世界史の新常識 (文春新書)

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不確実性の時代に世界史を学び直す

本書は、世界史の大まかな流れに沿って、様々な著者が各時代、それぞれのテーマについて解説している本です。当時の時代背景や重要人物を含めた、世界史の重要な出来事に関する論説がまとめられています。歴史の教科書とは違った、様々な著者の歴史に対する解釈、見方が学べます。

文藝春秋 (編集), 文芸春秋= (編集)
出版社 : 文藝春秋 (2019/3/20)、出典:出版社HP

はじめに

私たちはいま激動する世界史のただなかにあるのではないか。そう感じている人は少なくないでしょう。中国の台頭、トランプ大統領の登場、ヨーロッパの混乱、深刻化する移民問題、広がる格差、世界中で繰り広げられるテロ行為――指折り数えていけばきりがありません。それらの大きなうねりが意味するものは、新時代の到来なのか、世界のねじが外れてしまうようなパニックの連鎖なのか。その答えは、まだ誰にもわかりません。

おそらくかつて世界史の動乱期に身を置いた人たちは、いまの私たちのような、いや、それ以上の不安のなかにあったことでしょう。船はあてどなく彷徨い、昨日は見えていた島影もどんどん小さくなり、見えなくなっていく。前に広がるのは何の標もない、誰も行ったことのない茫洋とした大海です。気象も刻々と変わり、時には濃霧も立ち込めて、視界をさえぎってしまう。
それでも人類は航海を続け、「歴史」という海図と日誌を残しました。もちろん、歴史の個別的な事柄はそのまま繰り返されることはなく、二度と同じ航海はありません。「歴史」という古ぼけた海図が、どれほど役に立つのか、心もとなく思えます。しかし、そこには人類が幾多の苦難をくぐり抜けてきた知恵、もしくは苦い失敗の教訓が書き込まれて、います。天候が荒れ、方向を見失ったときほど、先人の遺した記録と思考に向かい合う必要があるのではないか。

私たちは、多くの選択や試行錯誤の結果、いま現在の地点に立っています。何かをやろうとするたびに無数の問題が発生し、それを必死で解決したり、力及ばず失敗したりを繰り返してきた、そのややこしい累積が「現在」なのでしょう。そのあまりの複雑さに、呆然とすることもしばしばです。そんなときに「そもそも」に遡り、問題のありかを改めて見つめること。それが「歴史に学ぶ」ということでしょう。

新しい時代を生き抜くには、新しい視点で歴史を学び直す必要があります。今の世界をリアルに理解するための世界史。本書がその入口への案内板になれば幸いです。

編集部

文藝春秋 (編集), 文芸春秋= (編集)
出版社 : 文藝春秋 (2019/3/20)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第一章 古代
古代ギリシアはペルシア帝国に操られていた
どうして釈迦は仏教を開いたか
カエサルはなぜ殺された?
「キリスト教」はイエスの死後につくられた
ローマ帝国を滅ぼした難民と格差

第二章 中世・近世
預言者ムハンマドのリーダーシップ
中世グローバル経済をつくったのは遊牧民とムスリム商人
異民族を活用したチンギス・カン
ルネサンスは魔術の最盛期
明を揺るがした日本の火縄銃
戦争と疫病がニュートン、ライプニッツを生んだ

第三章 近現代
産業革命がイギリス料理をまずくした
保護貿易が生み出した産業資本主義
アヘン戦争 大清帝国四大英帝国
ィンド グローバルな亜大陸
世界大戦の負債が起こした大恐慌
独裁の秘術ヒトラー、スターリン、毛沢東
共和党対民主党 日本人が知らないアメリカ史

第四章 ブックガイド
グローバル・ヒストリーとは何か
評伝・自伝で人物の内面に迫る
共産中国の深層には今も伝統的な中国社会が息づいている

第五章 歴史の教訓
史上「最も幸せな国」はどこだ?
世界史から何を学ぶか

イラスト:長場雄

文藝春秋 (編集), 文芸春秋= (編集)
出版社 : 文藝春秋 (2019/3/20)、出典:出版社HP