働き方改革を意識した 健康経営実践マニュアル

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健康経営のノウハウがよくわかる

健康経営を実践するためのノウハウや、働き方改革関連法への対応はもちろん、健康経営度調査票の回答・入力方法についてもあますところなく解説しています。著者が社会保険労務士、中小企業診断士、産業医と各分野のスペシャリストなので、健康経営の道すじがわかりやすく解説されています。働き方改革と連動しているのもこの本のいいところです。

稲田耕平 (著)
出版社 : 清文社 (2020/5/12)、出典:出版社HP

はじめに

わが国の超少子高齢化社会においては様々な問題がありますが、特に企業では喫緊に解決しなければならない最重要課題に「人手不足」が挙げられます。この人手不足というのは「ただ人が足りなくて仕事が回らない」だけではなく、結果的には長時間労働、メンタルヘルス不調等にも波及し、経営者やそこで働く従業員の心も身体もどんどん疲弊させてしまいます。企業規模に関係なく、経営者と従業員がともに健康で活き活きと働くためには職場環境の整備や、それまで自己責任として考えられていたヘルスリテラシーを高め、個人の健康の保持増進が重要といえる時代となっています。

2013年以降、健康寿命の延伸や医療費の適正化等を解決するための施策としてわが国に急速に広まり始めているのが「健康経営」です。この健康経営というのは、土台が法令遵守であり、職域健康づくり、人事労務管理、リスクマネジメント、人材育成、生産性向上、業績向上等のさまざまな経営課題を、健康経営というキーワードを軸に解決するツールです。
一方、健康経営の大前提である法令遵守に目を向けると、2019年4月以降、順次働き方改革関連法がスタートしていますが、特に中小企業では法改正への対応に苦慮している実態が見受けられます。例えば、「時間外労働の上限規制」や「使用者による年次有給休暇の時季指定」に対応はしているけどコストが増加し、利益率が低下している企業も少なくありません。それはなぜか?「組織風土に根付いていない」、「経営者及び従業員が行動変容できない」、「ヘルスリテラシーが向上しない」、「仕事の仕方が何も変わらない」等の内部からの対応が進まないからではないでしょうか。そこで実体験を申し上げますが、「働き方改革」を実践し効果を上げている企業は、必ず「健康経営」の視点を取り入れ、この2つの取組みを車の両輪として同時に実践しています。その結果、「人の健康」と「企業の健康」を保持増進させ、課題を解決し、そこで働く従業員の自己実現の達成、そして社会への貢献とつながっていると感じています。
本書は、働き方改革だけがクローズアップされてしまいがちな状況の中、健康経営との親和性や両軸としての必要性を語った他にはない内容と自負しています。それは「人事労務管理の専門家」である社会保険労務士、「企業の経営課題をトータルに解決できる」中小企業診断士、「産業保健のプロフェッショナル」である産業医とコラボし、各専門家の経験や視点に基づき、企業に求められる「働き方改革関連法への対応」や「健康経営への取組み」について、横ぐしをさしている構成になっているからです。

加えて健康経営の取組みが進んできた企業が目指す顕彰制度に「健康経営優良法人」があります。中小企業に対しては、経済産業省から「健康経営優良法人(中小規模法人部門)認定基準解説書」が発行されていますが、「健康経営優良法人(大規模部門)」を目指し、さらにその上位500社である「ホワイト500」の認定を目指す大規模法人が提出する「健康経営度調査」には、網羅的な解説書がないため、企業も自社が実施している取組みを「健康経営度調査」の各項目と紐づけることに苦戦をしている実態があります。そのような企業の担当者の皆様にも、健康経営アドバイザーを所持し健康経営コンサルタントを行う専門家の皆様にも、知識の整理が進むような構成になっています。

結びになりますが、企業の継続的発展のため「攻めの働き方改革」や「攻めの健康経営」として前向きに取り組み、また職場で働く皆様が健康で活き活きと仕事に取り組み、その能力を最大限に発揮できるような環境に寄与できる書籍になれば幸いです。

2020年4月
特定社会保険労務士
健康経営エキスパートアドバイザー稲田耕平

稲田耕平 (著)
出版社 : 清文社 (2020/5/12)、出典:出版社HP

目次

第1章 健康経営が労務管理のベースとなる日
第1節 健康経営とは
1 はじめに
2 健康経営とは
3 わが国の抱える課題
1生産年齢人口の減少等による労働力不足
2従業員の高齢化等
3医療費の適正化等6
4メンタルヘルス不調者増加
4 職場環境と従業員の健康との関係
5 健康経営の効果
6 健康経営実践のための各々の役割
1経営者の役割
2管理職の役割
3従業員の役割
4産業保健スタッフの役割
7 働き方改革と健康経営の関わり
1個の視点と組織の視点
2ホワイト企業を目指すには? 10

第2節 健康経営に関する顕彰制度
1 健康経営のフレームワーク
2 健康経営に関する顕彰制度
1健康経営銘柄とは
2健康経営銘柄の選定方法
3健康経営優良法人(大規模法人部門)とは
4健康経営優良法人(中小規模法人部門)とは
5健康経営優良法人の対象となる法人

