入門『地頭力を鍛える』 32のキーワードで学ぶ思考法

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AI時代に必須の”地頭力”

「思考力」とは「自分の頭で考える力」であり、その思考力を身に付け、育成することによって、AIとは違う「人間の役割」を果たすべきであると著者は言います。本書では、これからの社会で自分の役割を果たすのに不可欠な「思考力」、つまり「地頭力」を鍛えるための方法が、32のキーワードを解説していくことを通して述べられています。

細谷 功 (著)
出版社 : 東洋経済新報社 (2019/7/26)、出典:出版社HP

この作品は、2019年8月に東洋経済新報社より刊行された書籍に基づいて制作しています。
電子書籍化に際しては、仕様上の都合により適宜編集を加えています。
また、本書のコピー、スキャン、デジタル化等の無断複製は、著作権法上での例外である私的利用を除き禁じられています。本書を代行業者等の第三者に依頼してコピー、スキャンやデジタル化することは、たとえ個人や家庭内での利用であっても一切認められておりません。

はじめに

AI(人工知能)が飛躍的な発展を遂げ、私たちの生活に大きな影響を与えつつあります。ビジネスの現場では、ビッグデータやIoT(Internet of Things)といったデジタル技術とともにAIを活用することで大きなチャンスが広がっています。同時に、いま人間が行っている定型業務を中心とする仕事の多くの部分がAIに取って代わられるだろうという予測もあります。
このように人間の知的能力に対する大きな問題提起がされている時代に重要なのが、既成概念にとらわれずに自ら能動的に問題を発見し、やるべき解決策を考えて、それを行動に移していく力です。その一方で、これまで日本の学校や会社で重視されてきたのは、それとはまったく逆の次のような能力でした。

・定められた知識を受動的に記憶する
・決められた時間やルールを守る
・個性よりもチームワーク重視で、皆同じことを一斉に足並み揃えて行う
・与えられた命令をミスなく着実に実行する

このような能力は、例えば、20世紀に日本が奇跡的とも言える成長を遂げた要因でもある、自動車や電機製品といったハードウェアを完璧な品質で仕上げる場面では見事に強みとなりました。一方で、既成概念にとらわれない、創造的かつ能動的な発想をする上では、これまたものの見事に負の遺産となってのしかかってきます。
それを象徴的に表すのが、バブル期を境に日本が「世界の優等生」から先進国でも有数の経済停滞国に落ち込んだことです。
学校や企業における「従来の優等生」が持っている資質、能力は、実はAIが最も得意とする領域でもあり、ここはAIに任せればいいでしょう。人間はその上流、つまりそもそも解決すべき問題や目的を見つけることにシフトしていくべきなのです。
本書はそのような能力を身に付けるための入口となる本です。
思考力とはすなわち「自分の頭で考える」ことであり、本来そのためのテキストはあってないようなものです(そもそも「テキストを読んでいる」時点で自分の頭で考えることにはなっていません)。そうは言っても自ら考えるにも最低限の知識を押さえておくことは必要です。
本書はそのような初学者のために、まずは思考(法)に関する基本的なキーワードを学んだ上で本格的な思考力を身に付ける学習に入っていくための入口を提供します。
読者の皆さんに本書で習得していただきたいのは、「思考」に関する32のキーワードの【WHAT】【WHY】【HOW】です。

・【WHAT】そのキーワードの基本的な定義と意味
・【WHY】そのキーワードが重要な理由
・【HOW】そのキーワードの具体的な活用方法

キーワードそれぞれについて、この順に解説していきます。
さらに各キーワードの最後に理解度の確認として【理解度確認問題】と【応用問題】をクイズ的に用意しました。本文を読めば必ずわかる問題になっていますので、もしすぐにわからなければ、本文をもう一度読み直してみてください。

