新 もういちど読む 山川世界史

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世界史の学び直しができる

本書は、高校の世界史で最もメジャーな山川出版社の教科書の内容を、一般向けにまとめ直した本です。国際政治が大きく変動する現代において、世界の歴史を知っていることは、現状を理解するために重要な要素となっています。改めて世界史に興味を持った方や学び直したい場合には、かなり参考になります。

「世界の歴史」編集委員会 (編集)
出版社 : 山川出版社 (2017/8/1)、出典:出版社HP

ふたたび世界史を学ぶ読者へ

テレビや新聞などのマスメディアでは世界各地の政治・経済・社会・文化のニュースが毎日報道されています。ソ連・東欧の社会主義圏が消滅したあと,市場経済が世界を席巻しましたが,21世紀初頭にはアメリカに端を発する世界的金融危機が発生して,アメリカ一極主義は破綻をみせ,民族や宗教にかかわる紛争もたえまなく続いています。大量生産・大量消費の生活が,環境に対する負荷を増大させています。発展途上国の人口は爆発的に増加し,飢餓の問題が進行している一方で,先進国では少子化対策が急務となっています。芸術や学問分野でも新しい才能がつぎつぎとあらわれ、新しい技術や学説が登場しています。世界は動いているのです。これからもまちがいなく動いていくでしょう。しかし、いったいどこに向かっているのかは不明瞭です。

毎日の仕事に忙殺されている生活のなかでは、ゆっくり時間をかけて世界のみちすじを考えることはなかなかできません。ほんらい初等教育から高等教育までの学校教育が、これらを学び,思索する時期にあたっているのですが、現実の仕事を含めたさまざまな状況や問題を経験していない生徒・学生たちの学ぶ視点には「おのずから限界があり、受け身の場合が多いのではないでしょうか。むしろ、仕事に全力を尽くした日々が一段落した人。いま現実の社会に立ち向かっている人、これから新しい道を歩もうとする人のほうが,問題意識をもち,鋭い思索の切り口をもっているはずです。いったん立ち止まって過去を振り返り,その成果や問題点を整理し,将来の見取り図を描いてみることは決して無駄な作業ではないと思われます。

本書は以前教科書として使われていた『世界の歴史(改訂版)』をベースにしていますが,一般の読者を対象として記述を見直し,時代に即応した簡潔かつ明確なかたちに改めました。さらに,現代の理解の手助けになるようなテーマを選択してコラムとし,解説を加えています。誰にでも読みやすく、1冊で世界史の全体像を把握できる書物です。日々のニュースの背景がよくわかるようになるはずです。本書が歴史のみちすじの理解と,将来像の構築の一助となることを願っています。

改訂版にあたって

今回の改訂では、本文を新しい学説にそって修正し、コラムの数を増やしたうえで、テーマの内容を一新しました。新しいコラムでは新しい歴史・人物像を提示し、グローバリズム・ポピュリズム・領土問題などの時事問題を理解するための基礎的背景を解説しています。この改訂版が、読者の現代理解の手助けになることを願っています。

「世界の歴史」編集委員会 (編集)
出版社 : 山川出版社 (2017/8/1)、出典:出版社HP

目次

序章 文明の起源

第Ⅰ部 古代
第1章 古代の世界
1 古代オリエント世界
2 古代ギリシアとヘレニズム
3 古代ローマ帝国
4 イランの古代国家
5 インド・東南アジアの古代国家
6 中国古代統一国家の成立
7 内陸アジア
8 南北アメリカ文明

第Ⅱ部 中世
第2章 東アジア世界
1 中国貴族社会の成立
2 律令国家の成立
3 中国社会の新展開
4 北方諸民族の活動
5 中華帝国の繁栄
第3章 イスラーム世界
1 イスラーム世界の成立
2 イスラーム世界の変容と拡大
3 イスラーム文化の発展
4 インド・東南アジアのイスラーム国家
第4章 ヨーロッパ世界
1 西ヨーロッパ世界の成立
2 中世の東ヨーロッパ
3 中世後期のヨーロッパ

第III部 近代
第5章 近世ヨーロッパの形成
1 ヨーロッパ世界の膨張
2 近代文化の誕生
3 近世の国際政治
4 主権国家体制の確立
5 大革命前夜のヨーロッパ
第6章 欧米近代社会の確立
1 アメリカの独立革命
2 フランス革命とナポレオン
3 産業革命
4 ウィーン体制とその崩壊
5 ナショナリズムの発展
第7章 アジアの変動
1 アジア社会の変容
2 西アジア諸国の変動
3インド・東南アジアの変容
4 東アジアの動揺

