これからの飲食店マネジメントの教科書

【最新 – 飲食店の経営について学ぶためのおすすめ本 – 開業準備からマネジメント、コロナ危機まで】も確認する

育成型チームマネジメント読本

スタッフのやる気を引き出し、“人が辞めない“繁盛店にするための新スキルが解説されています。売り上げに直結するノウハウというよりも、飲食店のチーム作りやスタッフマネジメントといったお店の雰囲気作りを丁寧にまとめている印象です。生産性をアップさせるにはまず相手のことを考える、マインドにも重点を置いた1冊です。

山川 博史 (著)
出版社 : 同文舘出版 (2018/1/26)、出典:出版社HP

はじめに

スタッフの育て方がわからない。
スタッフのモチベーションが上がらない。
スタッフがすぐ辞めてしまう。
それどころか、採用募集をかけても1件の問い合わせもない……。

飲食店経営で避けられない人の問題。とくに近年は、非常に厳しい状況が続いていることは、私が言うまでもありません。皆さんも、そうした問題を解決したいと思って、この本を手に取ってくださったのだと思います。
ここ数年、飲食業界で働く人たちの価値観は大きく変わりました。現在の店長や管理職クラスの人たちは、店からの教育は最低限で、あとは先輩から見よう見まねで学ぶしかありませんでしたが、いまはそうはいきません。
働く意味や「成功」の定義、ジェネレーションギャップ、コミュニケーションツールなどの変化は思っている以上に大きく、これまでのような指導法は一切通用しなくなってしまいました。
これまでと同じやり方では、人が辞める一方だと言っても過言ではありません。

とはいえ、店長や管理職もさぼっているわけではありません。毎日長時間、現場でお客様をもてなし、部下とも、どうにか自分の感情を押し殺しながらコミュニケーションをとろうと努力しています。
しかし、飲食店は特殊な労働環境であることも確かです。たとえば、同じ店でもキッチンとホール、それぞれの文化があります。中途採用のスタッフも多く、前の店でのやり方や考え方がしみついている人も少なくありません。また、店長以上に技術が高く、経歴の長いパートの方や、10代から60代まで幅広い世代のアルバイトの方が働いています。
しかもそれがチェーン店となると、働く人も環境もまったく異なる店舗が何十・何百とあるわけです。いくら書籍やセミナーで学んでも、現場の社員やアルバイトのモチベーションを下げることなくコンセンサスをとり、マネジメント側の考えを伝え、実施してもらうのは簡単なことではありません。
勇気を出して伝えたとしても、スタッフが聞く耳を持たず、「店長、そんなことより、人が足りないので入れてくださいよ」と一蹴されることもあるでしょう。
そんなとき、ベテランの管理職のなかには、そうしたスタッフに対して厳しい口調で感情的になったり、正論を大声で語る人がいまだにいるのが現実です。これまで自分がそう教育されてきたように、力で押さえつけようとするのです。
当然、このようなアプローチの繰り返しでは現場がまとまることはなく、最近では「パワーハラスメントだ」などと訴えられる可能性もあります。もはや、これまでと同じマネジメントではスタッフとの溝は深まるばかりで、リスクも高くなっていくばかりだということを、意識しなければなりません。

本書では、これからの時代、飲食店のリーダーはどのような考えを持ち、どのように幅広い年代のスタッフとコミュニケーションをとり、どのようなチームをめざしていけばいいのか、実際に現場で実践している飲食店のマネジメントノウハウをお伝えします。
私自身、23歳で飲食業界に入り、27歳で独立。15坪の店からスタートしましたが、最終的には直営店を10店舗まで展開させました。
開業から展開、撤退、売却などを体験し、20年以上、飲食店経営に携わっているからこそ、飲食店経営のむずかしさが身にしみるほどわかります。
私が店舗の拡大化・多店舗化にあたり実践したのが、徹底的に「仕事を任せる」スタイルです。100坪でもスタッフに任せられる店舗マネジメントを成功させることができました。
その経験をもとに、現在は飲食店マネジメントのコンサルタントとして、500店舗以上の経営者や管理職の方々に「人が育つことで成功する組織づくり」を指導しています。2017年には、「一般社団法人これからの時代の・飲食店マネジメント協会」を立ち上げ、飲食業界に人が育つ組織文化を形成するべく活動しています。

