手にとるように発達心理学がわかる本

【最新】発達心理学を学ぶおすすめ本 – 独学もできる入門から

発達心理学の本質が分かる

発達心理学について、心理学的な知識がない人でも分かりやすいように解説してくれている本です。発達心理学の入門編のような本で、イラストも多く、読みやすい構成となっています。発達心理学に携わってきた学者達の理論が簡潔に記載されており、キャリアコンサルタント学科試験にも役立ちます。

小野寺 敦子 (著)
出版社: かんき出版 (2009/7/22)、出典:出版社HP

はじめに

「今、この本を手にとってくださっているあなたは、どのようなきっかけで、読んでみようと思われたのでしょうか。「保育の勉強中で、幼児の成長について知りたい」「テレビや雑誌に出てくる発達障害というものを知りたい」「自分自身が親からどんな影響を受けているのか、もっと知りたい」「中年期になってこれからの人生をどう生きていけばいいか迷っている」…など、その理由はさまざまだと思います。本書はそうした私たちの身近にある問題を発達心理学の視点から解説したものです。
発達心理学という用語が登場したのは、それほど昔のことではありません。以前は児童心理学という領域で子どもの心理だけがとりあげられてきましたが、人生が3年以上にわたる長寿社会を迎えた今、ヒトの発達は胎児期から高齢期まで、広い視野に立って考えていく時代といえます。

発達心理学は決して難しい学問でも理論でもありません。日々の家庭生活や学校生活、そして社会生活を充実して過ごしていくためのヒントを私たちに教えてくれる、とても身近な知識の宝庫です。人生で多くの難問に直面するたび、筆者自身も大いに助けられてきました。
たとえば、二人の子どもの子育てにあたって、トーマス・チェスの気質研究、ボウルビィの愛着研究、そしてピアジェの自己中心性やアニミズムの理論などを知っていたおかげで、子どもと上手に関わることができたように思います。
このように、本書でとりあげた数多くのテーマは、筆者自身が日々の生活のなかで「なぜなんだろう?」と疑問に感じていたことを、発達心理学という切り口でわかりやすく解説したものばかりです。

執筆にあたっては、専門的な用語で説明するのではなく、できるだけ平易な表現を使い、身のまわりにある事例を交えて説明しようと心がけました。また随所に簡単なチェックテストを入れて、ご自分のことを理解する一助としていただけるようにしました。まさに本書のタイトルである「手にとるように発達心理学がわかる本」を心がけて執筆したつもりです。

人間の発達全般について学びたい方は、最初から読み進んでいただければ結構ですし、関心のあるテーマについて知りたい方はそのトピックを選んで読めるように、各テーマを読みきりの形にしました。
渋谷昌三先生との共著『手にとるように心理学がわかる本』(小社刊)は、多くの読者の方々から「読みやすい」、「わかりやすい」といった感想をいただき、現在もなお版を重ねています。本書はその趣旨にそって発達心理学に関する内容をさらに広げ、執筆したものです。
本書を通じて私たち人間の発達について少しでも理解を深めていただき、あなたの生活を楽しく豊かにするヒントとしていただければ幸いです。

2009年7月
小野寺敦子

*第7刷重版にあたり、2019年時点の情報に修正しました。

カバーデザイン 重原隆
イラスト 秋田綾子
本文デザイン 石山沙蘭

小野寺 敦子 (著)
出版社: かんき出版 (2009/7/22)、出典:出版社HP

もくじ

Part 1発達の基礎理論

【発達心理学のはじまり】
発達心理学はこうして生まれた
●発達心理学という名称の誕生
☆発達心理学の年表

【発達心理学の研究者】
発達心理学の先駆者たち
●7世紀までの子ども観
●先駆者その1 ルソー
子どもは大人の小型ではない
●先駆者その2 フレーベル
世界ではじめての幼稚園を創設
●先駆者その3 プライヤー
伝記的―日誌的方法を実践
☆恩物
●先駆者その4 ホール
発達心理学の基礎を築き質問紙法を考案