第IV部 現代
第8章 帝国主義時代の始まりと第一次世界大戦
1 帝国主義の成立と列強の国内情勢
2 植民地支配の拡大
3 アジアの民族運動
4 列強の対立激化と三国協商の成立
5 第一次世界大戦
第9章 ヴェルサイユ体制と第二次世界大戦
1 ロシア革命とヴェルサイユ体制
2 大戦後のヨーロッパとアメリカ
3 アジアの情勢
4 世界恐慌とファシズムの台頭
5 第二次世界大戦
第10章 現代の世界
1 二大陣営の対立とアジア・アフリカ諸国の登場
2 米ソの動揺と多元化する世界
3 20世紀末から21世紀へ

世界史年表
ヨーロッパ人名対照表
索引

コラム
洞窟絵画
農耕の起源

第I部 古代
ハンムラビ法典
ギリシアの民主政
奴隷制度
ローマの平和(パクス・ロマーナ Pax Romana)
インダス文明とその衰退原因
仏像の成立
ヒンドゥー教
インド洋ネットワーク
東西交渉Ⅰ
草原の民の生活と文化

第Ⅱ部 中世
書芸術の新展開 王羲之と顔真卿
さまざまな復元船
科挙の功罪
飲茶(喫茶)風習
唐と宋の時代の都市のちがい
「世界の記述』(『東方見聞録』)と日本
銀による世界の結びつき
イスラーム教の特質
スンナ派(スンニー)とシーア派
多民族・多宗教国家オスマン帝国
イスラーム教と男女の平等
バイユーのタペストリ
修道会のはたした役割
黒死病
ロマネスクとゴシック
東西交渉II

第Ⅲ部近代
近世とは
生物交換と「伝統文化」
伝染病の流行(黒死病・天然痘・結核・コレラ)
宗教改革とメディア
中世から現代までの戦争
移動宮廷
啓蒙思想と社会
北アメリカの先住民 ネイティヴ・アメリカン
パリの歴史
リンカンの奴隷解放宣言
民族主義と伝統文化
カースト制度の弊害
華夷思想にもとづく政治経済
中国の半植民地化

第Ⅳ部 現代
移民の流れ
やり直されたハワイ併合
東アジアのナショナリズムの一つの進路
ジャポニスムの背景
パレスチナ問題の淵源
日本の植民地統治
民族資本家の役割
北方領土問題
現代戦争とその破壊力
文化大革命
ドル・ショック
ソ連と中国の社会主義
南シナ海・東シナ海問題
EUの現状と将来

ひと
少年王 ツタンカーメン
大帝国を創設 アレクサンドロス大王
教父アウグスティヌス
儒家を批判 墨子
中国の礎を構築 始皇帝
張霧と絹の道
女性皇帝 則天武后
清朝の名君 康熙帝
尊厳で残酷 カール大帝
ローマ帝国の復興 ユスティニアヌス帝
ミケランジェロと女性
エリザベス1世と肖像画
広がる革命運動の群像
ルイ16世の知られざる素顔
人民を優先 ロベスピエール
協同組合運動の父ロバート・オーウェン
カール・マルクスとイギリス
ヨーロッパの祖母 ヴィクトリア女王
西太后の真価
孫文の関連史跡
巧妙な大衆操作 ムッソリーニ
病魔を克服 フランクリン・ローズヴェルト
ヒトラーの二面性
鋼鉄の人 スターリン
田舎のおじさん ホー・チ・ミン

新常識
黄河文明から中国文明へ
倭寇
華僑・華人・華裔
琉球王国
近代世界システム
三つのルネサンス
気候変動と「経済的旧体制」
二重革命・複合前
近代の小道具 ウィーン会議の再評価さ
イスラーム主義
西洋のアジア観 オリエンタリズム
20世紀とは何か
ポピュリズム(populism 人民王験・大衆主義・大衆迎合主義・民衆主義)
「アンネの日記」と「私は証言する」
地域主義(リージョナリズム Regionalism)
クリミヤ半島の歴史

