『鬼滅の刃』流 強い自分のつくり方

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鬼滅の刃で自己啓発

本書は、鬼滅の刃から、心の持ち方や自分を強くするための考え方について説明している本です。著者は、心理学の専門で、カウンセラーや講師をしています。そんな著者が、現代で忘れられがちなものを鬼滅の刃で分かりやすく伝えることで、よりよい生き方を理解しやすくしています。

井島由佳 (著)
出版社 : アスコム (2020/4/18)、出典:出版社HP

はじめに

私は、息子が『鬼滅の刃』を教えてくれたとき、なんてすごいマンガなんだと衝撃を受けました。
そして、学生や若い人たちには必ず読んでほしいと思いました。

それは、こんなにも、親や教師が伝えたいメッセージが、熱く、わかりやすく詰め込まれたマンガは、ほかにないからです。

私たちが生きている現実世界は、過酷です。
思い通りにならない。
やりたいことは自由にできない。
欲しいものはすぐに手に入らない。
自分はなんて弱いんだ、もうダメだと思い知らされることが多いことでしょう。

生き抜くためには、強い自分をつくりなさい、とよくいわれると思います。
でも、どうすれば強くなれるのか、多くの人が教えあぐねています。それは、誰も「こうすれば強くなれる!」とはっきりと答えられないからでしょう。

『鬼滅の刃』では、それがすっきりとわかりやすく示されます。

『鬼滅の刃』が教えてくれる「強さ」とは

どうすれば、人は強くなれるのか。
強いといわれる人は、どうふるまうのか。何を考えているのか。
キャラクターを通して、描かれます。

たとえば、主役の竈門炭治郎。

彼は、本当に強い人です。
でも、炭治郎は、力や技だけが強いわけではありません。

炭治郎の強さは、炭治郎の人となりが支えています。

たとえば、自分に厳しく、他人に優しくできるところ。良いと思うことに対しては「良い」、悪いと思うことに対しては「悪い」とはっきり言えるところ。とにかく家族思いで、仲間思いなところ。それでいて、人間の敵である鬼に対してまでも慈悲の心を持っているところ。恨まない。妬まない。引きずらない。素直で、純粋で、ひたすら相手の良い部分を探し、そこに目を向け、認めようとするところ……。
だけど、パーフェクトな人間ではなくて、弱い面もあるし、天然ボケなところもあって憎めない。

そう、炭治郎は、ふつうの子です。だけど、世の中を生き抜くための強さを、ほとんどすべて持っているのです。詳しくは本文で説明しますね。

炭治郎の必殺技や攻撃は現実にはまねすることはできませんが、心の持ち方や自分の高め方は、私たちもまねできます。

『鬼滅の刃』には、ほかにも、魅力的なキャラクターがたくさん登場します。印象的なセリフを言って、まねしたくなるかっこいい行動をします。
ストーリーがおもしろいだけでなく、キャラクターそれぞれに強い個性があって、人生のお手本にしたいと思わせるところも、この作品が幅広い層の心をつかむ一因となっているのです。

ファンタジーだけどファンタジーではない。

『鬼滅の刃』には、リアルに通じる教えが、描かれています。

大人も子どもも、みんなが誰かに教わりたかった、強く生きるための教えが、このマンガには詰まっています。
だから、みんなの心に刺さり、みんなを熱くさせるのです。

『鬼滅の刃』は、2016年の春に『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載がスタートしました。2019年4月から始まったアニメをきっかけに人気に火がつき、今では“国民的マンガ”のひとつに数えられるほどになりました。
社会現象も巻き起こし、コミックスや関連グッズは飛ぶように売れ、原作シリーズの累計発行部数は4000万部(2020年1月時点)を突破。アニメの主題歌『紅蓮華』も大ヒット。コスプレはもちろん、髪色や髪形をまねするなど、キャラクターになりきりたいと思うファンたちが続出しています。

“鬼滅ブーム”の勢いはとどまるところを知りません。
このブームは必然だったと、私は思います。

理不尽な現実は変えられないからこそ
前を向く炭治郎の強さ

『鬼滅の刃』の舞台となっているのは大正時代の日本。
炭治郎は亡くなった父親の跡を継ぎ、山で伐採した木を炭にして売る仕事に精を出しながら、長男として一家を支えていました。
そんなある日、炭治郎がふもとの町に炭を売りに行っている間に家族が鬼に襲われ、母親と4人の弟、妹たちが殺されてしまいます。ひとつ年下の妹の禰豆子だけは生き残ったものの、鬼の血が体内に入ったことで鬼化してしまっていました。

なんとかして妹を助けたい炭治郎は、鬼を狩る鬼殺隊という組織の冨岡義勇と出会い、禰豆子を人間に戻す方法を見つけるために鬼と対峙することを決意します。そして、鬼殺隊の剣士の育成役を担う“育手”の鱗滝左近次のもと、厳しい修行に励み、死と隣り合わせの過酷な試験を乗り越え、鬼殺隊の一員に加わることが認められます。

