この1冊ですべてわかる 新版 コーチングの基本

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コーチングの実践入門書

内容はコミュニケーションや目標達成のために大切なことが書かれています。ビジネスとしてどうやって組織にコーチングを文化にするかなども書かれており、事例が非常に多く面白い本です。

コーチ・エィ  (著), 鈴木 義幸 (監修)
出版社 : 日本実業出版社; 新版;最新2 (2019/1/12)、出典:出版社HP

 

はじめに

「コーチングの基本』の初版発行から10年が経とうとしています。この間、コーチングを巡る環境は大きく変化してきました。
コーチングとは、「1対1の対話によって、クライアント(コーチを受ける人)が目標達成に必要なスキルや知識、考え方を備え、行動することをサポートする」プロセスです。
初版発行時の2010年前後は「人材開発」の領域でコーチングを活用する企業が増え、大手企業を中心に、リーダー育成やコミュニケーションスキル向上などを目的としたコーチング研修が盛んに行なわれていました。関係書籍も多く出版され、本書もその中で発行されたものです。
この10年、ビジネス環境が変化するのに伴い、コーチングの領域にも変化がありました。主だったものは、次のような傾向です。

1 エグゼクティブコーチをつける経営者の増加
VUCA(Volatility:不安定、Uncertainty:不確実、Complexity:複雑、Ambiguity:曖昧)の時代となり、一部上場の大企業の経営者から中小企業の経営者まで、エグゼクティブコーチをつける経営者が増えています。コーポレートガバナンス強化の必要性の高まりからも、経営メンバー全員にエグゼクティブコーチをつけ、経営チームの一枚岩化を目指す流れが出てきました。

2 「組織開発の手段」としてコーチングを全社導入する
組織の増加イノベーションの創出、グローバル化の促進、ダイバーシティーの推進、働き方改革の実現などに向け、「組織内コミュニケーション」のあり方が見直されています。リーダー開発やマネジメント手法といった「人材の能力開発」としてだけでなく、「組織開発」の手段としてもコーチングが注目されています。

3 エビデンスに基づいたコーチングへのシフト
「組織開発の手段」としてのコーチング導入により、プロジェクトが大型化する傾向があります。AI化の促進などに伴い、組織診断やリーダーシップアセスメントなど、リサーチやデータ分析が併用されるようになりました。効果測定を前提としたコーチングへの信頼性が高まっています。

4 マネジメントの基本が「1対1の面談」にシフト
スピードが求められるなか、マネジメントの軸を評価面談から定期的な「1対1」の面談にシフトする企業が増えています。コミュニケーション不足による認識の相違や長時間労働の軽減、業務の効率化、離職率の低下に向けて、上司がコーチング型マネジメントを学び、部下と定期的に対話することでPDCAの高速化などを実現しています。
5ビジネスからスポーツ、医療、行政、教育への広がり
製造業を中心に、金融、IT、新興ビジネス、さらにはスポーツ界、医療、行政、教育の分野でも組織変革型のコーチング導入が広がっています。組織でハブとなるリーダー層に1対1のコーチがつき、コーチング型マネジメントの手法を駆使しながら「対話文化の醸成」「風土の活性化」「理念の浸透」など組織全体の業績向上やパフォーマンスの向上に取り組む例が増加しています。

■本書の構成

こうした流れを受け、新版では「効果的なコーチング」を学ぶ入門書としての位置づけを維持しつつ、「組織開発の手段」としてコーチングを導入する企業の例にも触れています。まず、第1章でコーチングの定義と全体像を説明し、「コーチングとは何か」を解説します。
第2章と第3章では、コーチがもつべき視点と、コーチングに不可欠な原則をまとめました。「コーチングの基本」をこれほど丁寧に解説した書籍は、今なお類を見ないのではないでしょうか。
第4章からは実践編です。実際のコーチングの流れを各ステップで紹介しています。「コーチング型マネジメント」の参考にしていただくことが可能です。
第5章では、コーチングの基本スキルを簡潔にまとめたうえで、ある企業の経営者をコーチングする具体的な対話例を掲載しました。コーチングのイメージが伝わるよう、あえて「個の開発」としてのエグゼクティブ・コーチングの事例を紹介しています。
第6章では、2010年以降に進んでいる「組織開発」を目的にコーチングを多層的に導入する企業の事例を紹介しています。
一般のビジネスパーソンの方を対象とした基本書でありながら、プロのコーチとして活躍する方も読み続けていただける本書の新版の完成を嬉しく思います。
本書が、「人や組織の可能性を開く」ことに取り組んでおられる皆さんに、少しでもお役に立てればこんなに嬉しいことはありません。

