一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書 公立高校教師YouTuberが書いた

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新感覚の教科書

本書は特徴の一つとして「年号を使わない」ことを掲げています。世界史の勉強といえば年号の暗記がネックになるイメージがありますが、それを撤廃することで歴史を一つのストーリーとして学ぶことができます。また、一般的な教科書と違い地域や年代を行ったり来たりしないので、歴史を順序立てて学びやすい構成になっています。

山﨑 圭一 (著)
出版社 : SBクリエイティブ (2018/8/18)、出典:出版社HP

はじめに 世界史には”1つ”のストーリーがある!

「先生、YouTubeで授業を公開してよ!先生が異動しても先生の聴きたいんです!」
かつての私の生徒からこのような要望をもらい、2013年、YouTubeLa世界史の授業動画『世界史20話プロジェクト』を始めました。

高校生だけでなく、大学生やビジネスパーソン、主婦、教育関係者から幅広い層の方々に視聴いただいており、今では日本史や地理の動画を合わせて総再生回数が850万回を数えるようになりました。
私は公立高校の社会科の教員なので、世界史だけでなく、日本史や地理も教えています。
YouTubeでは、世界史とともに日本史と地理の授業動画も公開していますが、世界史の動画だけに「プロジェクト」という名称を付けています。
これは、けっして気まぐれではありません。
私の中で、世界史の授業動画をアップするのは、日本史や地理と違って、まさに一大プロジェクトという想いがあったからです。そして、最も反響が大きかったのも世界史でした。
なぜ、世界史の授業動画が一大プロジェクトだったかというと、本編でもあらためて詳しくお話ししますが、じつは、一般的な教科書には「わかりにくさ」という大きな“問題”があるからです。

その問題により、世界史が苦手な人をたくさん生み出している原因になっている可能性があると考えたからです。
日本史は小学校から高校まで繰り返し学び、「あらすじ」ぐらいは多くの人が知っているのに対して、世界史の「あらすじ」を知っている人は少ないのではないでしょうか?世界史はグローバル時代に必須の教養なのに、非常に残念なことだと思います。
20年近く社会科の教員を務める中で、私は数多くの生徒を見てきました。
社会科に苦手意識を持っている生徒をなんとかしたい、歴史に興味を持ち、教養の幅を広げてほしい。
そんな想いから、世界史の教え方について試行錯誤を重ねた結果、1つのストーリーに基づき、世界史を解説するという本書の形にたどり着きました。
本書で解説する世界史の特徴を具体的に申し上げると、以下の3つになります。

① 一般的な教科書とは違い、すべてを数珠つなぎにして「1つのストーリー」にしている
② 「主語」が変わるのを最小限におさえている
③ 年号を使わない。

「年号を使っていない歴史の本なんて……」と思う方がいるかもしれませんが、この3つの工夫により、高校で学ぶ世界史のあらすじを一度読むだけで理解できるようになると思います。
本書が、世界史の教養をこれから身につけたいという方々のお役にたてれば幸いです。特に、学生時代に世界史が苦手で、学びなおしをしたいと思っている社会人の方や「なかなか点数が上がらず、まずは平均点を目指したい」という大学受験生には最適な一冊になるかと思います。
世界史を学ぶ「はじめの一歩」を本書で踏み出し、映画、小説、旅行、音楽、美術など、様々な世界史のコンテンツにアクセスして、人生をより豊かにしていただけることを願っています。

山﨑圭一

山﨑 圭一 (著)
出版社 : SBクリエイティブ (2018/8/18)、出典:出版社HP

目次

はじめに
世界史には、“1つ”のストーリーがある!

ホームルーム①
「わかりにくい」という世界史の教科書の“弊害”
ホームルーム②
世界史は“数珠つなぎ”にして学べ!
ホームルーム③
世界史は「年号」を使わずに学べ!
ホームルーム④
本書の構成について

序章
人類の出現・文明の誕生
人類の出現
化石の発見が語った人類誕生の歴史
文明の誕生
文明はいつ、どこで、どのように生まれたのか?

