P&G式 伝える技術 徹底する力 (朝日新書)

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P&Gで必須となる3つのスキルを学ぶ

P&Gの良い点が実際にどんな利益をもたらしているか、どう生かされているのか、が具体的に詳細に書かれています。P&Gや外資系消費材の会社自体に興味がある方、ビジネススキルやコミュニケーションについて学びたい方々に参考になる良書です。

はじめに

この本は、私がP&Gで働いた23年間で、学び体感したこと、そして、私が広報部長の役職であったからこそ見えた、P&Gという会社が170年間成功を続けてきた理由、ひいてはP&Gという企業の”本質”を語るものです。
しかし、この本の目的はP&Gという企業を紹介し、就職や転職先の人気企業にしようということではありません。P&Gという企業にはとても合理的で効果的な、ユニークな考え方やノウハウがあります。私が23年の間に体得したさまざまなこと—それがP&Gが素晴らしい企業でありつづける秘密ですが—それらをこの本を読んでいただく読者の皆さんにぜひ役立ててもらうために書きました。

P&Gという会社は実に素晴らしい会社です。170年以上にわたり成長を続け、その社員たちは皆いきいきと、消費者の方々の「生活をより良くする」ことを目的に働いています。
一人ひとりが、どんな考え方で、何を目指し、どのような努力をしているのか?上司は部下に何を語り、何を教えるのか?経営者は組織をどう導くのか?P&Gには、170年にわたる成長という事実に裏打ちされた、確固たるノウハウがあります。しかも、それらはすべて、誰もが、今日からでも始められる簡単なことばかりです。

「自分のスキルを上げることに意欲を持っているすべてのビジネスマン」、
「自分の組織の能力を高め、結果を生み出したい管理職の方々」、そして、
「グローバルビジネスをこれから展開する企業の経営者の皆さん」。

この本は、そんな意欲を持つすべての方々に、ご自身の経験や考えと照らし合わせながら読んでいただき、そして、「明日から何か1つ、違うことをやる」ということを具体的に見つけていただければ、著者として嬉しい限りです。

2011年1月 高田 誠

P&G式 伝える技術 徹底する力・目次

プロローグ
・170年で創り上げた、800億ドルのビジネス
・日本の市場を変えた革新的技術とM&A戦略
・P&Gに根づく企業理念(考え方・ノウハウ)
・「コミュニケーション力」という秘密

第1章 「伝える技術」で、「考える技術」を学ぶ
—コミュニケーションカの礎、「論理力」の磨き方
(1) 「3つにまとめる」のがP&Gのコミュニケーション
・コミュニケーションの礎は論理力
・すべてを3つのポイントにまとめる
・まずは書いて、3つにまとめる
・論理的なコミュニケーション力が、ビジネスの成否を決める
・状況が複雑な時こそ、「3つにまとめる」ことが効果的
・なぜ「3つ」、なのか?
・メッセージトライアングル
・「3つにまとめる」習慣で、自信を持って発言できるようになる
・リーダーシップにも不可欠な「3つにまとめる」論理力
・習慣になるまでやってみる

(2) 「目的」へのこだわりが結果につながる
・事業仕分けのように、日々問いただされる「目的」と「理由」
・すべての書類は「目的」の記述から
・「目的の確認」なしでは、プロジェクトを進めない
・議論が噛み合わない時こそ、目的を明確にする
・無駄な活動をなくすための2つの質問
・「目的」を定義する力—目的を明確にするのは、実は簡単ではない

(3) 「イシューシート」で焦点を絞る
・「イシュー(Issue)」=論点・課題・問題点
・「イシューシート」という手法
・イシューシートが解決した、商品化戦略の混乱
・イシューを明確にし、対処できる人が優秀な人

第2章 上司ではなく消費者がボス
—消費者とのコミュニケーションを徹底する仕組み
(1) ボスは誰なのか?
・合言葉は、「消費者がボス(Consumer is Boss)」
・「世界中で、同じ商品を売る」ことは可能か?
・「消費者のために」から「消費者がボス」へ
・髭剃りと洗剤——グローバルとローカルの両極にある商品
・消費者ニーズを掘り起こす調査のノウハウ
・質的調査で「何となく好き」という無意識を掘り下げる
・ファブリーズ——消費者が「諦めていたニーズ」を引き出す
・一消費者であり続けることが、成功への近道
・イノベーションへのこだわりが成長を支える
・「信じて、繰り返す」ことで理念が動き出す

