CFO最先端を行く経営管理

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CFOの意義と役割について学べる

日本企業では、本来のCFOの役割を果たしている方は多くいないとされています。その理由は、伝統的に経理が強かったためとし、結果として、企業全体の体制や経営方針に関与すべき役割が果たせていないと著者は指摘しています。本書では、CFOに関する重要なポイントや経営にファイナンスの観点を反映させるための手法などについても解説されています。

昆 政彦 (著), 大矢俊樹 (著), 石橋善一郎 (著)
出版社 : 中央経済社 (2020/4/18)、出典:出版社HP

はじめに

経理・財務部門が大きな変動期を迎え、CFOは本来の役割を果たせず「スーパー経理部長」と揶揄されたりしている。
日本企業では経理部門が伝統的に強い立ち位置を取得し、経営会議での業績説明も財務会計で行われることが多い。しかし、グローバル企業として最先端を行く米国企業における経理・財務部門の組織構成は、経営支援の要であるFP&A、資本コスト経営の推進という新たな使命を持つトレジャリー部門、そして、同列的に経理部門が位置づけられている。
CFOは経理部門の延長線上ではなく、すべての機能の上位に位置づけられている。特に、経営支援体制の右腕となるFP&Aの存在感は際立っており、米国企業におけるCFOの経営陣における序列や重要性を高めている要因でもあると思われる。

日本企業においては、FP&Aの機能を傘下に持つCFOは少なく、経営陣における影響力が限定されることは容易に想像できる。しかし、日本企業においては、知的資産や現場力が強く、ここに、CFO機能の強化が加われば、十分にグローバル企業として伍していける体制を作り上げることは可能であろう。

一方、CFOの役割とは何かを的確に解説した本は少なく、ましてその右腕となるべきFP&Aの機能や役割はほとんど認知されていない。CFOとFP&Aについてのわかりやすい書籍を一緒に書き日本社会に貢献したいとの思いが、旧知の石橋善一郎氏と大矢俊樹氏と話している中で湧き上がってきたことが、本書執筆のきっかけである。

私と石橋氏は同年齢で、大学卒業後、日本企業勤務でキャリアをスタートし、米国企業勤務へのキャリアチェンジ、米国の大学院にてMBAを取得するなど、共通点が多いことがお互い同じ問題意識を持つに至った経緯である。一方、大矢氏は、我々より一回り若く、全く異なるキャリアを歩んできた。MBAと公認会計士、時代の最先端のIT業界での経営経験は、お互いにとって大きな刺激になっていることと、大矢氏が加わってくれたことで本書の内容に深さと広がりをもたらしてくれた。
これからCFOキャリアを目指す人たちへのヒントであったり、勇気を与えるメッセージであったり
することを目指して、我々3名のCFOへのキャリア構築をつつみ隠さずに書き下ろした。
FP&Aの機能を解説することが、本書の最大の目的であるが、認知度が決して高くないFP&Aの説明だけでは、伝えていきたいことが純分に伝わらない懸念があった。そこで、CFOの役割と課題の再検証から始め、CFOの経営支援体制を担保するためには、FP&A機能が必要であることをFP&A概論を展開した。また、本書の特徴として、各人が実際に体験したことを「事例紹介」として随所に紹介したことが挙げられる。

我々3名の成長のために、多くの上司や先輩等がメンターを引き受けてくれたり、アドバイスを伝授してくれたりすることがなければ、我々の現在はなかった。本書の中でいかに影響を与えてくださったかを述べさせていただいた方々以外にも、多くの方々に助けていただいた。この場を借りてお礼を申し上げたい。また、中央経済社取締役専務の小坂井和重氏のご尽力がなければ版に漕ぎつけることはできなかったであろう。感謝を申し上げたい。

2020年2月
執筆者を代表して
昆 政彦

昆 政彦 (著), 大矢俊樹 (著), 石橋善一郎 (著)
出版社 : 中央経済社 (2020/4/18)、出典:出版社HP

目次

プロローグ CFOキャリアの始まりと熱き想い
[I]あらゆる経験と努力は無駄にならない(昆政彦)
1 キャリアのスタート
2 GE本社勤務、MBAとCFO就任
3 迷走期
4 3Mへの転職
5複業とキャリアの振り返り
[Ⅱ]必要とされて、ここまで来た(大矢俊樹)
1 監査法人時代
2 SBI時代
3 クレオとの出会い
4 ヤフーにおけるCFOの役割
5 ソフトバンクとの関係
6 ヤフーのCFOを終えて
7 グリーとの出会い
8 CFOとして
[Ⅲ]マインドセットとスキルセット(石橋善一郎)
1 新卒で日本企業に入社
2 日本企業を退職してMBA留学、そして経営コンサルタント
3 外資系企業へ転職
4 外資系PEファンドが投資する日本企業へ転職
5 CFOというプロフェッションへの想い

第1章 CFOの役割と課題
[I]米国におけるCFO誕生の歴史的背景
1 CFOの役割と背景
2 米国でのFP&A組織
3 日本の成長モデルとCFO組織
[Ⅱ]CFOの役割
事例紹介1 CFOとCEOの関係

第2章 CFOの企業価値向上機能
[I]CFOと企業価値
1 CFOと企業価値
2 価値創造プロセス
3 イノベーションとイマジネーション
[Ⅱ]企業価値と分類・測定アプローチ
1 企業価値とは
2 企業価値の分類・測定とは
3 企業価値の分類・測定①会計アプローチ
4 企業価値の分類・測定②時価総額アプローチ
5 企業価値の分類・測定③社会価値アプローチ
事例紹介2 インターネット産業での価値創造プロセス

