デンマークのスマートシティ: データを活用した人間中心の都市づくり

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デンマークの都市政策を紹介

本書はデンマークの先進的な都市政策を包括的に紹介しています。デンマークのここが良いといった内容だけでなく、日本と仕組みとデンマークのそれの構造的な違いについてもわかりやすく言及されており、各自治体がそれら特有の状況の中で、デンマークの良い点をどのように参考にして動くべきか想像しやすい本になっています。

中島 健祐 (著)
出版社 : 学芸出版社 (2019/12/5)、出典:出版社HP

目次

はじめに

1章 格差が少ない社会のデザイン
1 格差を生まない北欧型社会システム
2 税金が高くても満足度の高い社会を実現
3 共生と共創の精神
4 課題解決力を伸ばす教育
5 働きやすい環境
6 格差がないからこそ起きること

2章 サステイナブルな都市のデザイン
1 2050年に再生可能エネルギー100%の社会を実現
2 サーキュラーエコノミー(循環型経済) の推進
3 世界有数の自転車都市
4 複合的な価値を生むパブリックデザイン

3章 市民がつくるオープンガバナンス
1 市民が積極的に政治に参加する北欧型民主主義
2 市民生活に溶け込む電子政府
3 高度なサービスを実現するオープンガバメント
4 サムソ島の住民によるガバナンス

4章 クリエイティブ産業のエコシステム
1 デンマーク企業の特徴
2 世界で活躍するクリエイティブなグローバル企業
3 デジタル成長戦略と連携して進展するIT産業
4 スタートアップ企業と支援体制
5 新北欧料理とノマノミクス

5章 デンマークのスマートシティ
1 デンマークのスマートシティの特徴
2 コペンハーゲンのスマートシティ
3 オーフスのスマートシティ
4 オーデンセのスマートシティ

6章 イノベーションを創出するフレームワーク
1 オープンイノベーションが進展する背景
2 トリプルヘリックス(次世代型産官学連携)
3 IPD(知的公共需要)
4 社会課題を解決するイノベーションラボ
5 イノベーションにおけるデザインの戦略的利用
6 社会システムを変えるデザイン

7章 デンマーク×日本でつくる新しい社会システム
1 日本から学んでいたデンマーク
2 デンマークと連携する日本の自治体
3 北欧型システムをローカライズする
4 新たな社会システムの構築

おわりに

中島 健祐 (著)
出版社 : 学芸出版社 (2019/12/5)、出典:出版社HP

はじめに

デンマークは人口わずか580万人の小国である。日本人には社会保障制度が充実した福祉国家であり、「人魚姫」や「マッチ売りの少女」などの童話で有名なハンス・クリスチャン・アンデルセンが生まれた国として親しみがあるだろう。最近は幸福度が高い国としても知られるようになり、デンマークの文化、デザイン、ライフスタイルが紹介されることが増えてきた。

一方で、デンマークが現在の社会システムを築くに至った要因を行政システム、社会インフラ、イノベーション、テクノロジーの切り口で横断的に紹介しているものは少ない。そのため日本でデンマークの経験を取り入れようとしてもうまくいかないことが多い。本書は、デンマークについて、社会システムの中心である国の政策から市民の暮らしまで俯瞰する形でまとめた。さらに、デンマークを礼賛するのではなく、客観的事実を提示することで、日本で応用展開できることを見極めてもらうことが狙いである。

1章では、「格差が少ない社会のデザイン」としてデンマークがオープンで公平な社会をつくりあげてきた歴史的背景と本質的要素について紹介している。現在のデンマークがつくられたバックグラウンドである。

2章では、「サスティナブルな都市のデザイン」を取り上げる。日本でも地球温暖化に伴い、SGDS(持続可能な開発目標)が話題となっているが、デンマークでは理念にとどまらず具体的なプロジェクトに落とし込むことで社会実装を図っている。

3章では、「市民がつくるオープンガバナンス」を紹介している。デンマークで市民が積極的に参加するオープンガバナンスがどのように実現されているのか、その背景やしくみを取り上げた。

4章の「クリエイティブ産業のエコシステム」では、資源が限られた小国デンマークが創造性によって、いかに産業を発展させてきたのかについて事例を交えて紹介している。

5章の「デンマークのスマートシティ」では、首都コペンハーゲン、第二の都市オーフス、第三の都市オーデンセのスマートシティの取り組みを取り上げた。日本で推進されているスマートシティやスーパーシティ計画との違いは参考になるだろう。

6章の「イノベーションを創出するフレームワーク」では、意外に知られていない、デンマークでイノベーションが創出されるしくみを解説している。概念にとどまらず、日本との投資プロジェクトを通じたイノベーションのメカニズムを解説した。

最後の7章では、「デンマーク×日本でつくる新しい社会システム」として、日本の自治体がデンマークの社会システムを参考にしている具体的な事例と、将来、日本とデンマークが連携する場合の体系について説明した。

デンマークでは、新しい技術やしくみを取り入れるだけではなく、先人の知恵を尊重した社会を構築している。これは「伝統と革新の融合」ともいえるもので、旧来型社会システムから時代を超えた普遍的価値のある枠組みを維持し、そこに先端技術を統合する取り組みでもある。デンマークが500年先も存続し、世界から尊敬される国家を築くための秘訣でもある。筆者はデンマーク外務省という特殊な職場に身を置き、日本人でありながらデンマーク国家の中枢に触れることができる恵まれた環境にいる。本書は、そうした私の立場から、日本の社会に役立つと考えたデンマークの社会システムを紹介したものである。

ますます複雑化する現代社会において、本書がデンマーク人の憧れる日本をさらに豊かなものとするきっかけとなれば幸いである。約100年前に内村鑑三が「デンマルク国の話」として紹介したように。

中島 健祐 (著)
出版社 : 学芸出版社 (2019/12/5)、出典:出版社HP