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【最新】発達心理学を学ぶおすすめ本 – 独学もできる入門から
発達心理学の基礎から応用までわかる
42人の心理学者が執筆したものを集めた本です。全くの素人でも乳幼児からの発達の流れが理解できるようになります。大きな見出しでテーマごとに区切られていてとても読みやすい一冊で、辞書のような使い方もできる便利な構成となっています。発達心理学を学びたい方にとってとても価値のある一冊です。
はじめに
■よくわかる発達心理学[第2版] 本書は、大学の新入生を念頭に置いて、発達心理学について最初に学ぶための入門としたものです。高校生でこれから心理学を学びたいという人にも分かるように、特に、予備知識を想定していません。そのために、次のことを心がけました。
・どこからでも読めます。一つ一つが見開きで完結しています。
・各々の記事が、興味を引く研究の成果やエピソードを挙げて、解説しています。
・胎児期から始め老年期まで生涯にわたって、各々の時期で重要な事柄について、何が分かっているかの要点を述べました。
・全体を通して,現代の発達心理学の主要な知見が理解できるようにしてあります。
・同時に、発達の問題について、知りたいと思う疑問を挙げて,それに答えられるようにしました。
執筆は、日本の第一線の研究の場で活躍している多くの方々に加わって頂きました。感謝申し上げます。また、企画から刊行まで、ミネルヴァ書房編集部には大変にお世話になりました。ありがとうございます。
編者を代表して
無藤 隆
もくじ
はじめに
I 胎児期・新生児期
1 胎内で聞こえる母親の声
2 胎児に害があるアルコール
3 性の分化
4 生まれたときの体重と育ち
5 赤ちゃんの性格の違い
6 赤ちゃんの最初の微笑み
7 生まれたときの視力
8 生まれたときにある力
9 赤ちゃんの認識する世界
10 親の顔を見分ける赤ちゃん
8 毛布などを好きになる
II 乳児期
1 微笑みと人見知り
2 大事に育てたい親子の愛情
3 喜怒哀楽を伝える
4 言葉の芽としての語
5 親と子のやりとり
6 増えていく言葉の数
7 大事なスキンシップ
8 子どもは親から学ぶ
9 ハイハイから二足歩行へ
10 乳児の遊びの意味
III 幼児期前期
1 親の言葉を真似して覚える言葉
2 言葉を覚えはじめるとき
3 ものを見立てる遊び
4 自分に目覚める
5 子ども同士で遊ぶ
6 困ったことをするようになる
7 うそをつく
8 毛布などを好きになる
9 母親とは異なる父親との接触
10 きょうだいげんか
IV 幼児期後期
1 論理的に考える時期
2 数を数える
3 子どもの絵
4 言葉の上達
5 絵本との出会い
6 ごっこ遊び
7 群れて遊ぶ
8 保育所,幼稚園で学ぶこと
9 自分の気持ちを抑えられる
10 自分の特徴を友達と比べて理解する
V児童期
1 入学前の計算力
2 読み書きの力
3 学校への適応
4 グループで遊ぶ
5 いじめ
6 テレビの悪影響
7 劣等感が生まれる
8 先生に恵まれる
9 学び方を自分で考える
10 科学的なものの考え方
VI 青年期
1 友人ができる子できない子
2 性へのめざめ
3 自分の身体の変化へのとまどい
4 自分の身体の変化を受け入れる
5 男の子,女の子の違い
6 将来どうやって生きるか
7 つらい受験勉強
8 中学校の部活動の意味
9 自分についての悩み
10 社会の立場について考えられる。
VII 成人初期・中期
1 どう生きていくべきか
2 初恋から始まる
3 結婚の喜び 順のくぶし
4 子育ての楽しさ つらさ
5 親の愛情
6 働く意味 仕事のやりがい
7 仕事と家庭を両立させた生き方
8 結婚生活が長続きしている夫婦
9 離婚の心理的影響
10 インターネットと新たな関係
VIII 成人後期・老年期
1 中年の危機
2 いつ起こる子離れ
