イラストで学ぶ ロボット工学 (KS情報科学専門書)

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ロボット工学の基礎が身に付く

ストーリー仕立てで進んでいくため、ロボット工学の基本を難なく理解することができます。マニピュレータ制御における数学的・物理的なイメージを掴むこともでき、章末問題を通して計算力が身に付きます。初学者には最初に手に取ってほしい1冊です。

木野 仁 (著), 谷口 忠大 (監修)
出版社 : 講談社 (2017/11/22)、出典:出版社HP

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イラストで学ぶ
ロボット工学
木野仁 著
谷口忠大監修

ご注意

①本書を発行するにあたって、内容について万全を期して制作しましたが、万一、ご不審な点や誤り、記載漏れなどお気づきの点がありましたら、出版元まで書面にてご連絡ください。
②本書の内容に関して適用した結果生じたこと、また、適用できなかった結果について、著者および出版社とも一切の責任を負えませんので、あらかじめご了承ください。
③本書に記載されている情報は、2017年7月時点のものです。
④本書に記載されているWEBサイトなどは、予告なく変更されることがあります。
⑤本書に記載されている会社名、製品名、サービス名などは、一般に各社の商標または登録商標です。

イラスト:峰岸桃
図版:TSスタジオ
デザイン:達由則(達デザイン事務所)

監修にあたって

ロボット産業が再び注目されています。人工知能技術の発展は画像認識や音声認識、自然言語処理といった領域に大きなインパクトを与えて、実世界情報処理の可能性を大きく広げました、ディープラーニングに代表される2010年代に入ってからの人工知能ブームは機械学習技術をその本質にしながらも、「人工知能」という一括りの言葉で、多くの人を惹き付け、また、多くの企業や学者、政府、そして一般の人々の未来展望を揺さぶっています。アニメやゲームを通してロボット好きの日本人は特に人工知能の発展と聞くと、万能な家庭用ロボットや産業用、オフィス用のロボットの実現を連想します。「人工知能×ロボティクス」への注目は2010年代後半以降の学問や産業の発展を間違いなく後押ししていくでしょう。
さて、2010年代の人工知能ブームはほぼ「パターン認識ブーム」だと括ることができます。パターン認識とは口ボットが世界を「認識」するための技術です。しかし、ロボットが私達の暮らす世界の中で活動し、私達の仕事を手伝おうとするならば、ロボットは実世界の中で「行動」する必要があります。身体を動かすことは物理学でいえば力学の延長線上に存在し、それは、多くの人工知能研究やIT技術で扱われるような、コンピュータの中に閉じた情報処理とはまた異なった学問と知識と感性を要求します。人工知能×ロボティクスの時代にあっては、そのような実世界でロボットが動くための学問を感覚的に理解し、動かし、語れる人材がより多く求められるでしょう。
本書はこれまでに出版されてきたロボット工学の教科書よりも、より広い層に学んでいただき、できるだけ平易にご理解いただくために、ストーリーを交えながら魅力的な一冊を作ろうと努めました。ストーリーを形作るために、拙著「イラストで学ぶ人工知能概論』で活躍したホイールダック2号くんにホイールダック2号@ホームとして装いも新たに再登場してもらいました。「このホイールダック2号@ホームを家庭用ロボットとしてチューンナップして行く」というストーリーのうえで、皆さんには少しずつロボット工学の知識を学んでいただければと思います。
筆者の木野仁先生は終始エネルギッシュに執筆してくださいました。初めてお会いしたときからガンオタ(ガンダムオタク)教授の称号にふさわしいコテコテのノリで、企画が始まったときから「個性的な一冊」ができ上がることは約束されていたかと思います。編集の横山真吾さんには前作『イラストで学ぶ人工知能概論』に引き続きテンポの良いマネジメントで企画を出版まで導いていただきました。イラストの降岸桃さんには子育ての忙しい中、ホイールダック2号のバージョンアップや新キャラのデザインにも活躍していただきました四人のチームで作ったこの一冊が、皆さんのロボット工学への心の壁を取り除く秘密兵器になれば幸いです。
2017年8月
京都の自宅にて 谷口忠大

はじめに

本書ではロボット工学の中でも、特にロボットのマニピュレータの制御について学んでいく。しかし、対象をマニピュレータ制御に限定したとしても、多くの知識を必要とする。マニピュレータ制御に関して数多くの良書が存在するが、これらは非常に専門性が高く、内容の理解には高度な工学知識を必要とすることが多い。そして、それらの工学知識の根底にあるものは数学と物理である。一方、最近の細分化された大学の学部・学科では、カリキュラム上の問題から、専門性の高い数学・物理の教育に十分な時間を割くことができず、結果として、マニピュレータ制御の良書を理解できるだけの知識を習得できない学生が多い。
そこで本書では、マニピュレータの運動を平面内に限定することで、できるだけ高校や大学初等レベルの基礎的な数学・物理の知識を利用し、マニピュレータ制御を解説していくそれでも、可能な限り重要な数学的記述を省略することなく、ロボット工学における数学的・物理的なイメージを大切にする。本書で基礎的なことを学び、より高度な知識が必要となった際には、本書巻末のブックガイドに紹介するような高度な専門書にチャレンジしてほしい。
また、読者のイメージをできるだけ助けるために、姉妹書である『イラストで学ぶ人工知能概論』に登場するホイールダック2号に再登場してもらうことにしたホイールダック2号にマニピュレータを新設することで、要求されるさまざまな仕事に対し、どのようにマニピュレータを制御するのかを解説していく。
なお、本書の内容の一部は、著者の電子書籍「高校の知識で挑む!本格的なロボット工学(Kindle版)」を大幅に加筆・修正したものであることをお断りしておく。
2017年7月
著者 木野仁