炭治郎は、千年以上も前から生き続けている鬼舞辻無惨という鬼が禰豆子を人間に戻す方法を知っているかもしれないと教えられ、そこにたどり着くために同期や「柱」と呼ばれる鬼殺隊の精鋭部隊の剣士たちと切磋琢磨し、力を合わせながら、鬼舞辻の手下の鬼たちと壮絶な戦いを繰り広げていきます。
果たして炭治郎は、鬼舞辻を倒すことができるのか?
禰豆子を人間に戻すことに成功するのか?
これが、『鬼滅の刃』のおおまかなストーリーです。

物語の大きな見どころは、さまざまな人々との出会いや、鬼たちとの戦いを経験しながら、人間として成長し、強くなっていく炭治郎の姿。
立ちはだかる壁が大きくなればなるほど戦いは厳しくなりますが、なにごとにも正々堂々と挑み、最後まであきらめない姿勢を崩さない炭治郎は、自然と見る者を応援したくなる気持ちにさせます。

炭治郎が直面する現実は、理不尽なことだらけ。
普通の精神の持ち主であったら、途中で心が折れてしまってもおかしくありません。貧しくとも幸せに暮らしていた家族が、鬼の欲を満たすためだけに惨殺されるところから始まるわけですから。ゼロからどころか、大きなマイナスからのスタート。それでも、炭治郎は前を向き続けます。

そして、そんな彼の言動や行動は、問題を解決したり、状況を好転させたりするためのヒントに満ちあふれています。
みなさんも日常生活で、大なり小なり理不尽に感じる場面に遭遇することがあると思います。

たとえば、
・言われた通りにやったのに、間違っていると怒られた
・どこにも落ち度がないのに、笑顔が足りないと怒鳴られた
・大切にしていたものを、友達にこわされた
・みんな時間を守れなかったのに、自分だけ注意された
・約束していたのに、連絡もなくドタキャンされた

そんなとき、怒りを覚えたり、イライラしたり、とかく熱くなってしまうのが人間というもの。炭治郎も、家族や仲間が鬼に傷つけられたときはおおいに怒ります。
しかし、彼はそこから不屈の精神で、その怒りを原動力にポジティブな思考に切り替えます。決してほかを責めたり、投げやりになったり、やけになったり、あきらめたりしません。必ず突破口を見つけ、強くなるための原動力に変えるのです。
それは、自分の力不足がまねいた失敗やピンチに関しても同じ。なにがダメだったのか。どうすればうまくいくのか。常にそこに意識を向けるのが、炭治郎なのです。だから、強くなるのです。
「失っても失っても生きていくしかないです どんなに打ちのめされようと」
(2巻第8話「お前が」より)

これは、婚約者が鬼に喰われたことを知り、ショックで自分を見失った状態になっている和巳という青年に、炭治郎がかけた言葉です。
相手のことを気づかいつつも、ここで立ち止まらずに前を向くことの重要性を、自分にも言い聞かせるように説いています。

理不尽な現実は変えられないことを受け入れ、それに絶望せずに次の一歩を踏み出そうとする、炭治郎の強さをまさに象徴しているセリフといえるでしょう。

炭治郎たちが教えてくれる
現代人が忘れかけた日本人の強さと美しさ

私の専門は心理学で、大学で教えています。また、カウンセラーや講師として、中学・高校・大学や自治体・企業のセミナーを通じ、キャリアデザインやチームビルディングに関する講義も行っています。
その際、マンガのキャラクターやエピソードを活用することがあり、『鬼滅の刃』を題材にするケースも少なくありません。
炭治郎と、彼をとりまく人たちの生き方、考え方、関係性は、私たちが生きていくうえで大切なこと、良好な人間関係を築くうえで必要なことを教えてくれます。
以前学生に対して行ったアンケートに「影響を受けたマンガとその理由」という設問を用意したところ、次のような回答がありました。

学生A「回答 : 鬼滅の刃 理由 : 家族とか、友達をあんなに大事にするという、当たり前のことを、当たり前にできている炭治郎がすごいと思った」
学生B「回答 : 鬼滅の刃 理由 : 当たり前と思っていることをしなければいけないということを、教えてもらった」

炭治郎を中心にした登場人物たちの言動、立ち居ふるまいは、現代人が忘れかけているけれど、実は当たり前のこと、やって然るべきことが多いのです。
舞台が大正時代ということもあり、古き良き日本人の美しい心を大切にしているところが感じられます。

目標達成には努力の積み重ねが欠かせないこと。
人間は決して1人では生きていけないという現実。
相手を認め、敬い、大切にしようとする姿勢の重要性。
『鬼滅の刃』は、私たちが当たり前のように思っていながらも、ふだんなかなか意識することのできない“人生の真理”のなんたるかを、人間の強さをこれでもかというほど示してくれます。