「人間の知的能力に対する問題提起」という課題は、私自身がもう10年以上も著作や研修活動で取り組んできたことです。
『地頭力を鍛える―問題解決に活かす「フェルミ推定」」をはじめとするさまざまな著作においてそれを表現し、人間の知的能力がどうあるべきかという問いに対する私の考え方を提示してきました。
本書は、それらの本を読む前に、あるいはそれらの本と同時に読んでいただきたい、いわば思考(法)を学ぶための入門の入門書です。これまでの私の著作でも多くを語ってきた、さまざまなキーワードの一つひとつについて、簡潔にまとめて解説しています。
本来、「考える」ことと「知識を獲得する」ことでは、頭の使い方が異なります。本書は「考える」に至るまでの基本的な知識を身に付けるための本です(その意味で「読者に考えさせること」を目的としてきたこれまでの著作とは(内容的には抜粋ではあるものの)目的が異なっています)。
思考への入口を提供する本書によって、まずは基本的な知識を習得した上で、その後の「自ら能動的に考える」ためのトレーニングに進む気になってもらえれば、本書の目的は達せられたことになるでしょう。
2019年6月
細谷功

細谷 功 (著)
出版社 : 東洋経済新報社 (2019/7/26)、出典:出版社HP

目次

はじめに
Chapter1 基本の思考法を押さえる
思考の基本動作を身に付ければさまざまに応用できる
【キーワード01】戦略的思考
いかに並ばずに人気のラーメンを食べるか?
【キーワード02】ロジカルシンキング
誰が見ても話がつながっているか?
【キーワード03】仮説思考
プロジェクトは「最終報告」から考える
【キーワード04】フレームワーク
良くも悪くも「型にはめる」
【キーワード05】具体と抽象
思考とは「具体→抽象→具体」の往復運動
【キーワード06】「なぜ?」
なぜ「Why?」だけが特別なのか?
【キーワード07】アナロジー思考
アイデアは遠くから借りてくる

Chapter2 二項対立で考える
「視点」と「思考の軸」を意識して使い分ける
【キーワード08】二項対立
二者択一はデジタル的、二項対立はアナログ的
【キーワード09】因果と相関
雨が降れば傘が売れるが、傘が売れても雨が降るわけではない
【キーワード10】演繹と帰納
「そう決まっているから」なのか?「多くがそうだから」なのか?
【キーワード11】発散と収束
「落としどころありき」の思考停止に陥ってはいけない
【キーワード12】論理と直観
「論理」で守り、「直観」で攻める
【キーワード13】論理と感情
できるビジネスバーソンは「使い分け」がうまい
【キーワード14】川上と川下
「自ら考える力」は使いどころを見極める

Chapter3 コンサルタントのツール箱
コンサルっぽい見せかけだけでなく、「魂を入れる」ことができるか
【キーワード15】ファクトベース
「みんな言ってる」って、どこの誰がいつ言ったのか?
【キーワード16】MECE
「マッキンゼー流」の十八番
【キーワード17】ロジックツリー
「形から入る」ことで論理が身に付く
【キーワード18】2×2マトリックス
コンサルタントが好きな4象限マッピング
【キーワード19】フェルミ推定
なぜコンサル、外資系金融の面接試験の定番なのか?

Chapter4 AI(人工知能)vs.地頭力
AIではなく、人間ならではの知的能力の使いどころがある
【キーワード20】地頭力
結論から、全体から、単純に考える
【キーワード21】問題発見と問題解決
なぜ優等生は問題発見ができないのか?
【キーワード22】AI(人工知能)
何ができて、何ができないのか?
【キーワード23】ビジネスモデル
「何を売っているか」ではなく「収益の上げ方」のパターン
【キーワード24】多様性
思考回路の転換と「ニワトリと卵」の関係
【キーワード25】未来予測
アマゾンは書店の代替ではない、と気づいたか?

Chapter5 「無知の知」からすべては始まる
「いかに自分は知らないか」を自覚することから思考回路は起動する
【キーワード26】無知の知
自分を賢いと思ったらゲームオーバー
【キーワード27】知的好奇心
地頭力のベースであり、考えることの原動力となる
【キーワード28】能動性
「育てる」ではなく「育つ」
【キーワード29】常識の打破
「常識に従う」ことで思考停止に陥ってはいけない
【キーワード30】「疑う」こと
「信じてはいけない」(この本に書いてあることも)
【キーワード31】認知バイアス
人間の目は曇っている。
【キーワード32】メタ認知
気づくためには上から自分を見る
おわりに
本書のベースとなった書籍

Chapter1 基本の思考法を押さえる

細谷 功 (著)
出版社 : 東洋経済新報社 (2019/7/26)、出典:出版社HP