ゲーム理論ワークブック

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問いて学ぶゲーム理論

初めてゲーム理論を学ぶ方向けの問題集となります。4つのステップがあり、要点整理、理解度チェック、演習問題、練習問題と進めることで、段階的にゲーム理論とその問題の解き方が身につくようになっています。基本から応用まで対応しており、主要なトピックを比較的新しいものまで幅広く抑えているためゲーム理論をとりあえず学びたい場合には、役立つでしょう。

また、ゲーム理論の基本的な論理を問題演習によって理解し、応用できることを目指した並べ方をしているため、ゲーム理論を大きな視点と小さな視点で考えるきっかけになるでしょう。

出版社のウェブサイトでは、練習問題の解答・解説、追加の練習問題も提供しているため、経済学部の大学生にも、ゲーム理論を学ぶ際に役立つかもしれません。

岡田 章 (著), 加茂 知幸 (著), 三上 和彦 (著), 宮川 敏治 (著)
出版社: 有斐閣 (2015/12/12)、出典:出版社HP

はじめに

本書の特徴

本書は,はじめてゲーム理論を学ぼうとする方々を対象とした演習書である。ゲーム理論は、プレイヤー間で利害が相互に影響を及ぼしあう状況,いわゆる「戦略的状況」における意思決定を扱う理論である。本書に収録したさまざまな問題を実際に自分の手で解くことで、読者が,ゲーム理論への理解を深めるとともに、現実の戦略的状況でもゲーム理論的な思考を実践できるようになることを期待している。 本書の特徴は以下の通りである。

(1) ゲーム理論の基本的なロジックを理解し応用できる
ゲーム理論は他の学問と同様に論理一貫した体系を持っている。初学 者を対象とする本書では、ゲーム理論の体系を段階的に理解し,さらにどのような場面でゲーム理論を使うことができるのかがわかるように,多くの応用問題を配列している。
(2) 幅広いトピックを学べる
初学者向けのテキストでは、扱うトピックを絞る傾向にある。もちろん、それは初学者が混乱しないための配慮であるが,ゲーム理論が対象とするトピックは幅広く,また,興味深いものも多くある。本書は,読者の多様な関心にできる限り応えられるように、現代のゲーム理論の主要トピックをバランスよく網羅している。
(3) 自学自習が可能である
ゲーム理論を理解するには、講義で理論の解説を受け、その理解を深める,あるいは応用するために演習クラスなどで適切な指導を受けるのが理想である。演習クラスでは、受講者の理解度に応じて詳しく解説したり、時には、答えだけを提示して受講者に解かせるといったことが行われる。本書に収録した問題には,詳細な解説と解答を付けたものや、 単に解答だけを付けているものがある。さらに、さまざまな難易度の問題を配置している。理解の程度に応じて読み進めていけば、独学であっても演習クラスを受講するのと同じ効果を得ることができる。

本書は主に, 岡田章 (2014) 『ゲーム理論・入門(新版)』(有斐閣アルマ;以下, 「入門」)とともに利用されることを想定している。そのため本書の章立ては, 基本的に『入門」の章立てに沿った構成となっている。
ただし、「入門」の第3章「戦略ゲーム」,第4章「ナッシュ均衡点」,第5 章「利害の対立と協力」の内容は,いずれも戦略形ゲームを扱ったものであるため,本書では第2章「戦略ゲームとナッシュ均衡点」として,まとめて取り扱っている。また,「入門』の第12章で扱われている「ゲーム実験」については,本書では一部の章末に「実験してみよう」というコーナーを設けて、 実際の実験方法を紹介することにした。

各章の構成

各章は、要点整理,理解度チェック,演習問題,練習問題で構成されている。
要点整理では、各章で扱われる重要な用語や概念を簡潔に説明している。問 題を解く際に,用語や概念の定義を確認したい場合は、その都度ここを読み直 してほしい。ただし、ここでは必要最低限の説明しかしていないので、ここを読んで理解が不十分だと感じたときは『入門』で,さらに詳しく確認すること をおすすめする。
理解度チェックは、穴埋め形式や,一問一答の形式で解答できる形の,とくに基礎的な問題を配置した。基礎的な知識が身についているかどうかを確認す るために,演習問題に取り組む前に,できればすべての問題を解いてみてほしい。

