図解入門 よくわかる 最新 量子コンピュータの基本と仕組み

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「量子コンピュータ」についてわかりやすく学べる入門書

量子コンピュータの「分類」から、背景知識や各国の取り組みまで、量子コンピュータの取り巻く環境を俯瞰するのには最適です。量子コンピュータの基本的概念、現状を把握するには非常に良い書籍です。

長橋賢吾 (著)
出版社 : 秀和システム (2018/9/26)、出典:出版社HP

はじめに

量子コンピュータ−最近のニュース等で一度はこの名前を耳にされた方は多いのではないでしょうか。では、この量子コンピュータとはいったいどんなもので、どんな用途に活用できるのでしょうか?これをきちんと説明するのは意外と難しいのではないでしょうか。

筆者もその例外ではありません。筆者は普段は会社の経営に携わっていますが、クライアント等との会話でときどき、量子コンピュータが話題になります。ただ、いつも具体的な話ではなく、量子コンピュータが既存のコンピュータを変えるという、どこか夢物語のような話でした。

しかし、筆者は量子コンピュータについて調査、ディスカッションを通じて、一つの結論に至りました。その結論とは、「2018年の量子コンピュータは70年前のコンピュータと同じ状況」ではないかということです。いまでは、パソコン・スマホ、当たり前に利用されているコンピュータですが、これらが生まれたのは今から約70年前のことです。70年前のコンピュータであるエニアックは、60畳もの大きなスペースに17,468本もの真空管をつないだ計算機で、プログラムを変更するためには真空管の配線を変えなければならないという不便な代物でした。しかし、そうしたコンピュータは、トランジスタ(半導体)の発明を経て、私たちの日常生活に欠かすことができないものとなりました。

2018年の量子コンピュータも70年前のコンピュータと状況が似ています。現状の量子コンピュータでは、一度に計算できる量を表す量子ビットの数が50個程度であり、日常的に利用できるレベルではありません。くわえて、現在の量子コンピュータの多くは超伝導方式を用いて量子ビットを生成していますが、超伝導方式の場合、ノイズに弱く、エラー率が高いことが指摘されています。

では、量子コンピュータの利用価値がないかといえば、そうではありません。10年程度のスパンでは、量子ビットの数は現状の50個程度から大幅に増えることが予想されます。くわえて、量子ビットの数によるエラー訂正によってエラー率もある程度低下することが予想され、実用化が視野に入ります。さらに、量子ビット数の増加およびエラー率の低下により、量子コンピュータにおいて、仮想通貨で利用されている暗号が2027年をめどに解読されるという2027年問題も指摘されています。もちろん、量子ビットの増加はあくまで仮説にすぎませんが、現状の超伝導方式にくわえて、マヨラナ粒子によるトポロジカル量子コンピュータなど新しい素子での開発も進んでいます。

こうした点を勘案すると、今後、量子コンピュータの開発が進み、量子コンピュータが利用される日も近いとみています。そして、それに向けての準備は早いに越したことはありません。本書では、こうした今後実用化にむけて進化する量子コンピュータについて、数式に頼ることなく、できるだけわかりやすくその動向・今後の方向性を触れました。本書によって、少しでも量子コンピュータを理解するきっかけとなれば幸いです。

2018年8月 長橋賢吾

長橋賢吾 (著)
出版社 : 秀和システム (2018/9/26)、出典:出版社HP

CONTENTS

はじめに

第1章 量子コンピュータの現在数式なしでわかる量子コンピュータ
1-1 5つの素朴な質問からひも解く量子コンピュータとは?
1-2 量子コンピュータとスパコンの違いは?
1-3 量子コンピュータを実現する2つの方式
1-4 量子コンピュータによるAIの進化
1-5 仮想通貨と量子コンピュータ
1-6 グーグルによる量子コンピュータ
コラム フォン・ノイマン天才の作り方

第2章 量子コンピュータとは何か?
2-1 量子コンピュータとは
2-2 量子ニューラルネットワーク
2-3 イジング計算機
2-4 lonQイオントラップ型量子コンピュータ
2-5 ディ・ヴィンセンゾの量子コンピュータ基準
2-6 階層式量子コンピュータの仕組み
2-7 量子ゲートを実現する物理層
2-8 エラー訂正を実現する量子エラー訂正層
2-9 量子アルゴリズムを実現するアプリケーション層
コラム 粘菌型コンピューティング

第3章 量子コンピュータが変える人工知能と仮想通貨
3-1 量子コンピュータは仮想通貨・人工知能にどう応用できるか?
3-2 量子コンピュータと人工知能
3-3 分子シミュレーションと量子コンピュータ
3-4 リゲッティによるクラスタリング
3-5 仮想通貨と量子コンピュータ:量子コンピュータがマイニングを支配できるか?
3-6 仮想通貨と量子コンピュータ:量子コンピュータが破れない仮想通貨は?
3-7 仮想通貨と量子コンピュータ:量子コンピュータで破られない暗号を実現できるか?
コラム ボルツマン機械学習と量子コンピュータ

第4章 量子コンピュータの活用戦略
4-1 量子コンピュータのビジネス活用
4-2 グーグルが考える量子コンピュータ活用戦略
4-3 IBMの量子コンピュータ活用戦略
4-4 マイクロソフトの量子コンピュータ活用戦略
4-5 中国の量子コンピュータ活用戦略
4-6 日本の量子コンピュータ活用戦略
コラム 8年の歳月を思う

おわりに
索引

長橋賢吾 (著)
出版社 : 秀和システム (2018/9/26)、出典:出版社HP