ヨコで読む大人の世界史

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世界の歴史をヨコ読み

本書は、「今起きていることは、かつて世界で、しかも同時に起きていた」という点に着目し、「世界の歴史を、つながり=ヨコで見てみる」をテーマにしています。歴史を学ぶことでそれを乗り越えてきた人類の知恵を学ぶ、という新しい視点から学べる本となっています。

斎藤 整 (著)
出版社 : KADOKAWA (2020/4/30)、出典:出版社HP

はじめに

「本当に大変な時代になってしまった……」
今、こう思われている方々は多いのではないでしょうか。
昭和から平成にかけては米ソ冷戦の時代でした。両国による核開発競争と軍拡の時代、それに伴う核戦争への恐怖。でも今思えば~節度ある時代、でもありました。これ以上やったら大変なことになってしまう、という気持ちが米ソにブレーキをかけ、結局は平和な時代だったのです。

ところが、2001年にアメリカ同時多発テロが発生してから、世界の景色は一変しました。東日本大震災による福島原発事故の発生、イスラーム国の台頭、異常気象、感染症の大流行……ついに世界は混沌の時代に突入してしまったのです。
しかし、今世界で起きている大変なこと、つまり人類が直面している試練は、実は過去に何度も起きているのです。いやむしろ、人類は今以上の試練に直面し、私たちの先祖は苦心しながらも、その都度その都度解決策を見出してきました。
たとえば、

「感染症の流行」―過去に何度も世界で同時多発したが、人類は克服した
「情報化時代」―情報の重要性には3000年も前から人類はすでに気づいていた
「インフラ整備」―今の高速道路以上の道を、秦の始皇帝やローマが建設していた
「気候変動」―今以上の異常気象に直面しても、人類は新しい時代を迎えた

そして面白いことに、これらの事態は世界でほぼ同時に発生していたのです。
本書は「今起きていることは、かつて世界で、しかも同時に起きていた」という点に着目し、「世界の歴史を、つながり=ヨコで見てみる」というコンセプトのもと、まとめられました。世の東西で起きた出来事をドローンのように俯瞰することで、世界史をエンタメ、として味わおうというものです。
現代は不安すぎる時代です。でも、本書から「大変な時代を生きる人類の知恵」を感じていただき、読者の皆さまが、その知恵を豊かな人生を送るための一つの糧としてくださることを願っています。

斎藤 整

斎藤 整 (著)
出版社 : KADOKAWA (2020/4/30)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1講
四大文明の幕開け(紀元前3000年頃~紀元前1000年頃)
時代の流れを一気読み
「シュメール人」の大きな謎/日本の起源はオリエントなのか?/三種の神器を確認したがった三笠宮崇仁親王/人類史上最初の環境破壊は「砂漠化」だった?/インドも有力な「日本の起源」候補?/なぜ中国黄河文明だけが滅亡を免れたのか?
ここで深掘り!
シュメール人と千葉県の意外な関係
インダス文字は解読すればノーベル賞クラス?
「四大文明の幕開け」のまとめ

第2講
技術革新と宗教誕生(紀元前7世紀頃~紀元前5世紀頃)
時代の流れを一気読み
中国やインドで科学部門のノーベル賞受賞者が少ないワケ/星を見たら、その運行を利用せよ―中国/星の動きに疑問を持つよりも、解脱せよ―インド/星はなぜ動き、なぜ光るのか、直視せよ―西欧/日本は一体、どのタイプ?
ここで深掘り!
湯川秀樹とスティーブン・キングの未来観
「技術革新と宗教誕生」のまとめ

第3講
インフラの整備と法の成立(紀元前5世紀頃~紀元前3世紀頃)
時代の流れを一気読み
「兵馬俑」をしのぐ大発見/始皇帝、商業国家建設の野望/「2000年後の未来にも通用する法をつくれ!」/イランの巨大帝国を支えた「王の道」/「忍者」の原点はイランにあり?/戦車も通れるローマの道
ここで深掘り!
人命を救った「兵馬俑」
日本は「ジャパン」ではなく「ワクワク」?
「インフラの整備と法の成立」のまとめ

