チョコレートの科学 (食物と健康の科学シリーズ)

【最新 – チョコレートを学ぶおすすめ本! 科学的、歴史的にみるチョコレート】も確認する

チョコレートの効果

「チョコレートは美味しさでも健康増進の観点でも優れている」ことを示すのが、本書が執筆された動機のひとつであると述べられています。チョコレートは好きだけど健康への影響が気になる…などという方におすすめの一冊です。

大澤 俊彦 (著), 古谷野 哲夫 (著), 佐藤 清隆 (著), 木村 修一 (著)
出版社: 朝倉書店 (2015/5/29)、出典:出版社HP

はじめに

チョコレートに関するジョークに、「世界中のどこへ行っても、10人に『チョコレートが好きか』と聞くと、9人が『イエス』という、『ノー』という1人は、ウソをついているのさ」というのがある。

一方で、チョコレートが16世紀にメソアメリカから世界中に広まって現代にいたるまで、しばしば「チョコレートは体に良いのか悪いのか」という問いが投げかけられる。実はこの2つは、チョコレートに関する人々の考えを象徴している。すなわち、「チョコレートは文句なくおいしい、だけど、体にとって良くないこともあるんじゃないか」というものだ。

世の中にはあふれるほど多くの種類のお菓子があるが、このように複雑な反応が示されるのは、チョコレートに特有のことと思われる。実は、本書の執筆の動機の1つは、おいしさの点からもヒトの健康の増進の点からも、チョコレートがいかに優れた食べ物であるかを示すことである。そのために、栄養学、食品物理学、および製造技術の立場からチョコレートの健康効果とおいしさの発現に関する最新の研究成果をまとめることを試みた。

第1章では古代から近代にいたるまでのチョコレートの歴史を概観し、第2章では熱帯雨林におけるカカオ豆の生産からチョコレートを製造するまでの一連の技術を整理した。第3章ではチョコレートに含まれる脂質や機能性成分の栄養と生理機能に関する最新の研究成果を紹介し、第4章ではチョコレートのおいしさを決める多くの要因を解き明かす試みを行った。

16世紀にメソアメリカの人々に接したスペイン人たちは、先住民の中でも高貴な人々が「不老長寿の薬」と信じてカカオを飲んでいることを、驚きをもって報告している。またスウェーデンの「植物分類学の父」と呼ばれるカール・フォン・リンネは、カカオの木に「神の食べ物」という学名を与えた。もちろん著者らがカカオを「不老長寿の薬」と考えているわけではないが、現代科学の眼で精査してみると、彼らがカカオに込めた思いはあながち的外れでは、と言えるのではないだろうか

第1章の冒頭で述べるように、我が国のチョコレートの1人当たりの消費量はヨーロッパ諸国の半分以下である。このことは、我が国のチョコレートの消費がこれから大きく伸びる可能性を示している。そのために本書が役立つことになれば、著者らの望外の喜びである。

最後に、本企画をご紹介いただき、執筆の機会をくださった香川大学名誉教授・社団法人おいしさの科学研究所理事長の山野善正先生に深甚の謝意を表す

2015年4月
著者一同

大澤 俊彦 (著), 古谷野 哲夫 (著), 佐藤 清隆 (著), 木村 修一 (著)
出版社: 朝倉書店 (2015/5/29)、出典:出版社HP

目次

1. チョコレートの歴史
1.1 カカオ豆からチョコレートまで [佐藤清隆]

1.2 メソアメリカ時代
1.2.1 メソアメリカの通史
1.2.2 古代メソアメリカにおけるカカオの飲み方

1.3 ヨーロッパから世界へ
1.3.1 スペインにおけるカカオの変身
1.3.2 世界へ広がるカカオとその凋落
1.3.3 19世紀の四大発明
1.3.4 テンパリングの不思議 [古谷野哲夫]

2. チョコレートの製造
2.1成分

2.2カカオ豆の生産
2.2.1 カカオ品種と苗木の作成
2.2.2 カカオ木の育成.
2.2.3 カカオ花
2.2.4 ポッドの成長
2.2.5 カカオ豆発酵.
2.2.6 カカオ豆乾燥
2.2.7 カカオ豆の貯蔵と輸送.

2.3 カカオマスの製造
2.3.1 カカオ豆の受け入れ.
2.3.2 カカオ豆のロースト.
2.3.3 ウィノーイング
2.3.4 ニブの粉砕
2.3.5 カカオマス処理

2.4 チョコレート生地の製造
2.4.1 チョコレート生地の種類
2.4.2 原料混合
2.4.3 レファイナー.
2.4.4 コンチング
2.4.5 その他のチョコレート生地製造方法

2.5 チョコレート成型
2.5.1 チョコレート生地のテンパリング
2.5.2 チョコレート生地の流動特性.
2.5.3 モールド成型
2.5.4 エンローバーチョコレート
2.5.5チョコボール
2.5.6 その他の製法

3. チョコレートの栄養と生理機能
3.1 栄養学の分野からみたチョコレート

3.2 カカオマス画分 [木村修一] 3.2.1 カカオポリフェノールの口腔内衛生改善効果
3.2.2 ココアの消化管病原細菌抑制効果.
3.2.3 カカオポリフェノールのがん抑制、免疫機能への影響
3.2.4 カカオポリフェノールの生体内動態
3.2.5 チョコレートはミネラルの宝庫.
3.2.6 カカオマスの機能はアンチエイジングにも関係する?

3.3 チョコレートの脂質画分(ココアバター)
3.3.1 チョコレートは高エネルギー食品か?
3.3.2 チョコレートによる肥満は本当か?.

3.4 チョコレートの砂糖画分.

3.5 チョコレートの持つ機能性研究の足跡
3.5.1 機能性食品研究の夜明け
3.5.2 今なぜ「チョコレート」に注目? [大澤俊彦] 3.5.3 チョコレート摂取による糖尿病予防と血圧低下作用への期待
3.5.4 チョコレートのヒト臨床研究でのメタアナリシス
3.5.5 活性酸素障害に対する抗酸化物質の役割
3.5.6 カカオポリフェノールの機能性
3.5.7メチルキサンチンの機能性

4. チョコレートのおいしさ [佐藤清隆・古谷野哲夫] 4.1 チョコレートのおいしさを決める要因
4.1.1 カカオ豆
4.1.2 砂糖と粉乳
4.1.3 製造工程
4.1.4 摂取条件

4.2 チョコレートの微細構造と「ブルーム」.
4.2.1 チョコレートはナノメートル・レベルの複合構造体
4.2.2 ブルーム現象

索引

大澤 俊彦 (著), 古谷野 哲夫 (著), 佐藤 清隆 (著), 木村 修一 (著)
出版社: 朝倉書店 (2015/5/29)、出典:出版社HP