ページコンテンツ
【最新 – 心理統計を学べるすすめ本 – 入門教科書から実践書まで】も確認する
統合的理解が得られる
本書は、『心理統計学の基礎―統合的理解のために』の続編で、前編の次の段階で学習するためのテキストとして執筆されています。基本原理の学習を通して計算手法を統合的に理解することを目的としているため、他の心理統計学のテキストと比べて数式が多いです。心理統計学そのものに興味を持っている人におすすめです。
続・心理統計学の基礎–統合的理解を広げ深める
はじめに
本書は拙著『心理統計学の基礎——統合的理解のために』(以下, 前編とよびます)の続編として執筆しました。
前編では,現在の心理学の研究論文を読み解くのに必要な「重回 帰分析」「分散分析」「因子分析」「共分散構造分析」など,入門的 テキストとしては比較的高度な方法まで取り上げて,それらが統合 的に理解できるような解説を試みました。
しかし,近年の心理学や関連領域における研究論文では,たとえば種々の効果量の信頼区間とか,対比分析,マルチレベル分析,メ タ分析など,前編の内容ではカバーできていない方法が広く使われるようになってきており,学生の卒業論文,修士論文,博士論文で 用いられる統計的方法も,より広範なものになってきています。ま た,前編をテキストにして授業をしていると,「t分布の自由度と カイ2乗分布の自由度って何か関係あるんですか?」といった一 歩進んだ質問や,「学校をいくつか選んでその中から生徒を選ぶような2段抽出のとき,検定とか普通にやっていいんですか?」と いった方法論的な質問を受けることがあり,まとまった補足的な解 説が必要になることもしばしばありました。
本書は,心理学および関連領域における統計的方法の活用の現況 や、心理統計学の授業の受講者のニーズなどをふまえ、前編やその 他の入門的テキストの次の段階で学習するテキストとして,あるい は入門的テキストの学習の途中での副読本として、特に必要と思われる内容を選んで解説したものです。 新たに取り上げる方法について、個々にその内容やソフトウェアでの計算手法を学んでいくことはもちろん必要ですが,これらの前 提となる基礎的な方法との関連や,これらの方法相互の間の関市 そして多くの方法に共通する基本的原理の学習を通して,これらの 方法を統合的に理解していくことが,研究の中でこれらを柔軟に かつ自信をもって活用していくうえで有効です。本書では,このような考えから,前編でねらいとした「統合的理解」を,新しい内容 によって広げ、そしてそれを通して理解をさらに深められるよう心、 がけました。
なお,本書は前編と同様,心理統計学のテキストとしては,数式 がやや多い印象を与えるかもしれません。しかし,たとえば微分・ 積分の演算式とか,複雑な確率密度関数の式などのような数学的に 高度なものはなく,上述の統合的理解にとって必要最小限の数式の みを提示しています。概念的には理解したと思っていることでも, 数式を参照することでその理解の誤りに気づくこともあり,言葉に よる説明の限界を補ううえで,ある程度の数式は必要であり,実際 に有用です。
本書の構成と学習の進め方については第1章であらためて説明 しますが,上述のようなねらいで執筆した本書が,心理統計学の 理解,そして実際の研究への活用に役立つことを願っています。ま た、読者の皆様には,記述の誤りなど,お気づきのことがありまし たら、ご指摘いただけますと非常にありがたいです。
本書の執筆にあたり、星野崇宏さん(東京大学)には全編にわたって目を通していただき,貴重なご意見をいただきました。また, 草稿の段階で,加藤健太郎さん(ベネッセ教育総合研究所),杉澤式 俊さん(新潟大学),村井潤一郎さん(文京学院大学),吉田寿夫さん (関西学院大学)(五十音順)から,それぞれいくつかの章について, 多くの貴重なご意見をいただきました。そして,有斐閣の櫻井雄さんには,編集上のご助言だけでなく,内容についても有用なコメ ントをいただきました。心より感謝いたします。
2014年8月
南風原 朝和
著者紹介
南風原朝和(元/bb办)
1953年 沖縄県那覇市生まれ
1977年東京大学教育学部教育心理学科卒業
1981年 米国了才大学大学院教育学研究科
教育心理・測定·統計学專攻博士課程修了(Ph.D.)
