いまこそ知りたいシェアリングエコノミー

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働き方と生き方を変える幸せの指南書

本書は近年流行っている、シェアリングエコノミーが流行に至るまでのシェアの歴史から最先端の事例(国外、国内)まで幅広く扱っている内容です。シェアリングビジネスの基礎を網羅的に把握したい方におすすめです。シェアする未来が、自分の生活や社会にどんな幸せを及ぼすだろうかと、ワクワクしながら読み進めることができます。

長田 英知 (著)
出版社 : ディスカヴァー・トゥエンティワン (2019/9/27) 、出典:出版社HP

はじめに

今、私たちは時代の転換点を迎えています。
2019年は、元号が平成から令和に変わった年です。
新しい時代の幕開けを祝福するかのように、2020年には二度目の東京オリンピック、2025年には二度目の大阪万博が開催されます。
最初の東京オリンピックと大阪万博が行われた1960年代~1970年代前半は、日本の経済成長が軌道に乗った時期でもありました。
新幹線や首都高速道路、羽田空港(現・東京国際空港)など、その後の経済発展を支える社会インフラに多くの投資がされました。また、一般家庭に「三種の神器」と呼ばれたカラーテレビ、洗濯機、冷蔵庫などが普及していったのもこの時代です。
最初の東京オリンピックで使用された代々木体育館を設計した丹下健三氏は「東京計画1960」の中で、新しく大胆な都市像を提示しました。
結局、その計画は実現に至りませんでしたが、大胆な提案が出され、受け入れられるような空気感がこの時代にはあったように思います。
一方、二度目のオリンピックと万博を迎えようとしている現在、世間が高揚感やきらびやかさに満ちているかというと、そうではないように感じます。
もちろん新しい時代を祝うイベントや式典はあり、ゴールデンウィークの2連休では、多くの人がレジャーを楽しんでいました。しかしそれは、「新しい時代を無邪気に楽しむ」という雰囲気ではなかったように思います。
その大きな理由としては、「人口減少」「高齢化」「一極集中」など、日本の将来への漠とした不安が現実味を帯びてきたことがあるのではないでしょうか。
2020年、東京都、沖縄県を除く4の道府県で人口が減少に転じます。
2025年には、団塊の世代が方歳以上の後期高齢者となり、人口の5人に1人が5歳以上になります。
そして超高齢化社会を見据えて、年金支給年齢の引き上げや支給額の引き下げなどが検討されています。さらにはAIやテクノロジーの進展により、単純作業だけではなく、専門的な仕事までもがロボットやシステムにどんどん代替されていきます。そのような中、「人はどのようにして自らの存在意義を見出していくのか」を一人ひとりが真剣に考えなければならないときを迎えています。
私たちは今日、「生まれてから、死ぬまで」を豊かに安心・安全に暮らしていくことがとても難しい時代を生きています。
もちろん戦争などの社会不安がある時代とは異なり、表面的な安定や発展は続いていますし、それがいつまでも続いていくような感覚や期待感もあるでしょう。
しかしその一方で、火にかけられていることに気づかないで鍋の中にいる茹でガエルのように、じわじわと居場所がなくなっていき、いつの間にか生きる術すら失ってしまいそうな不安を多くの人が無意識に感じているように思います。
私は大学卒業後、国内大手生命保険会社に入社しましたが、約1年半で退職し、5歳で市議会議員になりました。当時、3代での転職は一般的ではなく、まして政治の道に入るなどは、ほとんど考えられない時代だったので、「一般企業に勤めることは二度とできない」と覚悟をして会社を辞めたことを覚えています。その後、政治家から戦略コンサルタントになりましたが、転職活動はとても大変で、一度レールから外れたらセーフティネットがないことを痛感しました。
ダーウィンは進化論において「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き残るのでもない。唯一生き残るのは変化できる者である」と述べています。この言葉の意味を身をもって学んだ経験でした。この状況は、転職がより一般的になっている現在も変わらず、大きな社会問題になりつつあります。
「いい大学を卒業して、いい会社に入れば一生安泰」といったこれまでの人生の成功モデルはもはや通用しない。昨日まで業績がよかった大企業が突然の不振に陥り、あえなく倒産することも稀ではない。しかしそこで、会社に滅私奉公していた社員を守ってくれるものは、ほとんど何もないのです。
その後、コンサルタント職を離れて、宿泊施設の貸し借り(シェア)を個人間で行うネットワークサービスを提供するAirbnbJapan(エアビーアンドビージャパン)に参画したのは、「シェア」という考え方と、それに基づき設計される新しい経済システムは、この社会変化の中で多様な生き方を実現するための基盤となるだろうと考えたからです。
実は、シェアという考え方は新しいものではなく、昔から日本のコミュニティを支える重要な役割を担っていました。
しかし、近年の新しいテクノロジーは、シェアの概念を「シェアリングエコノミー」という新しい経済システム(本書では「共用経済」という言葉で説明します)にまで昇華させることを可能にしました。
そして、この新しい経済システムに立脚した新しい働き方やビジネスモデルが、次々と生まれ、進展しようとしています。
今の時代、限られた人的資源と投資マネーで付加価値を生み出すために、これまでのように大規模投資を行うことによって新しいインフラをつくっていくのは現実的ではありません。
それよりも、今ある資産をシェアという概念でよみがえらせ、より少ない投資で新しい事業を始める仕組みや働き方を推進していくほうが賢明で、新たな活路を確実に見出せます。
シェアが一般的になれば、会社に勤めている人も本業以外で収入を得られる選択肢を少ない投資コストで確保することができます。
出産や育児、親の介護などの理由で、フルタイムの仕事ができないときは、自分がそれまでに培ってきた経験やスキルを活かし、空いている時間を活用してお金を稼ぐことが可能になります。そしてシェアは人と人をつなぎ、新たなコミュニティを生み出します。
このように、シェアは社会の新たなセーフティネットとなるのです。
私たちは今、社会構造と物事の考え方を大きく変える潮目にきています。これまで前提としてきた資本主義という経済システムを補完、あるいは代替する可能性を秘めている共用経済への転換期は、まさに今です。
「世界の注目が日本にある2020~2025年という時期を前に、この転換を成し遂げるための地図を描きたい」という思いが、本書執筆の大きなきっかけになりました。
本書では、
・シェアがなぜこれからの時代の社会スタンダードとなっていくのか
・私たちがこれからの時代を生き抜くうえで、シェアはどのようなライフスタイル、ワークスタイルを可能にするのか」
・日本の社会の未来を築く共用経済の確立に向けて、どのような取り組みを進めていけばよいのかといったことについて考察していきたいと思います。