第1章
ヨーロッパの歴史
第1章 ヨーロッパの歴史あらすじ
エーゲ文明
神話や伝説に包まれたヨーロッパのルーツ
ポリスの形成
「オリンピック」はポリスたちの祭典だった
アテネ
民主主義に“目覚めた”アテネの人々
スパルタ
「スパルタ教育」の秘密は人口構成にあった
ペルシア戦争とペロポネソス戦争
ペルシアに勝利後、内部から崩れたギリシア
アレクサンドロスの帝国
英雄アレクサンドロスが世界を駆け抜ける!
共和政ローマ
ヨーロッパを1つにした巨大国家の誕生
帝政ローマ
名君たちによって「ローマの平和」が訪れる
キリスト教の成立
ローマ帝国時代にキリスト教が生まれた理由
ゲルマン人の移動
民族移動と混乱から「中世」が始まる
ノルマン人スラヴ人の移動
第2、第3の民族移動はヨーロッパの北と東から
ビザンツ帝国
1000年続いたローマ帝国の正式な継承国家
キリスト教の分裂
教会同士の対立から2つの宗派が生まれた
カトリック教会の発展
神の権威を背景に教皇が最高権力者へ
封建社会の成立
モザイク状の国家たちがヨーロッパの多様性を生んだ
十字軍
聖地奪還のため、大遠征軍が派遣された
十字軍の影響
十字軍が中世ヨーロッパにもたらした2つのこと
中世のイギリス
議会政治の始まりはイギリス王の失政から
中世のフランスと百年戦争
フランスの危機にジャンヌ=ダルクが立ち向かう!
中世のスペイン
イスラーム勢力を追い出し、大西洋に進出した
中世のドイツ・イタリア
“メンツ”にこだわって、国内が空中分解

第2章
中東の歴史
第2章 中東の歴史あらすじ
メソポタミア文明
最古の文字を生み出した民族とは?
エジプト文明
ピラミッドを生んだ文明は2千年にわたって栄えた
シリア・パレスチナの民族
鉄・アルファベット・一神教はここから始まった
オリエントの統一
寛容な統治で巨大化したペルシア人の帝国
イランの諸王朝
ローマの“ライバル”となったイラン人の王朝たち
イスラームの成立
「神の前の絶対平等」を合い言葉に急成長
イスラームとは
イスラームが世界の4分の1の人をひきつける理由
7世紀のイスラーム世界
アラブ人の国家が「巨大帝国」に成長
8世紀のイスラーム世界
“平安の円形都市”バグダードが繁栄を謳歌した
10世紀のイスラーム世界
イスラームが分裂し、「戦国時代」がやってきた
11世紀のイスラーム世界
トルコ人がついにイスラームの主役に
12世紀のイスラーム世界
十字軍と死闘を演じた“英雄の中の英雄”サラディン
13世紀のイスラーム世界
トルコ人奴隷が建国した2つの王朝
14~16世紀のイスラーム世界①
軍事の天才「鬼武者」ティムールの登場
14~16世紀のイスラーム世界②
トルコ人王朝の“決定版”オスマン帝国の成立と拡大

第3章
インドの歴史
第3章 インドの歴史あらすじ
インダス文明
高度な都市計画をもつ「インドの源流」
アーリヤ人の流入とヴェーダ時代
インドに根強く残るカーストがここから始まる
小国分立の時代
ブッダの“悟り”が新宗教を生み出す
マウリヤ朝とクシャーナ
初めてインドを“1つ”にした巨大王朝
グプタ朝とヴァルダナ朝
ヒンドゥー教が確立し、インドの古典文化が花開く
イスラーム化とムガル帝国」
ヒンドゥー教とイスラーム教の融和と分裂

