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リサーチの実務書
アンケートに限らず、調査一般に関する実務書です。特に、マーケティング・リサーチを行う際に役立つ内容となっています。アンケートの作成から、統計、情報発信までの一連のプロセスで注意すべきポイントについて解説しており、企業等でリサーチを行う方の参考になります。
まえがき
顧客アンケートは、企業が顧客を知って顧客志向を実現するための重要な手段です。しかしせっかく調査した結果が、各企業の意思決定に役立っているかというと、なかなかそうもいかないのです。なぜ顧客アンケートは失敗しがちなのでしょうか。
まず利用目的がはっきりしないまま、とりあえず顧客アンケートが走りだすという失敗がしばしば起きます。次に採用した方法が、与えられたビジネス上の課題を解決するのに適していなかったというミスがあります。ビジネス全般にいえることですが、初動段階での誤りは、後からでは修復するのが困難なものです。幸いにしてアンケートが適切に計画できて、データ収集も大過なく終わったとしましょう。それでもデータから情報を抽出する統計処理の段階で間違いをおかすことがあります。使っている統計ソフトが悪いのか、それとも使っている人間が悪いのか?さらに意思決定者にデータ・リテラシーがないために、顧客データを読み誤る危険もあります。
このようにアンケート調査のトラブルは、企業内の人的資源や組織にかかわる問題もからんで多層的に発生するのです。
本書は、アンケート調査で失敗しないための基本的な考え方と実務手続きを紹介したものです。調査や分析に関して経験の浅い方々はもちろん、多少経験のある方々にもご参考になるように、やや専門的な内容も取り上げています。本書の特徴は次の3点にまとめられます。
1.アンケート調査で失敗しないためのトラブルシューティングを示した。
2.アンケート調査を有効に実施するためのメッセージを各章冒頭に掲げた。
3.企業での具体例や質問文例を多くとり入れることで読者が具体的な業務イメージがつかめるようにした。
執筆の基本姿勢としては、実務的な立場で顧客アンケートをできるだけ易しく解説するように心がけました。しかし、その一方で顧客アンケートには難しい問題もあることを正直に認めて、今後取り組むべき課題についても指摘しています。
顧客アンケートのエキスパートの方々もかつては初心者として苦心を重ね、次第に達人へと成長してきたはずです。ですから、まだ経験が浅いのに顧客アンケートの仕事をまかされてしまった、という方もぜひ前向きな姿勢で顧客アンケートに取り組んでいただきたいと思います。本書がそのような諸姉諸兄の後押しとしてお役に立てれば幸いです。
東京図書の平塚裕子さんと宇佐美敦子さんには、本書の企画から編集までご尽力いただきました。お礼申しあげます。
平成23年9月
編著者 朝野熙彦
目次
まえがき
第1章 マーケティング課題とリサーチの変革
1.1 本書のパノラマ
1.2 草創期のマーケティング
1.3 産業界の新潮流
1.4 調査テーマの拡大
第2章 マーケティング・リサーチの方法
2.1 顧客アンケートの位置づけ
2.2 健康診断としての役割
2.3 測定データの性質
第3章 標本調査の前提と限界
3.1 破たんするフィッシャーの主張
3.2 リアリティーのない確率論
3.3 推定の真意と現実
第4章 リサーチのプロセスと実行管理
4.1 マーケティング活動とリサーチ
4.2 マーケティングのステップに対応した調査
4.3 リサーチのプロセス
4.4 リサーチ機能の組織化
4.5 リサーチ手法の選択
第5章 アンケート票の作成
5.1 アンケート票作成時の心構え
5.2 調査手法と質問項目の決め方
5.3 質問文と回答形式
5.4 アンケート票のブラッシュアップ
第6章 テキストデータからの情報抽出
6.1 アンケートや利用者カードの作成法
6.2 テキスト分析の方法
6.3 コールセンターや営業日報の蓄積データ
6.4 ブログやツイッターからの情報抽出
第7章 データの集計と統計解析
7.1 Excelによるデータの入力
7.2 集計の基本
7.3 グラフによるデータの可視化
7.4 データの視覚化に起因する誤解
7.5 統計的なデータの解釈
第8章 統計モデル
8.1 Excelで重回帰分析
8.2 重回帰分析の概念
8.3 説明変数のウェイト評価
【補足】基本的な統計量
第9章 情報発信
9.1 2次データの活用
9.2 報告書・プレゼンテーション
9.3 情報の活用と管理
第10章 リサーチに対するリサーチユーザーの期待
付録A アンケート調査の情報源
付録B リサーチに関する類似語・略語
引用文献
索引
執筆者紹介(執筆順:執筆時の情報です)
丸山 泰 4章
ライオン 生活者行動研究所 ブランドマネジメント開発担当部長を経て 熊本県立大学総合管理学部 教授
五條 雅史 5章
リサーチ・アンド・ディベロプメント 常務取締役
石原 聖子 6章
富士ゼロックス CS本部CR部CS革新センター グループ長
小代 禎彦 7章
TOTO コミュニケーション推進部 企画主査
高見 健治 9章
明治 マーケティング推進本部 マーケティング情報部長
星野 朝子 10章
日産自動車 執行役員市場情報室長
秋葉原MR(マーケティング・リサーチ)研究会について
本書ではマーケティング・リサーチの実学的側面を重視して、産業界で現在ご活躍中のエキスパートの方々に分担執筆をお願いしました。分担執筆者の一覧とそれぞれの担当章は上に示す通りです。BtoC企業、BtoB企業、そして日用品から耐久財まで幅広い産業分野の方々にご協力をいただいています。なお上記の分担執筆者はいずれも朝野が幹事を務める秋葉原MR研究会のメンバーです。この研究会は産学協同の勉強会として秋葉原を拠点にして2009年に発足し、以来定期的に研究会を開き共同研究を続けてきました。参加者は資生堂、キリンビール、ミツカン、アメックス、ベネッセの方など約40人からなっています。