【最新】発達心理学を学ぶおすすめ本 – 独学もできる入門から
豊富な図解でわかりやすい
図表が豊富で、「重要語句解説」「考えてみよう」「キーワードのまとめ」などを設定し、授業後にも個別学習しやすく、授業で、試験前に、現場に出てからも活用できる一冊となっています。公認心理師カリキュラムに対応しているので、これから勉強を始める方、勉強中の全ての方におすすめです。
監修者のことば
多様化する社会のなかで,「心」をめぐるさまざまな問題が注目されている今日において、心の健康は誰にとっても重要なテーマです。心理職の国家資格である公認心理師は、まさにこの国民の心の健康の保持促進に寄与するための専門職です。公認心理師になるためには、心理学に関する専門知識および技術をもっていることが前提となります。
本シリーズは、公認心理師に関心をもち,これから心理学を学び、心理学の視点をもって実践の場で活躍することを目指すみなさんのために企画されたものです。「見やすく・わかりやすく・使いやすく」「現場に出てからも役立つ」をコンセプトに全23巻からなる新シリーズです。いずれの巻も広範な心理学のエッセンスを押さえ,またその面白さが味わえるテキストとなっています。具体的には,次のような特徴があります。
①心理学初学者を対象にした、学ぶ意欲を高め、しっかり学べるように豊富な図表と側注(「語句説明」など)で、要点をつかみやすく、見やすいレイアウトになっている。
②授業後の個別学習に役立つように、書き込めて自分のノートとしても活用でき、自分で考えることができるための工夫がされている。
③「公認心理師」を目指す人を読者対象とするため,基礎理論の修得とともに「臨床的視点」を大切にした目次構成となっている。
④公認心理師試験の準備に役立つだけでなく、資格をとって実践の場で活躍するまで活用できる専門的内容も盛り込まれている。
このように本シリーズは、心理学の基盤となる知識と臨床的視点をわかりやすく、学びやすく盛り込んだ総合的テキストとなっています。
心の健康に関心をもち,心理学を学びたいと思っているみなさん、そして公認心理師を目指すみなさんに広くご利用いただけることを祈っております。
下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫
編著者まえがき
本書は,公認心理師の資格取得を目指す方々が学部で履修する必要のある25科目のうち,「⑫発達心理学」を学ぶためにまとめられたテキストです。公認心理師の業務の目的は,公認心理師法の第1条に明示されているとおり「国民の心の健康の保持増進に寄与すること」にありますが,子どもから高齢者まで,公認心理師が対応すべき年齢はさまざまです。年齢が異なれば、心の働きにも違いがあり支援の方向も異なることがあります。そこで、心の健康の保持増進に寄与するためには,心の発達を扱う発達心理学を学ぶことが重要であり、有益なものとなるのです。
発達心理学の重要な観点は、誕生から死に至るまで「生涯発達的にとらえる」という点にあります。そこで,本書は「第I部 発達心理学の基礎」「第II部 出生前後~児童期までの発達」「第II部 青年期以降の発達と非定型発達」という3部構成としています。まず第1部の1章と2章で生涯発達全体に関わる見方を学んだあと,第II部の3章から9章で,幼少期の心の発達を多面的に学びます。それらを踏まえて,第III部の10章から12章で青年期から老年期までの心理的特徴を学びます。今後、高齢者の割合はますます増大するため,公認心理師として高齢者対応する機会もますます増えることが予想されます。さらに最後の13章において,発達障害など非定型発達をくわしく学ぶことで,支援のあり方が身につきます。このように生涯発達的な視点をとおして、年齢に応じた相談や助言、指導,援助を適切に行うための知識を習得できます。
本書では、「公認心理師試験出題基準 平成31年版」(公認心理師ブループリント)や、日本心理学会がまとめている標準シラバスをもとに、学ぶべき事項を取り上げています。
具体的には、「公認心理師試験出題基準 平成31年版」で取り上げられているキーワードをすべて紹介し,各章末にある「キーワードのまとめ」でもすべてを取り上げています。また各章は、この出題基準の中項目の分類と、日本心理学会の標準シラバスの大項目・中項目・小項目の分類をもとに構成しています。さらに,出題基準以外でも発達心理学の基礎事項として知っておくべき内容を紹介し,「本章のキーワードのまとめ」でも取り上げています。このため、公認心理師のみならず,教員採用試験や大学院の入試などの勉強においても役立つことでしょう。また,基礎を固めることで発展的な力も身につきます。資格取得のみならず卒業論文などの研究にも優れた問題意識をもって取り組むことができるようになるはずです。本書をとおして、心のしくみや働きを生涯発達的な視点でとらえる心理学の面白さと奥の深さを味わっていただけると嬉しく存じます。
2019年5月 林 創
目次
監修者のことば
編著者まえがき
第I部 発達心理学の基礎
第1章 公認心理師のための発達心理学
1 発達心理学とその理論
2 発達を調べるために
3 発達心理学の隣接領域
第2章 発達の生物学的基礎
1 発達をもたらす要因は何か
2 行動遺伝学と発達
3 エピジェネティクス
4 心の発達と進化
第Ⅱ部 出生前後~児童期までの発達
第3章 感覚と運動の発達
1 生まれる前の発達
