1からのデジタル・マーケティング

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デジタルマーケティング入門書

デジタルマーケティングの基本概念や考え方について理解できます。ハウツーよりも概念の説明がメインのため、全体像を掴みやすいです。いくつかの企業のデジタルマーケティング戦略における事例紹介もしています。独学をしようとしている方や初学者におすすめの入門書です。

西川 英彦 (編集), 澁谷 覚 (編集)
出版社 : 碩学舎 (2019/2/23)、出典:出版社HP

序文

皆さんは、デジタル・マーケティングは何だか難しそう、自分には縁がないものだと思っているかもしれない。だが実際には、「LINEでクーポンを手に入れた」とか、「お気に入りの商品の画像をインスタグラムにアップした」などの経験をしただけで、すでに皆さんはデジタル・マーケティングに関わっているのである。このように、皆さんにとってデジタル・マーケティングは実はとても身近な現象なのである。「本書は、デジタル・マーケティングをはじめて学ぶ方、あるいは1から学び直したい方のためのテキストである。デジタル・マーケティングを学ぶための書籍は、世の中にたくさん存在する。だが、これらの多くは、技術的ノウハウやツールの使い方などを解説する実践書であったり、専門用語が多くて難しかったり、あるいは内容に偏りがあったりと、デジタル・マーケティングの基礎知識となる「理論」や「概念」を体系的にわかりやすく学べる標準的なテキストは見当たらない。このことの背景には、デジタル・マーケティングを取り巻く市場の変化が速いことや、関連する理論や概念の変化が速いこと、そして、そのために標準的なテキストを作成することが難しいこと、などの業界や書き手側の事情もある。
このような事情にもかかわらず、本書はあえてデジタル・マーケティングの標準的なテキストを作成することを目指して執筆と編集を行った。そのため本書では、いくつかの工夫をしている。

まず第1に、従来からの伝統的マーケティングの枠組みを使って、伝統的マーケティングを説明しつつ、デジタル・マーケティングの理論や概念を解説していることである。そのことで、デジタル・マーケティングの理論や概念を体系的に理解しやすくなるというだけでなく、伝統的マーケティングとの違いが理解できる。具体的には、伝統的マーケティングのSTP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)や、4P(製品、価格、チャネル、プロモーション)が枠組みとして利用され、その変化が説明される。このような方法を用いた理由は、今日のデジタル社会においても伝統的マーケティングとデジタルマーケティングは両方とも必要だからであり、そして、そのために両方を体系的に関連付けて理解することがきわめて重要だからでもある。

第2に、理論や概念の変化が激しい中でも、変わらずに重要であり続けている、デジタル・マーケティングの基礎として学ぶべき理論や概念を説明していることである。そのために、多くのデジタル・マーケティング関連のテキストや研究を参考にしつつ、マーケティングの各分野の優秀な研究者を執筆陣に招き、何回もの議論を重ねて、基礎となる理論や概念を選別した。とりわけ、『コトラーのマーケティング4.0:スマートフォン時代の究極法則』は、本書の全体を通して参考とした。ぜひ、本書の次に読んでもらいたい。

第3に、アマゾンや食ベログ、メルカリ、無印良品など身近な企業のケースを通して、デジタル・マーケティングの概念や理論を説明していることである。執筆陣と重ねた議論の中で、それぞれの概念や理論を理解する上で代表となる事例を選別し、メインケースとして詳しく取り上げ関連づけることで、皆さんの理解を手助けしている。

第4に、理論や概念をできるだけわかりやすい言葉で、そして事例を使いながら具体的に説明していることである。専門用語を使う際にも、はじめて学ぶ方が理解できるように、その意味の説明を行うようにしている。

第5に、シンプルな3部構成にして、理解をしやすくしていることである。まず「第Ⅰ部デジタル・マーケティングとは」において、デジタル社会の特徴や、顧客側の消費者行動の変化、企業側のビジネスモデルの変化などのデジタル・マーケティングの全体像を理解した上で、次の「第Ⅱ部デジタル・マーケティング戦略」において、4Pの各戦略の基本と拡張を学び、最後の「第Ⅲ部デジタル・マーケティングのマネジメント」において、デジタル・マーケティングを実践するためのツールやインフラを理解できるようにしている。

このように本書を通して、デジタル・マーケティングが皆さんにとってとても身近な現象であることが理解できるだろう。言い換えれば、それだけ身近な現象であるデジタル・マーケティングを学ぶことは、皆さんにとって不可欠であるともいえるのだ。デジタル・マーケティングの基礎知識を身につけ、身近な現象と結びつけつつ深く理解することを通じて、ますます進展するデジタル社会で皆さんが活躍されることを期待している。

