大人の語彙力 敬語トレーニング100 (日経ビジネス人文庫)

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クイズ形式で学べる敬語

ビジネスの場では不可欠な敬語ですが、語彙力を増やすことで一層磨きがかかります。本書は日常のシーンに合わせた敬語の問題がクイズ形式で出題されているので、スラスラと学ぶことができます。

本郷 陽二 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2018/3/2)、出典:出版社HP

はじめに

たとえば、お客様や目上の方に対し、
「その件については、あちらで伺ってください」
「お飲み物のほうは、何にいたしますか」
「そのように部長がお申しになられました」
といった奇妙なフレーズを耳にすることがあります。
丁寧に話しているので決して悪い印象を受けることはないのですが、これらの表現は敬 語のルールを考えた場合、ちょっと問題です。
どこがどんなふうに間違っているかは、この本の中で解説していきますが、こうした間違い敬語は、ベテランのビジネスマンにも見られます。
新人のうちは、「まだ、言葉遣いも修業中だな」と大目に見てもらえても、中堅以上に
なれば、「あれでは、後輩や部下に示しがつかないだろう」「いい年をして、正しい敬語
も使えないなんて」と、厳しい視線を向けられるかもしれません。
敬語といえば、「むずかしい」「堅苦しい」「わけがわからない」といったネガティブ
な印象を受ける人がいるかもしれませんが、社会に出れば、たとえ新人であっても敬語は
必須です。
とはいえ、仕事上で使う敬語は少し厄介です。というのは、自分がどの立場にあるかによって、言葉の選び方が変わるからです。
社内では上司に対して尊敬語を使いますが、取引先で上司のことを話す際には、謙譲表
現を使わなくてはなりません。ましてや、上司の名前を呼び捨てにするなど、慣れないうちはハードルの高いこともあるでしょう。
「習うより、慣れろ」という言葉の通り、敬語も繰り返し使いながら身に付けていくこと
が大事です。
また、敬語に、より一層の磨きをかけるのが「語彙力」です。
日本語は、ひとつのことを伝えるにも、さまざまな言い方がある豊かな言語です。
仕事を頼む際にも、単に「お願いします」と言うのではなく、
「お手をわずらわせて申し訳ありませんが、お願いします」
「お手数をかけますが、お願いできますでしょうか」
「ご多忙中とは存じますが、何卒よろしくお願いします」
などと、相手やその場の雰囲気に合わせて使い分けられると、ビジネススキルもアップします。
本書では、敬語の基本、オフィス敬語、おつきあい&冠婚葬祭、メール・ビジネス文
書、電話での敬語など、シーン別にQ&A形式でわかりやすく解説しています。
クイズ感覚で楽しめるので、あきずに敬語レッスンが続けられるでしょう。一日1項目
だけでも読んでいるうちに、確実に敬語力が上がります。
敬語は社会の潤滑油。気持ちの良い人間関係を築き、また自分の印象をアップさせ、ビ
ジネススキルを磨くためにも、本書を役立てていただければ幸いです。

2018年2月
本郷陽二

目次

はじめに
序章 語彙力を磨けばワンランク上の敬語になる
第1章 敬語の基本をおさらいしよう
第2章 職場の敬語 こんなときどうする?
第3章 スイスイおつきあい編
第4章 もう迷わない!メールの敬語
第5章 評価があがる! ビジネス文書の敬語
第6章 これで万全! 電話の敬語
終章 まとめとよく使う敬語一覧

本文設計・DTP◎ホリウチミホ (nixinc)
イラスト◎須山奈津希
編集協力◎松島恵利子

序章 語彙力を磨けばワンランク上の敬語になる

●「拝」を使いこなして敬語上手に
目上の人の書いたものを読む、話を聞く、何かを受け取る。そんなとき、どんな言葉を
使っていますか。
たとえば、
「読ませていただきました」
「聞かせていただきました」
「○○を頂戴しました」
などが一般的な敬語表現でしょう。
もちろん、こうした言い回しでも十分に敬意は伝わって失礼にはなりませんが、ワンラ
ンク上の表現を目指すのなら、ぜひとも「拝」を使った言葉を覚えておきたいものです。
「部長の書かれた企画書を拝読(拝見)しました」
「講演を拝聴し、大変勉強になりました」
「原稿を拝受いたしました」
「拝」の訓読みは「おがむ」。つまり、頭を下げておしいただく様子を表すため、高い敬
意が伝わるのです。
こうした言い回しをさらりと使える人は、「敬語が板についているな」「敬語力のある人だな」という印象を与えられます。
「敬語は、決まった言い回しを覚えればいい」と思い込んでいる人がいますが、同じこと
を伝えるのでもさまざまな言い方があるので、バリエーションが豊かであるのに越したこ
とはありません。
つまり、敬語にも語彙力は必要というわけです。

●確認が必要な書類を送るときは「ご査収ください」
納品書や見積書などの書類を送る際には、メールや手紙を添えますね。その際に、
「見積書をお送りしますので、よろしくお願いします」
と書く人が多いと思います。
見積書や納品書といった、よく調べて確認してもらうべき書類を、単に「送りますから、よろしく」では、やや物足りない感じがします。
こんなときは、「ご査収」を使うといいでしょう。査収とは、よく調べたうえで受け取
るという意味です。
「見積書をお送りしますので、ご査収願います」
「申請書類を同封いたしましたので、よろしくご査収ください」
このように書けば、「きちんと見て、確認して受け取ってください」というニュアンス
が丁寧に伝わります。また、似た意味に、「ご検収」という言い方もあります。
さらに、少しニュアンスは違いますが、物を受け収める、受け入れるという意味の「受
納」は、
「粗品ですが、ご受納ください」
などよく使われます。覚えておくととても便利です。

●ほめ言葉は語彙力を試される
基 本的に、ほめるという行為は、目上の人が目下の者に対してするものです。
たとえば、上司や先生に、「よく頑張って偉かったですね」「上手にできましたね」などと言えば、とても失礼です。絶対にやってはいけません。
しかし、ほめられていやな気持ちがする人はいませんから、たとえ目上の人でもほめるようなタイミングがあれば、積極的にほめたいものです。
ここで試されるのが語彙力です。
ほめ言葉といっても、直接的な言葉を使うのではなく、相手の言動に対し、感じ入った、感動した、ハッとさせられたという自分自身の気持ちを伝えるのです。具体的には、
「社長のお話を伺って、胸が震える思いです」
「部長の企画書を拝見し、大変勉強になりました」
「先生のお言葉に、背筋の伸びる思いでございます」
このように言えば、直接相手をほめてはいなくても、結果的には大いにほめたことになります。
ほめ言葉も、単に「感動しました」「すごいと思いました」といった単調なものではなく、
「思わず時間を忘れて聞き入りました」
「目から鱗の落ちる思いで伺っておりました」
「さすが、おっしゃることが違うと、ため息が出ました」
「後輩たちにも、ぜひ聞かせたいと思いました」
など、いろいろな種類の言葉をストックしておきましょう。
その時々で違うフレーズが出てくれば、ほめ言葉の達人として、一目置かれる存在になるに違いありません。

本郷 陽二 (著)
出版社: 日本経済新聞出版 (2018/3/2)、出典:出版社HP