第2章 健康經營優良法人 (大規模法人部門・ホワイト 500)を取得しましょう
第1節 健康経営度調査と記入ポイント
1 健康経営度調査とは
2 調査票の入手
3 「健康経営銘柄・健康経営優良法人認定制度」の選定(認定)フロー
4 健康経営銘柄選定における必須要件兼健康経営優良法人(大規模法人部門)認定要件
5 健康経営度調査票の目次
6 健康経営度調査票の回答入力時のポイント

第2節 申請スケジュールと取得ポイント
1 申請スケジュール
2 申請単位
3 保険者の要件
4 取得のポイント
1大規模法人部門
2ホワイト 500
5 調査結果集計データ

第3節 健康経営優良法人認定基準のポイント
1 前段の企業情報の回答 (企業属性、従業員属性)
2 「1. 経営理念 (経営者の自覚)」
3 「2. 組織体制」
1「経営層の体制」
2「保険者との連携」
4 「3. 制度・施策実行」
1「従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討」―健康課題の把握
2「従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討」―対策の検討
3「健康経営の実践に向けた基礎的な土台づくりとワーク・エンゲイジメント」―ヘルスリテラシーの向上
4「健康経営の実践に向けた基礎的な土台づくりとワーク・エンゲイジメント」―ワークライフバランスの推進
5「健康経営の実践に向けた基礎的な土台づくりとワーク・エンゲイジメント」―職場の活性化
6「健康経営の実践に向けた基礎的な土台づくりとワーク・エンゲイジメント」―病気の治療と仕事の両立支援
7「従業員の心と身体の健康づくりに向けた具体的対策」―保健指導
8「従業員の心と身体の健康づくりに向けた具体的対策」―健康増進・生活習慣病予防対策
9「従業員の心と身体の健康づくりに向けた具体的対策」―感染症予防対策
10「従業員の心と身体の健康づくりに向けた具体的対策」―受動喫煙対策
11「従業員の心と身体の健康づくりに向けた具体的対策」―その他の施策
12「取組の質の確保」―専門資格者の関与
5 「4. 評価・改善」―取組の効果検証
6 「5. 法令遵守・リスクマネジメント」(自主申告)

第3章 働き方改革関連法 ~健康経営と働き方改革は車の両輪~
第1節 働き方改革関連法
1 働き方改革関連法の概要・改正内容・施行時期
2 労働時間法制の見直し
3 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
4 各改正法の施行の時期と中小企業への猶予措置
5 適正な労働時間の把握義務
6 社員の健康増進を意識した働き方改革

第2節 改正法の内容
1 労働時間に関わる改正
1時間外労働の上限規制 (労基 36)
2高度プロフェッショナル制度 (労基 41の2)
3フレックスタイム制の拡充 (労基32の3、32の3の2)
2 年次有給休暇に関わる改正事項
1年次有給休暇制度の基本的なルール
2年5日の年次有給休暇の確実な取得の義務化
3 労働時間等設定改善法についての改正事項
1勤務間インターバル制度の概要
2勤務間インターバル制度導入の現状
3勤務間インターバル制度導入への数値目標
4企業で勤務間インターバル制度を導入する際のフロー
5勤務間インターバル制度の運用事例
6勤務間インターバル制度を導入する場合の就業規則記載例
4 労働安全衛生法に関わる改正
1労働時間の状況の把握(安衛法66の8の3、安衛則 52の7の302)
2産業医等の活用
3面接指導の徹底

第4章 業種別・職種別 働き方改革を意識した健康経営事例
第1節 業種別編
1 建設業のケース
1会社概要
2課題
3アプローチ
4効果・今後の目標等
2 介護業のケース
1会社概要
2課題
3アプローチ
4効果・今後の目標等
3 医療機関のケース 173
1会社概要
2課題
3アプローチ
4効果・今後の目標等
4 運送業のケース
1会社概要
2課題
3アプローチ
4効果・今後の目標等
5 調査研究・コンサルティング業のケース
1会社概要
2課題
3アプローチ
4効果・今後の目標等

第2節 職種別編
1 事務職編
1会社概要
2課題
3アプローチ
4効果・今後の目標等
2 営業職のケース
1会社概要
2課題
3アプローチ
4効果・今後の目標等

第3節 生産性向上事例 「従業員の作業を顧客の作業に置き換える」
1 居酒屋のセルフオーダーシステム
2 スーパーのセルフレジ (セミセルフレジ)
3 他業種への応用例 ~ネット経由での注文~

第5章 ドーイツ博士とローチン助手の 今更きけない同一労働同一賃金キホンのキ
第1節 ほんとに初歩の初歩!基礎知識編
1 働き方改革と同一労働同一賃金
2 均等待遇と均衡待遇
3 説明義務、行政による助言・指導等、施行時期

第2節 企業は一体何をやればいい?実務編
1 対応の流れ
2 均等待遇・均衡待遇の確認の具体例
3 外部リソースの活用

第3節 ガイドラインダイジェスト

【巻末資料】(外部リソース、関連サイト等の紹介)

稲田耕平 (著)
出版社 : 清文社 (2020/5/12)、出典:出版社HP