現代日本の政治 持続と変化

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現代日本の政治を多面的にみる

本書は、現代日本の政治において、その持続する側面と変化する側面の双方に配慮しつつ、可能な限り多面的に考察された一冊となっています。総論として、戦後70年間の日本政治を基本的論点を軸に俯瞰したのち、各論として、政治における主要な主体や、政治活動を行う主要な場について、その動態を記す構成となっています。

森本 哲郎 (著, 編集), 堤 英敬 (著), 小西 秀樹 (著), 山口 裕司 (著), 松並 潤 (著), 白崎 護 (著), 岡本 哲和 (著), 武蔵 勝宏 (著), 小倉 慶久 (著), 辻 陽 (著)
出版社 : 法律文化社 (2016/4/20) 、出典:出版社HP

はじめに

本書は、現代日本の政治について、その持続する側面と変化する側面の双方に目を配りつつ、できる限り多面的に考察しようとしたものである。このような観点から、本書では、まず序章において、総論として戦後70年間の日本政治をいくつかの基本的な論点を軸に俯瞰する。続いて、各論として「第Ⅰ部 政治の主体」(全5章)で、政治における主要な主体について論じ、「第Ⅱ部 政治の場」(全6章)で、これらの主体が政治活動を行う主要な場について、その動態を描く。なお、ここで「現代」というとき、1945年の大戦終結から今現在までを指すものと理解されたい。基本的に日常の常識的な感覚にしたがったものだが、序章で見るように、政治学的にも妥当だと考える。
ところで、若い読者にとっては非常に奇異に思えるかもしれないが、日本の政治学者による「現代日本政治」の学術的研究が本格化するのは、1980年前後あたりからであろう。1960年代末の時点ではまだ、ある外国の日本政治研究者が次のような「驚き」を書いていたほどであった。

「日本の学者は、西欧の最新の社会諸科学の方法や理論に次第に通暁するようになってきてはいるが、若干の顕著な例を除けば、あまり現代政治に学問的な関心を払っていない。日本語の知的な雑誌や定期刊行物に現われた、現代的な政治問題に関する厖大な数の論文は、そのほとんどがジャーナリスティックなものであるか、イデオロギー的な色彩を帯びたものであるか、あるいは政策表明的なものである。アメリカの大学のカリキュラムにおいて現代アメリカ政治がきわめて重要な地位を占めているのとは非常に違って、日本[の大学]では戦後の日本政治を取り扱うコースは事実上まったくない。日本の内外においてこのように日本の現代政治の学問的分析が軽視されていることは、豊富に得られる資料、および根本的に新しい政治諸制度の下での全般的な経済的・社会的変化の試練の中にある政治体制というものにそなわっている面白さという点から見て驚くべきことである」(D.C.ヘルマン(渡辺昭夫訳)『日本の政治と外交—日ソ平和交渉の分析』(中央公論社、1970年:原著は1969年)3頁)。

このような状態は、しかしながら、1980年代後半になると次のように描かれるまでに変化してくる。

「変わる政治学については、つぎのエピソードが、多くのことを語っているのでなかろうか。アメリカ人を中心として、日本政治の専門家がしばしば来日するが、彼らに、「日本の政治は変化が早いから、毎年来ないとその変化に追いつけないのではないか」と尋ねると、ほとんど全員が、「そうではなく、日本の政治学者の研究をフォローするためにやってきている」と答える。ここ数年における、日本の政治学者の日本についての研究の質と量はかなりのものであると考えた方が正しいであろう」(曽根泰教「変わる政治、変わる政治学—日本政治学の最近の変化」レヴァイアサン1月(1987年)162頁)。

このように第一線の研究において、日本の政治学者自身による日本政治の学問的研究が著しく発展した結果、1980年代半ば頃から、多くの大学で、かつてのように、もっぱら外国の政治を紹介したり、抽象的な理論の解説に終始するのではなく、主目的は日本政治を学問的に講義する(そのなかで理論や外国の事例を説明する)、という授業が一般的になる。
これとともに、日本の政治学者による、日本政治についての体系だった概説書が次々と刊行されるようになってきた。日本政治研究を専攻する政治学者であっても、研究の細分化と高度化の著しい昨今、自分が直接専門としない領域にまで精通するのは並大抵のことではない。そのような場合に、日本政治を主題とした体系的概説書が多様に存在することは、編者自身の狭い経験から言っても、政治学者にとって寄与するところがたいへん大きいと思う。本書もこのような役割を果たすことを願って編まれたものである。

