業界破壊企業 第二のGAFAを狙う革新者たち

【最新 – GAFAの今と未来を知るおすすめ本 – 世界のネット覇権のこれから】も確認する

「業界破壊企業」とは何か

業務破壊企業とは、斬新なビジネスモデルやテクノロジーを市場に持ち込み、劇的なスピードで顧客を獲得している企業のことです。本書では、イノベーティブな企業がピックアップされています。また、様々な業界でどのような現象が起こっているのかがわかります。

斉藤 徹 (著)
出版社 : 光文社 (2020/5/19)、出典:出版社HP

はじめに

今、世の中では「イノベーション」という言葉をさかんに耳にします。「イノベーション」とは、「新しい技術やアイデアで、社会に新しい価値をもたらす変革」のこと。今や、どんな業界でも、どんな組織でも、あらゆる場所で「イノベーション」が求められる時代になりました。では、あなたは、世界で「どんなイノベーションが起こっているのか」について、どれくらいご存じでしょうか。

じつは今、世界では独自のアイデアやテクノロジーで、業界の勢力図を一変させているイノベーション企業が続々と登場しています。よく知られたところでいえばAirbnb(エアビーアンドビー)。サンフランシスコで生まれたこのビジネスは、「安くてユニークな旅行体験をしたい」という人と、「空いた空間で手軽に稼ぎたい」という人をマッチングするというアイデアひとつで、世界中に広がるビッグビジネスへと成長しました。発想自体は単純なのですが、これこそイノベーション。革新的なアイデアやビジネスモデルを知ると、それだけでワクワクしますし、楽しくなります。そんなユニークなアイデアで急成長を遂げているイノベーション企業の世界ランキングを、アメリカNBC系のニュース専用放送局CNBCが毎年発表しています。その名も、「ディスラプター8」。

そもそも「ディスラプト(disrupt)」とは「破壊する」という意味なので、ディスラプターを直訳すると「破壊者」となりますが、近年では、さまざまなイノベーションによって業界の勢力図を一変させてしまう新興企業やプレイヤーのことを「ディスラプター」と呼ぶようになりました。
本書のタイトルには、「業界破壊企業」とありますが、「破壊者」というより「革新者」というイメージに近いかもしれません。ニュース専用放送局CNBCは、そんな業界のディスラプターを毎年8社選出し、発表しているのです。

本書では、最近の「ディスラプター8」のなかから、とりわけユニークで、革新的なビジネスを展開している企業を3社ほど選び出し、ビジネスの着眼点から創業者の思い、業界独特のバックグラウンドや企業成長のストーリーなどを踏まえながら紹介していきます。「世界のいろんなイノベーション企業を、一気に、ざっくりと知りたい」という人にはまさにぴったりです。ぜひカタログ的に楽しんで、ビジネスの参考にしてください。

・基本的な「ビジネスパターン」を知ると世界が見えてくる
さらに、もう少し「イノベーションについて深く学びたい」という人のために、「ディスラプター6」で紹介している企業を取り上げつつ、ビジネスの特徴や基本パターン、イノベーションの作り方などについても詳しく解説を加えました。

単に「いろんな企業について知る」だけでなく、基本的なビジネスモデルやそのパターンを知っておくと、「なぜ、そのビジネスがうまくいくのか」「どんな考えや理論をもとに、ビジネスを展開しているのか」というカラクリが見えてきます。イノベーションと一言でいっても、単に奇抜なアイデアだけでビジネスをしているわけではないのです。こうした「ビジネスの勘所」を押さえながら読んでいくと、より深くイノベーションというものがわかってきますし、もう一段深い楽しみ方ができるはずです。「それと同時に、本書では所々でさまざまな「ビジネス理論」や「ビジネス用語」をちりばめながら説明していきます。

最近のトレンドでいえば、「サブスクリプション」や「サステナビリティ」。あるいは、「垂直統合」「水平統合」などのビジネスパターンについて。さらには、「無消費の考え方」「ジョブ理論」「リーンスタートアップ」などです。こうした用語や理論を知っている人はもちろん、「まったく聞いたことがない」という人にもわかりやすい解説を加えながら、実際の起業ストーリーに照らし合わせて話を進めていきます。用語や理論を、わざわざ取り出して解説するのではなく、あくまでもユニークなディスラプターを紹介するなかに盛り込んでいくので、すっきりと理解していただけると思います。

