ゼロからわかる虚数 (角川ソフィア文庫)

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虚数についてゼロから理解する

本書は、虚数について、基礎の基礎から複素関数と微分・積分に至るまで解説しています。書名のとおりゼロからでも虚数について理解できるようになっており、特に前半の実数と虚数の基本的な説明はやさしく説明されているため、虚数についてゼロから学びたい方や苦手意識を持っている人でも理解することができます。

深川和久 (著)
出版社 : KADOKAWA (2017/4/25) 、出典:出版社HP

はじめに

本書のヒロインは「虚数」です。
虚数とは、高校1年のとき、2次方程式の解の公式に出てくる、√の中が負になったとき、「虚根」として習うものでした。つまり、新しい数iとして、2乗すると-1となる虚数単位i(i=√-1)とおくものでした。
本書の前半(第1章~第2章)では、「虚数」の登場から認められるまで、裏切りあり、波乱万丈の歴史ドラマを認められるまで淡々と描いたものです。もちろん、負の数、自然数、小数、分数、無理数など名脇役も登場します。どうしてヒロインかというと、名前が「i(アイ)」だから?
ドラマはヒロイン「虚数」が皆に受け入れられて、ハッピーエンドで終わっています。しかし、後日談がありました。このヒロインはヒロインだけあって、関係ないものどうしを結びつける不思議な力を持っていました。
本書の後半(第3章~第4章)では、そのような不思議な力をできるだけ難しくならないように、述べました。

「虚数i」の持つ不思議な結びつける力とは、なんたって、

実数と虚数を結び、新しい数の複素数を産んだこと、
さらに、新しい複素関数を産んだこと、

そして、名場面、オイラーの公式が発見されるというクライマックスが続くのです。
この公式、
e^ix=cos⁡x+i sin⁡x
によって、指数関数と三角関数が思いがけず、結びついたのです。
この公式xにπに代入すると、
e^iπ=-1
となり、式にe、i、π、-1、という、主役級の4大スターの数字が奇跡的に一緒に登場する式を得られたのです。
ちなみに15年ほど前の本屋大賞、小川洋子さんのミリオンセラー小説『博士の愛した数式』では、この数式が大活躍しました。

私ごとで恐縮ですが、大病ののち、小春日和の午後のつれづれ、こころあたりのない差出人から宅配便が届きました。KADOKAWAの堀由紀子さんという人からで、私がベレ出版より以前出版しておりました本の文庫化のお誘いでした。このお誘いをありがたく引き受けました。単行本から文庫へと結び付けてくれたのも、虚数なのでした。最初は、縦組みの書籍ということで不安もありましたが、彼女や校正の方の尽力を得て、無事に出版にこぎつけることができました。
最後に、「虚数i」の不思議な力が、いまこの本を手に持っている人とこの本書を結びつけるように願っています。

深川和久

深川和久 (著)
出版社 : KADOKAWA (2017/4/25) 、出典:出版社HP

ゼロからわかる虚数 目次

はじめに

第1章 虚数は本当にウソの数か?―ヒーローとしての虚数
01 虚数とはどのようなものか~2乗してマイナスになるとなぜいけない?
・虚数との出会いと別れ
・虚数は本当にありえない数か?
・数への信奉
02 実数の側の状況はどうか〜実数はどれくらい「まっとうな」数か?
・実数にはどういうものがあるか
・自然数について
・分数について
・自然数の崇拝と無理数について
・小数について
・結局実数にもいろいろとわけがある

第2章 虚数はこうして認められた!―虚数の誕生事情
03 負の数と虚数の生い立ちと定着まで~方程式から芽が出て成長した
・負の数と虚数
・負の数が認められるまで
・3次方程式と虚数
・虚数の定着
・図形的裏づけ

第3章 これが虚数のナマの姿だ!―虚数と複素数の世界
04 複素数と複素数平面~複素数の基本的性質を調べる
・虚数から複素数へ
・複素数の計算と複素数平面
・座標平面―ベクトルと平面—複素数平面
・実数と複素数のちがい
・複素数の性質のまとめ
05 複素数の乗法と回転~複素数をかけること
・特別な角の複素数をかけると
・極形式とは?
・ド・モアブルの定理(n乗)とn乗根
・オイラーの公式
・複素数の計算と図形
06 複素数とはどういう数か~複素数を超える数は存在するか
・実数を超えるただ1つの数字
・四元数と八元数

第4章 複素関数の微分・積分―実数と複素数の微分・積分のちがい
07 複素関数の微分~複素関数の微分の強い性質
・複素数に広げることの意味
・実数の関数と複素関数の微分の定義
・テイラー展開
・再び複素関数の微分
・複素関数の微分可能性は強烈!
08 複素関数と積分~計算を超える奇妙な性質
・実数の積分
・面積分と線積分
・複素関数の積分

文庫のおわりに
参考文献
索引

深川和久 (著)
出版社 : KADOKAWA (2017/4/25) 、出典:出版社HP