はじめてのロボット工学(第2版) 製作を通じて学ぶ基礎と応用

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製作を通じて基本がわかる

ヒューマノイドロボットをベースにして、数式に頼らず図でわかりやすくロボット工学について解説されています。ロボットの歴史や構造から、モータやセンサ、機構や制御まで体系的に学ぶことができます。ロボット工学を志す方にお勧めの入門書です。

石黒 浩 (著), 浅田 稔 (著), 大和 信夫 (著)
出版社 : オーム社; 第2版 (2019/3/16)、出典:出版社HP

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第2版はしがき

本書は、2007年に発行した「はじめてのロボット工学制作を通じて学ぶ基礎と応用」の改訂版として執筆されました。
初版発行から2019年までの12年間における世の中の変化は、かつてないほど大きく、早いものでした。とくに、コンピュータネットワークやデバイスの発達はいよいよ著しく、世の中の変化や発展は、今後いっそう加速していくものと考えられます。
ロボットの開発においては、本書でも触れている深層学習などの技術によって、知能部分の発展がめざましいものになっています。人工知能技術をはじめとした新しい情報処理技術は、これまでのロボットでは実現できなかった高度な画像処理や音声処理を可能とし、人間の社会に必要不可欠な存在になりつつあります。また、インターネットをはじめとしたネットワークの技術向上もあり、ロボット単体での解決が難しいため、かつては困難であった問題を、複数のロボットや機器を協調させることで、効率よく片付けることができるようになってきました。
第2版では、上記のような著しく変化した分野への言及を追加するとともに、学習に使用する口ボットも新しいものに変更しました。
2足歩行ロボットの構成や機構の具体例については、ロボカップ世界大会のヒューマノイドリーグで優勝を果たした「VisiON4G」を用いて解説しています。実際のロボット製作実習においては、比較的かんたんに2足歩行ロボットを作ることができる入門キット「Robovic-iVer.2」を題材としています。また、パーツの作成はアルミ加工だけでなく、近年普及している3Dプリンタによる方法も解説しています。専用のWebサイトにて、3Dプリンタ用の造形データをダウンロードできるので、ロボットの製作実習を迅速に進めることができます。
本書では、最新の情報処理技術やネットワーク技術に関する言及のほか、実際のロボットを用いた実習、ロボットの基礎となる電気、物理的な知識に至るまで、ロボットについて網羅的に理解できるよう配慮しています。すぐれたロボットを実現するためには、ハードウェアとソフトウェアがうまく連携されていることが不可欠で、ロボットを正しく理解するためにも、さまざまな分野の知識や経験を、幅広くもつことが必要です。すなわち、ロボットを学ぶことは、多くの知識や専門分野への絶好の入り口であるといえます。
本書をきっかけに、さまざまな学習を進めていくことができるでしょう。みなさんの学習に役立つことを願っています。
2019年2月
著者らしるす。
本書で使用するモーション作成ソフト(RobovieMaker2)や、3Dプリンタ用の造形データは、ヴイストン株式会社の以下のWebページからダウンロードできます。
https://www.vstone.co.jp/products/robovie_12/download.html