【生涯発達】
人は生涯にわたって発達し続ける
●新しい発達観~生涯発達という考え方~
●発達の8つの段階区分

【遺伝と環境】
遺伝と環境、どちらが人の発達に大きな影響を与えているのだろう?
●遺伝説のほうが先に生まれた
●人の一生は生まれる前から決まっている?
●ゲゼルによる双生児の実験~成熟優位説~
●発達は環境で決まる~環境説(学術説)~
●遺伝も環境も大切~相互作用説~

【発達段階説】
フロイトの性の発達段階説
●本能や無意識について研究を深めたフロイト
●フロイトの性の発達段階説
●「エス」「自我」「超自我」
☆エディプス・コンプレックス

【心理社会的発達理論】
エリクソンの発達理論
●人生を8つに分けた「心理社会的発達理論」

【発達課題】
ハヴィガーストの発達課題
●ハヴィガーストの発達課題の特徴

【精神分析学】
精神分析学の立場から子ども理解を深める
●クライン、マーラー、ウィニコットの発達理論

【研究方法】
発達心理学における研究方法
●さまざまな発達の研究方法
コラム 文化によって子ども観は違う ~日本は性善説・西洋は性悪説~

Part2 胎児期〜乳児期の発達

【胎児の発達】
お腹のなかで赤ちゃんはどのように成長していくのだろう?
●お腹のなかでも赤ちゃんは活動している
☆生理的早産
●運動機能の発達
●視覚機能の発達
●聴覚機能の発達
☆「戌の日」を知っていますか?

【身体発達の原理】
身体発達の8つの基本原理
●発達は一定の原理にしたがって進む
☆スキャモンの発達曲線のタイプ

【新生児の発達】
生まれたての赤ちゃんのパワー
●出生児の平均体重と身長
●赤ちゃんの聴力
●赤ちゃんにはどれだけ見えている?
●視覚的断崖(ビジュアル・クリフ)

【運動機能】
赤ちゃんの運動能力はどう発達する?
●急激な身体の発達

【脳の発達】
赤ちゃんの脳はどう成長する?
●出生時から140億個の神経細胞がある
●シナプスの回路の発達が脳の発達を支えている

【原始反射】
原始反射は、生きていくために備わっている力
●反射は無意識に身を守ろうとする動き
●脳が発達すると、原始反射から自発運動に変わる

【気質】
赤ちゃんにもさまざまな個性がある
●赤ちゃんの個性には3つのタイプがある

【乳児の特徴】
赤ちゃんにはかわいく見える法則がある
●子どもの顔の特徴は?
●守ってあげたくなる特徴「ベビーシェマ」

【感情の発達】
赤ちゃんの感情はどのように発達するのだろう?
●感情はどのように発達していくのか
●ルイスの感情発達理論
●2歳前から照れや共感、羨望の気持ちが芽生える

【言語】
言葉はどのように身につける?
●泣き方にもいろいろある〜言葉への準備段階~
●喃語には世界中の言葉エッセンスが詰まっている
☆幼児音の主なもの
●身体の動きによって喃語も変わる
●赤ちゃんはおしゃべりしたがっている

【愛着】
親子の絆の確立~アタッチメント~
●二次的動因説
●インプリンティング(刻印付け)
●接触の快
●ボウルビィの愛着理論
●内的ワーキングモデル

【愛着のタイプ】
愛着の質にもタイプがある
●愛着の質を測るストレンジ・シチュエーション法
●実験場面(8つの場面より構成されている)
コラム お酒やタバコが胎児に与える影響

Part3 幼児期の発達
【手足の発達】
子どもの手足はどう発達する?
●手の動きはどのように発達するのだろう?
☆利き手はどうやって決まる?
●足の動きはどのように発達するのだろう?
☆土踏まずが未形成の子ども

【移行対象】
毛布やぬいぐるみがないと寝つけない子どもがいるのはなぜ?
●お気に入りのもの・癖
☆移行対象は子どもの成長の証?
●自分以外のものへ関心が移る「移行現象」

【自己理解の発達】
子どもはいつ自分を認識しはじめるのだろう?
●1歳すぎから自分を認識しはじめる
●自分の認識は他者との関わりで身につく
☆「いや!」「だめ!」は子どもが成長している証拠
●自尊感情の発達
●自己主張・自己抑制の発達
テスト 子どもへの養育態度チェックテスト

