P&Gウェイ―世界最大の消費財メーカーP&Gのブランディングの軌跡

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経営学・マーケティングの教科書的な企業の事例を学ぶ

本書はマーケティングの神様として名高いP&Gの成功事例から最近のマーケティング戦略まで「P&G流ブランディング」の本質が語られた名著です。P&Gのブランド構築の秘訣を徹底的に解明しています。ブランド戦略やマーケティング戦略を極めたい方にお勧めします。

デーヴィス ダイアー (著), ロウェナ オレガリオ (著), フレデリック ダルゼル (著), Davis Dyer (原著), Rowena Olegario (原著), Frederick Dalzell (原著), 足立 光 (翻訳), 前平 謙二 (翻訳)
出版社 : 東洋経済新報社 (2013/6/28)、出典:出版社HP

まえがき

本書は、プロクター&ギャンブル(P&G)が一六五年前のオハイオ州シンシナティで創立されてから、プランド消費財の世界的リーダーとなった今日までの歴史と運命を綴ったものである。
本書の編纂にあたっては、二つの目的があった。第一の目的は、P&Gの発展の歴史を綿密に検証することである。これまでもP&Gについては多数の本が出版されてきたが、注目に値する内容を記したものは皆無であった。P&Gは現在、消費財業界において世界的に最大かつ最も影響力のある企業の一つであり、現代の消費社会・文化に対して幅広く影響を及ぼしている。P&Gが今日の姿になるまでの変遷を理解することは、地球上の大多数の人々の現在の生活の基盤となっているグローバル化した経済の発展を理解するのに大いに役立つと考える。
第二の目的は、P&Gの事業の中核を占める消費者向けプランド構築という点において、これまでの成功の要因を明確化することである。われわれは、プランド構築に関してP&Gの教訓となった主要な出来事やエピソードを調査することにより、この目的を達成できたと信じている。P&Gは新ブランドの市場への投入、新たな地域への進出、新たな能力やより優れた経営手法の開発、低迷したプランドの回復などに果敢に挑みながら、困難な挑戦と変化に満ちあふれた時代の中で、成功するプランド構築・維持の方法について学習してきた。これらの時代背景とそこでP&Gが学んだ教訓を浮き彫りにすることで、経営能力と戦略的競争優位の源泉としてのブランド構築に関して、読者の理解を深めることに少しでも貢献できればと考えている。

本書では、創業当時よりも近年の歴史に焦点を当てながら、P&Gの歴史を四部に分けて描き出している。第Ⅰ部では、一八三七年のシンシナティでの創業から二〇世紀半ばまでのP&G最初の一〇〇年を、初の大ヒットブランドとなった「アイボリー(Ivory)」と、メガブランド「タイド(Tide)」の誕生に焦点を当てて詳説した。第Ⅱ部では、P&Gが幅広い消費財へ(時には買収を通じて)事業を拡大し、南米、西ヨーロッパ、そして日本へ進出していった一九四五年から八〇年までを描いている。第Ⅲ部では、P&Gが特に極東地域においてグローバル展開を加速させ、生理用品の「オールウェイズ(Always/ウィスパー(Whisper)」、ポテトチップスの「プリングルズ(Pringles)」、ヘアケアの「パンテーン(Pantene)」などの初めてのグローバルブランドを開発した一九八〇年代を追った。第Ⅳ部では中国市場への参入、そしてインターネット・Eコマースの出現、大規模小売店の台頭など、P&Gが多くの機会と挑戦に取り組んだ一九九〇年以降について考察している。
各部の初めの章では、それぞれの時代にP&Gが経験した物語の概要を記し、続けてブランド・市場拡大・経営改革などの特定の教訓に関するエピソードを記している。
プロローグとエピローグでは、P&Gの歴史を通じて一貫した特徴、そしてP&Gがこれまでに確立してきたブランド構築に関する原則を明らかにしている。