私は、この本を通して、『鬼滅の刃』に込められたメッセージをひも解き、みなさんへお伝えするガイドとなれれば、と思っています。
炭治郎や禰豆子、善逸、伊之助、鬼殺隊の柱たちの印象的なセリフやシーンはもちろん、お手本にすべきでない反面教師として、鬼舞辻をはじめとする鬼たちの言動も紹介します。正義と悪を対比することで、炭治郎たちの強さがいっそう引き立つと思います。

・明確な目標を持てないまま生きている
・なにかに挑戦する前からあきらめることが多い
・コツコツと努力することが好きでない
・ネガティブ思考だという自覚がある
・他人とコミュニケーションをとるのが苦手
・ものごとはすべて自分中心に考えてしまう
・なにかにつけて「自分は悪くない」と思いがち
・他人から嫌われないために本音を隠し、忖度してばかり
・自分は不幸だと思っている

これらにひとつでも該当する人、あるいは「そうなりたくない」と思う人は、ぜひ最後まで目を通してください。
炭治郎が、そしてその仲間たちが、今よりももっと強い自分と、希望と達成感に満ちた人生を、きっとあなたにもたらしてくれるでしょう。

みなさんが強い自分を手に入れて、どんな困難に直面しても、自分の手で未来を切り開き、夢をかなえるための一歩を踏み出すお手伝いができれば、幸いです。

鬼滅の刃の対立図

井島由佳 (著)
出版社 : アスコム (2020/4/18)、出典:出版社HP

本書で紹介する『鬼滅の刃』のストーリーの主な登場人物

○(隊士)竈門炭治郎
『鬼滅の刃』の主人公。嗅覚にすぐれている。鬼に襲われた家族のなかで唯一生き残ったが、鬼化してしまった妹を人間に戻すために鬼殺隊の剣士となる。家族思いで心優しい炭売りの少年は、厳しい鍛錬と鬼との戦いを重ねることで、心身ともに強い剣士へと成長する。

○(鬼)竈門禰豆子
炭治郎の妹。襲われたときに鬼舞辻の血が体内に入ったことで鬼化するが、ほかの鬼と異なり人間を襲うことはなく、炭治郎とともに鬼と戦い、人間を守る。また、禰豆子は日の光を克服した唯一の鬼でもある。

○(隊士)我妻善逸
炭治郎の最終選別時の同期で、驚異的な聴力を持つ。ふだんは弱気なヘタレだが、恐怖から眠りに落ちると覚醒し、強靭な脚力で上弦の鬼をも圧倒する。

○(隊士)嘴平伊之助
炭治郎の最終選別時の同期で、並外れた鋭い触覚を持ち、誰かれかまわず勝負を挑む猪突猛進タイプ。常に猪のかぶりものをし、二本の刀で鬼と戦う。

○(育手)鱗滝左近次
鬼殺隊への入隊希望者に剣士の基本をたたき込む「育手」。炭治郎の育手が鱗滝である。中途半端な鍛錬では鬼を狩れないため、炭治郎に課される修業はとにかく厳しかった。最後に炭治郎に与えた課題は、自分より大きな岩を斬ることだった。

◉(柱)冨岡義勇(水柱)
鬼殺隊のなかで最も早く炭治郎と会ったのが義勇である。炭治郎の剣士としての道は、義勇が禰豆子と共に炭治郎を見逃し、鱗滝に預けたことから始まる。鬼化した人間を斬らないという行為は、鬼殺隊の重大な隊律違反だった。

○(継子)栗花落カナヲ
胡蝶しのぶの継子。炭治郎の最終選別時の同期で、炭治郎たちをしのぐ身体能力と観察眼を持つ。自分の意志で行動することができなかったカナヲだったが、炭治郎によって大きく変わる。

○(隊士)不死川玄弥
炭治郎の最終選別時の同期で、風柱・不死川実弥の弟でもある。炭治郎たちに強烈なライバル心を持っていた玄弥だが、炭治郎と共に戦うことで心を開いていく。

◉(柱)煉獄杏寿郎(炎柱)
上弦の参との戦いのなかで、炭治郎たちに鬼殺隊の柱としての矜持とは何かを伝え散っていった杏寿郎。最後に残した言葉は「俺は信じる 君たちを信じる 心を燃やせ」。その思いは、後に杏寿郎の弟から渡された杏寿郎の日輪刀の鍔とともに炭治郎に託される。

◉(柱)胡蝶しのぶ(蟲柱)
柱のなかで唯一、鬼の頸を斬れないしのぶは、毒を使って鬼を倒す剣士である。禰豆子と初めて会ったときは義勇と同じように狩ろうとしたが、裁判を経てからは2人を応援する立場をとる。そして炭治郎に、亡き姉から継いだ自分の夢を託す。

井島由佳 (著)
出版社 : アスコム (2020/4/18)、出典:出版社HP