・成功と地獄を体験した「ジェットコースター」のような人生
さて、ここで少しだけ私の自己紹介をしておきたいと思います。私は現在、株式会社ループス・コミュニケーションズという「ソーシャルメディア活用とイノベーション創出」を核としたコンサルティング会社を経営しながら、大前研一さんが学長を務めるビジネス・ブレークスルー大学の専任教授として「イノベーション」をテーマに講義を行っています。_2020年の3月までは、学習院大学で4年間、特別客員教授として「起業論」「インキュベーション塾」「企業経営とソーシャルキャピタル」などの講義を通じて、文字通り「起業のリアル」と最近の起業メソッドについて教えてきました。

教壇に立ち、学生たちに伝えてきた「起業のリアル」とは、私の人生そのものです。大学卒業後、IBMに入社した私は、29歳で会社を飛び出して、1991年に初めての起業をしました。ほとんど勢いだけでベンチャーの世界に飛び込んだわけですが、1年後には月商1億円に達し、ドットコムバブル時代にはインテルやメリルリンチなど世界的な企業から約30億円を資金調達、未上場ながら時価総額100億円を超えるまでに急成長しました。

・個人で3億円の借金を背負い、目覚めたこと
しかし、人生も、ビジネスも、甘い面だけではありません。「成功の裏側にあった現実は、蟻地獄のような借金、脅しまがいのクレーム、銀行の貸しはがし、資金ショートの綱渡りなど、先の見えないつらい日々でした。0歳のときには、自分で創業した会社を追われ、個人で3億円の借金を背負いました。そして大手銀行には訴えられ、家族や両親と住む自宅も競売にかけられました。そんな逆境続きのなかでも諦めずに新しい事業を起こし続け、ついには「人を幸せにするイノベーションを創出する」という起業家の使命に目覚めたことで、経営に対する確信を得られました。

また、30年近い連続起業の経験を踏まえて、さまざまな教育の場で「起業」や「イノベーション」についてお話しする機会に恵まれるようにもなりました。昇っては落ち、落ちては昇りを繰り返した、ジェットコースターのような人生です。そんな成功と失敗を実体験してきたからこそ「起業のリアル」を語ることができ、本書で取り上げる業界破壊企業についても、そのビジネスの本質をお伝えすることができると自負しています。そして本書の最後には、シリアルアントレプレナー(連続起業家)としてさまざまな境遇をくぐり抜け、私がようやくたどり着いた、「ハッピーイノベーション」という新しい起業スタイルについてもお伝えします。

今という時代に求められるのは、「利益や規模、独占を目指したメガイノベーション」を超えて、「規模の大小にかかわらず、人々の幸せの連鎖を生み出すイノベーション」が大切になるのではないか。そんなお話です。カタログ的に「ディスラプター」のアイデアやビジネスモデルを楽しむもよし。「イノベーション」や「起業」に関するさまざまな理論や事業の作り方を学ぶもよし。スタートアップと投資家の関係を通じて、時代の空気を感じ取るもよし。私たちは大きな変革期を迎え、ビジネスを取り巻く環境も日々変わり続けています。本書はそんな「今」を感じることができる一冊として仕上げました。ぜひ、楽しみながら、最新の世界の息吹を感じながらお読みください。

斉藤徹

斉藤 徹 (著)
出版社 : 光文社 (2020/5/19)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 イノベーションが私たちの「業界」を破壊する
ソニーのイノベーション、ユニクロのイノベーション
「直接つなぐ」がイノベーションのキーワード
「Uber」は価格破壊型、「Airbnb」は価値創造型
プラットフォーム型ビジネスの「難しさ」とは?
インスタグラム×アマゾンという発想
ビジネスモデルを「四つの視点」で眺めてみる
「面倒だな」と思うことがビジネスチャンスになる
「無料サービス」はマネタイズポイントに注目しよう
サブスクは「アイデア×交渉力」の時代へ
ひとつのテクノロジーが「世界のあり方」を変える

第2章 プラットフォームによる業界破壊企業
住宅のリフォーム・プラットフォーム
成功のポイントは「小さく始める」こと
P2Pレンディングによる学生ローン
「母校の後輩を支援する」というストーリーで共感を集める
トラック輸送のマッチング。
オンライン宅配
オンライン宅配市場は8億ドル規模
プラットフォームに責任はあるか?
不動産のオンライン買取販売
不動産、即、買い取ります
30日住んでみて、気に入らなければキャッシュバック