本書の企画は一九九〇年代にP&Gの経営陣が、過去数十年の成長と変化をまとめた企業としての新しいプロフィールが必要であると考えたことに端を発する。経営陣は組織に蓄積された記録が失われるのを防ぐとともに、P&Gが過去に大きく規模を拡大し、グローバル化した歴史の中での共通の知識を社内に定着させたいと考えていた。
調査・執筆に着手するため、P&Gは二〇〇〇年にウィンスロップ・グループと契約し、われわれ三人が共著者として作業チームを結成した。本書の発行を支援してくれた、P&GのCEOであるA・G・ラフリーと彼の前任のダーク・ヤーガーとジョン・ペッパーには、感謝の意を表したい。また、P&Gのグローバル広報部門役員であるシャーロット・オットーにも、熱心な支援と激励をいただいたこと、P&Gに関する深い知識を提供していただいたこと、そして示唆に富む指摘を見事な腕前で披露してくれたことに感謝している。
ジョン・ペッパーとシャーロット・オットーに加え、何人もの元・現P&G社員が非公式に助言を与えてくれた。なかでも、ギビー・キャリー、ギル・クロイド、ボブ・マクドナルド、エド・ライダー、ジョン・スメール、クリス・ワーモスには特に本書の編纂に協力していただき、特筆すべき助言をいただいた。調査すべき重要な話題やテーマを指摘してもらい、われわれが袋小路に迷い込むのを防ぎ、さらに最初と最後に詳細に原稿をチェックしていただいた。彼らとともに働くことができたことは、われわれにとって名誉であり喜びである。
本書を取りまとめるにあたっての調査は、シンシナティ本社と世界各地の支社での調査と公文書の調査に基づいている。シンシナティのP&G資料室はP&Gの歴史的史料の宝庫である。われわれは公文書保管人リーダーのエド・ライダーと彼のスタッフ(ダイアン・ブラウン、エイミー・フィッシャー、バーブ・ヘムサス、グレッグ・マッコイ、リサ・マルベニー、ナンシー・アスマン、ダイアン・ワグナー、ならびにインターンとして本プロジェクトの初期に配属されたジョー・シングルトン)との密接な協力関係の下に作業を進めた。われわれは専門家である彼らに対して、数え切れないほどの依頼と質問を行い、常に素早い回答をもらい、そして、大量の資料を提供してもらった。本を執筆する際の調査が本書の場合ほど順調であったことはない。
数多くの元・現社員は気前良くインタビューの時間を割いてくれ、重要書類を提供してくれたり調べてくれたりした。協力してくれた元・現社員の名前は多すぎて全員をここに掲載することができなかったが、われわれは多方面にわたって貢献してくれた彼らに感謝の意を表したい。実に多くのことを教えていただいた。一見すると複雑だが、ひもとくと互いに関連し合ったストーリーを、わかりやすく丹念に解説していただいた。

本書の主なテーマは、伝説に残るほど有名なP&Gの規律正しさと、徹底したビジネスへの取組みである。われわれはP&Gのそのような姿勢を実際に幾度となく目の当たりにした。それは、すでにその名前を記述した方々も含めて、多くの元・現P&G社員たちと直接会い、原稿への入念なコメントや助言をいただいている最中のことだった。本当にコメントを寄せ、修正を行い、助言もしてくれた以下の方々に感謝の意を表したい。ジェフ・アンセル、ディック・アントワン、サンディ・アルガブリト、エド・アーツト、ウォルフガング・バーント、トム・ブリン、ドン・キャンベル、マーク・カラー、アル・コリンズ、ゲイリー・カニンガム、スティーブ・デイビッド、ダグ・デデカー、ジム・エドワーズ、ラド・ユーイング、チャック・フルグラフ、ハラルド・アインスマン、ストナ・フィッチ、ボブ・ギル、クリス・ハッサール、キース・ハリソン、デブ・ヘンレッタ、ピーター・ヒンドル、クリス・ホームズ、グレッグ・アイゼンハワー、マイク・キーホー、マーク・ケッチャム、キース・ローレンス、ゲイリー・マーティン、ロブ・マテウッチ、ボブ・ミラー、シェカール・ミッタラ、ジョージ・モントや、トム・ムーチョ、リサ・オーウェンス、ディミトリー・パネオトポロス、ローレント・フィリップ、ポール・ポルマン、リズ・リッチ、ナビル・サッカブ、クロード・サロモン、ヘルベルト・シュミッツ、ボブ・シート、ジム・シッソン、デイプ・スワンソン、ジョン・トレイシー、ベレニク・ウルマン、ジョン・ヤン。
彼らが提供してくれた情報の量の膨大さと質の高さに、つい思い出す一文がある。それはある著書の同様に長い謝辞の後に添えられた、ユーモラスな次のような一文である。「もし本書に誤りがあったとしても、それは私の落ち度ではない。これだけ緻密なチェックをして、まだ誤りがあったとしても残念だが、誤りは免れない。決して誤りをなくそうとした努力が足りなかったわけではない」。この言葉にはずいぶん救われた。