現在 東京大学大学院教育学研究科教授
專攻 心理統計学,心理測定学,心理学研究法 主要著書
「行動科学における統計解析法』(共著,東京大学出版会,1990 年)
「心理学研究法入門』(共編著,東京大学出版会,2001年)
[心理統計學)基礎』(有斐閣,2002年)
「心理学研究法」(共編著,放送大学教育振興会,2003年)
「心理統計学ワークブック』(共著,有斐閣,2009年)
『臨床心理学を学ぶ7 量的研究法』(東京大学出版会,2011 年)
「教育心理学第3版』(共著,有斐閣,2015年)
『検証 迷走する英語入試』(編著,岩波書店,2018年)
目次
第1章
本書の構成と学習の進め方
1 本書で取り上げる内容とその位置づけ
基礎的な方法とその相互関係(1) 本書で取り上げる内容(3) 分 布間の関係と非心分布への拡張 (3) さまざまなデザインにおける 効果量とその信頼区間(5) リサーチ・クエスチョンに対応した比 較 (6) 階層的データへの対応(7) 複数の研究で得られる効果量
の統合 (8) 母数に関する確率の導入 (9) 2 学習の進め方
本書で取り上げる内容の間の関係と学習の進め方(10) ソフトゥ ェア(11)
第2章 分布間の関係と非心分布への拡張検定力と信頼区間のために
1 2項分布と正規分布
2項分布(13) 2項分布と正規分布の関係(14)
2 正規分布とカイ2乗分布
標準正規分布とカイ2乗分布の関係(17) カイ2乗変数の和の分
布(17) 平方和の分布(19)
3 カイ2乗分布と F 分布とも分布
平方和の比の分布(21) 分子の自由度が1のとき(21) 大分布に したがう変数の例 (22) t分布と標準正規分布(24) ここまでのまとめ(24)
4 2項分布と多項分布とカイ2乗分布2項分布から多項分布への拡張(25) 多項分布に関する帰無仮説のカイ2乗検定(26) ここまでのまとめ -a (29)
5 非心も分布
通常のt分布と非心t分布(29) 非心t分布の例(32) 非心度 と効果量(33) 非心度と検定力 (34) 非心t分布を用いた検定力 計算の例(35)
6 非心カイ2乗分布と非心 F 分布……
非心カイ2乗分布(36) 非心カイ2乗分布を用いた検定力 例(38) 非心 F分布(39) 非心 F分布を用いた検定力計首。
第3章 効果量(1)2変数データの分析において
1 研究における効果量の位置づけ
効果の3つの側面と効果量(43) 検定力を規定する効果量(44) 解釈の観点からの効果量(45) 標準化効果量と非標準化効果量 (45) 効果量の信頼区間(48) 研究のタイプと効果量の解釈(18) 理論確証型研究における効果量の報告 (50)
2 相関と回帰に関する効果量
検定力を規定する効果量(51) 解釈の観点からの効果量(52) 双列相関係数(52) Fisher の Z変換に基づくp の信頼区間(54) 非心t分布に基づく検定力と p の信頼区間(55) 数値例(60) 効果量の信頼区間の利点と留意点(61)
3 独立な2群の平均値差に関する効果量
検定力を規定する効果量(62) 解釈の観点からの効果量(63) 2 群の分散が顕著に異なる場合(66) 標準化平均値差の信頼区間(67) 数値例(68) dに基づく信頼区間(70)
4 対応のある2群の平均値差に関する効果量
検定力を規定する効果量(71) 独立な2群の場合との比較(72)解釈の観点からの効果量(73) 効果量 8′ の信頼区間(74)
5 カテゴリ変数間の連関に関する効果量
検定力を規定する効果量(75) 解釈の観点からの効果量(76) ク ラメルの連関係数の信頼区間(77) 数値例(77)
第4章 効果量(2)多変数データの分析において
1 重回帰分析における効果量
重相関係数の検定の検定力を規定する効果量(79) 追加変数の効 果の検定の検定力を規定する効果量(80) 解釈の観点からの効果 量(81) 部分決定係数(81) 偏決定係数(82) 異なる効果量の 間の関係 (83) 標準偏回帰係数(85) 効果量の点推定(87) 重相関係数と決定係数の信頼区間(88) 偏決定係数の信頼区間(90)標準偏回帰係数の信頼区間 (91)
2 分散分析における効果量
1要因デザインにおける検定力を規定する効果量(92) 解釈の観点 からの効果量(95) 決定係数の点推定(97) 数値例(98) 決 定係数の信頼区間(99) 数値例 (100) 多要因デザインにおける検定力を規定する効果量(100) 部分決定係数/決定係数(102) 偏決定係数(105) 多要因デザインにおける偏決定係数の信頼区間(107) 種々の平均値差に関する効果量(108)
