、中小企業診断士、管理栄養士、健康運動指導士や産業カウンセラーの方も含みます。

これまで健康経営に関連するコンサルティングや研修、講演、執筆を多数取り扱った経験では、企業等の担当者、健康保険組合の関係者、社会保険労務士、中小企業診断士等の方々には次の事柄が不足していると感じています。

  • 予防医学の基本的な知識
  • 職場の健康管理の基本的な知識
  • 職場の健康管理の実務経験
  • 効果のある健康経営を展開するコツ(スキル)

職場の健康管理を専門にする医師、看護職等の専門家でなければ、これらを知る術はないのですが、それを知らなければ効果の出る健康経営を展開したり、外部専門家として適切な助言や指導はできません。

続く第1章では、職場の健康管理と予防医学のごく基本的な知識を説明します。これらは経済産業省の顕彰制度の前提となる事柄ばかりですが、実際にはよくご存じない方が多いのです。そのままでは、健康経営はキャンペーンを散発的に実施していくだけで終わってしまい、健康経営で目指す従業員の活力向上や組織の活性化は達成できません。

定期健康診断を核とする健康管理は医学を中心に据えた、いわば平面的な対応です。従業員の活力向上と組織の活性化を目指すためには、従業員の健康をより立体的、多面的に捉える必要があります。つまり、健康管理を人事労務管理や経営管理まで範囲を広げ、「健康は人材の課題と対応、人的資源管理の一部である」という考え方にリセットしなければなりません。
本書には、健康経営で効果を出せるコツや鍵となる事柄を盛り込んでみました。例えば、担当者が頭を悩ますことの多い、経営者に健康経営を説明し了承を得る際のポイントを示しています。意思決定者の理解と同意がなければ、健康経営を推進することはできないからです。
筆者の実務経験で得た知識とスキルをご活用いただき、様々な職場で失敗のない、効果の出る健康経営を展開していただければ幸いです。

2018年3月
株式会社健康企業代表・医師亀田高志

亀田 高志 (著)
出版社 : 日本法令 (2018/4/17)、出典:出版社HP

目次

序章 健康経営に取り組む前に知っておきたいこと
1 健康経営ブームの到来
2 健康経営の原点、”Healthy Company” とは?
3 日本に輸入された“ヘルシー・カンパニー”
4 共通言語となった健康経営
5 健康経営を展開する力
6 健康経営の見かけは経済産業省、中身は厚生労働省
7 ストレスチェックでも目立つギャップと弊害
8 健康経営の顕彰制度に応募する供給サイド
9 健康経営は総論賛成でも各論は?
10 健康経営の障害となる「手段の目的化」
11 健康経営は企業価値を高めるのか?~ニワトリが先か、タマゴが先か?
12 手段の目的化の副作用
13 総花的な健康経営にしてはいけない

第1章 健康経営を進める際に必要な基礎知識
本章のポイント
1 予防医学には4つの段階がある
2 予防医学的な対策における2つの戦略
(1) 2つの戦略とは?
(2) ハイリスク戦略の狙い
(3) ポピュレーション戦略の狙い
3 健診と検診の違い
4 定期健康診断の事後措置と就業上の措置
5 健康管理のマネジメントシステム(健康経営全体のPDCAサイクル)
6 個別の項目に適用する「課題ごとのPDCAサイクル」
7 リスクアセスメント
8 健康管理を含む労働衛生の5管理
9 長時間労働対策を5管理で考える
10 健康経営で見直したい健康の定義
11 健康経営の施策に対する評価の仕方
12 評価軸と目標設定はペアで考える
13 ワークエンゲイジメントとは?
14 ヘルスリテラシーとは?
15 アブセンティーズムとプレゼンティーズム

第2章 健康経営全体の PDCAサイクルの運営の実際
本章のポイント
1 健康経営全体のPDCAサイクルを俯瞰する
2 経営理念(経営者の自覚)として行うこと
(1) 健康経営は経営者の自由意思
(2) 経営者との対話のポイント
(3) 経営者からいきなり指示があったら
(4) 健康宣言や健康経営の方針を文書化する
3 組織体制を整備する
4 制度・施策実行
(1) 主体は健康保険組合か企業等か?
(2) 企業等と健康保険組合との連携の実際
(3) 企業等と健康保険組合との連携のメリット
5 制度・施策実行における課題の整理
(1) 健康経営のリスクアセスメントを実施する
6 法令遵守・リスクマネジメント
(1) 労働安全衛生法令における要求事項への順守状況をチェックする
(2) 衛生委員会の開催と活用
7 評価・改善
(1) 評価と改善のための目標設定
(2) 対策の優先順位付けにおける注意点
(3) 三次・四次予防、二次予防、一次予防の順番が基本
(4) メンタルヘルス対策も三次・四次予防から
(5) 評価と改善・再計画の流れ