第4章
中国の歴史
第4章 中国の歴史あらすじ
中国の古代文明
2つの大河が高度な文明をはぐくんだ
設と周
「美女に溺れて滅んだ!?」2つの王朝
春秋・戦国時代
500年間続いた中国史上最大の戦乱時代
諸子百家
君主たちの“コーチ”を務めた思想家たち
秦王朝
初めて中国を“1つ”にした始皇帝
前漢王朝
「漢字」「漢文」「漢民族」に名を残す中国の代表的王朝
後漢王朝
西のローマ帝国と並ぶ東の大帝国に成長
三国時代
劉備・曹操・孫権が天下を争った三国時代
南北朝時代
異民族の侵入が続き、王朝が南北に分裂
隋王朝
“嫌われ者”だが優秀だった隋の皇帝たち
唐王朝
隋の後継国家として空前の繁栄を迎えた唐
宋王朝
「平和をお金で買った」現実主義の宋王朝
モンゴル帝国と元王朝
アジアをまたにかけ広がったチンギス=ハン旋風
明王朝
秘密警察と宦官が暗躍した「暗黒時代」

第5章
一体化する世界の時代
第5章 一体化する世界の時代あらすじ
大航海時代
アジアの香辛料を求め、欧州諸国が大西洋へ
大航海時代の影響
欧州と新大陸がつながり、「欧米世界」が形成
ルネサンス
美術作品が「神の目線」から「人の目線」へ
宗教改革
カトリックへの批判から新しい宗派が次々登場
主権国家体制の成立
戦争の大規模化により、「国のあり方」が変わる
近世のスペインとオランダ
「小国」オランダに足元をすくわれたスペイン
近世のイギリス
混乱を乗り越え、イギリスに議会政治が確立
近世のフランス
フランスの栄光、ルイ14世とヴェルサイユ宮殿
近世のドイツ
ドイツ全土の荒廃を招いた三十年戦争
近世のロシア
ロシアの絶対君主となったドイツ人女王
ヨーロッパの世界進出
世界の一体化で、ヨーロッパの支配が加速

第6章
革命の時代
第6章 革命の時代あらすじ
產業革命
「失業した農民」が「都市の労働者」へ
アメリカ独立革命
“理不尽”な英国に反旗を翻した13の植民地
フランス革命
国王をギロチンで処刑!
ヨーロッパ中に動揺が走る!
ウィーン体制
王政に逆戻りしたウィーン体制に民衆は反発
19世紀のフランス
王政に戻ったフランスに再び革命の嵐が吹き荒れる!
19世紀のイギリス
イギリス史上空前の繁栄・ヴィクトリア時代
ドイツ・イタリアの統一
軍事・外交の天才ビスマルクが「ドイツ」をつくる
ロシアの南下と東方問題暖かい地へ!
ロシア南下の野望と挫折
アメリカ南北戦争
経済政策と奴隷制で真っ二つになったアメリカ

第7章
帝国主義と世界大戦の時代
第7章 帝国主義と世界大戦の時代あらすじ
帝国主義の始まり
資本主義の発展が植民地の拡大をあと押し
英仏の帝国主義
「世界の半分」を支配したイギリスとフランス
アフリカ分割
「早い者勝ち」で次々と植民地化する列強たち
アメリカの帝国主義
南北戦争で出遅れた米国が太平洋に進出
日露戦争と第一次ロシア革命
ついに、ロシアの矛先が日本に向けられる
第一次世界大戦
世界に挑戦状を叩きつけたドイツの“青年”皇帝
ロシア革命
2度の革命で“世界初”の社会主義国が誕生
ヴェルサイユ体制
新体制は次の戦争への「つかの間の平和」に終わる
大戦後のヨーロッパ
“お金持ち”アメリカが荒廃したヨーロッパを救う
アメリカの繁栄と世界恐慌
「永遠の繁栄」といわれたアメリカ経済のまさかの転落
ブロック経済とファシズム
第二次世界大戦の構図は「持てる国」と「持たざる国」
第二次世界大戦」
破竹の勢いのナチス、及び腰の英仏

第8章
近代の中東・インド
第8章 近代の中東・インドあらすじ
オスマン帝国の衰退
「内から」「外から」衰退したオスマン帝国
トルコ革命
「トルコの父」がトルコ共和国をつくった
インド帝国の成立
女王が統治するイギリスの最重要植民地
第一次大戦後のインド
約束を守らないイギリスに不服従運動が始まる