3 共分散構造分析におけるモデルの適合度としての効果量
母数の最尤推定と検定(109) 検定統計量と効果量と適合度(109) 適合度指標 RMSEA (111) RMSEA の信頼区間(113) 数値 例(113)
第5章 対比分析
1 対比とは
研究の例(115) 一般的な分析手続き(115) 対比としての表現
(117)
2 リサーチ・クエスチョンに合わせた対比
リサーチ・クエスチョンは何か(119) 特定の増減傾向に関心があるとき(120)
3 対比に関する検定と推定
対比の推定量とその分布(122) 対比に関する検定(123) 対比係’ 数の決め方と検定(125) 対比の区間推定 (126) 標準化対比とその信頼区間(126)
4 対比と分散分析の関係
対比の平方和と平均平方(129) 対比の平方和と群間の平方和 (130) 互いに直交する対比(131) 分散分析における検定と対比の検定(134) 総括的な検定と対比の検定 (135)
5 検定の多重性
対比単位の誤りの確率と組単位の誤りの確率(136) Sidak の方法と Bonferroni の方法(137) Scheffé の方法 (139)
6 研究上の対比の位置づけと検定の多重性への対応
計画的対比と事後の対比(141) 検定の多重性への対応(142)
第6章 マルチレベル分析
1 階層的データとその性質
階層的データの例(145) 階層的データの統計的性質(147) 的データの取り扱い(149) 階層的データに対するリサーチ・ケースチョン(151)
2 マルチレベル・モデル
モデルの設定と評価(153) ランダム効果の分散分析モデル(154) マルチレベル・モデルにおける記号法(154) 平均に関する回帰 デル(157) ランダム係数モデル (157) ランダム効果の共分散分 析モデル(158) 独立変数のセンタリング (159) 係数に関する回
帰モデル(161)
3 母数の推定と分析例
推定法と仮定(161) ランダム効果の分散分析モデルの分析例 (163) 平均に関する回帰モデルの分析例(165) ランダム係数 モデルの分析例(167) ランダム効果の共分散分析モデルの分析 例(170) レベル2の独立変数のある共分散分析モデルの分析例(172)
4 モデルの比較
モデル間の関係(174) 尤度比検定(176) AIC による比較 (179)
5 個人内反復測定データの分析
個人内変化のモデル(181) センタリング(182) レベル2以上 のモデル(183) 潜在成長曲線モデル(184)
第7章 メタ分析
1 研究の積み重ねと結果の統合
個々の研究の限界(189) 追試研究と結果の統合(190) 対象となる効果量(191) 固定効果モデルとランダム効果モデル (192)
2 標準化平均値差の統合
データの例(193) 固定効果モデルによる統合(195) 標準化平均 値差の等質性の検討(197) ランダム効果モデルによる統合 (201)固定効果モデルとランダム効果モデルの比較(203)
3 相関係数の統合
データの例(204) 固定効果モデルによる統合(206) 相関係数の
等質性の検討(208) ランダム効果モデルによる統合(209)
4 効果量の差異の説明要因の検討
リサーチ・クエスチョン (211) 効果量に関する線形モデル (212) 固定効果モデルとランダム効果モデル (213) 種々の母数の推定 (214)
第8章 ベイズ推測
1 確率の考え方の違い
検定や推定における確率の意味(215) 仮説や母数に関する主観確率(216)
2 ベイズの定理
ベイズの定理(217) ベイズファクター(220) ベイズの定理の数値例(221) ベイズの定理の図示(224)
3 母数の事前分布と事後分布
母数に関するベイズの定理(226) 母数の事後分布の役割(228) 分散既知の正規分布モデルにおける母平均の分布(230) 分散未知 の正規分布モデルにおける母平均の分布(232) マルコフ連鎖モンテカルロ法(235)
4 母数のベイズ推定
損失関数と母数の点推定(235) 母数の区間推定(237) 数値例と 解釈 (238) 事前分布の設定による推定結果の違い(240) 事前分布の設定の仕方(241)
5 将来の観測値に関するベイズ予測
予測分布(244) 正規分布モデルにおける予測分布(246)
おわりに
引用文献
付表
索引
本書のコピー、スキャン、デジタル化等の無断複製は著作権法上での例外を 除き禁じられています。本書を代行業者等の第三者に依頼してスキャンや デジタル化することは、たとえ個人や家庭内での利用でも著作権法違反です。