日本文学の古典50選 (角川ソフィア文庫) 

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古典文学の世界が見渡せる

古典文学とは、昔の人々の「心の遺跡」と言えます。源氏物語、古事記、そして平治物語など、古典の名作が詳しくわかりやすく解説されています。節ごとに、作品の種類や巻冊数も紹介されています。日本文学史の全体の流れをとらえるのに最適な1冊です。

久保田 淳 (著)
出版社 : KADOKAWA (2020/11/21) 、出典:出版社HP

はじめに

土地の開発・再利用のために地面を掘ると、しばしば古代や中世の人々の遺跡が発見されます。そのようなことから、昔の人々の生活が具体的にわかってきて、日本の考古学や歴史学はいちじるしく発展しました。

では、昔の人々はどんなことを考え、何に喜びを見いだし、また何を嘆き悲しんだのでしょうか。それらのことを知るためには、わたくしたちは大地だけではなく、昔の人々が書き残したたくさんの古い書物の世界を掘り起こす必要があるでしょう。

日本人が物を書き残すようになった初めを七世紀初頭の聖徳太子の頃とすると、それからざっと一四世紀近く、近代の百年をのぞいても、一三世紀近くの時が流れたことになります。その間に書き残された物はおびただしい数にのぼります。それを掘り起こすなんて、気の遠くなるような作業だと思う人もいるでしょう。けれども、昔の人々の心の遺跡は、たとえば百舌鳥古墳群やピラミッドのように、このおびただしい古い書物の平野の上にそびえ立っているのです。それが古典文学です。そして、それらを発掘するためには、シャベルもブルドーザーも要りません。要るのはあなたがたの新鮮な心、柔軟な感性だけです。

この本は、そのように日本の古典文学の世界から昔の人々の心、ものの考え方や感じ方をさぐってみようと思う若い人々のための、簡単なガイドブックの役目を果たすことができればという心づもりで書かれたものです。全体は上代の文学・中古の文学・中世の文学・近世の文学の四章から成り、五○の作品ごとに節を立て、各節見出しの下には、だいたいの目星をつけるために、①作品の種類、②巻冊数、③成立年代、④作者、⑤読むのに手ごろな本(例:「新古典大系」は『新日本古典文学大系』岩波書店刊の略)の順で、要点を掲げてあります。ただ、古典文学の作品は伝わる過程でさまざまに変化することが多いので、一つの作品でも本によって違うことが少なくありません。それゆえ引用本文は⑤に示した本の本文と一致するとはかぎりません。また、なるべく読みやすい形に整えました。

作品はだいたい年代順に配列してありますが、一節一節読み切りの形なので、どの節から読んでもかまいません。なお、文学史全体の流れもとらえられるように、各章初めに概説を掲げ、巻末に略年表を添えました。このささやかな本がきっかけとなって、みなさんが直接それぞれの古典文学に親しむようになられること――それがわたくしの念願です。

一九八四年一〇月
久保田淳

久保田 淳 (著)
出版社 : KADOKAWA (2020/11/21) 、出典:出版社HP

目次

はじめに

Ⅰ 上代の文学
1 古事記
2 風土記
3 万葉集

Ⅱ 中古の文学
4 古今和歌集
5 土佐日記
6 竹取物語
7 伊勢物語
8 大和物語
9 落窪物語
10 うつほ物語
11 蜻蛤日記
12 枕草子
13 源氏物語
14 紫式部日記
15 更級日記
16 大鏡
17 今昔物語集
18 梁塵秘抄

Ⅲ 中世の文学
19 保元物語
20 平治物語
21 平家物語
22 山家集
23 新古今和歌集
24 方丈記
25 金槐和歌集
26 建礼門院右京大夫集
27 宇治拾遺物語
28 沙石集
29 徒然草
30 太平記
31 義経記
32 曾我物語
33 隅田川
34 瓜盗人
35 水無瀨三吟百韻
36 閑吟集
37 文正草子

Ⅳ 近世の文学
38 好色五人女
39 世間胸算用
40 おくのほそ道
41 冥途の飛脚
42 仮名手本忠臣蔵
43 柳多留
44 雨月物語
45 金々先生栄花夢
46 蕪村句集
47 東海道中膝栗毛
48 浮世風呂
49 南総里見八犬伝
50 東海道四谷怪談

日本古典文学史年表

各節の見出しページに紹介した本の略称の正式書名は次のとおりです。
・「新古典大系」は『新日本古典文学大系』(岩波書店刊)
・「新古典全集」は『新編日本古典文学全集』(小学館刊)
・「古典集成」は『新潮日本古典集成』(新潮社刊)
・「ソフィア」は角川ソフィア文庫(KADOKAWA刊)
・「BC」は角川ソフィア文庫ビギナーズ・クラシックス(KADOKAWA刊)

久保田 淳 (著)
出版社 : KADOKAWA (2020/11/21) 、出典:出版社HP