【思考の発達】
子どもの思考能力はどう発達するの?
●ピアジェによる思考の発達段階理論

【ワトソン】
恐怖心はどうやって生まれるのだろう?
●ワトソンによるアルバート坊やの恐怖条件づけ実験

【心の理論】
子どもはいつごろから相手の気持ちがわかるようになる?
●「自分・もの」から「自分・人・もの」へ
●2歳ごろから頭でイメージする力が芽生える
●心の理論~4歳ごろから「誤信念」をもつ~

【内言・外言】
子どもはなぜ「ひとりごと」を言うのだろう?
●ひとりごとは7つに分類される
●内言・外言
●ピアジェとヴィゴツキーの論争

【遊び】
子どもの遊びと発達
●遊びが子どもを伸ばす
●ピアジェとパーテンの遊びの分類
●ごっこ遊びで「心の理論」を学ぶ
●遊びに物語性が出てくる2歳半~3歳の時期
☆おもちゃを通して創造性や社会性を身につける

【絵の発達】
子どもの描く絵はどう変わっていくの?
●最初に描く母親の顔~頭足人間~
●太陽や花に目や鼻をつけているのはなぜ?
●4歳は子どもの絵の黄金期

【友人関係】
友人はどうやってつくるのだろう?
●友人関係から社会性を身につける
●2歳からは友達との「隣り合わせ」を好む
●けんかはどう解決する?
●けんかを通して人間関係が磨かれる
コラム テレビアニメとジェンダー

Part4 児童期の発達

【児童期とは?】
児童期とはどのような時期か?
●仲間と強い関わりをもつ「ギャング・エイジ」
●9歳の壁
●身長・体重の著しい増加

【きょうだい】
きょうだいが子どもの性格形成におよぼす影響
●きょうだいはナナメの関係
●二人きょうだいにみられる特徴
●中間子にみられる特徴
●ひとりっ子にみられる特徴
●ふたごにみられる特徴
☆ひとりっ子の母親は母親語(マザーリーズ)を使わない?

【道徳性の発達】
道徳性はどのように発達する?
●道徳性の発達理論は3つある
●コールバーグの道徳性発達理論
●最高段階の道徳観念をもっているのは全人口の2%
●コールバーグへの批判~ギリガンの見解~
●ヤマアラシとモグラの家族

【社会的学習理論】
子どもは大人の模倣をする
●バンデューラの社会的学習理論

【知能】
知能とはどのようなもの?
●知能の測定方法に関する研究の流れ
●知能検査
●知能が高い=勉強ができることではない

【学習のメカニズム】
人はどう学習する?
●学習には法則がある
●古典的条件づけ
●オペラント条件づけ

【達成動機】
子どものやる気を育てるには?
●「やる気」は心理学では「達成動機」という
●内発的動機づけが育つと子どもは伸びる
●失敗が続くと無気力になってしまうことも
☆ピグマリオン効果
●エゴ・レジリエンス

【いじめ】
いじめはなぜ起こるのだろう?
●いじめの現状
●いじめのメカニズム
●いじめっ子・いじめられやすい子の特徴とは?

【不登校】
不登校になってしまうのはなぜ?
●不登校児の急増
●不登校児の支援方法
☆スクールカウンセラーの役割
コラム 子どもの体力・運動能力の低下

Part5 青年期の発達
【青年期とは?】
青年期はいつはじまり、いつ終わるのだろう?
●2~3歳までのおよそ10年間が青年期
●青年は「境界人」
☆思春期と青年期はどこが違う?

【アイデンティティの模索】
自分はどんな人間なのだろう?
●自分探しの時期~アイデンティティの確立~
☆急激な身体の発達と成熟~第二次性徴~
テスト あなたは「アイデンティティ」を確立できていますか?
●アイデンティティ研究の発展

【時間的展望】
若者は自分の将来をどのように考えるのだろう?
●「時間的展望」は、青年期の重要な発達課題
●あなたにとっての未来とは?

【性役割観】
「男らしさ」「女らしさ」はどのようにつくられていくのだろう?
●青年期に自分の性役割を意識するようになる
●アンドロジニー(両性具有性)とは?