第4講
流通ネットワークの誕生(紀元前2世紀頃~1世紀頃)
時代の流れを一気読み
「一帯一路」構想は2000年前に誕生していた?/始皇帝の見果てぬ夢/ローマ帝国繁栄の証し「公衆浴場」/体は弱かったがリーダーシップにすぐれたローマ皇帝/0倍の兵力差を克服した中国皇帝/戦争を減らした「安定」優先の政治
ここで深掘り!
中国の王朝・新をぶっ潰した”肝っ玉かあさん”
ローマの「オシッコ税」と「空中税」
「流通ネットワークの誕生」のまとめ

第5講
流通ネットワークの終焉(2~3世紀)
時代の流れを一気読み
同時期に訪れた東西大国の終焉/後漢を滅ぼした新興宗教教団/感染症と不作で終焉を迎えた「ローマの平和」
ここで深掘り!
「天下三分の計」は諸葛孔明一族が企てた和平策?
「流通ネットワークの終焉」のまとめ

第6講
気候変動が生んだ遊牧騎馬民族の時代(3~4世紀)
時代の流れを一気読み金田一京助も解けなかった壁画の謎/日本人のルーツは遊牧騎馬民族?/「ゲルマン民族の大移動」を引き起こした匈奴/劉邦の血を引く匈奴の最強君主
ここで深掘り!
「オタ芸」と北米インディアンとの関係とは?:
フン族の王アッティラと悲しみの使徒
「気候変動が生んだ遊牧騎馬民族の時代」のまとめ

第7講
「中国の源氏」の時代(5~6世紀)
時代の流れを一気読み
源義経とチンギス・ハーンは同一人物?目覚ましい活躍を見せた「中国の源氏」/驚くほど日本人的な「北魏」/孝文帝にそっくりなクローヴィス
ここで深掘り!
フランク王国が恐れた「狼王クルトー」
「『中国の源氏』の時代」のまとめ

第8講
世界ネットワークと移民国家日本の誕生(7~8世紀)
時代の流れを一気読み
「移民国家・日本」がすでに誕生していた?/知られざる海上ルートが存在していた/8世紀にキリスト教が日本に伝わっていた?/唐でも一目置かれた空海と阿倍仲麻呂/イスラーム教の誕生は「唐の繁栄」がきっかけ?/世界最高レベルの都市だったバグダッド/カール大帝なくしてEUなし/8世紀の「一帯一路」が空前の繁栄をもたらした
ここで深掘り!
フレディ・マーキュリーと安史の乱
「シンドバッド」も「アラジン」も贋作だった?
「世界ネットワークと移民国家日本の誕生」のまとめ

第9講
世紀末と世界交易の衰退(9~10世紀)
時代の流れを一気読み
世界がパニックに陥った「世紀末」の祟り/日本の地形を変えるほどの大災害が続発/富士山噴火以降、世界はカオスに陥った
ここで深掘り!
災害時、神社に逃げれば助かる?
「世紀末と世界交易の衰退」のまとめ

第10講
東西で起きたマネー革命(11~12世紀)
時代の流れを一気読み儲かるビジネスのヒントは「10世紀の開封」にあり/世界初の紙幣が巻き起こした中国の「マネー革命」/「中世のドル」が失墜したワケ
ここで深掘り!
『水滸伝』に登場する梁山泊 36人のツワモノ
世にも奇妙な中国の元号
「東西で起きたマネー革命」のまとめ