第3章 課題ごとのPDCAサイクルに取り組む前に
本章のポイント
1 健康課題と対策状況の再確認
(1) 健康経営に示された健康課題は?
2 健康課題ごとの問題と実態
(1) 定期健康診断における課題
(2) ストレスチェックの実施
(3) 健康教育
(4) 治療と仕事の両立支援
(5) 健康増進活動
(6) 感染症対策
(7) 過重労働対策
(8) メンタルヘルス不調者への対応

第4章 健康経営の実践~健康課題ごとの PDCAサイクルを回していく~
本章のポイント
A 動脈硬化への対策
(1) 動脈硬化の本質的な問題は?
(2) 動脈硬化に対する具体的な健康施策と優先順位は?
(3) 健康診断は年中行事?
(4) 定期健康診断の充実を図る~定期健康診断の効果的な運営の流れ
(5) 過重労働対策における動脈硬化の重要性
(6) 過重労働対策の全体を把握し、確実に実行する
(7) 労働衛生の5管理から過重労働対策を俯瞰する
(8) 予防医学の4段階での再整理
(9) 動脈硬化に関する従業員のリテラシーを強化する
(10) 心筋梗塞を模擬体験
(11) 行動変容の可能性を高める工夫
(12) 動脈硬化に対する健康施策の4つの評価軸と目標設定
(13) 動脈硬化に対する健康施策から活力向上・活性化を実現する工夫 ~社会的な健康から考える
(14) 身体的な面から活力向上と活性化を図る
(15) メンタルヘルス面の活力向上と活性化は可能か?
B メンタルヘルスへの対策
(1) メンタルヘルスの本質的な問題は?
(2) 厚生労働省の準拠するストレス理論とは?
(3) 精神科医はどのように不調を診立てているのか?
(4) うつ病のメカニズムと職場への影響
(5) メンタルヘルス不調は珍しくない
(6) メンタルヘルス不調の定義を再確認する
(7) メンタルヘルスに対する具体的な健康施策は?
(8) メンタルヘルスに対する健康施策の優先順位は?
(9) やりっ放しのストレスチェックと行き当たりばったりの不調者への対応
(10) メンタルヘルス対策の充実を図る 1~ストレスチェックの確実な実施
(11) メンタルヘルス対策の充実を図る 2~不調者への対応の確実な実施
(12) 不調者への対応で人事部門が行う作業は?
(13) メンタルヘルス不調への対応におけるコンプライアンスを理解する
(14) メンタルヘルス対策に対して労働衛生の5管理は機能しているか?
(15) メンタルヘルスに関する管理職のリテラシーを強化する
(16) メンタルヘルスに対する健康施策の4つの評価軸と目標設定
(17) メンタルヘルスに対する健康施策から活力向上・活性化を実現する工夫
(18) 集団分析の結果をもとに職場環境改善活動に取り組む
(19) 健康情報管理の堅実な運営
(20) 障害者雇用も意識する
C がんへの対策
(1) 職場におけるがんの本質的な問題は?
(2) がんに対する具体的な健康施策は?
(3) がん検診を推進する
(4) がん検診の精度管理という考え方
(5) がん検診で人気の腫瘍マーカーの問題
(6) 職場復帰支援と治療と仕事の両立支援を優先する
(7) リテラシー強化をどう図るか?
(8) 管理職に伝えたいこと
(9) がんに対する健康施策の4つの評価軸と目標設定
(10) 施策の上手な運営と活力向上と活性化を得るコツ
D 生産性と活性化等への対策
(1) 生産性や活性化に関する本質的な課題とは?
(2) 経営者の健康習慣と健康状態の影響
(3) 高年齢労働者の機能低下への対応 ~年齢や加齢現象に配慮する
(4) ストレスチェックを組織の活性化に活用する ~集団分析の活用方法から
(5) 集団分析の結果を管理職にフィードバックする
(6) 職場環境改善活動を行う
(7) 職業性ストレス簡易調査票の利用
(8) 従業員の生産性を向上させるセルフケア研修
(9) プレゼンティーズムの最小化
(10) 就労不能状態を経済面でカバーする
(11) 海外赴任の問題
(12) 嗜好品である、タバコ対策を考える
(13) 感染症対策の応用~危機管理対策との統合
(14) 働きやすい職場づくり
(15) 健康経営と人事施策との統合

巻末資料
健康経営に関する参考ウェブページ (2018年2月時点)

亀田 高志 (著)
出版社 : 日本法令 (2018/4/17)、出典:出版社HP