一番やさしい自治体財政の本 第2次改訂版

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自治体財政についての入門書

本書は、自治体の財政担当職員だけではなく、公務員初任者から地域住民、学生まで、自治体財政についての知識がほとんどない人に向けられた完全な入門書です。他の自治体財政についての書籍と比べてもタイトル通り「一番やさしい」ので、初めて学ぶ方でも理解しやすくなっています。

小坂 紀一郎 (著)
出版社 : 学陽書房; 第2次改訂版 (2018/11/15)、出典:出版社HP

第2次改訂に際して

この本の初版を2003(平成15)年に出してから、早くも15年経ちました。2007(平成19)年に改訂してからでも10年以上になります。幸いにも、ややこしい自治体財政を分かりやすく説明してくれる本として、読者のみなさんに受け入れていただきました。しかし、この間、数字はもちろんのこと、制度も、その上、自治体財政が置かれた環境もかなり変わりました。旧版では、近くやってくるという感じでしか受け止められていなかった少子高齢化が現実のものとなり、第1次改訂版(平成18年度決算)では17.5%に留まっていた民生費の割合が24.1%に急上昇したことが象徴的です。
この第2次改訂版が、引き続き、自治体財政への一番やさしい手引きとしてお役に立てば誠に幸いです。
なお、今回、各種数値を更新するに当たり、総務省自治財政局財務調査課(山越伸子課長、宮野哲史課長補佐)のご教示をいただきました。

2018(平成30)年10月
小坂紀一郎

はしがき

これは自治体の財政についてほとんどご存知ないみなさんのための本です。住民のみなさん、学生諸君、公務員初任者、新人自治体議員、自治体議員志望者その他地方自治に関心を持ち、自治体の財政について知りたい方々、知る必要がある方々が対象です。
地方自治への関心が高まっています。国から自治体へもっと権限を移そうという地方分権への動きも着実に進んでいます。いろいろな形で自治体の行政にものを言い、参加する住民も増えてきました。自分たちの足元の政治・行政に目を向けようとするこのような流れは、私たちの社会が成熟してきた1つの表われだと考えてよいでしょう。たとえ少しずつでも自治体が変われば国全体にも大きく影響します。日本は約3,200の自治体から成り立っているのですから。
しかし、自治体の行政への関心が高い割には自治体の財政への認識は極めて低いと言わざるを得ません。それを賄う財源のことは全く考えずに行政サービスの充実を求める傾向がこの事実をはっきり物語っています。住民ばかりではありません。自治体議員や、ことによると首長に至るまで、財政への関心と理解はもうひとつです。
なぜこうなのか、根本の原因は、いまの自治体財政の制度そのものにあります。受益と負担とが見あわず、国に頼っているしくみからは関心を持つ必要が出てこないのです。これと密接に関係していますが、制度の分かりにくさも理解を妨げている大きな要素です。
自治体の行政には関心があるが、財政のことはさっぱり分からないし関心もないといういびつな姿から健全な地方自治が成長するはずはありません。自治体財政に対する理解を広めなければならない大きな理由です。
ところが、自治体財政に関する本は世に多く出ていますが、このような目的に沿ったものはあまり見当たりません。一見やさしく書いたものはあっても、どちらかと言えば公務員向けの実務書で、行政用語やお役所の事情にはうとい一般住民には決してとっつきやすいとは言えません。また、制度や用語をやさしく解説したものはあっても、実態や問題点までふれたものはほとんどありません。

この本は、自治体財政について基礎知識を得たいと望む方が、頭を痛くすることなく、肩をこらすことなく気楽に読んでいただけることを目指して次のような方針で書きました。

1. 自治体財政について、制度から財政診断、財政の改革まで一通りの項目は取り上げました。
2. 具体的に身近に感じていただけるよう「あなたのまち」という形で市町村の例を中心に説明しています。しかし、多くの部分は都道府県にも当てはまります。
3. 要点を呑みこんでいただくために細かいところは省略してあります。枝葉には目をつぶり、根幹をつかんでいただくように努めました。
4. 単に制度の解説をするだけでなく、実態と問題点についてもかなりつっこんで私の考えを述べています。蒸留水のような無味乾燥な説明では面白いはずはなく、財政は生きているものだからです。

この本が題名どおりやさしく分かりやすいものになっているとすれば自治体財政について何も知らない主婦の代表として原稿に目を通して率直な疑問をぶつけ、こんなことも知らないのかと私をあきれさせたり、ハッとさせてくれたりした妻緑のおかげです。
小著が自治体財政への理解を進め関心を高めるのに少しでもお役に立てばこれほどうれしいことはありません。
2003(平成15)年8月
小坂紀一郎

小坂 紀一郎 (著)
出版社 : 学陽書房; 第2次改訂版 (2018/11/15)、出典:出版社HP

もくじ

はしがき
1章 自治体財政へようこそ
1 自治体は暮らしのサポーター
2 行政サービスの担い手
3 お金はどこから来てどこへ行くの?

2章 自治体財政の中心—地方税
1 税金のいろいろ
2 住民税は地方税の主役
3 固定資産税は市町村税の王様
4 事業税は都道府県税の柱
5 地方税のなかまたち
6 地方税の自由度

3章 国から来るお金—地方交付税と補助金
1 税金だけでは足りない
2 地方交付税のしくみ
3 地方交付税の光と影
4 補助金のはなし

4章 財源をやりくりする
1 自治体が借金するとき—地方債のはなし
2 やりくりの実際

5章 予算の手ほどき
1 予算ってなに?
2 予算のルール
3 予算のかたち
4 予算は巡る

6章 予算を読んでみよう
1 歳入のカンドコロ
2 歳出の急所、11のポイント
ポイントその1 言っていることとやっていることの一致度
ポイントその2 プランプランしていないか
ポイントその3 メニューを眺めよう
ポイントその4 今日の課題への取り組み
ポイントその5 大物に注意
ポイントその6 長期事業に注意
ポイントその7 将来の負担につながるものを見逃すな
ポイントその8 ハコモノにご用心
ポイントその9 同じ財布の中の移動、繰出金は何のため?
ポイントその10 ブラックボックスをこじ開けよう
ポイントその11 一事を生やすは一事を減らすにしかず

7章 あなたのまちの財政診断
1 決算のかたち
2 診断のカルテ
3 限られたお金を有効に

8章 自治体財政をみんなのものに
1 自治体にもっと自由と力を
2 議会を生き生きと
3 住民の手で不正を正す

おわりに 自治体財政と日本の未来
もっと詳しく知るための情報案内

小坂 紀一郎 (著)
出版社 : 学陽書房; 第2次改訂版 (2018/11/15)、出典:出版社HP