第11講
情報国家モンゴルの誕生(13世紀)
時代の流れを一気読み
「情報戦略」に長けていたモンゴル人/モンゴルより巧みだった「マムルーク朝」の情報操作/モンゴルが「2つの都」を置いたワケ/安全で速やかな移動を可能にした道路網/8人の不死身の日本人/教科書では教えない「元寇の真実」/「アジア版EU」の完成
ここで深掘り!
マルコ・ポーロは、本当は中国に行っていなかった?-
「情報国家モンゴルの誕生」のまとめ

第12講
環境破壊とペスト大流行(13~14世紀)
ママ時代の流れを一気読み-「ハーメルンの笛吹き男」は実話だった/130人の少年少女はどこに消えたのか?/「笛吹き男」と「環境破壊」と「ウイルス」/3000万人近くを死に追いやった「ペスト」/ヨーロッパと中国で同時に起きた「農民反乱」
ここで深掘り!
ハーメルンの子供たちが消えた?「悪魔の台所」
「環境破壊とペスト大流行」のまとめ

第13講
3つの大航海時代(15~16世紀)
時代の流れを一気読み
新大陸を発見したのはコロンブスではなかった?/西欧をはるかにしのいでいた「鄭和」の大船団/168人と馬、頭に滅ぼされたインカ帝国/新大陸発見が招いた「Xの悲劇」
ここで深掘り!
6世紀、中国の僧侶が新大陸を発見していた?
「3つの大航海時代」のまとめ

第14講
世界を席巻した日本銀(16~17世紀)
時代の流れを一気読み
「黄金の国ジパング」は嘘ではなかった/スペインが西欧の主役になれた本当の理由/「銀」で失敗したスペイン、成功した日本/牧師の金儲けは「善」である/世界同時、銀山発見の偶然
ここで深掘り!
「恐山」に眠る金が日本を救う?
仏教国の日本で、なぜ資本主義が発達したのか?
「世界を席巻した日本銀」のまとめ

第15講
異常気象と人類の試練(17世紀)
時代の流れを一気読み
同時期に発生した世界の「三大大火」/7世紀は「人類史上最大の危機」/タイで知らない人はいない「山田長政」/アメリカへの移民と奴隷貿易
ここで深掘り!
好景気、不景気は太陽の黒点で分かる?
「異常気象と人類の試練」のまとめ

第16講
海賊の時代(17~18世紀)
時代の流れを一気読み
伝説の海賊王「キッド」の財宝は日本にある?/茶とコーヒーが世界を動かした/厳罰をものともせず普及していったたばこ/産業革命のきっかけとなった「キャラコ」/0世紀の生活スタイルの原点は、この時代にあった」
ここで深掘り!
“赤ひげ”の海賊・バルバロッサの財宝
中国でペスト被害が少なかった意外な理由
「海賊の時代」のまとめ

第17講
情報の時代(19世紀)
時代の流れを一気読み
通信社の伝達手段は「ハト」だった?/電報の登場と「情報の時代」の到来/「金鉱発見」の噂、世界を駆け巡る/世界の一体化を加速させた「交通革命」/交通の発達が招いた「パンデミック」/日露戦争の勝利はまたたく間に世界に伝わった
ここで深掘り!
一攫千金の成功率は7万7000分の2
「情報の時代」のまとめ

第18講
地球環境と日本の「和」(20~21世紀)
時代の流れを一気読み
標高4600メートルのヒョウの死骸が意味するもの/4000万人以上が犠牲になった感染症/ニューギニアの先住民に学ぶ「ゼロの戦闘」/「復讐と憎悪の連鎖」が招いた世界大戦/EUの原点に息づく「和」の精神/カレルギーが残した「日本人へのメッセージ」
ここで深掘り!
ネコになろうとした文化人類学者
EU崩壊を予見していたカレルギー
「地球環境と日本の『和』」のまとめ

本文デザイン 戸塚みゆき(Isshiki)
本文図版 島崎哲雄
本文写真 フォトライブラリー他
校正 石井三夫
編集協力 高橋一喜

斎藤 整 (著)
出版社 : KADOKAWA (2020/4/30)、出典:出版社HP