2019年1月
編著者 西川英彦・澁谷覚

西川 英彦 (編集), 澁谷 覚 (編集)
出版社 : 碩学舎 (2019/2/23)、出典:出版社HP

CONTENTS

序文

第Ⅰ部デジタル・マーケティングとは

第1章デジタル社会のマーケティング—アマゾン
1 はじめに
2 アマゾン
創業
サイト開始
エブリシングストア
マーケットプレイス
プライム会員
さらなる拡大
3 リーチとリッチネス
リアル社会:情報とモノの一体
デジタル社会:情報とモノの分離
4 デジタル・マーケティング
デジタル・マーケティングとは
デジタル・マーケティング戦略
デジタル・マーケティングのマネジメント
5 おわりに
Column1-1 インターネットと情報端末
Column1-2 アーキテクチャの生態系
考えてみよう/次に読んで欲しい本

第2章 デジタル社会の消費者行動—食ベログ
1 はじめに
2 食べログ
食べログの概要
外食市場における標準的なカスタマー・ジャーニ
消費者行動の変化と対応
3 カスタマー・ジャーニー
カスタマー・ジャーニーとタッチポイント
消費者購買意思決定モデルとカスタマー・ジャーニー
4 デジタル・リテラシー
デジタル・リテラシーとは
食べログとデジタル・リテラシー
デジタル社会とデジタル・リテラシー
5 おわりに
Column2-1 ソーシャルグラフとインタレストグラフ
Column2-2 90-9-1の原則
考えてみよう/次に読んで欲しい本

第3章 デジタル社会のビジネスモデル—メルカリ
1 はじめに
2 メルカリ
メルカリとは
メルカリの仕組み
メルカリの成長
3 プラットフォーム
プラットフォームとは
プラットフォームの特徴
4 ネットワーク効果
サイド内ネットワーク効果とサイド間ネットワーク効果
ネットワーク効果が企業の成功にもたらす影響
5 おわりに
Column3-1 先発優位・後発優位
Column3-2 スイッチングコスト、マルチホーミングコスト
考えてみよう/次に読んで欲しい本

第4章 デジタル・マーケティングの基本概念—無印良品
1 はじめに
2 無印良品
主婦の一言
顧客との共創
ネットとリアルの補完
3 協働
一方向から協働へ
STPから顧客コミュニティによる承認へ
4 マーケティング・ミックス
4Cの重要性
デジタル社会のマーケティング
デジタル社会のマーケティング・ファネル
5 おわりに
Column4-1 パーミッション・マーケティング
Column4-2 絶対価値
考えてみよう/次に読んで欲しい本

第Ⅱ部 デジタル・マーケティング戦略

第5章 製品戦略の基本—アップル
1 はじめに
2 アップル
アップルミュージック
音楽配信事業の市場環境
HomePodの市場導入
3 デジタル財
デジタル財とは
カスタマイゼーション
4 IoT
IoTとは
IoTがもたらす機会
5 おわりに
Column5-1 標準化戦略
Column5-2 n次創作
考えてみよう/次に読んで欲しい本

第6章 製品戦略の拡張—レゴ
1 はじめに
2 レゴ
レゴの沿革
マインドストーム事件
次世代マインドストームの開発
レゴアイデア
3 クラウドソーシング
クラウドソーシングとは
問題解決と予測
クラウドソーシングの有効性
クラウドソーシングの参加者
4 イノベーション・コミュニティ
消費者主導のコミュニティ
オープンソースソフトウェア
イノベーション・コミュニティの有効性
イノベーション・コミュニティの参加者
イノベーション・コミュニティと企業の関係
5 おわりに
Column6-1 オープン・イノベーション
Column6-2 メイカー・ムーブメント
考えてみよう/次に読んで欲しい本

第7章 価格戦略の基本—ANA
1 はじめに
2 ANA
ANAの設立と成長
ANAの価格戦略の経緯
ANAのマイレージ・プログラム
3 時期に対応したダイナミック・プライシング
ダイナミック・プライシングとは
需要予測の重要性とレベニュー・マネジメント
時期に対応したダイナミック・プライシングにおける注意点
4 顧客に対応したダイナミック・プライシング
ダイナミック・プライシングの拡大
顧客の収益性に応じたダイナミック・プライシング
顧客に対応したダイナミック・プライシングの課題
5 おわりに
Column7-1 フリーミアム
Column7-2 サブスクリプション
考えてみよう/次に読んで欲しい本