いい人材を育成するメリットは、たくさんあります。採用コストの圧倒的削減、業績改善、新規出店展開、会社ブランディング、人事トラブルリスク回避など、その効果は計り知れません。
本書では、私が長年、店舗経営やコンサルティングに関わるなかで実践してきた「これからの時代の飲食店マネジメント」のリアルな考え方と手法を紹介しています。ぜひ、自分がすぐにトライできそうなアクションがないかな、という目線で読んでみてください。そして、ヒントになるものがあれば、今日からでもお店で実践してください。
この本を読むことで、日々情熱を持ち、飲食業に関わるリーダーたちの「人の問題」が解決し、売上や集客につながる飲食店マネジメントが成功するよう応援しています。

一般社団法人これからの時代の・飲食店マネジメント協会 代表理事 山川博史

山川 博史 (著)
出版社 : 同文舘出版 (2018/1/26)、出典:出版社HP

「採る・育てる・定着させる これからの飲食店マネジメントの教科書」目次

はじめに

1章 繁盛し続ける店になるためのこれからの「飲食店マネジメント」
1 5年前のマネジメント方法はもう通用しない
2 必要なのは30点の人を70点に育てるしくみ
3 まずは店長の意識から変えていく
4 繁盛飲食店をつくるのは店長しだい!
5 これからの飲食店店長に必要な7つの要件

2章 人が辞めない!飲食店の「採用」
1 採用費を100万円かけても採用できない
2 募集の方法を変えよう
3 繁盛店のスタッフづくりは「面接」から始まる
4 スムーズに定着させる新人スタッフの迎え方
5 「いい雰囲気」をつくる基本ルールづくり
6 すべての基本は「分離礼」にあり
7 ベテランスタッフに動いてもらう

3章 スタッフのやる気を引き出す!飲食店の「コミュニケーション」
1 コミュニケーションスキルを磨くのは、店長の大事な仕事
2 「どうすればいいと思う?」と質問して教える
3 注意するときは「お客さん」を主語にする
4 会話のルールをもうける
5 報連相はSNSを活用しよう
6 プロジェクト管理はSNSをフル活用
7 アナログな連絡手段も効果的

4章 店の価値観を共有する!飲食店の「ミーティング」
1 スタッフ2人でもミーティングは必要
2 ミーティングでの圧倒的にいい雰囲気のつくり方
3 店長こそ必要なミーティングのルール
4 朝礼でスタッフのコンディションを確認する
5 ミーティングでやっておきたい2つのワーク
6 店長とスタッフの個別ミーティングは2対1で
7 悪いことから逃げずに全員で考える

5章 スタッフに丸投げしない!飲食店の「任せ方」
1 店長もスタッフも成長する仕事の「任せ方」
2 4つの育成サイクルで回していく
3 3カ月で任せるステップ
4 スタッフのタイプ別任せ方
5 スタッフがミスをしたときの対応法
6 店長が店で孤立しない「パディマネジメント」

6章 強いチームをつくる!飲食店の「目標設定」
1 目標は店のなかに転がっている
2 スタッフが目標を立てるときの6つの課題
3 目標設定ミーティングを行なう
4 店の目標とスタッフの目標をすり合わせる4つのステップ
5 複数店舗の目標は、QSCの観点で設定する
6 圧倒的な大人マネジメントをしよう

7章 スタッフの成長を早める!飲食店の「人事評価」
1 店舗の店長・スタッフの評価はむずかしい
2 評価でいちばん重要なのは面談である
3 どんな成果を示したスタッフを評価すべきか
4 面談上手な店長と面談ベタな店長の差はココ!
5 評価・面談で重要な4つの留意点

おわりに

カバー・本文デザイン・図版制作 荒井雅美(トモエキコウ)
編集協力・本文DTP 菱田編集企画事務所

山川 博史 (著)
出版社 : 同文舘出版 (2018/1/26)、出典:出版社HP