最後に本書刊行の経緯について触れておきたい。ちょうど10年前の2006年に『シリーズ日本の政治』(全4巻)の第4巻として『現代日本の政治と政策』(以下、前著)を描編著で刊行した。幸いにして版を重ねることができ、また日本政治論の教科書等で推薦図書にあげていただくなど、一定の手ごたえを感じることができたのは編者としてたいへん嬉しいことであった。今回、この前著をベースとしつつ、この間の日本政治の展開と政治学研究の進展をふまえて相応の改訂を施すとともに、新しくいくつかの章を設けることで、現代日本政治をさらに多面的に理解できるように工夫を凝らした。また執筆者にも若い世代の研究者に加わっていただいた。前著の一部改訂版ではなく、判型もあらためて、新刊書として出版した次第である。この場を借りて、前著刊行にあたってご協力いただいた方々にあらためて御礼を申し上げるとともに、編集・出版に際して今回もお世話になった法律文化社編集部の小西英央氏、また新たに編集実務を担当し、編者の様々な要望に丁寧に対応して下さった上田哲平氏に心から御礼申し上げたい。

2016年1月
森本哲郎

森本 哲郎 (著, 編集), 堤 英敬 (著), 小西 秀樹 (著), 山口 裕司 (著), 松並 潤 (著), 白崎 護 (著), 岡本 哲和 (著), 武蔵 勝宏 (著), 小倉 慶久 (著), 辻 陽 (著)
出版社 : 法律文化社 (2016/4/20) 、出典:出版社HP

目次

はじめに

序章 「現代日本の政治」をどう論じるのか: 「戦後70年」の意味
1 はじめに
2 戦後改革の意義
3 「55年体制」の形成と崩壊
4 ポスト「55年体制」: 「新しい体制」の成立?

第Ⅰ部 政治の主体

第1章 政党と政党システム
1 はじめに
2 政党の形成とその目標
3 政党システムの形成と変容
4 組織としての政党
5 政党の今後

第2章 利益団体
1 はじめに
2 大衆社会と利益団体
3 戦後日本政治と利益団体
4 利益団体政治の現在

第3章 新しい政治のなかの市民運動
1 はじめに
2 「新しい政治」とは何か
3 エコロジーをめぐる政治過程
4 ジェンダーをめぐる政治過程

第4章 首相のリーダーシップ
1 はじめに
2 岸信介首相: 初期55年体制の波乱
3 田中角栄首相: 60年体制の形成
4 小泉純一郎首相: 60年体制の破壊へ
5 おわりに

第5章 官僚
1 はじめに
2 公務員
3 官僚優位論と政党優位論
4 官僚の役割は何か?

第Ⅱ部 政治の場

第6章 選挙と投票行動
1 はじめに
2 投票行動の理論
3 現代日本の選挙制度と投票行動
4 実証分析

第7章 政策過程
1 はじめに
2 政策過程とは何か
3 課題設定
4 政策決定
5 政策実施
6 政策評価
7 政策終了

第8章 国会
1 はじめに
2 民主主義の2つのモデル
3 日本の国会は多数決型かコンセンサス型か
4 ねじれ国会は国会審議にどのような影響を及ぼしたか
5 与党多数支配下での安全保障関連法案の国会審議
6 日本の国会の機能をどう位置づけるか
7 おわりに: 機能する国会に向けて

第9章 司法
1 はじめに
2 裁判所
3 検察
4 弁護士
5 結びにかえて: 未完の司法制度改革

第10章 地方政治
1 はじめに
2 二元代表制と地方の選挙制度
3 知事選挙から見る戦後日本の地方政治
4 地方政治のダイナミズム
5 おわりに

第11章 政治と情報
1 はじめに
2 政治と情報との関係
3 マスメディアと政治
4 インターネットと政治

索引
執筆者紹介

森本 哲郎 (著, 編集), 堤 英敬 (著), 小西 秀樹 (著), 山口 裕司 (著), 松並 潤 (著), 白崎 護 (著), 岡本 哲和 (著), 武蔵 勝宏 (著), 小倉 慶久 (著), 辻 陽 (著)
出版社 : 法律文化社 (2016/4/20) 、出典:出版社HP