第8章 価格戦略の拡張—エアビーアンドビー
1 はじめに
2 エアビーアンドビー
エアビーアンドビーの成り立ち
エアビーアンドビーのビジネスモデル
エアビーアンドビーの料金システムと決済方法
3 消費者間取引のダイナミック・プライシング
消費者間取引における価格の役割
消費者間取引における参加型価格決定メカニズム
消費者間取引のダイナミック・プライシングとは
4 電子決済
電子決済とは
電子決済システムの買い手側のメリット
電子決済システムの売り手側のメリット
電子決済システムと消費者間取引
5 おわりに
Column8-1 クラウドファンディング
Column8-2 電子通貨と仮想通貨
考えてみよう/次に読んで欲しい本

第9章 チャネル戦略の基本—ユニクロ
1 はじめに
2 ユニクロ
ユニクロの概要
ユニクロのビジネスモデル
デジタル社会におけるユニクロの対応
3 ダイレクトモデル(直販)
間接流通と直接流通
流通における中間業者介在の意義
ユニクロのダイレクトモデル
ビジネスモデル変化の背景
4 オムニチャネル
チャネルの変遷
チャネル変化とカスタマージャーニーの変化
ユニクロのオムニチャネル化
オムニチャネル化の背景と課題
5 おわりに
Column9-1 ショールーミングとウェブルーミング
Column9-2 消費シーンに近づくチャネル機能
考えてみよう/次に読んで欲しい本

第10章 チャネル戦略の拡張—ウーバー
1 はじめに
2 ウーバー
ウーバーの概要
ウーバーの成長と対立
ウーバーを支える技術と仕組み
3 消費者間取引
消費者間取引の仕組み
消費者間取引を支えるポイント
4 シェアリング・エコノミー
シェアリング・エコノミーの特徴
シェアリング・サービスに向いている製品やサービス
5 おわりに
Column10-1 3D技術
Column10-2 レンタルとシェア
考えてみよう/次に読んで欲しい本

第11章 プロモーション戦略の基本—ローソンクルー♪あきこちゃん
1 はじめに
2 ローソンクルー♪あきこちゃん
SNSアカウントの開設と「あきこちゃん」
「あきこちゃん」機能の発展
「あきこちゃん」の効果
「ローソン研究所」での活躍
3 トリプル・メディア
ペイド・メディア
オウンド・メディア
アーンド・メディア
4 コンテンツマーケティング
コンテンツ・マーケティングとは
コンテンツ・マーケティングが重視される背景
コンテンツ・マーケティングの実行
5 おわりに
Column11-1 企業アバター
Column11-2 YouTuber
考えてみよう/次に読んで欲しい本

第12章 プロモーション戦略の拡張—トリップアドバイザー
1 はじめに
2 トリップアドバイザー
トリップアドバイザーとは
情報の透明化
消費者と施設に与えた影響
3 クチコミ
消費者のクチコミ動機
広告とクチコミ
4 共同格付け
消費者が共同格付けを参考にする理由
バンドワゴン効果とスノッブ効果
共同格付け情報のメディア性
5 おわりに
Column12-1 インフルエンサー
Column12-2 炎上
考えてみよう/次に読んで欲しい本

第Ⅲ部 デジタルマーケティングのマネジメント

第13章 デジタル社会のリサーチ—グーグル
1 はじめに
2 グーグル
創業の原点
競合他社との違い
さらなる成長
3 探索的リサーチ
ビッグデータの収集と分析
ソーシャル・リスニング
4 検証的リサーチ
マーケティング活動の効果測定
A/Bテスト
5 おわりに
Column13-1 ネトノグラフィー
Column13-2 エムロック
考えてみよう/次に読んで欲しい本

第14章 デジタル社会のロジスティクス—ヤマト運輸
1 はじめに
2 ヤマト運輸
宅配便の誕生
宅配便の高付加価値化
物流情報システムの整備
3 ロジスティクス
物流ネットワーク
物流改革の動き
4 再配達
オンライン小売業との法人契約
ドライバーの配達業務量
配達先とのすれ違い解消
5 おわりに
Column14-1 ドローン
Column14-2 倉庫・RFIDタグ
考えてみよう/次に読んで欲しい本

第15章 デジタル社会の情報システム—セールスフォースドットコム
1 はじめに
2 セールスフォースドットコム
企業向けクラウドのパイオニア
高い成長性と効率性の両立
顧客情報のセキュリティが肝心
スクラム開発への転換と顧客への展開
3 クラウド
クラウドの全体像
クラウドの特徴
4 アジャイル開発
ウォーターフォール開発
アジャイル開発の背景
アジャイル開発の特徴
5 おわりに
Column15-1 プライバシー
Column15-2 AI(人工知能)
考えてみよう/次に読んで欲しい本

[参考文献] [索引]
西川 英彦 (編集), 澁谷 覚 (編集)
出版社 : 碩学舎 (2019/2/23)、出典:出版社HP