第3章 ビジネスモデルによる業界破壊企業
オンライン教育
インターネットが広げた講義の可能性。
ハーバードやスタンフォードよりも人気の「ミネルバ大学」
不妊治療サービス
企業の急成長を支えたアメリカの社会と文化
在宅フィットネス
自宅にいながらでも「スタジオのライブ感」を演出する
「何でも自分たちでやってしまう」というビジネス戦略
女性向け投資顧問
男と女では「投資に対するイメージ」がまるで違う
メッセージとストーリーによってビジネスが広がる
スキル、お金、アクセス、時間の「無消費」を探せ
女性の生理用ショーツの販売
「生理の貧困」という社会問題に向き合う
オンライン寝具の販売
「顧客のジョブ」に着目するからビジネスが成功する
SNSで「眠りに関するコミュニティ」を作る
手数料なしの株式売買サービス
感覚的に株の売買ができるシンプルなアプリ
二つの収益源だけでサービスを維持できるのか
第三の収益源は「顧客の売買データ」
糖尿病のオンライン診察
診断は医師が、生活習慣の改善はコーチがサポートする
テクノロジーによってコストダウンを図っていく
まだまだ多くの可能性を秘める「健康促進ビジネス」

第4章 テクノロジーによる業界破壊企業
微生物による農業効率化
微生物を使ったまったく新しい農業技術のイノベーション
新しいテクノロジーを導入しやすいしくみを作る
微生物のガス発酵技術
地中から掘り出した資源を何度も再利用する
三井物産、全日空ら日本企業とも提携
「自ら作る」ではなく「ライセンスを売る」というビジネスモデル
食品コーティング
コーティング剤で世界の食糧問題を解決する
たったひとつのテクノロジーがさまざまな問題を解決する
半導体による冷却機器製造
半導体を使って冷蔵庫を作る?
製造コストという壁をどう乗り越えるのか?
植物を使った人工肉製造
世界の温室効果ガスの約20パーセントは畜産関連から
「食の安全」とどう向き合っていくか
セキュリティ検査ハッカーに「あえて攻撃させる」ことで脆弱性を把握する
参加するハッカーの選別には細心の注意を払う
アメリカ国防総省やアメリカ国税庁でも導入

第5章 起業は、小さく始める、かしこく学ぶ
創業者の4割以上が、ミレニアル世代という衝撃
ミレニアル世代を意識したCasperの戦略
暴力でもなく、富でもなく、知識でもなく
「共感」こそがもっとも大切なビジネスリソースとなる
ミレニアル世代のライフスタイルがマーケットを変える
「サステナブル」がイノベーションを生み出す
共感を集めるためにも「サステナブル」が欠かせない
「リーンスタートアップ」=無駄を省いて起業する
お金をかけず「小さな仮説・検証」を繰り返す
最初は「とりあえず始めてみた」というノリでいい
投資家たちが熱狂した「ドットコムバブル」と、その時代
世界の投資をリードする孫正義というキーパーソン
投資家たちは「ビジネススピード」を見る

第6章 「ハッピーイノベーション」で不穏な時代を乗り越える
シェアワークスペース
We Workによって見えてきた「終わりの始まり」
We Work、Uber、そして新型コロナウイルス・ショック
ハッピーイノベーション=幸せの連鎖を生むサステナブルな起業
まだお金がほしい?もっと称賛されたい?
恵まれない子どもたちに「教育の機会」を提供する
ドローンによる無人配送
「思い」と「イノベーション」のかけ合わせによって幸せな社会を作る
働く人もお客さんも笑顔になる、「注文をまちがえる料理店」
なぜ今、幸せ視点に価値観がシフトしているのか
コロナショックは、時計の針を加速させる
1996年以降に生まれた「ソーシャルネイティブ」たち
ハッピーイノベーションを創り出す、新しい起業のプロセス
「お金のチカラ」から「人のチカラ」の時代に
ハッピーイノベーションが私たちの生活の基盤になる

あとがき

斉藤 徹 (著)
出版社 : 光文社 (2020/5/19)、出典:出版社HP