学校では教えてくれない日本文学史

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エンターテイメント日本文学史

「徒然草」「源氏物語」「古事記」など、日本文学の数々の名作が現代に至る流れに重視して解説されています。教科書で軽く触れた程度で内容を忘れてしまったような作品も、もう一度読み直したくなります。日本文学の入門の入門書です。

清水 義範 (著)
出版社 : PHP研究所 (2013/9/4) 、出典:出版社HP

まえがき

日本文学について、気楽なよもやま話をしてみようと思う。文学論をこねくりまわす、という感じにはならないようにして、名作の楽しみ方をあれこれとりざたしてみよう、という計画だ。その作品を読んでいる人にとっては、うん、あそこは面白かった、と合点してもらえるような、読んでいない人にとっては、そんなにいいのなら読んでみようかな、という気がしてくるようなおしゃべりを、心のおもむくままにやってみるのだ。

本書は、PHP新書の『身もフタもない日本文学史』を底本としている。この程度の分量の本で日本文学を語るなんてことは到底無理なのだけれども、そこを思いきってえいやっとやってしまおう、というところから、『身もフタもない日本文学史』という書名にしたのだが、文庫化にあたって改題した。

『学校では教えてくれない日本文学史』のほうが、とっつきやすさが感じられていいと判断したためだ。日本文学に対して、臆することなくずかずかと接近してみよう、という狙いもあるのである。
文庫化にあたって、第一章と、第十一章を、書き下ろしてつけ加えた。いちばん古い「古事記」と、いちばん新しい現代文学も入っていたほうが、より完全な日本文学史になると考えたためである。
私は本書の中で、エッセイ文学というのはジジイの自慢話だ、とか、江戸庶民文学は今日のケータイ小説に似ているとか、大ざっぱに決めつけている。

だが、早わかりの入門書なんだから、そういうわかりやすい決めつけもまたよかろう、と判断しているのだ。私がここでやろうとしていることは、日本文学史を私なりにわかりやすく畳んで、ポケットに入るぐらいの大きさにしてみよう、ということだ。

そんな大づかみなやり方で、日本文学の特徴は何かとか、日本文学の値打ちはどんなところにあるのか、などのことをゆるゆると考えていきたいと思っている。

*引用の際、旧字体の漢字は新字体に改め、注釈の番号などは省略し、一部レイアウトを改めました。また、一部に読みがなを加えました。

清水 義範 (著)
出版社 : PHP研究所 (2013/9/4) 、出典:出版社HP

目次

まえがき

第一章 「古事記」はただものではない
まず神が生まれるところから始まる神話
国を生み、すべてを生んでいく
スサノヲやオホクニヌシの物語
ヤマトタケルは全国平定の英雄
「古事記」は日本人の原型の文学

第二章 「源氏物語」のどこが奇跡か
「源氏物語」千年紀
華麗から悲哀までさまざまの恋
中国文学に学んでいるに違いない
敬語表現で書かれている不思議
民族の教養としての古典

第三章 短歌のやりとりはメールである
短歌は恋の駆引き
短歌を処理するさまざまな方法
パロディにした「源氏物語」
メールも短歌も心が躍る
デリケートなコミュニケーション

第四章 エッセイは自慢話だ
「枕草子」はセンス自慢
「方丈記」には主題がある
「徒然草」はエッセイの見本
兼好は世の中を叱る
男は兼好、女は清少納言になる

第五章 「平家物語」と「太平記」
滅びの美に日本人は弱い
軍記文学の名作
南北朝時代は大混乱期
「太平記」は欲望の文学
「平家物語」は能、「太平記」は歌舞伎

第六章 紀行文学は悪口文学
日本の紀行文学は陰
西行といえば漂泊の人
さすらう歌人の元祖は紀貫之
田舎の悪口を言う美意識
「坊っちゃん」は紀行文学?

第七章 西鶴と近松——大衆文学の誕生
「好色一代男」はパロディだった
町人の文学を創始
庶民を描く最初の戯曲
心中を恋愛悲劇と見る
大衆を描く文学の力強さ

第八章 「浮世風呂」はケータイ小説?
言葉遊びの名人、十返舎一九
庶民の旅への憧れもすくい取る
式亭三馬は会話を書かせて当代一
人情本の為永春
水もケータイ小説?
曲亭馬琴は日本最大の伝奇作家

第九章 漱石の文章は英語力のたまもの
世界に出せる日本文学は?
漱石は現代の文章を創った
新時代の文学を模索
英文学が下敷きにされている
森鴎外は知的で真面目すぎる

第十章 みんな自分にしか興味がない
自然主義文学が曲がり角だった
白樺派も自分のことを書く
芥川と海風と谷崎
川端康成は変態作家なのか
太宰と三島の類似点

第十一章 戦後文学史は百花繚乱
まずは戦争文学が出現した
アヴァンギャルドと第三の新人
華々しいスター作家たちの活躍
直木賞作家の重要な仕事
日本文学はまったく衰退していない

第十二章 エンターテインメントも文学の華
時代小説とは何か
キラ星の如き時代小説家たち
江戸川乱歩は二面性の人
SFの始まりと大きな広がり

装丁——bookwall
写真— ©️MACHIRO TANAKA/SEBUN PHOTO/amanaimages

清水 義範 (著)
出版社 : PHP研究所 (2013/9/4) 、出典:出版社HP