演習問題は,本書の中心となるパートであり,各章のテーマに沿った問題 と,それに対するヒント,詳細な解答が与えられている。問題と解答を並列さ せることで,ゲーム理論の問題を実際に解くための手順や考え方がわかるよ うになっている。演習問題については、与えられている解答をすぐに見るので はなく,まず,問題文をよく読んで自分で答えを考えることを試してみてほし い。どうしても解答への糸口をみつけられない場合はヒントを見てもう一度考 え何らかの答えを自分で用意した後に,解答を確認することを読者に望みた い。まずは自分で考えてみることで、ゲーム理論の問題を解く真の力が身につ くはずである。問題に関連するトピックや、より詳細なトピックについては、 「コメント」というコーナーを設け,適宜解説している。また,演習問題の中 でも,ぜひ取り組んでほしい基本的な問題には、タイトルの横に「*」印を付 けた。最初に取り組むときや,時間に余裕がない際には、まず「*」印の付い た問題から始めていくといいだろう。

練習問題は、演習問題を終えた読者を対象としたパートである。解答が並列されていない練習問題を解くことで、より理解を深められるはずである。ここでも、演習問題と同様,基本的な問題には「*」印を付けた。なお,練習問 題には難易度の高い問題も含まれているが、解き方、考え方を身につけたうえで、ぜひ挑戦してほしい。
また、練習問題の解答・解説は,下記で案内している本書のサポート・ウェブサイトに掲載したので、自分で問題に挑戦したうえで活用してほしい。

本書のサポート・ウェブサイト

以下の本書のサポート・ウェブサイトではさまざまなウェブ資料・付録を提 供している。
http://yuhikaku-nibu.txt-nifty.com/blog/2015/10/post-ecfd.html
(「付加データゲーム理論ワークブック」で検索)
このサイトでは,
・練習問題の解答・解説
・より高いレベルの問題を望む読者や,もっと多くの問題を解いてみたい 読者に向けた追加の練習問題
などを提供している。

謝辞

草稿段階から、新井泰弘先生,市野泰和先生,今井晴雄先生,岩井尚希様,川上敏和先生,清滝ふみ先生,小西秀樹先生,白田康洋先生,武岡則男先生 土橋俊寛先生,福住多一先生,堀一三先生,和光純先生には、授業やゼミを どで実際にご利用いただき,誤りの指摘,内容の改善を提案していただきました。また,大阪経済大学宮川ゼミナール(2013年2回生)の皆さん,および ゲーム理論勉強会(甲南大学)に参加してくれた学生の皆さんからは、読者としての立場からのコメントもいただきました。これまでに大阪経済大学京都産業大学、甲南大学、一橋大学でゲーム理論に関する授業に出席した多くの学生の皆さんは、質問などを通じて筆者らを励ましてくれました。以上の方々に、深くお礼申し上げます。 最後に,有斐閣の尾崎大輔氏には、筆者らが,東京,京都,大阪,神戸と離 れているなか,本書の企画段階から調整,原稿編集について大変お世話になりました。この場をお借りして感謝申し上げます。
2015年10月
著者一同

本書をお使いになる先生方へ

大学の授業やゼミで本書をお使いになる先生方へ本書やウェブ付録に掲載 していない,小テストや定期試験等でご利用頂けるようなさまざまな問題を, 別途用意しています。この問題集をご希望の方は,以下の有斐閣書籍編集第2 部宛メールアドレスまで、ご連絡ください。
・お申込み先メールアドレス:sho2@yuhikaku.co.jp
件名を「ゲーム理論ワークブック問題集希望」として頂き、メール内に
・お名前
・ご連絡先
・資料送付先のご住所(原則ご所属先)
・ご採用授業の名称
を明記のうえ、お申込みください。データ、またはハードコピーをお送りいた します。問題集の見本のご要望、その他お問い合わせも、上記のメールアドレ スにて承ります。

著者紹介

岡田 章(おかだ・あきら) 【監修・著】
1982 年,東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程修了
現在,一橋大学名誉教授,理学博士
主著:『ゲーム理論』有斐閣,初版 1996年,新版 2011年。『ゲーム理論·入門―人間社会の理解のために』有斐閣アルマ,初版 2008年,新版 2014年。