「世界の歴史」編集委員会 (編集)
出版社 : 山川出版社 (2017/8/1)、出典:出版社HP

序章 文明の起源

人類の出現

人類が他の動物ともっとも大きくちがう点は,道具を使って労働し,生産活動をいとなむことである。人類は両足で直立し、自由になった手で道具を使って自然に働きかけ、長年月のあいだに高度で複雑な文明をきずきあげた。
歴史の研究は、この文明の発展のあとを,おもに文字の記録によりながらたどる学問であるが,人類が記録を残すようになる以前には,数百万年におよぶ長い先史時代が続いた。
最古の人類(猿人)がはじめて出現したのは、今から約700万年前のアフリカであった。約240万年前には原人とよばれるかなり進んだ人類があらわれ,さらに約60万年前,より進化した旧人が出現した。この長期のあいだに、寒冷な氷期と比較的温暖な間氷期とが数回くりかえされ,きわめてゆるやかではあったが,人類の脳容積はしだいに大きくなり,生活も着実に進歩した。この時期の人類は、洞穴や岩かげに住み,採集や狩猟によって生活し,打製石器(旧石器)を使用した。また長い経験をとおして、動物の骨や角でつくった骨角器や火の使用もおぼえ,死者の埋葬などの宗教的な風習もめばえてきた。これらの人類は,現在の人類(現生人類)と異なる種に属し,化石人類と総称されている。
現生人類(新人)は約20万年前に出現した。彼らは石刃や鉄などのするどい石器をつくり、投槍や弓矢を使用した。骨角器も銛や釣針に利用され、狩猟や漁労の獲物が増大した。彼らが獲物の多いことをねがって洞穴の壁などに描いた動物や狩猟の絵画は、人類最古の芸術品でもある。このように打製石器を使って採集・狩猟をおこなった時期を旧石器時代とよぶ。
1万年前頃から気候が温暖にむかい、海陸や動植物の分布が現在に近い状態にかわってきた。人類はこの新しい環境に適応しようと努力し,その結果磨製石器(新石器)の使用や犬の家畜化がはじまり,生活はさらに進歩した。

洞窟絵画

フランス西南部のラスコー洞窟絵画やショーヴェ洞窟絵画,スペインのアルタミラ洞窟絵画,アルジェリアのタッシリ・ナジェール洞窟絵画などには、旧石器時代の人類が描いた岩絵が残されている。これらの岩絵を描いた人びとは狩猟採集民で、野生動物を追いかけたり、植物を採集したりと,自然の恵みをもらって生きていた。その彼らがなぜ岩絵を描いたのか,その理由は明確ではない。現代人が考えるような芸術行為ではないにしても、人間が初めて他の動物とは異なった行動をとった点に大きな意
義をもっている。
スペインのアルタミラ洞窟絵画の場合、迷い犬を探していた猟師が地下に通じる狭い入口を発見したことが、岩絵の発見につながった。20頭以上の野生生,馬,鹿,イノシシなどの動物が描かれ、場所によっては人間や記号,線のようなものもみられる。
フランスのラスコー洞窟絵画の場合は、4人の少年が渓谷で迷子になった犬を探していて、小さな穴をみつけ、その穴を広げて洞窟内部の動物の壁画を発見した。このあと専門家が調査して旧石器時代のものであることが明らかになった。その数は600点余の絵,1500点余の彫刻からなり,野生牛、家畜牛,鹿などが,色をかえて描かれている。
フランス南部のショーヴェ洞窟(ショーヴェは発見した学者の名前)では,260点の動物画がみつかっており、その総数は300点をこえるとみられている。描かれている動物は、野生牛,馬,サイ,ライオンなど13種類あり,そのなかにはフクロウやハイエナやヒョウやマンモスなど、珍しい動物が描かれている。
アルジェリアのタッシリ・ナジェールの場合は、偵察していたフランス軍のラクダ部隊が岩絵の存在を報告したのがきっかけで、その後専門家が調査にはいって分析が進み、主題によって四つの時期に分類され、それぞれがサハラの気候変動を反映していることが明らかにされた。すなわち,初期の岩絵(前8000~4000年頃)は緑が豊かな環境であったことを示し、紀元前後以降の岩絵からは、馬での往来が不可能なほど乾燥化が進行したことが示されている。

農耕・牧畜の開始

人類が農耕や牧畜生活にはいったことは、自然を積極的に利用して,自力で食糧生産をはじめたことを意味し,人類の進歩にとって画期的なことであった。
最初の農耕・牧畜生活は、西アジアからはじまった。地中海東岸から北イラク・イラン西部にかけての地域には、野生の麦類や、家畜として飼うのに適した野生のヤギ・羊・豚などが存在した。そのため西アジアの人びとは、この有利な条件を利用して,前9000年頃から他にさきがけて、麦の栽培と食肉用の家畜の飼育をはじめるようになった。また磨製石器とともに土器や織物をつくり,土や日干し煉瓦の小屋をたて、集落を形成した。こうした農耕・牧畜とともにはじまる新しい時代を新石器時代といい,この大きな変化を新石器革命ともよぶ。以来今日まで,人類の生存は基本的に農耕・牧畜にささえられてきたのである。