石黒 浩 (著), 浅田 稔 (著), 大和 信夫 (著)
出版社 : オーム社; 第2版 (2019/3/16)、出典:出版社HP

初版はしがき

ご存じのように、日本は、ロボット王国といわれるくらい、世界中で最も多くのロボットを生産し、稼動させています。これらの多くは、産業用ロボットと呼ばれる工場の中での自動化や省力化をめざしたものです。ところが、皆さんの目に触れるのは、動物や人間の形をしたロボットで、これらは工場からわれわれの日常生活に入ってきて、さまざまな仕事をしたり、われわれを助けてくれることが期待されています。工場ではたらくロボットも、われわれの日常生活に入ってくる口ボットも、ロボットには変わりなく、ロボットテクノロジーと呼ばれるいろいろな技術を共有しています。
では、実際のロボットは何からできており、どのようなしくみで動作するのでしょうか?これらの疑問に対する答えは、普段、皆さんが学校などで勉強している、もしくはしてきた教科とどのように関係しているのでしょうか?本書は、このような疑問に応えるロボットの入門書です。
われわれ人間と同じように、ロボットは感じて、判断して、行動します。そのためには、まず、数学や理科、そしてコンピュータの知識が必要になります。また、将来的には国語や社会の科目とも関係し、ロボットは、さまざまな科目の知識を総合的に利用する新しい学問分野です。ですから、ロボットを通じて学ぶことで、いままで科目ごとにばらばらだった知識が、統合された形で生きてきます。
そこで本書では、必要に応じて、随所に既存の科目との関係を示し、皆さんが普段学んでいる科日が、どのようにロボット開発に役立つか実感できるように工夫しています。さらに、実際に市販されているロボットを例にして、自習ができるように、それらのロボットの使い方なども最後に解説しています。
本書の特徴は、以下の三つにまとめられます。
1.ロボットの歴史からしくみまで順番に学習できる.
2.既存の教科とロボットの技術の関係が学習できる.
3.RobovieMakerとRoboviciの説明を読むことで、ロボットを使った自習ができる。
この本を読むことで、ロボットについて正しい知識を得るとともに、そのおもしろさを発見してもらいたいと思っています。そして、世界をリードしている日本のロボット技術の将来を担う人材へと、成長してもらえればと願っています。
2006年12月
ロボット実技学習企画委員会

◆本書について

・本書の特徴

本書は、ロボットに関する事前知識のないかたでも、ロボットに関する基本的知識を獲得し、自分でロボットを作成できるようになることを目的として執筆しています。ロボティクスに関連するさまざまな分野の基本を理解したのち、2足歩行ロボットの製作実習を通じてロボティクスの全体像を理解する、という流れです。授業や講義で実際に使用していただける構成になっています。
さて、ロボティクスは幅広い知識と技術が要求される分野です。本書の内容も多岐にわたりますが、初学者が取り組みやすいように、個々の知識や技術に対する詳細な説明を省いている箇所があります(逆運動学やプログラム言語など)、それぞれの技術に興味をもったかたは、専門書を参照してください。もちろん、専門書を参照しなくても、本書を通読することは可能です。

・必要な前提知識

本書を読むために必要な前提知識は、中学校の数学・理科程度です.高等学校の生徒であれば、問題なく読了できるでしょう。また、各Chapterのはじめに、当該Chapterで説明する内容と対応する高等学校の教科書を紹介しているので、予習や復習に役立ててください。

・読者対象

本書は、おもに以下の学校に通う生徒および学生向けに執筆されています。
・高等学校(とくに工業高等学校)
・専門学校
・高等専門学校
・理工系の大学
また、ロボットに興味のある一般のかたにも、入門書として読んでいただけます。ただし、「Chapter.10 ロボット製作実習」における板金加工など、個人では実行が難しいところがあります。その場合、同Chapterで紹介している3Dプリンタで代用するなど、工夫してみてください。
なお、Appendixとして、高等学校で実際にロボットの製作実習を行った際のレポートを掲載しています。授業における注意点や課題、生徒や指導教諭の感想などが記されているため、本書を授業や講義で使用する教員のかたはAppendixをご一読ください。高等学校の教員を目指すかたにも有用でしょう。

・第2版における改訂の内容

本書は、2007年に発行された「はじめてのロボット工学制作を通じて学ぶ基礎と応用」の第2版です。初版から10年以上が経過し、CPUなどの性能向上やAI処理などの新しい技術の発展を受けて、改訂を行いました。基本的な構成は初版のままに、製品スペックなどの情報を最新のものに差し替え、また、実習で使用する部品も2018年現在容易に入手できるものに変更し、板金だけでなく3Dプリンタによる制作方法も追加しました。さらに、深層学習などにより飛躍的に進歩した分野について、「ネットワークによる連携と発展」というChapterを新設しています。
また、後述するように、初版はおもに高等学校向けの書籍として作成されましたが、第2版はその他の教育機関での使用も視野に入れました。そのため第2版は、高等学校以外でも使用しやすいように、表現と構成の一部変更を行っています。