第9章
近代の中国
第9章 近代の中国あらすじ
アヘン戦争
「お茶」を求めてイギリスが中国に進出
アロー戦争と太平天国の乱
国内外で起こる戦争にお手上げになった清
中国分割
弱体化が全世界にバレた清が半植民地化の道へ
辛亥革命
近代化の道を自ら閉ざした清がついに滅亡
国共合作と分離
国民党と共産党、二大勢力の誕生
満州事変と第二次国共合作
日本の大陸進出がライバル同士を結び付けた

第10章
現代の世界
第10章 現代の世界あらすじ
国際連合の成立
新たな国際秩序の中心は戦勝国たちだった
ベルリン封鎖
アメリカの物量が冷戦の第1ラウンドを制す
冷戦の第2ラウンドはアジアでの“熱い戦争”
雪どけ
世界の構造を変えたスターリンの死
スプートニク=ショックとキューバ危機
「雪どけ」から一転、世界中が核戦争の危機に
ベトナム戦争とプラハの春
「テレビのカ」が冷戦を終結に導く
冷戦の終結
チェルノブイリの事故がソ連を崩壊に追い込む
戦後のヨーロッパ
戦後の荒廃の中から復興し、統一を模索
パレスチナ問題
宗教対立から始まった未だ解決しない「世界の宿題」
インドの独立
ガンディーの思いもむなしく、インドは分裂した
戦後の中国
共産党と国民党の対立が中国を2つに分けた

おわりに

巻末付録
教養としておさえておきたい文化史
年号も覚えておきたい人のための世界史年表

山﨑 圭一 (著)
出版社 : SBクリエイティブ (2018/8/18)、出典:出版社HP

ホームルーム①
「わかりにくい」という世界史の教科書の”弊害”

世界史が苦手な人が多い理由

世界のグローバル化に伴い、世界の歴史、文化を学ぶ意義は非常に高まっています。私も世界の歴史という、スケールが大きく、様々なエピソードが詰まった素晴らしい科目を教えることは非常にやり甲斐を感じてします。この本を手にとった皆さんも、そんな世界史を学びたいという方々だと思います。
その反面、社会人も高校生も世界史の勉強を苦手に感じている人が多くいます。理由は、多くの人が、英語の単語帳を覚えるように、「何の脈絡もなくひたすら用語や年代を暗記する科目だと思っている」ことにあると思います。
こうした“誤解”を生む1つの要因が、学校で使われている一般的な世界史の教科書の構成にあるのではないかと私は考えています。

右の図をみてください。高校で使われる、一般的な『世界史B」の教科書を前から順に読んだときの項目の流れです。
縦に年代・横に地域を並べ、「学ぶ順番」を矢印で表しています。図から明らかなとおり、矢印があっちこっちに飛んでいるため、教科書をはじめから読んでも“全体像”がいっこうに頭に浮かびません。
もちろん、教科書を制作している側も、意地悪をするためにこのような構成にしているわけではありません。ちゃんと狙いはあるのですが、現状では何を学んでいるのかさっぱりわからなくなって、その結果、「覚える」ことが学習の中心となり、「世界史はつまらない暗記科目だ」という印象が身についてしまうことになっているのです。

ホームルーム②
世界史は“数珠つなぎ”にして学べ!