【親子関係】
青年期に親子関係はどう変化するのだろう?
●親への反抗は自立への第一歩
●心理的離乳
●親は遠くから温かく見守ろう

【父と娘の関係】
父親が娘の発達に与える影響を
●父親は娘にとってもっとも身近な異性
●両親の仲のよさは娘の価値観に影響する
☆娘がどのような人生を選択するかは父親次第?
テストI 「娘からみた魅力的な父親」チェックテスト
テストⅡ 娘のハッピー度は父親で決まる?

【友人関係】
青年期の友人関係の特徴
●友人をもつことの意味
●今どきの友情とは?
テスト あなたは友人を気づかうタイプ?

【恋心】
恋心とはどんなもの?
●「好き」と「愛している」の違い
●リーによる愛のタイプ分類
テスト あなたの恋心チェック
☆恋する二人の心理

【青年意識の国民性】
日本とアメリカの 青年意識はどう違う?
●日本の青年は独立意識が低く、親との関係が希薄
テスト あなたの独立意識チェックテスト
コラム 「私って太っている?」痩せたい願望に潜む心理

Part6 成人期の発達

【中年期のアイデンティティ】
中年期は人生の正午に位置する
●中年期は人生の正午~ユング~
☆大人になっても自分探し~成人期のアイデンティティ再構築~

【生活構造の変化】
成人期には生活構造が変化する
●レヴィンソンは人生を4つの季節にたとえた
☆女性の生活構造は男性より複雑

【結婚】
未婚化・晩婚化が進んでいる
●未婚化の原因はどこにある?
☆現代女性が理想とする結婚相手とは?

【育児】
親になると人はどう変わる?
●子どもをもつことで親としての意識が生まれる
●歳を重ねるにつれ「柔軟性」「自己抑制」が強くなる

【子どもへの虐待】
なぜ子どもを虐待してしまうのだろう?
●虐待する親の増加
●虐待の定義
●母親自身のストレスが原因となることが多い

【夫婦の関係】
子どもがいると夫婦関係はどう変化するのだろう?
●妻はイライラ、夫は我慢
テスト あなたと配偶者の関係性はどんなもの?

【更年期】
更年期にみられる心と身体の変化
●更年期にみられる症状と原因
●更年期を乗り切る秘訣はクヨクヨしないこと

【喪失】
人は「喪失」とどのように付き合っていく?
●ヘックハウゼンの生涯コントロール理論
☆ジェネラティヴィティ(世代性)
コラム ドメスティックバイオレンス(DV)

Part7 高齢期の発達

【高齢期のはじまり】
人は何歳から「高齢者」とよばれるのだろう?
●高齢者は5歳以上の人をさす
●2055年には女性の平均寿命は8歳に?
☆高齢者のひとり暮らしが増えている

【成長・発達】
高齢者も成長・発達するの?
●未経験の状況に対応する力は衰えていく
☆日本の高齢者は元気
●経験を経て体得した知能は、歳を経ても低下しない

【記憶力の低下】
加齢による記憶の変化
●記憶の長さには3つの種類がある
テスト 改訂長谷川式簡易知能評価スケールの例

【病気】
認知症はどんな病気?
●認知症
●アルツハイマー病
●脳血管性認知症

【死の受容・生きがい】
人は「死」をどのように受け容れていくのだろう?
●キューブラー・ロスモデルの「死の受容のプロセス」
●エリクソンの「最後の発達課題」
●サクセスフル・エイジングとは?
●高齢者の生きがい感尺度
コラム EQ

付錄 発達のつまずき
発達障害とはなんだろう?
●発達障害とは、性格やしつけが原因ではない
●自閉スペクトラム症
☆アスペルガー症候群の歴史
●AD/HD(注意欠陥/多動性障害)
●限局性学習障害(SLD)
その他の気になる子どもたち
●知的障害(精神遅滞)
●言葉の遅れ
●緘黙(mutism)
●チック障害
☆発達障害のパターン

索引

小野寺 敦子 (著)
出版社: かんき出版 (2009/7/22)、出典:出版社HP