(2) ブランドビルディングで心をつかむ
・売上10億ドルのブランドを、23持っているP&G
・社会的な価値も生み出す、これからのブランドビルディング

(3) どんな企業なのかを知りたい消費者
・欧米と日本における企業ブランドに対する意識の違い
・企業広報で問われるのは企業の本質、化けの皮はすぐに剥がれる
・サステイナビリティ—経済と環境は両立する
・環境への重大なる責任=間違った一歩は踏み出さない
・「P&Gだからこそできる社会貢献」を実践する

第3章 全世界8万人の社員に「目的」を浸透させる
—「信じて、繰り返し、徹底する」組織マネジメント
(1) 全社員が1つの目的のために働く
・Improving Consumers’ Lives—なぜ、企業「理念」ではなく「目的」なのか
・正しい目的を、徹底して繰り返し語る
・目的を仕事の「判断基準」とするための、組織全体のカスケード
・目的は「やりがい」につながる
・消費者からの「一通の手紙」に、確かな手応えを感じる
・今の学生は、より「社会的な意義」を重視する
・目的を全社員で共有するために大事な3つのポイント
・「目的」があって、利益という「結果」がついてくる
・ビジネスチャンスの時こそ、「目的」に立ち戻る

(2) Do The Right Thing (正しいことをする)
・プライドを持って働くために
・「The Right Thing」の「The」に込められたメッセージ
・徹底した法令順守が、グローバル企業にとって必要不可欠な理由
・「新発売」の定義は? ——「正しい広告」の追求
・「正しいこと」を社内に浸透させるための広報部の役割
・「正しくないこと」には厳しく対処

(3) P&Gは「社員」で成り立っている—一人ひとりを尊重
・上司は部下に「あなたが大切」と伝え続ける
・会社と社員のWin—Winの関係の肝も、コミュニケーション
・なぜP&Gは女性が働きやすいのか?
・上司に欠かせない、部下に対する「Demand」と「Care」
・ワークライフバランス人生の充実なくして、仕事の成功なし

第4章 グローバルなコミュニケーションノウハウ
—ツールとしての「英語」を、いかに使いこなすか
(1) なぜ、英語を使うのか?
・英語は業務上のコミュニケーションツール
・英語によるコミュニケーションのデメリット
・英語を使うメリットの3ステージ
・翻訳の過程において、言葉の意図が特定される
・プロジェクトの質を高める、グローバルな情報交換
・成功事例の活用は、イノベーションに匹敵する
・「中軸ビジネス」と「よく知らないビジネス」のバランス
・社内で有用なコミュニティを作り、維持するための仕組み

(2) 「知識」を創ることから始まる
・P&Gはまるで「学会」のように知識を集積する
・「Learnings」=”学び”を意識するということ
・「Learnings」とノウハウのまとめ方のコツ
・組織全体で取り組まない限り、ノウハウは蓄積されない

(3) 日本人がグローバルになるために
・「自分だけ」で考えようとする、日本人の島国根性と遠慮の意識
・「こっち」「あっち」という言葉は禁句
・「自ら情報提供」「顔と名前を売り込む」「手柄を語る」ー日本人がグローバル企業で成功するためにやるべき3つのこと
・グローバル組織の成功も、結局のところ人間関係で決まる
・会社の大小にかかわらず、大切なのは社内のコミュニケーション

第5章 なぜ170年以上も成長を続けられたのか
—大企業病を防ぐ秘訣
(1) 「二番ではダメなんです」
・「一番になること」、それがP&Gであるという信念
・「一番になること」は企業目的として明文化されている
・中国でP&Gを急成長させた、たった1つの秘訣
・社内で「喜び」を共有する仕掛け——成功が成功を呼ぶ
・どうすれば「強み」を自覚し、それを徹底して実践できるのか
・「小さいこと」も十分な強みである
・「強み」を具体化して考える方法

(2) 自分たちは大きな象
・「簡素化」と「スピード」——大企業病を回避したP&Gの取り組み
・社内で「抱え込まない」で、社外の能力を積極的に取り込む
・「シグモイドカープ」を描き続けて、大企業病を防ぐ
・常に「不満足」で、次にやるべきことを考える習慣
・意識的に外に目を向けなければ、マーケットの変化は察知できない
・「変わりつづけること」が、成功をつづける鍵

(3) 一人ひとりが力をつける
・P&Gの社員が「仕事ができるようになる」ためにしている2つのこと
・「今日勝つことと、若手を育てることの両立」をどう達成するか
・自分の成長には、自分が責任を負う
・上司の重要な仕事は、部下の「役割」を明確に定義すること
・コーチングとは、部下に任せ、部下のコンサルタントのように接すること
・人が育ち、人を育てる企業であるために

おわりに

図版作成
加賀美康彦

カバーデザイン
アンスガー・フォルマー
田嶋佳子