加茂知幸(かも・ともゆき)
2001年,同志社大学大学院経济学研究科博士後期課程单位取得退学
現在,京都産業大学経済学部教授
主著: “Vetoer and Tie-Making Group Theorems for Indifference-Transitive Aggregation Rules,” (with Jun Iritani, Ryo-ichi Nagahisa) Social Choice and Wefore, 40(1:155-171, 2013.「非循環的社会的厚生関数の諸性質」(入谷純上と共著)『国民経済雜誌』第201卷4号:17-28, 2010年。

三上和彦(みかみ・かずひこ)
2001年,ボストン大学经济学部博士課程修了
現在,甲南大学经管学部教授, Ph.D. (経済学)
主著:「市場の創造―Coase (1937)の再検討」甲南大学経営学会編『経済学の伝統と革新』千倉書房,2010年。“Bargaining Equilibrium with Complexity,” 甲南経営研究”第52卷2号:21-49, 2011年。
宮川敏治(みやかわ・としじ)
1998年,西学院大学大学院経济学研究科博士課程単位取得退学
現在,大阪経済大学経済学部教授,博士(経済学)
主著: “Existence and Efficiency of a Stationary Subgame-Perfect Equilibrium in Coalitional Bargaining Models with Nonsuperadditive Payoffs,” Economic Theory, 39 (2): 291-306, 2009. “Barriers to Global Free Trade through Bilateral Agreements,” (with Fumi Kiyotaki) Review of International EcoTonics, 21(3): 536-548. 2013.

岡田 章 (著), 加茂 知幸 (著), 三上 和彦 (著), 宮川 敏治 (著)
出版社: 有斐閣 (2015/12/12)、出典:出版社HP

目次

はじめに
本書をお使いになる先生方へ
著者紹介

第1章 選択と意思決定
1 要点整理
2 理解度チェック
3 演習問題
4 練習問題
実験してみよう1

第2章 戦略ゲームとナッシュ均衡点
1 要点整理
2 理解度チェック
3 演習問題
4 練習問題
実験してみよう2

第3章 ダイナミックなゲーム
1 要点整理
2 理解度チェック
3 演習問題
4 練習問題
実験してみよう3

第4章 繰り返しゲーム
1 要点整理
2 理解度チェック
3 演習問題
4 練習問題

第5章 不確実な相手とのゲーム
1 要点整理
2 理解度チェック
3 演習問題
4 練習問題

第6章 交渉ゲーム
1 要点整理
2 理解度チェック
3 演習問題
4 練習問題
実験してみよう4

第7章 グループ形成と利得分配
1 要点整理
2 理解度チェック
3 演習問題
4 練習問題

第8章 進化ゲーム
1 要点整理
2 理解度チェック
3 演習問題
4 練習問題

Column
1 ベイズ推定
2 アレのパラドックス
3 オークションの種類

Help
1 等比数列の和
2 一様分布と期待値
3 3人ゲームの配分の表現

「理解度チェック」一覧
1.1 期待値と期待効用
1.2 条件付き確率
1.3 リスクに対する態度
1.4 確実性同値額とリスク・プレミアム
2.1 利得行列
2.2 支配戦略
2.3 最適応答とナッシュ均衡点
2.4 混合戦略ナッシュ均衡点
2.5 マックスミニ値
2.6 支配される戦略の逐次削除
2.7 弱支配戦略
2.8 バレート最適とナッシュ均衡点
3.1 展開形ゲームによる表現
3.2 展開形ゲームの性質
3.3後向き帰納法
3.4 部分ゲーム
3.5展開形ゲームにおける戦略
3.6 数えあげゲームと後向き帰納法
4. 1繰り返しゲームの戦略
4.2 割引総利得と割引平均利得
4.3 トリガー戦略
4.4 個人合理的利得
5.1 ベイジアン・ゲーム
5.2 ベイジアン均衡点
5.3 事後予想(信念)
5.4 シグナリング・ゲーム
5.5 非対称情報
5.6 逆選択
6.1 ナッシュの公理(1)
6.2 ルームシェア問題
6.3 ナッシュの公理(2)
6.4 最後通告ゲーム
7.1 ゼロ正規化
7.2 ベンチャー企業設立
7.3 シャープレイ値
7.4 市場ゲーム
7.5 マッチング
7.6 3人ゲームの配分
8.1 集団均衡
8.2 進化的に安定な戦略
8.3 位相図

