いちばんやさしい量子コンピューターの教本 人気講師が教える世界が注目する最新テクノロジー (「いちばんやさしい教本」シリーズ)

【最新 – 量子コンピュータについて学ぶためのおすすめ本 – 基礎知識から将来像まで】も確認する

量子コンピューターの基本がわかる

本書は、量子コンピューターの初学者向けに、量子コンピューターの基本的な知識をわかりやすく解説している本です。量子コンピューターと従来のコンピューターとの違い、量子コンピューターのしくみなど基本的な内容に加えて、プログラミング言語を使った体験などもあり、入門書としては、充実しているでしょう。

著者プロフィール

湊雄一郎
東京都生まれ。東京大学工学部卒業。
隈研吾建築都市設計事務所を経て、2008年にMDR株式会社設立。2017~19年内閣府ImPACT山本プロジェクトPM補佐を務める。
研究分野・テーマはイジングモデルアプリケーション、量子ゲートモデルアプリケーション、各種ミドルウェアおよびクラウドシステム、超電導量子ビット。
受賞歴は2008年環境省エコジャパンカップ・エコデザイン部門グランプリ、2015年総務省異能vation最終採択など。

本書の内容は、2019年4月20日時点の情報にもとづいています。
本文内の製品名およびサービス名は、一般に各開発メーカーおよびサービス提供元の登録商標または商標です。
なお、本文中にはTMおよび®️マークは明記していません。

はじめに

量子コンピューターに興味を持つ理由は人それぞれかと思います。量子コンピューターそのものに興味があったり、計算や研究に興味があったり、周辺で流行っていたり、次世代の技術に興味があるなどさまざまでしょう。本書はその中でも「実際に量子コンピューターを利用して、現実にある課題を解きたい」という思いが出発点になっています。AIやコンピューターが発展する中で徐々に現在の技術の限界が見えてきています。そのような限界を迎える前に次世代の課題を解決する方法が見つかってきており、その方法の1つとして量子コンピューターがあります。

筆者が量子コンピューターに取り掛かるきっかけとなったのは金融工学です。金融計算では多くのシミュレーションを行いますが、現在の技術では、たくさんのコンピューターを並列に並べて多くの電力を消費しながら計算を行います。金融計算はビジネスとして儲けを出すという機能のほかに、社会のあらゆる取引を正常化し、安定させるという機能を持っています。現在の世の中の多くの取引や経済活動は膨大な計算資源のもとに成り立っており、そのような計算資源が高騰しコストが上がりすぎると私たちの生活にも多くの影響を与えます。そんな中「量子コンピューターを導入して、縁の下の力持ちで豊かな生活を支えていければいいな」と思ったのが筆者が量子コンピューターをはじめたきっかけでした。ぜひ量子コンピューターを日々の生活に問接的・直接的に影響する身近なものとして捉えていただければと思います。

本書では量子コンピューターの初学者向けに、必要最低限の知識をできるだけわかりやすくまとめるということを心がけました。量子コンピューターに対する誤解や苦手意識をなるべく取り除くとともに、これから産業に応用されていく段階を踏まえ、学術的な厳密性よりも使いやすさに加えて現実的な実用性を重視して解説しています。本書が学術界、産業界のそれぞれの片方の視点からだけでなく、それらを含めた広い視点で物事を捉えるきっかけになれば幸いです。

2019年4月 凌雄一郎

Contents
目次

著者プロフィール
はじめに

Chapter1 量子コンピューターで変わる社会
Lesson
01 量子コンピューターのインパクト
02 従来式コンピューターの限界
03 量子コンピューターを支える「量子」とは?
04 量子コンピューターの種類
05 課題から読み解く量子コンピューター
06 量子コンピューターが期待される分野
07 量子コンピューターを導入するには
08 成長戦略としての量子コンピューター
COLUMN 量子コンピューターに数学は必要?

Chapter2 そもそも「量子」とは?
Lesson
09 量子の性質を知ろう
10 量子の性質を検証する「二重スリット実験」
11 量子力学から量子情報科学へ
12 見えない量子の演算を「見える化」する
13 量子の操作によって計算する
14 量子コンピューターはなぜ高速に計算できるのか
COLUMN 量子コンピューターの研究はいまも進行中

Chapter3 原理からひもとく量子コンピューター
Lesson
15 コンピューターの仕組みを知ろう
16 量子コンピューターの演算装置「QPU」
17 コンピューターの情報単位「ビット」を理解しよう
18 演算の仕組みを理解しよう
19 量子コンピューターの計算単位「量子ビット」
20 量子コンピューターでの計算の流れ
21 基本的な量子ビット操作を行う量子ゲート
22 少し高度な操作を行う量子ゲートを理解しよう
23 量子コンピューターで足し算をする
24 量子ビットの結果の見方
COLUMN 量子コンピューターにはさまざまな種類がある

Chapter4 量子アルゴリズムの仕組みを知ろう
Lesson
25 量子コンピューターの2つの性質「汎用性」「高速性」
26 アルゴリズムとは
27 アルゴリズムの基礎と構成要素を理解しよう
28 「量子の重ね合わせ」で複数のデータを同時に表す
29 「量子のもつれ」で結果を絞り込む
30 データを検索するグローバーのアルゴリズム
31 素因数分解を解くショアのアルゴリズム
32 最小コストを求めるVQEアルゴリズム
33 社会問題の解を求めるQAOAアルゴリズム
COLUMN ショアのアルゴリズム

Chapter5 量子コンピューターにできること
Lesson
34 量子コンピューターの使用事例
35 機械学習による画像認識
36 量子化学計算による新材料の開発
37 機械学習とディープラーニング
38 暗号とセキュリティ
39 量子テレポーテーション
40 業務の最適化
41 パズルと社会問題
COLUMN コーヒーのブレンドを量子コンピューターで最適化する

Chapter6 量子回路を作ってみよう
Lesson
42 量子コンピュータを体験しよう
43 PythonとBlueqatをインストールする
44 量子ビットの重ね合わせを体験する
45 量子もつれを体験する
46 足し算回路のプログラミング
COLUMN さらなる量子プログラミングの世界へ

Chapter7 量子アニーリングの原理と使い方
Lesson
47 量子アニーリングとは?
48 量子アニーリング型のメリット
49 量子アニーリングの使い道
50 量子ビットとイジングモデル
51 量子アニーリングの基本的な考え方
52 量子アニーリングを体験してみよう
COLUMN D-Wave社のSDKで量子アニーリングマシンが身近に!

Chapter8 量子コンピューターをビジネスに導入する
Lesson
53 量子コンピューターを導入する意義
54 量子コンピューターを導入する事業計画
55 量子コンピューターに必要な人材
56 量子コンピューターをマネタイズする
57 知っておくべき量子コンピューターの課題
58 量子コンピューターの展望
COLUMN 世界と戦うには何をすべきか?