星野リゾートの教科書 サービスと利益 両立の法則

【最新 – 星野リゾートの経営を学ぶためのおすすめ本 – 参考となるビジネス理論からケーススタディまで】も確認する

教科書に則った経営を確かめる

本書は、経営学やマーケティングの教科書に書かれている理論を実践することの有効性について、星野リゾートのケーススタディを通して検証している本です。星野リゾートが実践している方法から、読者自身の経営への応用なども検証するきっかけになる本と言えます。

中沢 康彦 (著)
出版社 : 日経BP (2010/4/15)、出典:出版社HP

はじめに

星野リゾートは旅館・ホテルの運営会社である。長野県軽井沢町で創業し、4代目の経営者である星野佳路社長は、顧客満足度アップと収益力向上の両立を掲げ、会社を成長させてきた。この10年で、軽井沢の老舗企業から、全国でリゾート施設を運営する企業へと変身を遂げた。日本各地でリゾートの運営を引き受け、業績を向上させていると同時に、軽井沢や京都では高級旅館「星のや」の展開を進めている。

星野社長の打ち出す経営戦略は、時として常識破りに見える。カレーライスに「おいしさ保証」をつけたり、旅館で働いたことがない社員をいきなり高級旅館の総支配人に抜擢したりする。「話題を作ろうとしているだけではないか」と感じる人もいるだろう。
だが、そうではない。星野社長の経営は、どれを取っても「教科書通り」なのである。社員のモチベーションアップやサービス向上策は、すべて経営学の理論に裏打ちされている。星野リゾートの事業展開の背後には常に「教科書」が存在している。
一流の経営学者が緻密な研究によって導き出した理論に基づいて考え抜き、確信を持ってビジネスを実践する。それが星野社長の経営である。

「経営に教科書なんて役立たない」と疑問を持つ人もいるだろう。しかし、星野社長は、「教科書に書かれていることは正しい」と断言する。「教科書通り」でうまくいかないとしたら、それは理解が不十分で、取り組みが徹底されていないからに違いないと指摘する。
星野社長は、経営上の課題に直面すると、その解決に役立つ本を自分で探し、深く読み込み、理論の教えるところを完全に実践する。その姿勢は社員にも伝播している。

では、星野社長は、どんな教科書から学んで、どんな成果を上げてきたのか。そのとき現場はどう動いたのか。本書では、その具体的な事例を取り上げ、教科書を経営に生かすためのポイントを明らかにする。
本書は1冊丸ごと星野リゾートのケーススタディーだが、その内容はさまざまな分野の課題に応用できる。業種や職種、企業規模などを超えて、多くのビジネスリーダーに参考にしていただければ幸いである。
星野リゾートが運営する施設は、北海道のアルファリゾート・トマムから沖縄の統合予約センターまで全国に散らばっている。本書は、そのすべての施設を2年間かけて取材した成果に基づく。日経BP社発行の経営誌「日経トップリーダー」に連載した記事に加筆した。登場する人物の肩書などは雑誌連載時のままである。
取材に当たって、星野リゾートのみなさまには多大な協力をいただいた。改めて謝意をお伝えしたい。

本書の姉妹編として『星野リゾートの事件簿』(日経BP社)がある。こちらの本では、お客様からのクレームや社員同士の対立など、星野リゾートで実際に起きた「事件」をテーマにしている。事件解決のために星野社長がどう発想し、現場のスタッフがどう動いたかを具体的に記している。ぜひ、本書と併せてお読みいただきたい。

2010年4月
日経トップリーダー副編集長 中沢康彦

中沢 康彦 (著)
出版社 : 日経BP (2010/4/15)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第Ⅰ部 星野佳路社長が語る
教科書の生かし方
——定石を知り、判断ミスのリスクを最小にする
ステップ1 本を探す
書店に1冊しかないような古典的な本ほど役に立つ
ステップ2 読む
1行ずつ理解し、分からない部分を残さず、何度でも読む
ステップ3 実践する
理論をつまみ食いしないで、100%教科書通りにやってみる

第Ⅱ部 教科書通りの戦略
——難しそうに見えて、実は効果的である
どこにでもある旅館を高級旅館として再生
“その他大勢”から抜け出す
『競争の戦略』
(マイケル・E・ポーター著)
市場で埋没したリゾートを独自戦略で立て直す
他社の追随をやめ、ニッチ市場を開拓
『コトラーのマーケティング・マネジメント 基本編』
(フィリップ・コトラー著)
「予約しやすさ」で他社と差別化する
コモディティ化した市場で勝つ
『The Myth of Excellence』
(Fred Crawford, Ryan Mathews著)
「変えない」でお客様の心をつかむ
長期的な視点で売上高を伸ばす
『売れるもマーケ 当たるもマーケ マーケティングルの法則』
(アル・ライズ、ジャック・トラウト著)
星野社長が参考にした戦略の教科書
『ブランドポートフォリオ戦略』/『競争優位のブランド戦略』/『マーケティング戦略』/『戦略サファリ』/『ストラテジック・マインド』

第Ⅲ部 教科書通りのマーケティング
——「やるべきこと」をやり切れば、すべてが変わる
「おいしくなかったら全額返金します」
スキー場レストランのヒットメニューを育てる
『いかに「サービス」を収益化するか』
(DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部編・訳)
お客様への対応は数十秒の勝負
瞬時に最適判断する人材を育てる
『真実の瞬間』
(ヤン・カールソン著)
おもてなし向上へ「気づき」を集める
1人ひとりにピッタリのサービスを提供
『ONE to ONEマーケティング』
(ドン・ペパーズ、マーサ・ロジャーズ著)
顧客が感じる「品質」を長期的に高めていく
ブランド価値を高める改革
『ブランド・エクイティ戦略』
(デービッド・A・アーカー著)
星野社長が参考にしたマーケティングの教科書
『ニューポジショニングの法則』/『ブランディング22の法則』/『経験価個 マーケティング』/『サービス・リーダーシップとは何か』/『顧客ロイヤルティの時代』/『グロービスMBAマーケティング』

第Ⅳ部 教科書通りのリーダーシップ
——すぐに成果は出ないが、必ず成果は出る
社員の気持ちを1つにまとめる
ピジョンを掲げて会社の目指す方向を示す
『ビジョナリー・カンパニー』
(ジェームズ・C・コリンズ、ジェリー・I・ポラス著)
熱狂的ファンをつかむコンセプトを作る
競争力向上のカギは「自分たちで決める」
『1分間顧客サービス』
(ケン・ブランチャード著)
社員が持つパワーを引き出して業績回復
「任せる」から、社員は自分で考えて動く
『1分間エンパワーメント』
(ケン・ブランチャード、J・P・カルロス、A・ランドルフ著)
会社に残すべきは経営者の姿勢
堂々とした生き方を見せる
『後世への最大遺物 デンマルク国の話』
『代表的日本人』
(内村鑑三著)
星野社長が参考にしたリーダーシップの教科書
『やまぼうし』/『エクセレント・カンパニー』/『口語訳「古事記」完全版』/『Personnel』/『イノベーターの条件』/『柔らかい心で生きる』

第Ⅴ部 教科書通りに人を鍛える
——「未経験者歓迎」で成長できる理由

中沢 康彦 (著)
出版社 : 日経BP (2010/4/15)、出典:出版社HP