本を執筆する喜びの一つは、友人や同僚と本について議論していく中で本の内容がまとまっていき、友人や同僚からの質問やコメントにより、さらに鋭いひらめきが触発されて、新たな調査の手段を考えつく瞬間である。われわれはウィンスロップ・グループにおいて、P&Gとその歴史的進化に関する数多くの刺激的な議論をマーガレット・B・W・グラハム、ティモシー・ヤコブソン、ジョージ・スミスらと楽しんだ。われわれはまた、本書の中心的な考えに関して、友人であるアルフレッド・D・チャンドラー、アラン・カントロウ・ジュニア、ジョシュア・マーゴリス、ニティン・ノーリアと議論を行った。
P&Gは本書のサポートを寛大に行ってくれたが、本書の構成・テーマ・解説・結論などはすべてわれわれ執筆者の責任である。また、特別な見返りもなく、原稿の出版合意前に本書のレビューを行ってくれたハーバード・ビジネス・スクール・プレスに対して、なかでも同社の編集者であるジャック・マーフィー、ホリス・ヘイムボウと、示唆に富み徹底的な校閲を行ってくれた四人の担当者の方々に感謝の意を表したい。

最後になるが、愛するわれわれの家族の理解がなければ、本書が完成することはなかったことを書き添えておきたい。ジャニス、リッキー、ベラ、メアリー・エリス、アピー、モリー、チャールズ。このプロジェクトに対する彼らの愛情・理解・支援そして忍耐に感謝する。

デーヴィス ダイアー (著), ロウェナ オレガリオ (著), フレデリック ダルゼル (著), Davis Dyer (原著), Rowena Olegario (原著), Frederick Dalzell (原著), 足立 光 (翻訳), 前平 謙二 (翻訳)
出版社 : 東洋経済新報社 (2013/6/28)、出典:出版社HP

P&Gウェイ——目次

まえがき

プロローグ P&Gの進化を支えた三つの時代と五つのテーマ
■三つの時代
■五つの能力

第Ⅰ部 黎明期(一八三七〜一九四五年)

第1章 P&Gの誕生(一八三七〜九〇年)
■コモディティ時代
■戦略的優位性の創造
■訪れた転機
■新しい事業機会
■一八三七〜九〇年という時代

第2章 企業基盤の確立(一八九〇〜一九四五年)
■株式公開へ
■生産能力の拡張
■ブランディングの重要性
■研究開発の拡充
■ブランドマーケティングを進化させる
■クリスコ——マーケティング戦術の成熟化
■小売店への直接販売へ
■すべてを統合する「ブランドマネジメント」
■嵐の中へ——一九三〇〜四五年
■一八九〇〜一九四五年という時代