3 退職後の人間関係の変化
4 祖父母にとっての孫
5 高齢者と認知症
6 高齢期の健康
7 老年の生きがい
8 人生を回顧する
9 介護の大変さとストレス
10 死をどう考えているか
IX 発達を援助する
1 虐待はどうして起こる
2 不登校はどうして起こる
3 子育てのストレス学 和らげる援助
4 発達の障害
5 学校の問題を援助する
6 思春期の悩みを援助する
7 思春期の食の問題
8 生きかたに迷う大学生への援助
9 悩みを抱える成人への援助
10 施設高齢者の適応と生きがいと
X 発達を考える際に
1 子どものこころの問題
2 子どもの性格は変化する
3 大人も変わる
4 発達と能力
5 虐待の連鎖をストップする
6 生涯にわたる発達をみる
7 社会・文化で違う子どもの発達
8 時代と発達
9 小さいときの問題とその回復
10 老年の知恵
さくいん
I 胎児期・新生児期
1 胎内で聞こえる母親の声
生後間もない新生児を対象にした研究から
デキャスパーとファイファーは、生後1日の新生児が男性より女性の声に、また同じ女性でも他の女性より自分の母親の声に選択的に反応することを見出しています。
生後1日であることを考えると,この選択的な反応性(別の言い方をすれば声の識別能力)は驚異的ともいえますが,何よりも胎児のときに母親の声が子宮内で聴いていたこと,そしてその音声を出生後も記憶している可能性に注目すべきです。
さらに、デキャスパーとスペンスでは出生後数日の新生児において、母国語への選択的好みまで見出しています。彼らは英語を母国語としている母親から出生した新生児に対し巧妙な実験を行っています。彼らは新生児に特殊なセンサーをつけた軟質プラスチック製の乳首を通してミルクを与えたのですが,新生児が乳首をリズミカルに吸うとヘッドホンから英語の女性音声(朗読文)が流れ、乳首を吸うのをやめるとアラビア語の音声(やはり女性による朗読文)が流れるようにしたのです。その結果,新生児は乳首をリズミカルに吸い続けようとし、ミルクが出なくてもまるで「母国語を聴き続けたい」と言わんばかりに吸啜行動を続けたのです。
早期産児を対象にした研究
生後の新生児でその記憶をもとに研究するだけでなく、出産予定日より早く生まれた早期産児を対象に行った実験からも、母親の胎内で胎児が音を確実に聴いている証拠を得ることができます。
松田・大坪・島田は、生後1週間以内の正期産児(受胎から出生までの在胎週数がほぼ40週)と早期産児(受胎後から出生までの在胎週数が36週以下)のそれぞれに成人女性の声と成人男性の声、そして4歳の子ども(男子)の声を聴かせて新生児の反応を調べました。
この場合,新生児が聴く声は全ての条件で「よしよし」という呼びかけとし、音の大きさや持続時間は一定としています。新生児の反応は新生児の心拍を連続監視することで得ることとし、その結果をまとめたのが図1です。ここで、早期産児A群というのは正期産児群と出生後の日齢すなわち誕生から実験日までの期間がほぼ等しい群で,この場合は受胎日から数えた日数は正期産児群より約1ヶ月以上短いことになります。
1 DeCasper, A. J., & Fifer, W. P. 1980 Of thuman bonding: New. borns prefer their mothers’ voices. Science, 208, 1174-1176,
2 DeCasper, A.J., & Spence, M. J. 1986 Prenatal maternal speech influences newborn’s perception of speech sounds. Infant Behavior and Development. 9,133-150.
3 松田君彦・大坪治 彦・島田俊秀1988 新生 児の心身発達に関する研究 (TW)一呼びかけ行動に 対する新生児の反応「日本心理学会第52回大会発表論 文集,20,