2 新生児期の発達
3 乳児期の発達
第4章 アタッチメントの発達
1 人生の始まりと土台としての乳児期
2 アタッチメントの発達
3 アタッチメントの個人差に絡むさまざまな要因
第5章 認知の発達
1 認知発達のグランド・セオリー
2 ピアジェ理論の再構築:情報処理理論に基づくアプローチ
3 グランド・セオリーを超えて子どもの認知の有能性
第6章 社会性の発達
1 社会性とその内容
2 社会的認知の発達
3 社会的行動の発達
第7章 感情と自己の発達
1 感情の発達
2 自己の発達
3 感情と自己
4 社会との関係からみた感情と自己
第8章 遊びと対人関係の発達
1 遊びと対人関係の意義
2 遊びの発達
3 対人関係の発達
4 現代の子どもの遊びと対人関係における課題
第9章 言葉と思考をめぐる発達
1 身体発育と運動能力の発達
2 言葉の発達
3 思考の発達
第Ⅲ部 青年期以降の発達と非定型発達
第10章 青年期
1 青年期の心身の発達
2 アイデンティティ発達の時期としての青年期
3 青年期の性と異性関係
4 青年期の遷延化
第11章 成人期
1 成人期の心身の発達
2 生き方の選択とキャリアの発達
3 働くということ:職業意識と生き甲斐
4 家族形成:夫婦関係と子育て
5 多重役割とワーク・ライフ・バランス
第12章 老年期
1 老年期の心身の発達
2 老年期の心理社会的課題
3 老年期の臨床的問題の理解と支援
第13章 定型発達と非定型発達
1 神経発達症群/神経発達障害群
2 その他の発達上の問題
3 発達につまずきを抱える人への支援の視点
引用文献・参考文献
「考えてみよう」回答のためのヒント
索引
本書の使い方
①まず、各章の冒頭にある導入文(この章で学ぶこと)を読み、章の概要を理解しましょう。
②本文横には書き込みやすいよう罫線が引いてあります。気になったことなどを自分なりに書き込んでみましょう。また、下記の項目についてもチェックしてみましょう。
・語句説明・・・・・重要語句に関する説明が記載されています。
・プラスa・・・・・本文で解説している内容に加えて、発展的な学習に必要な項目が解説されています。
・参照・・・・・本文の内容と関連するほかの章が示されています。
③本文を読み終わったら章末の「考えてみよう」を確認しましょう。
・考えてみよう・・・・・この章に関連して調べたり、考えたりするためのテーマが提示されています。
④最後に「本章のキーワードのまとめ」を確認しましょう。ここで紹介されているキーワードはいずれも本文で取りあげられているものです。本文を振り返りながら復習してみましょう。
第I部 発達心理学の基礎
臨床の視点
人の抱えている問題を理解し、支援するためには大きく2つの発達的視点が重要となります。第1に、表面的な行動や問題の背後にある多様な要因に目を向けるという視点です。人はさまざまな環境のなかで育ちます。また、ある遺伝的要因がある環境を引きつけやすく、環境によって遺伝的要因の発現のしかたが異なるといったように,遺伝と環境は必ずしも独立ではありません。第2に,目の前の人の抱える問題を理解するためには、現在の状態を詳細に知るだけではなくその人の育ってきた経過に目を向けることが重要です。すなわち、時間の流れのなかで人を理解するという視点です。その点から,第I部では問題の背景の多様さと時間の流れのなかで人を理解する視点を学んでいきます。
第1章 公認心理師のための発達心理学
この章では,公認心理師の資格を取得するうえで,なぜ発達心理学を学ぶ必要があるのかを述べていきます。発達心理学について学ぶことで、人間の心の働きに時間軸が加わります。つまり、物事の認識や行動がどのように変化していくのかを知ることができるのです。人間は誰でも生まれてから時間の経過とともに,年齢を重ねて発達していきますから,そのしくみや体系を知ることは、心理に関する相談や助言, 指導, 援助をしていくうえで欠かせないものとなるのです。
1 発達心理学とその理論
1 発達のとらえ方
心理学は人間の心の動きを解明しようとしていく学問ですが,研究の多くは実験や調査をしやすい大人が対象となっています。しかし、私たちは最初から大人だったわけではありません。誰でも、幼少期からさまざまな過程を経て成長してきたはずです。そこでその発達を心理学的にとらえることが大切です。すなわち、発達心理学とは,「精神発達を対象として、時間経過にしたがって生じる発達的変化についての一般的な特徴や法則性を記述するとともに,発達的変化をおし進める要因についても検討を試みる心理学の一分野」(『心理学辞典』より)であり、人間の心の発達を時間軸に沿って調べていく学問なのです。
それでは、そのような心の発達をどのようにとらえていけばよいのでしょうか。一般に,発達のとらえ方は、大きく2つの方法に分けられます。第1は,連続する量的変化をとらえる方法です。横軸に年齢や時間を縦軸に目的とする発達の指標(たとえば、語彙数、課題の成績)をとり、年齢の関数としてグラフにした「発達曲線」で表現されることが一般的です。
発達曲線をみると心身のさまざまな指標が,図1-1の(a)のような右肩上がり、つまり年齢とともに一直線に上昇したり成績が向上したりするだけではなく、幼い頃に急激に発達したあと、下降したり(b),発達が停滞しつつ続いたり(c)年齢が進んである時期になると急激に発達したり(d)といったさまざまな過程を経ることがわかります。