2019年9月
長田英知

長田 英知 (著)
出版社 : ディスカヴァー・トゥエンティワン (2019/9/27) 、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 シェアの歴史といまを知る
なぜいま、「シェア」が評価されるのか?
私たちの暮らしを支え、豊かにした3つの「シェア」
これからの時代に役立つシェアの形
新しいシェアを支えるもの1~進化するテクノロジー
新しいシェアを支えるもの2~安心・安全の仕組み

第2章シェアの可能性を知る
新しいシェアを定義する
新しいシェアの種類1~音楽・映像のシェア
新しいシェアの種類2~不動産と移動手段のシェア
新しいシェアの種類3~個人スキルのシェア
新しいシェアが実現する新しい経済システム

第3章 過去の働き方とこれからの働き方
高度経済成長を支えたこれまでの働き方
これまでの働き方の崩壊
なぜ、新しい働き方が求められているのか?
「シェア」が働き方の理想と現実のギャップを埋める

第4章 シェアが可能にする幸せな働き方
「幸せ」を叶える働き方とは?
シェアなら「稼ぐ」と「幸せ」を両立できる
シェアでもっと自由に生きる
シェアが企業と社会に与える影響

第5章 「利用者」としても「提供者」としても、シェアを活用するために
シェアには想像以上の活用法がある
シェアサービスの「提供者」になるための戦略を立てる
WIN-WINになるサービスのルールをつくる
トライアンドエラーを繰り返す

第6章 シェアが与える日本企業へのインパクト
シェアは日本に馴染むのか?
シェアリングエコノミー市場の参入フレームワーク
企業間連携によるシェア

おわりに

第1章
シェアの歴史といまを知る

長田 英知 (著)
出版社 : ディスカヴァー・トゥエンティワン (2019/9/27) 、出典:出版社HP