・初版について

2007年に発行された初版は、石黒浩・浅田稔・大和信夫共著、ロボット実技学習企画委員会監修で制作されました。ロボット実技学習企画委員会は、(独)科学技術振興機構の平成17年度地域科学館連携支援事業「ヒューマノイド(人型)ロボットを動かす科学技術の実技学習」(工業高校と科学館が連係して行うロボット学習)を実施するために組織した実行委員会を母体に、(工業)高校生を対象としたロボット入門書の出版を目指した、大学・工業高校教論・ロボットベンチャーなどで構成する委員会です。

ロボット実技学習企画委員会 委員
浅田 稔(大阪大学大学院工学研究科知能・創成工学専攻教授)
石黒 浩(大阪大学大学院工学研究科知能・創成工学専攻教授)
大和 信夫(ヴイストン株式会社代表取締役)
戸谷 裕明(大阪府立淀川工科高等学校電子機械科教諭)
岡野 一也(大阪府立城東工科高等学校機械科教諭)
吉野 卓(大阪府立藤井寺工科高等学校メカトロニクス系教論)
高田 好男(大阪市立都島工業高等学校機械電気科科長教論)
谷口 邦彦(文部科学省産学官連携コーディネーター)
亀田 詠二(株式会社ベンチャーラボ関西支社アソシエイツ)
駒田 伊知朗(財団法人大阪科学技術センター普及事業部副部長)

事務局
財団法人大阪科学技術センター
(所属・肩書は初版執筆当時のものです)

石黒 浩 (著), 浅田 稔 (著), 大和 信夫 (著)
出版社 : オーム社; 第2版 (2019/3/16)、出典:出版社HP

目次

Chapter1 はじめに
1.1ロボットとは?
1.2ロボットの三つの構成要素
①知覚・認識系
②判断・立案系
③機構・制御系

Chapter2 ロボットの歴史
2.1古代のロボットから現在のロボットに至るまで
①自動人形
②19世紀の芸術と技術
③日本のあやつり・からくり人形
④20世紀のSFに登場するロボット・
⑤現代のロボット
2.2産業用ロボット
①マニピュレータと産業用ロボット
②産業用ロボットに関する標準化
2.3知能ロボット

Chapter3 ロボットのしくみ
3.1人間型ロボットの構成
①行動のための運動機能
②環境認識のためのセンサ
③認識から運動へ
3.2人間に近づくロボット・
①人間に近い情報処理の流れ
②人間に近づくセンサ
③人に近づく腕

Chapter4 モータ
4.1モータの基礎
①磁石と磁界
②電流による磁界
③磁界内の電流
・高校教科書で学ぶロボット①モータの基礎
4.2さまざまなモータ
①直流モータ
②ステッピングモータ
③交流モータ
・高校教科書で学ぶロボット②さまざまなモータ
4.3サーボシステム
①サーボシステムの基本構成
②R/Cサーボモータ.
・高校教科書で学ぶロボット③サーボシステム
4.4運動とカ
①回転運動と往復運動
②カ、トルク、出力
③リンク機構
・高校教科書で学ぶロボットの運動とカ
4.5その他のアクチュエータ
①直動アクチュエータ
②振動アクチュエータ
・高校教科書で学ぶロボット⑤その他のアクチュエータ

Chapter5センサ
5.1センサの概要
5.2外界センサ
①CCDカメラ(視覚センサ、全方位センサ)
②マイクロフォン(聴覚センサ)
③タッチセンサ(触覚センサ)
④超音波センサ(距離センサ)
5.3内界センサ
①ポテンショメータ(接触式角度センサ)
②光学式ロータリエンコーダ(非接触式角度センサ)
③タコメータ(角速度センサ)
④ジャイロセンサ(方位角センサ)
・高校教科書で学ぶロボット⑥センサ