本書の登場人物


ホイールダック2号@ホーム
アヒルに見た目が似ていることから「ホイールダック2号」と名付けられたペンギン型ロボットの改造版シリアルリンク構造をもつマニピュレータ(ロボットアーム)を1基取り付けられることで物体把持など家庭用ロボットとして必要なタスクを実行できるようになった。

ホノカ
未来都市ハカタに住む女子中学生、ひょんなことからホイールダック2号@ホームのモニターに選ばれる。ホイールダック2号のことが大好きで、ホイールダック2号の失敗でひどい目にあっても、いつも笑顔、好きな花はアジサイ。

おじいちゃん
ホノカの祖父ホノカの自宅から徒歩圏内に住んでいる。孫のことを大変可愛がっており、ホノカも毎週のようにおじいちゃんの家に顔を出している。ホノカが連れてきたホイールダック2号を笑顔で招き入れる。実は地元の有力者。

助手
博士の研究所で研究の補助を行う助手、アメリカの一流大学で学位を取得するが、帰国し博士の研究所に参加する。趣味は乗馬、眼鏡は伊達メガネ少女時代の将来の夢は幼稚園の先生学位はPhD。

博士
ホイールダック2号@ホームの生みの親、人工知能やロボット工学を始めとした多岐にわたる分野に精通している。いつの日か、ホイールダック2号が全世界で活躍する日のことを夢見ている。趣味は紅茶と読書学位は博士(工学)。

工場長
博士の研究所に併設される機械工作センターの技術スタッフ。通称、工場長。切削や溶接といった機械工作のみならず、センサ、アクチュエータ、電子回路、さらには計算機のオペレーティングシステムにも精通するスーパーマン、発明家でもあり特許収入は手取りを超える。

木野 仁 (著), 谷口 忠大 (監修)
出版社 : 講談社 (2017/11/22)、出典:出版社HP

目次

監修にあたって
はじめに
第1章 マニピュレータを制御しよう
1.1ロボットとは何か?
1.1.1アニメ・SFの中のロボット
1.1.2学問としてのロボット工学
1.2ロボットの要素技術とマニピュレータ制御
1.2.1ロボットの要素技術
1.2.2マニピュレータ制御
1.3ロボット工学の基礎知識
1.3.1システム
1.3.2マニピュレータの構成要素
1.3.3フィードフォワード制御とフィードバック制御
1.4ホイールダック2号@ホームと学ぼう!
1.4.1ホイールダック2号@ホームのストーリー
1.4.2ホイールダック2号@ホームのスペック

第2章 基本的な制御(並進系)
2.1並進系の力学
2.1.1物理と微分・積分
2.1.2微分と速度・加速度
2.1.3積分と速度・加速度
2.1.4自由落下の公式と微分・積分
2.2並進運動におけるP制御
2.2.1P制御の考え方
2.2.2P制御の動作
2.3並進運動におけるPD制御
2.3.1ダンパ(減衰器)とは
2.3.2並進運動のPD制御

第3章 基本的な制御(回転系)
3.1回転系の力学
3.1.1角速度と角加速度の関係
3.1.2トルクとは、
3.1.3慣性モーメントとは
3.1.4並進系と回転系の類似性
3.2回転運動におけるPD制御

第4章 自由度と座標系
4.1自由度の概念
4.1.1並進系の自由度
4.1.2回転系の自由度
4.1.3並進+回転系の自由度
4.1.4関節の簡易的な表記
4.2手先自由度と関節自由度
4.2.11自由度と2自由度の例
4.2.2目的の運動と手先自由度
4.3非冗長と冗長
4.4関節と手先の座標系

第5章 順運動学と逆運動学
5.1運動学の概念
5.1.1順運動学と逆運動学
5.1.2関節角度センサにおける角度計測
5.2順運動学
5.3逆運動学
5.3.1逆運動学の計算
5.3.2逆運動学の特徴
5.4冗長マニピュレータの運動学

第6章 ロボット用アクチュエータ
6.1ロボット用アクチュエータの種類
6.2電磁駆動アクチュエータ
6.2.1直流モータの仕組み
6.2.2直流モータのトルク制御(モータドライバ)
6.3油圧駆動アクチュエータ
6.4空気圧駆動アクチュエータ
6.5その他のアクチュエータ
6.5.1超音波アクチュエータ
6.6DA変換器(DAコンバータ)