農耕の起源

西アジアでは約1万1500年前頃から,住居が洞窟ではなく地上にもつくられるようになり、約9000年前から麦の栽培とヤギ・羊・牛などの飼育がはじまった。少し時代はくだるが、西アジアのほかにも世界の各地で農耕と牧畜がはじまった。遅くとも8000年前までには、中国の黄河流域ではアワとキビ,長江流域ではイネが栽培されるようになった。中央アメリカでは9000年前にカボチャやヘチマが栽培され、さらにトウモロコシもつくられるようになった。このほか、東南アジアや西アフリカなどでも独自にその地に適した植物の栽培がはじまった。
その最初のきっかけは、約1万4000年前頃に地球の寒冷期がおわり、温暖化がはじまったことであった。この気候変動により動植物の生息域が大きく変動した結果、繁茂する植物がある一方で、大型の動物のように移動を余儀なくされるなかで絶滅にしかし、1万2000年前頃にもう一度急激な寒冷期が到来すると,野生の有用植物の分布域が縮小し、人びとは食料不足に陥ったようである。そしてその際,西南アジアでは定住化傾向を強めていた人びとが、利用していた野生の植物をみずから植えて栽培をはじめたとされる。つまり、農耕を主とした食料生産のはじまりは、後氷期の変化する環様への対応の結果としてうまれたのである。新しい環境への適応として,野生の食材糖を節的に集が利用する生業形態を認したところで農耕の道が開かれた。
農耕の起源については乾燥によって人間・動物のオアシスへの集中が進み、人間と動植物との関係ができあがったとするオアシス起源説,流域でくらすうちに植生に詳しくなって総語がはじまったとする河川流域起源説。人口増加によって中央から周縁に流出した人びとが、野生資源の少ない土地で同レベルの生活を保つために栽培をはじめ、それがやがて中央へ帰るという周縁起源説などがある。

社会の発達

初期の農耕は,自然の雨にたよるだけで、肥料をほどこさない略奪農法であったから,人びとはひんぱんに移動する必要があり,集落も小規模であった。しかし大河を利用する灌漑農法に進むにつれて,生産は増加し人口も増大した。また大河の治水・灌漑には多数の人びとの協力が必要なため、集落の規模は大きくなり,やがて都市が形成されていった。
こうした過程とともに社会はしだいに複雑になった。もともと集落は,同じ血縁であるという意識で結ばれた氏族を単位としていたが,生産がふえ,分業が進むと,その内部に貧富や強弱の差がうまれた。
この変化は,金属器の使用の開始によってさらにうながされた。前3500年頃以後,オリエント(「東方」の意,現在の西アジア)で青銅器がつくられ,道具や武器などに使用されはじめた。そして神殿を中心に,城壁をめぐらした都市国家が成立した。生産にたずさわらない神官や戦士は貴族階級となり、そのなかから王がでて一般の平民を支配し,征服された人びとは奴隷とされて階級と国家がうまれた。また都市国家では,神殿や王への貢納や交易の記録に用いた記号から文字が発達した。このような文明の進歩は、前1500年頃はじまった鉄器の使用により,ますます急速に進むのである。

文明の諸中心

前3000~前2700年頃,農耕文化は,ティグリス川・ユーフラテス川流域に多くの都市国家をうみだし、ナイル川流域でも前3000年頃統一国家がうまれた。このオリエントの文明は東西に伝わり,西方ではエーゲ文明の発生をうながし,東方インドでも前2600年頃インダス川流域に青銅器をもつ都市国家が成立した。
また前6000年頃までに,黄河の流域ではアワなどの雑穀を中心としまた長江の流域では稲を中心として、粗放な農耕がはじまっていた。中国大陸北部の黄河流域の黄土地帯では,前5千年紀(前5000~前4001年)に磨製石斧と彩文土器(彩陶)を特色とする農耕文化がおこった。前3千年紀には大集落の都市()が形成され,黒色の三足土器(黒陶)や灰色の土器(灰陶)がさかんに使用された。
なお、アメリカ大陸では、ベーリング海峡をわたって移動したアジア系の人びとが,前1000年頃からオリエントに似た古代文明をつくった。

人種と民族・語族

人類は新石器時代にはいるころから,その居住環境によって身体の特徴のちがいがはっきりあらわれてきた。人類を身体の特徴によって分類する場合に,それを人種という。現代の人種はほぼ3種(モンゴロイド,コーカソイド,ネグロイド)にわけようとする考え方がある。しかしこれらは、現生人類(ホモ・サピエンス・サピエンス)という同一の種に属し,根本的になんらの相違もない。
人類を分類する場合に,民族という言葉を用いることもある。これは主として言語や,また社会・経済生活や習俗,すなわち広い意味での文化で分類するときに使う。一方で共通の言語からうまれた同系統の言語グループを語族とよぶ。

「世界の歴史」編集委員会 (編集)
出版社 : 山川出版社 (2017/8/1)、出典:出版社HP