Chapter6機構と運動
6.1ロボットを動作させるための関節機構・
①直交座標ロボット
②円筒座標ロボット
③極座標ロボット
④多関節ロボット
・高校教科書で学ぶロボット⑦ロボットの構成と機構
6.2動作の生成
6.3移動機構
①車輪移動の基本構造
②ロボット用移動機構
③脚による移動機構

Chapter7情報処理
7.1コンピュータの基本構成
①コンピュータ処理の流れ
②コンピュータの基本構成
・高校教科書で学ぶロボット⑧コンピュータの構成
7.2コンピュータの基本動作
①命令実行の流れ
②コンピュータの限界
7.3CPU
①CPUの発達
②コンピュータの選びかた
・高校教科書で学ぶロボット⑨CPUの構成と発展
7.4プログラム開発
・高校教科書で学ぶロボット⑩プログラム言語とアルゴリズム
7.5コンピュータによる制御
1制御システムの構成
②モータの制御のプログラミング
・高校教科書で学ぶロボット⑪制御の基本
7.6人間型ロボットのプログラミング

Chapter8行動の計画と実行
8.1古典的アーキテクチャ
8.2反射行動に基づくアーキテクチャ
8.3反射行動に基づくアーキテクチャの具体例
8.4計画行動
①計測や移動の誤差
②観測時間
③人間による誘導

Chapter9ネットワークによる連携と発展
9.1ネットワーク技術の発展
①コンピュータ通信発展の歴史的経緯
②有線ネットワークと無線ネットワーク
9.2ロボットへのネットワークの搭載
9.3クラウドサーバと連携したロボット
9.4ネットワークでつながった世界「IoT」

Chapter10ロボット製作実習
10.1ロボットを動かすためのソフトウェアRobovieMa
①動作環境
②RobovieMaker2のインストール
③PCへのCPUボードの接続
④ロボットプロジェクトの作成
⑤基本操作
⑥CPUボードとサーボモータ1個を接続して動かす
10.2モーション作成実習
①サーボモータの位置補正について
②基準ポーズについて
③サーボモータの位置補正を行う
Columnモータロックについて
④歩行モーションの作成
⑤歩行モーションにおけるポーズの実行順序
10.3アルミ加工
①材料
②工具
③アルミ板金の作業工程
④各板金の寸法データ
10.4ロボットの組立て(アルミ加工版)
①必要な部品
②ロボットの組立て
10.53Dプリンタ
①材料
②工具
③3Dプリンタでの作業工程
10.6ロボットの組立て(3Dプリンタ版)
①必要な部品
②ロボットの組立て

Chapter11おわりに
11.1結局,ロボットってなに?
11.2ロボットへの期待
11.3現在のロボット
11.4家庭用ロボット
11.5ロボットが必要な未来の世界

Appendix高校の授業でロボットを作る
A.1ロボット産業を支える技能人材の育成
A.2工業高校におけるロボット学習の概要
A.32足歩行の克服
A.4足の改良
A.5成果発表会(デモンストレーション)
A.6成果発表会(ロボット操作体験の指導)
A.7ロボット学習の評価
A.8用語の理解について
A.9総括

参考文献
索引
著者略歴

Chapter1はじめに
1.1ロボットとは?
1.2ロボットの三つの構成要素
おもな内容
・ロボットと呼ばれる機械装置にはどのようなものがあるか?
・ヒューマノイドのコミュニケーション機能の重要性
・ロボットの「知覚・認識」「判断・立案」「機・制御」という三つの機能における、センサや構成部品およびはたらきを制御するための理論

石黒 浩 (著), 浅田 稔 (著), 大和 信夫 (著)
出版社 : オーム社; 第2版 (2019/3/16)、出典:出版社HP