第3章 伝説的ブランド——アイボリーとタイド
アイボリー——ブランドの始まり
■アイボリー石鹸の誕生
■アイボリーのマーケティング戦略
■競争優位の確立
■一八八六〜一九○○年——マーケティングメッセージの統一
■消費者との直接コミュニケーション
タイド——P&Gウェイの確立
■タイドの研究開発
■リスクを恐れない
■ブランディング強化
■生産体制の拡充
■タイドの大旋風
■記録的な大成功
■タイドの成功要因

第Ⅱ部 P&G流マーケティングの確立(一九四五〜八〇年)

第4章 各種消費財への事業拡大(一九四五〜八〇年)
■第二次世界大戦後
■事業部の設立
■既存事業の拡張と新規事業への参入——一九五〇〜六〇年代
■column もう一つの成功法則——ダウニーとフォルジャーズの例に学ぶ
■テレビ広告におけるリーダーシップ
■広告代理店とのパートナーシップ
■海外進出の成功
■独占禁止法——予期せぬ障害
■環境問題
■column リライ危機
■一九四五〜八〇年の位置づけ

第5章 伝説的ブランド——クレストとパンパース
クレスト——オーラルケアの革命ブランド
■歯磨き市場とフッ素の研究開発
■クレストと大学研究所の提携
■オーラルケア事業とクレストの位置づけ
パンパース——一〇億ドルブランドの誕生
■黄金期の到来

第Ⅲ部 世界市場への進出(一九八〇〜九〇年)

第6章 グローバルへの展開(一九八〇〜九〇年)
■変化をマネージする(一九八〇〜八五年)
■column 忍耐が生んだプランド、プリングルズ——グローバルプランドへの軌跡
■組織改革と業績回復(一九八五〜八九年)
■column 西ヨーロッパでの躍進と教訓
■一九八〇〜九〇年の位置づけ

第7章 日本市場での教訓
■日本市場への参入
■苦難に満ちたスタート
■一大飛躍
■日本市場での競争の「再」学習
■日本での経験で学んだこと

第8章 伝統的ブランドーパンテーン
■背景——P&Gのヘアケア事業
■革新的テクノロジーBC-18
■市場導入——製品化の決定
■第二ラウンド——パンテーンへの応用
■パンテーンのグローバル展開
■パンテーンの成功に関する考察

第Ⅳ部 縮小市場での模索(一九九〇年〜)

第9章 一九九〇年代の組織改革
■全速前進(一九九〇〜九五年)
■二一世紀に備える(一九九五〜九八年)
■「オーガニゼーション二〇〇五」
■組織改革の余波
■column アイムス買取の成功秘話
■予期せぬ危機
■現状復帰
■一九九〇年以降の位置づけ

第10章 サプライチェーン再構築
■取引先との関係悪化
■社内システムと対外的関係の見直し
■ウォルマートとのパートナーシップ
■得意先との関係構築
■サプライチェーンの共同実験
■改革の拡大
■劇的な改革の一○年
■サプライチェーン再構築の位置づけ

第11章 ブランドの再生——アイボリー、クレスト、オレイ
■アイボリー——純粋に潜む矛盾
■クレスト——ブランドの復活
■オレイ——一〇億ドルブランドへの飛躍
■ブランドエクイティの再定義

第12章 中国への進出
■市場参入までの道程
■市場参入戦略
■事業基盤の構築
■パートナーシップの構築
■洗剤事業の立ち上げ
■さらなる成長と中国企業の追撃
■北京テクニカルセンターの設立
■オーラルケア——クレストの成功
■洗剤事業の立て直し
■中国事業の位置づけ

エピローグ ブランド構築の原則
■経験を通じて実証された原則

解説・訳者あとがき
年表

デーヴィス ダイアー (著), ロウェナ オレガリオ (著), フレデリック ダルゼル (著), Davis Dyer (原著), Rowena Olegario (原著), Frederick Dalzell (原著), 足立 光 (翻訳), 前平 謙二 (翻訳)
出版社 : 東洋経済新報社 (2013/6/28)、出典:出版社HP