11のブロックを1つに串刺しに

じつは、このような世界史の教科書の“構造”について問題意識を持ち、試行錯誤を重ねている学校の教員は数多くいます。
ありがたいことに、多くの教員の方たちが、2016年からYouTube上で私が公開している世界史の授業動画『世界史20話プロジェクト』を視聴して高い評価をくださいました。
その評価の一番の理由は、私がこの教科書の問題に1つの解決策を提示したからです。
右の図の矢印を見てください。
17ページの図と違って、矢印が、ヨーロッパから始まり、中東、インド、中国、大航海時代、近代、現代まで、“数珠つなぎ”になっているのがおわかりいただけると思います。
つまり、11個に分かれたブロック(かたまり)を串刺しにして1つにしてしまうのです。
「串刺し」の内容を簡潔に説明するとすれば、「最初にヨーロッパ、中東、インド、中国の4つの地域の歴史を個別に学んだあとに、大航海時代を通じて4つの地域が1つに合流。次に近代、現代を通じて、ヨーロッパ世界がアジアを中心とした世界に影響力を強めていく過程を学ぶ」ということになります。
右の図は、世界史を学ぶ前に、自分の頭に入れておく「器」になります。フレームワーク(枠組み)と言い換えてもよいでしょう。要は、世界道案内の地図です。
これまで、世界史がさっぱり理解できなかったり、用語の暗記作業を苦行のように繰り返したりしていた方は、本書を1度読んでいた。これまでとは違って、内容が自分の頭の中に驚くほど残っているはずです。

「主語」をできるだけ固定して解説

世界史のすべてを数珠つなぎにして解説するために、本書では1つの工夫をしています。
それは、地域、または王朝、国家などの「主役」の変化を最小限に話を進めていくということです。
一般的な世界史の教科書を一度でも読んだことがある人ならおわかり、ただけると思いますが、文中で、めまぐるしく主語が変わります。あるページではヨーロッパの国々が「主語」になって語られ、数ページ進むと、今度は主語が中国になり、さらに数ページ進むと、いつのまにか中東の王朝が主語になっていたりします。
世界の各地域は相互に関連していますので、もちろん、さまざまな視点から歴史を眺めることは大切です。
ただ、17ページの図からもおわかりのとおり、地域や王朝などの「主語」があまりにも頻繁に変わってしまうと、「主語」を把握するだけで大きな負担がかかり、内容に集中しづらくなってしまいます。そのため、教科書をいくら読んでも、内容が頭に残らないのです。
そこで本書では、「主役」の変化を最小限に留めるため、その他の地域は脇役として登場させています。
主役が別の地域に変わるときは、それまで主役だった地域が今度は脇役にまわります。
そうやって、できるだけ一直線”に読むほうが、結果的に、地域間、家間の「横のつながり」がより理解できることを実感していただけるはずです。

山﨑 圭一 (著)
出版社 : SBクリエイティブ (2018/8/18)、出典:出版社HP

ホームルーム③
世界史は「年号」を使わずに学べ!

「年号がない」ほうがストーリーは際立つ

本書には、もう1つ大きなしかけがあります。それは、年号を一切用いないということです。
年号を用いずに解説している世界史の教科書や学習参考書は、私が知る限りでは、ほとんどないと思います。
なぜ、私が年号を使わないかというと、“数珠つなぎ”にするときに、在号は“ノイズ(雑音)”になってしまうからです。
私の授業では、学生たちによく昔ばなしの「桃太郎」を例に出して説明します。
「桃太郎」は、「おじいさん」「おばあさん」「柴刈り」「洗濯」「桃」「きび団子」「キジ」など、50ぐらいの用語で構成されています。日時や年号は出てきません。それでも、多くの人が、子供のときに読んだ桃太郎の話を大人になっても覚えていますよね。昔ばなしのように、数珠つなぎにされたシンプルなストーリーは、頭に残りやすいのです。

しかも、年号がないほうが、かえって事件や人物の「関係性」「つながり」「因果関係」もより際立ってくることを実感してもらえるはずです。
ただし、大学受験生の場合は、年号の知識もある程度必要になります。社会人の中にも、年号をおさえたいという方がいると思います。私が学校で受け持つ生徒たちには、まずは年号なしで世界史を学ばせたあと、大学受験の2か月前くらいに、本書の巻末付録に掲載しているセイ「ター試験に必要な84の年号を覚えさせています。
ほとんどの生徒は、4~5日程度で年号を完璧に覚えてしまいます。
すべての知識を数珠つなぎに身に付けたあとであれば、年号も簡単に頭に入れることができるようになるのです。