2018年12月
コーチ・エイ代表取締役社長
鈴木義幸

コーチ・エィ  (著), 鈴木 義幸 (監修)
出版社 : 日本実業出版社; 新版;最新2 (2019/1/12)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 コーチングとは何か
1-1 コーチングとは
コーチングは目標達成を目指すもの
コーチングの定義
コーチの役割
コーチングは単なる「技術」ではない
コーチングの機能と特徴・投資効果の高いコーチング
1-2 コーチは目標達成を支援する
コーチングには「目標」が不可欠
「傾聴」や「質問」は手段にすぎない
目標が明確ではないとき、コーチングはできないのか?
1-3 コーチングにおける「目標」と「目的」
「目標」は「目的」へのマイルストーン
目標と目的はなぜ必要なのか?
目標と現状の間に成長テーマを発見する
クライアントが成長テーマに直面することを支援する
1-4 マネジメントとコーチング
コーチングは管理職の選択肢を増やす
管理職にコーチングスキルは本当に必要なのか?
コーチングはマネジメントの柔軟性を高める
1-5 コーチングが機能する条件
クライアントや部下の状態を見極める
誰がコーチングを必要としているのか?
まずは、相手の精神状態を気にかける
相手の成長段階を見極める
意欲は高いが、業務適応能力が低い場合
業務適応能力は徐々に向上しているが、意欲が低下している場合
コーチングは緊急事態には不向き
成長の過大評価は禁物
コーチングは使うタイミングがポイント
1-6 コーチングは可能性を探求する
コーチはクライアントの「変化」と「可能性」に着目する
クライアントの可能性に着目し続ける
何を見ようとしているかで何が見えるかが決まる
可能性への指摘が成長の資産となる
優れたコーチは変化を指摘し、成長を実感させる
1-7 コーチングは成長を探求する
コーチングのゴールは、クライアントの中に「成長のエンジン」をつくること
目標達成だけでは十分ではない
コーチはクライアントの習慣に挑戦する
クライアントの中に成長のエンジンを築く
1-8 コーチングの実際
1セットアップ→2実践→2振り返り、という流れで行なわれる
コーチングの開始
コーチングをプランニングする
対話を通じてテーマを整理する
調査をし、確かめる。
目的地にたどり着くストーリーを描く
目標を達成するための成長課題を明確にする
対話を通して軌道修正、フィードバックを繰り返す
目標達成→成長実感→自己効力感というプロセスでもある

第2章 コーチのもつべき視点
2-1 コーチがもつべき3つの視点
クライアントの成長を促進するための「PBPの視点」
Possession,Behavior,Presenceという3つの視点
コーチはPBPのうち何がいま必要なのか見極める
2-2 Possessionとは
Possessionとはクライアントが「身につけるべきもの」
必要なものを明確にする
身につけるPossessionをコーチングで特定する
2-3 Behaviorとは
Behaviorとは「行動を起こすこと」
行動を起こすためのコーチの役割
行動が起きるまでに存在する4つの壁
Possessionを現状に適用させる
使っていないPossessionを見つける
宣言することで「現状維持のバイアス」を乗り越える
行動をして振り返る
2-4 Presenceとは
Presenceとは「人としてのあり方」
Presenceが行動を決定する
Presenceは体験によってつくられる
Presenceを自覚するのは難しい
3つの要素はそれぞれ影響し合っている

第3章 コーチングの3原則
3-1 コーチングの3原則とは
コーチに欠かせない3つの要素
プロのコーチが備えるべき「心」
双方向、継続性、個別対応という3つのマインド
3-2 双方向
双方向の対話で、クライアントの無意識を顕在化させる
双方向のつもりの会話と、双方向の会話の違い
クライアントの自走状態をつくることがコーチの役割
双方向の会話で「無意識を顕在化」させる
たくさんアウトプットをさせることが重要
オートクラインとパラクライン
オートクラインを起こすための対話
質問でオートクラインを起こす
双方向が効果的な質問を生み出す
オートクラインを起こすために必要な信頼関係
信頼関係のつくり方
率直に要望して信頼関係を強める
3-3 継続性
継続的に関わることで、クライアントを着実に目標に近づける
継続して関わることでビジネス環境の変化に対応する
クライアントを目標に集中させる
コーチの役割は「意欲の向上」と「ズレの修正」
クライアントの意欲を維持向上させるための工夫
「所属の欲求」を満たすアクノレッジメント
言葉以外でもアクノレッジメントできる
「所属の欲求」からのアピールを見逃さない
「自我の欲求」を高める方法
ほめるための3種類のメッセージ
プロセスの中で、わずかでも成長を伝える
軌道修正の一例
コーチは「フィードバック」で気づかせる
さらに着実に近づけるための「リクエスト」
クライアントのことをどれだけ知っているかが重要
3-4 個別対応
クライアント一人ひとりに合ったコーチングを行なう
個別対応を実行した小出義雄監督
個別対応の難しさ
個別対応はテクニックを使う前提になる
テーラーメイド医療のようなコーチングを
「タイプ分け」が個別対応するための切り口になる
コーチは、一度貼ったレッテルを貼り替え続ける
コーチングの3原則は同時に実行されるもの