第7章ロボット用センサ
7.1ロボット用センサの種類
7.2角度センサ
7.2.1ポテンショメータの仕組み
7.2.2エンコーダの仕組み
7.3角速度センサ
7.3.1角速度センサの仕組み
7.3.2角度センサを用いた問接的な角速度計測
7.4カセンサ
7.4.1歪ゲージを使った力センサ
7.4.2ホイートストンブリッジ回路を用いた電圧計測
7.5AD変換器(ADコンバータ)
7.5.1AD変換器の仕組み
7.5.2DA/AD変換器を用いたロボットのシステム構築

第8章 関節座標系の位置制御
8.1PTP制御と軌道制御
8.2関節座標系PD制御
8.2.1PD制御を用いた1リンク1関節システムのPTP制御
8.2.2PD制御を用いた2リンク2関節システムのPTP制御
8.3重力補償
8.3.1重力の影響による誤差
8.3.21リンク1関節システムの場合の重力補償
8.3.32リンク2関節システムへの重力補償の拡張
8.4PTP制御を用いた簡易的な軌道制御

第9章 速度制御
9.1ベクトル・行列の基礎
9.1.1ベクトル・行列の定義と基礎的な計算
9.1.2逆行列
9.1.3転置と微分
9.2速度関係とヤコビ行列
9.2.1手先速度と関節角速度の関係
9.2.2手先速度と関節角速度の逆関係
9.3分解速度法による軌道制御
9.4特異姿勢

第10章 力制御と作業座標系PD制御
10.1ロボットの力制御
10.1.1フィードフォワードによる力制御
10.1.2フィードバック型の力制御
10.2作業座標系PD制御法

第11章 人工ポテンシャル法と移動ロボットへの応用
11.1人工ポテンシャル法
11.1.1はじめに
11.1.2ポテンシャルによるPD制御の解説
11.1.3人工ポテンシャル法
11.2作業座標系制御における障害物回避
11.2.1マニピュレータの障害物回避
11.2.2移動ロボットの位置制御への応用

第12章 解析力学の基礎
12.1静力学と動力学
12.1.1バネ問題
12.1.2運動方程式とは
12.1.31リンク1関節マニピュレータの運動方程式
12.2ラグランジュ法による運動方程式の導出
12.2.1ニュートン・オイラー法とラグランジュ法
12.2.2一般化座標・一般化速度・一般化力
12.2.3ラグランジュの運動方程式
12.3運動方程式の計算例
12.3.1【計算例1】斜面を滑る物体の運動
12.3.2【計算例2】1リンク1関節システム
12.3.3【計算例3】並進と回転の複合したシステム

第13章 ロボットの動力学
13.12リンク2関節マニピュレータの運動方程式
13.2順動力学と逆動力学
13.2.1動力学の分類
13.2.2順動力学
13.2.3逆動力学
13.3計算トルク法による軌道制御
13.3.1並進1自由度システムの例
13.3.2マニピュレータにおける計算トルク法
13.3.3アクチュエータの運動方程式

第14章 インピーダンス制御
14.1ドアノブ問題
14.1.1はじめに
14.1.2ドアノブ問題の整理
14.2電気インピーダンスと機械インピーダンス
14.3インピーダンス制御のイメージ
14.4インピーダンス制御の方法
14.4.1はじめに
14.4.2力制御ベースのインピーダンス制御
14.4.3位置制御ベースのインピーダンス制御
14.5コンプライアンス制御

第15章 まとめ
15.1ホイールダック2号@ホームの開発物語:総集編
15.2マニピュレータの構造
15.2.1シリアルリンク構造とパラレルリンク構造
15.2.2パラレルワイヤ駆動システム
15.2.3腱駆動ロボット
15.3受動歩行ロボット
15.4ロボットの知能化

巻末付録
A.1PID制御を用いたより高精度な位置制御
A.1.1PD制御における摩擦の影響
A.1.2PID制御を使った摩擦補償

ブックガイド
おわりに
章末問題の解答例

第1章 マニピュレータを制御しよう

STORY
スフィンクスを倒して研究所に帰ってきたホイールダック2号.しかし、想像以上に損傷は激しく、博士は思い切ってホイールダック2号の修復とパワーアップをすることにした。博士がホイールダック2号の修復を終えると、なんとホイールダック2号にはマニピュレータ(ロボットアーム)が付いていた。博士は言う「これからは家庭用ロボットの時代だよ、人を助けるためには腕1本くらいないとね」家庭用ロボットとして進化したホイールダック2号@ホームの誕生である!

図1.1改造によりマニピュレータ(ロボットアーム)が付き、ホイールダック2号@ホームとして生まれ変わったホイールダック2号

木野 仁 (著), 谷口 忠大 (監修)
出版社 : 講談社 (2017/11/22)、出典:出版社HP