「世紀」は、中東世界を軸に

年号は不要であるものの、ある程度のタテの時間軸をおさえておいたほうが、知識がより頭に残りやすくなります。
ただし、すべての用語を年代とセットで覚える必要はまったくありません。じつは、年代を簡単に頭に入れられるコツがあるのです。本書の第2音にあたる「中東」の年代を軸にして整理すればよいのです。
中東世界は、地理的に、西のヨーロッパと東の中国のちょうど中間点にあります。そのため、中東世界は、他の地域の歴史に「脇役」として頻繁に登場します。したがって、中東世界の知識を数珠つなぎで身に付けるときに、合わせて、年代もセットで頭に入れれば、他の地域の年代もまとめて把握できてしまうということなのです。

ホームルーム④
本書の構成について

第5章を境に、大きく前半と後半に分けられる

本書の構成は、5章を境に、前半と後半に大きく分けられます。
まず、序章では、人類の出現や文明の誕生から話を始めます。
次に、1章から4章までで、「ヨーロッパ」「中東」「インド」「中国」しいう4つの地域を取り上げ、それぞれ古代から大航海時代までの歴史を配説していきます。5章以降から、いよいよ4つの地域が一体化する世界中に入ります。5章では大航海時代をメインに、6章、7章で近代のヨーロッパ世界が、様々な革命を通じて世界中に影響力を強めていく過程を解説します。
8章、9章で、近代のヨーロッパ世界に大きな影響を受けた中東・インド・中国などのアジア世界の変遷を解説します。
そして最後に、10章において第二次世界大戦後から現代につながる世界の歴史を解説する、という流れになります。

大航海時代以降、4つの地域が1つに合流する

私がかつて遊んでいたテレビゲームに、「前半は、複数の主人公がバラバラにストーリーを展開し、後半でそれらの主人公が集まって1つの物語をつくっていく」というロールプレイングゲームがありましたが、本書の構成も、同じようなイメージです。
まず、1章から4章までで取り上げる「ヨーロッパ」「中東」「インド」「中国」が、「大航海時代」に出会うまで、それぞれどのような歴史を歩か、また、どのような特徴を持つ地域になったのかを皆さんの頭にできるだけ鮮明に描けるように解説していきたいと思います。
各地域には、気候風土に裏付けられた「個性」のようなものがあります。
たとえば、ヨーロッパは温暖な気候と生産力の高さをバックグラウンドに、有力な国が多く出現し、世界に大きな影響を及ぼしていきますうなものがあります。
中東は、砂漠に点在する多くの部族をまとめるイスラームの存在が欠かせないものとなります。
インドは宗教・民族・言語など、1つにまとまらない「多様性」が特徴となります。中国では、独裁的ともいえる強力な指導者が次々と登場します
各地域の「個性」をつかむことで、5章以降の内容が、より立体的に理解できるようになります。
そして各章の主人公が1つになった5章から、いよいよ世界が一体化して展開される「世界史」のお話になります。地域史だった1章から4章までと異なり、5章以降では、各地域のつながりがより密接に、複雑に絡み合うようになります。
本書では、そうしたストーリーもできるだけ一直線に把握できるように工夫をしています。

取り上げていない地域について

ホームルームの最後に、もう1つ、みなさんにお伝えしておきたいことがあります。本書では、できる限り平易に記述するために割愛した用語が多く、アフリカと東南アジア、朝鮮半島、日本など、取り上げていない地域もあります。また、各国の文化史についても割愛しています。
けっして、これらを世界史において学ぶ必要がないと私が考えているわけではありません。できるだけコンパクトな本にしたいという意図があり、紙面に限りがある中で、みなさんに、「数珠つなぎにした世界史」をよりわかりやすい形で解説することを重視した結果、本書の構成になりました。
今回取り上げなかった地域の歴史や文化史については、改めて別の機会でご紹介したいと考えています。

山﨑 圭一 (著)
出版社 : SBクリエイティブ (2018/8/18)、出典:出版社HP