「演習問題」一覧
1.1 サイコロの賭け*
1.2 選好と効用関数*
1.3選好順序と効用*
1.4 期待効用とリスク態度*
1.5 カードゲーム
1.6 モンティ・ホール問題
2.1 出店ゲーム*
2.2 価格競争ゲーム*
2.3 硬貨合わせゲーム
2.4 読者獲得ゲーム*
2.5 3×3ゲーム
2.6 弱支配戦略と逐次削除
2.7 ミニマックス定理
2.8 相関戦略と相関均衡
3.1 小国と大国の争い
3.2 ライバル雑誌の特集記事*
3.3 交互競り上げオークション*
3.4 少数決ゲーム”
3.5 公共財供給ゲーム
3.6 前向き帰納法
4.1 トリガー戦略
4.2 有限回繰り返し囚人のジレンマ*
4.3難壕戦
4.4 ダイナミックな協調
4.5 クールノー複占市場における協調
4.6 暗黙の談合と課徴金
5.1 ベイジアン均衡点*
5.2 整合的な信念
5.3 完全ベイジアン均衡点*
5.4 モラルハザード*
5.5 逆選択
5.6 シグナリング・ゲーム*
5.7 第2価格オークション*
5.8 第1価格オークション
6.1 タクシー料金の分担
6.2 雇用契約
6.3 共同行動の交渉を
6.4 遂次交渉
6.5 最後通告ゲームと混合戦略
7.1 3人対称ゲーム*
7.2 プロジェクトの収益の分配問題
7.3 市場ゲーム
7.4 投票力とシャープレイ植*
7.5 マッチング
7.6 非分割財の交換
8.1 協調ゲーム*
8.2 流行と進化ゲーム*
8.3 鹿狩りゲーム*
8.4 タカ -ハト・ゲーム

「練習問題」一覧
1.1 確率と賭け*
1.2 期待値
1.3 賭けと所持金*
1.4 プロジェクトへの投資*
1.5 留保価格*
1.6 ベイズ推定
1.7 サンクトペテルブルグのパラドックス
2.1 純戦略ナッシュ均衡点*
2.2 混合戦略ナッシュ均衡点*
2.3軍拡競争
2.4 携帯キャリア間の価格競争
2.5 クールノー競争*
2.6 ベルトラン競争*
2.7 差別化された製品の価格競争*
2.8じゃんけんゲーム
2.9 支配される戦略と逐次削除
2.10 硬貨合わせゲーム
3.1 後向き帰納法*
3.2 部分ゲーム完全均衡点*
3.3 共有地の悲劇*
3.4 防衛ゲーム*
3.5 シュタッケルベルク競争*
3.6 イギリス式オークション*
3.7 オランダ式オークション*
3.8 コミットメントと誇示行動
3.9 混合戦略と行動戦略
4.1 非対称囚人のジレンマ*
4.2クールノー複占市場ゲーム*
4.3 有限回繰り返しゲームと後向き帰納法*
4.4 成分ゲームのナッシュ均衡点*
4.5 贈り物ゲーム
4.6 ミニマックス利得
5.1 ベイジアン均衡点*
5.2 完全ベイジアン均衡点*
5.3 均衡の精緻化
5.4 最適価格設定*
5.5 シグナリング・ゲーム*
5.6 中古車市場とレモン
5.7 モラル・ハザード*
5.8 ポーカー・ゲーム
6.1 ナッシュ交渉解*
6.2 ベンチャー企業設立*
6.3 家事分担交渉*
6.4 環境汚染と補償交渉*
6.5 リスク回避型選好
6.6 交換経済
6.7 有限回交渉ゲームの極限
6.8 交互提案ゲーム:定常戦略
7.1 コアとシャープレイ値*
7.2 3人対称ゲーム
7.3 市場ゲーム*
7.4 勝利提携とシャープレイ値*
7.5 滑走路建設の費用分担
7.6 マッチング*
7.7 ルームメイト問題
7.8 非分割財の取引
8.1 進化的安定戦略の導出
8.2 進化的安定戦略とナッシュ均衡点*
8.3 非対称タカーハト・ゲーム
8.4 売買交渉

本文イラスト:有留ハルカ

岡田 章 (著), 加茂 知幸 (著), 三上 和彦 (著), 宮川 敏治 (著)
出版社: 有斐閣 (2015/12/12)、出典:出版社HP