第4章 コーチング・プロセス
4-1 コーチング・プロセスとは
コーチング・プロセスは目標達成までのコーチングの流れ
6つの基本ステップ
中でも重要な3つのステップ
4-2 「目標の明確化」のポイント
真に達成したいWantto型の目標を見つけ出す
コーチングにおける目標の重要性
目標設定の難しさ
本当に達成したい目標は簡単にはわからない
憧れの目標(Hopetoの目標)は熱しやすく冷めやすい
本気かどうかを確かめる方法
Havetoの目標とWanttoの目標の違い
Havetoの目標をWanttoの目標に引き寄せるには
何のために仕事をするのか?
目的の視点から目標を意味づけする
Wanttoは探し続けなくてはいけない
目標はいつまでに決めなくてはならないか
Wantto目標の手がかりは過去にある
業績目標だけではなく成長目標を設定する
他者の行動・変化・成長を目標に設定しない
目標は継続的にリマインドする
クライアントのための「目標」についてコーチする
4-3 「現状の明確化」のポイント
4つの視点を使い分ける。
思い込みで現状を明確化するとどうなるか
なぜ、現状は思い込みで分析されてしまうのか?
映像や音声を活用して自己を客観視させる
ステークホルダーからのフィードバックで自己を客観視させる
クライアントを現実の自分と直面させる
コーチのフィードパックによって自己を客観視させる
クライアント自身に自己を客観視させる
4-4 「ギャップの原因分析」のポイント
クライアントを「自責」の状態に導く
「他責」という落とし穴
すべての責任を自分に引き寄せて考える「自責」
クライアントに「自責」の状態を選ばせる方法

第5章 コーチングのスキルと実践例
5-1 コーチングの代表的なスキル
多用される7つのコミュニケーション技術を整理する
「聞く(傾聴)」スキル
「ペーシング」のスキル
「質問」のスキル
「承認(アクレッジメント)」のスキル
「フィードバック」のスキル
「提案」のスキル
「要望(リクエスト)」のスキル
5-2 自動車メーカーのマネージャーのケース
本当の目標を見つけ、コミュニケーションカに優れた管理職に成長
ケースの概要
セッションの事前準備
クライアントとの出会い
理想の状態を描く。
エバリュエーションプランの設定から現状認識へ
理想と現実のギャップを捉え、行動の方向性を探る
行動計画をつくる
行動を開始させて、続けさせる
成果と成長を確認し、再現性と応用力をつけさせる
5-3 IT関連機器会社の社長のケース
ビジョンの策定
浸透を通して、リーダーシップが大幅にアップ
プレコーチング
ビジョンの設定
行動の実践
コーチングの急展開
エンディング

第6章 組織へのコーチング
6-1 組織全体に働きかける「システミック・コーチング」
組織開発型のコーチングにおける「リサーチ」と「効果測定」
目的にあわせた導入方法が必要
コミュニケーションを可視化して経営チームの一体化に取り組んだケース
部門間のつながりが向上し、業績がポジティブに変化
コーチング導入の背景
プロジェクト設計
取り組み内容
1年後の成果
経営チームの強化につながるエグゼクティブ・コーチングとは?
エグゼクティブ・コーチングの次の取り組み
6-2 新社長へのエグゼクティブ・コーチングで組織の受け身な体質からの脱却と黒字回復を
達成したケース
ITベンチャーのトランジション・コーチングコーチング導入の背景
プロジェクト設計
取り組み内容
コーチングによる変化
エグゼクティブ・コーチングによる成果
お客様から届いた感謝状
6-3 管理職が現場でコミュニケーション変革に活用したケース
現場リーダーのコーチングで業務改善、技術力向上、残業時間削減を実現
コーチング導入の背景
プロジェクトの概要
事業部門長への報告に使われた組織調査の概要
プロジェクト1年目~2年目の成果
プロジェクトの成功要因
6-4 組織開発に向けてコーチングを全社導入したケース
部門を越えた対話の醸成によりイノペーションの創出へ
コーチング導入の背景
社内コーチングプロジェクトの効果を高めた基本方針
社内コーチングの実践に向けた支援体制
コーチングの成果と社内コーチングの継続

参考文献

著者一覧

表紙デザイン/志岐デザイン事務所秋元真菜美

コーチ・エィ  (著), 鈴木 義幸 (監修)
出版社 : 日本実業出版社; 新版;最新2 (2019/1/12)、出典:出版社HP