第3章 CFOの会計とリスク管理機能
[I]より高度なコンプライアンス機能導入に向けて
1 会計報告と内部監査、リスク管理
2 客観的視点型ガバナンス
[Ⅱ]デジタル・トランスフォーメーション
1 経理業務のデジタル化
2 RPAの活用
3 AIや機械学習の活用
4 管理会計の進化
5 経理・財務業務以外の領域
6 デジタル化による企業経営の変化
事例紹介3 GEの内部監査チーム

第4章 CFOのファイナンスとトレジャリー機能
[I]金融市場の歴史的背景
1 日本社会における金融市場の歴史的検証
2 メインバンクシステムの限界とバブル崩壊
[Ⅱ]資本コスト経営
1 ROEとROIC
2 最適資本ポイントとロングテイル・リスク
[Ⅲ]トレジャリー
1 トレジャリーとは
2 トレジャリー対象項目のキャッシュ・マネジメント管理機能
3 リスク管理機能
4 経営管理機能
5 税務戦略機能
事例紹介4 IR活動と投資家

第5章 CFOと企業文化
[Ⅰ]企業文化
1 企業文化の構築
2 日米の企業理念、行動規範の違い
[II]コンプライアンスと企業文化
事例紹介5 ヤフーでの文化改革

第6章 CFOの組織管理
[I]組織管理を取り巻く環境
1 経理・財務組織
2 会計ビッグバン前夜と会計ビッグバン
3 会計ビッグバン2.0
[Ⅱ]CFO組織に要求されるスキルセットの変化
1 CFOや経理・財務部門に求められる役割とスキル
2 財務部門の変化とスキル
3 内部監査チームの変化とスキル
4 経理部門の変化とスキル
5 FPGAに期待される機能とスキル
事例紹介6 GEのファイナンス組織

第7章 CFOは期待に応えているか
[I]社長や事業担当役員支援
1 社長や事業担当役員の求めている時間軸
2 勝つ社長の見ているもの
[II]IBMのCFOStudyと新たな期待
1 IBMビジネスコンサルテーション:2010年CFOStudy
2 CFOへの新たな期待とそのギャップ
[II]「デジタルトランスフォーメーションと経営管理の高度化」(CFO協会)調査
1 CFO協会の調査
2 経営管理プロセス
3 経営管理プロセスの機能性
4 戦略立案・中長期経営計画
5 将来予測・着地見込み管理
6 システム化
7 主要指標から見えてくるもの
8 コスト管理項目
9 今後の展開

第8章 グローバル企業における組織としてのFP&A
[I]グローバル企業のFP&A組織
[Ⅱ]FP&A組織が担うビジネスパートナーとしての役割
事例紹介7 FP&A組織を支えるインテルの企業文化
事例紹介8 インテル米国本社で経験したFP&A
事例紹介9 外資系PEファンドが投資する日本企業での経験

第9章 グローバル企業におけるプロフェッションとしてのFP&A
[I]FPGAプロフェッションの役割
1 マネジメントコントロール・システム
2 優秀企業に共通している効果的なFP&Aの12の原則
3 FPGAプロフェッションの5つの役割
[Ⅱ]FPGAプロフェッションに必要とされるスキルセット
1 IMAのフレームワーク
2 CGMAのフレームワーク
[Ⅲ]FPGAプロフェッションに必要なマインドセット
事例紹介10 松下電器の経理組織

第10章 グローバル企業におけるFP&Aの経営管理手法
[I]予算の機能と予う分析
1 予算の持つ最も重要な機能
2 トップダウンとボトムアップ
3 予実分析から予予分析へ:予算-予測分析
事例紹介11 トイザらスの月次会議
事例紹介12 マイクロソフト、機械学習による売上予測精度の改善
事例紹介13 ヤフーにおけるFP&Aの実際の取り組み
[Ⅱ]グローバル企業におけるマネジメントコントロール・システム
事例紹介14 インテルとグーグルのマネジメントコントロール・システム
事例紹介15 ジャック・ウェルチとGE・バリュー
[Ⅲ]戦略と管理会計の一本化に向けて
1 バーゲルマンの戦略論
2 ミンツバーグの戦略論
3 サイモンズの診断型コントロールシステムと対話型コントロールシステム
4 ハロルド・ジェニーンの月次会議

エピローグ プロフェッションとしてのCFOとFP&A
[I]CFOとFP&Aプロフェッションのキャリア構築とMBA
[Ⅱ]会計士キャリアからのCFOとFP&Aプロフェッション
1 会計専門職大学院とFPGAプロフェッション
2 公認会計士の資格取得のメリット
3 公認会計士のキャリア
4 企業内公認会計士
5 経営の経験
6 CFOとFP&Aプロフェッションの人材育成
[Ⅲ]グローバル企業で評価されるFP&A資格
1 IMAが認定するCMA資格とCSCA資格
2 CIMAとAICPAが認定するCGMA資格
3 AFPが認定するCertifiedCorporateFP&A Professional資格
[Ⅳ]FPGAプロフェッション確立に向けた日本CFO協会の取り組み

参考文献
索引

昆 政彦 (著), 大矢俊樹 (著), 石橋善一郎 (著)
出版社 : 中央経済社 (2020/4/18)、出典:出版社HP