Excelを使ったアンケート調査―Excelによるアンケート集計システムを使う

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アンケート調査の全体を俯瞰する

アンケート調査の初心者が、アンケート調査のプロセス全体を俯瞰して、やるべき最低限のことを把握できるようになっています。統計処理については、あえて必要最低限の記述にとどめることで、全体的な理解をスムーズに行うことができます。具体的な事例でも調査の一連のプロセスを解説しており、具体的なイメージを持つことができます。

岩田 安雄 (著), 小田 真由美 (著)
出版社 : カットシステム (2016/11/1) 、出典:出版社HP

はじめに

アンケート調査には、さまざまな壁や落とし穴が潜んでいます。たとえば、
●調査票が設計できない
●調査票ができても、回答者が回答できない
●回答者は回答できるが、ほとんど、みんな同じ回答になってしまった
●調査票は回収できたが、自由記述が多く、集計できない
●集計することはできたが、ここから何がいえるのか、いうべきか見当がつかない
などなど、数えれば切りがありません。しかも、そうした失敗を乗り越えるために、はじめからやり直さなければならなかったり、やり直すだけの時間も労力も残されていなければ、結局あきらめざるをえないという状況に追い込まれてしまうことになります。

本書の目的は、アンケート調査の全体を俯瞰し、つまり最小限やるべきことを網羅して、アンケート調査に潜むワナを回避しながら、そうした失敗を避けることです。それは、
●店頭における来店客を対象とした調査
●取引先の担当者を対象とした調査
●学園祭における研究発表の来場者を対象とした調査
●ゼミで取り組む課題のための調査
●卒業研究や、授業課題で用いるための調査
など、ちょっとしたアンケート調査であっても、失敗を避けるために必要なことを整理しています。

また、どんな調査であっても、調査票の印刷、配布、回収、最近ではそれをWeb上で行うにしても、人件費を含めたコストが発生します。ついては、そのコストに見合う、またはそれ以上の成果を報告書というアウトプットにまとめることが求められます。したがって、どんな報告書を目指すのか、つまりゴールを明確にすることによって、おのずと、その取り組みが決まるといっても過言ではありません。

つまり、アンケート調査の全体を見通し、一連のプロセスでやるべきことがらや注意すべき点を整理し、また、実際の事例に触れることによって、たとえ、それらは疑似体験であっても、アンケート調査に潜む壁や落とし穴を避けることが期待できます。

ただし、多くの入門書が統計処理を前提に展開されているのに対し、本書では、統計処理を必要最小限に留めることによって、最初にして最大の壁を避けようとしています。それはあらゆる分析手法や計算方法を理解しなければ、アンケート調査が始められないという呪縛から解き放ち、必要になったときに追加すればよいというルートを取りました。それは本書の目的がプロのリサーチャーを養成することではなく、より多くの初心者がアンケート調査のプロジェクト全体を俯瞰できるようにするためです。より高度な統計分析はそれが必要になったとき、必要と考えた方法を追加する方が、モチベーションも高く、はるかに効果的、効率的といえるでしょう。

また、本書で紹介している、表計算ソフトExcelのマクロで動くアンケート集計システムがダウンロードできます。このシステムでは、入力したデータのエラーチェック、単純集計、クロス集計などを簡便に行うことができます。もちろん、このシステムを使用しなくても表計算ソフトでそれらを行うことは可能です。しかし、表計算ソフトによる処理のように、何度も同じ処理を繰り返すことなく、マクロで効率的に処理する様子を確認することによって、実際の調査でありがちな、
●データに誤りがあり訂正してから集計し直す
●別の角度から集計し直す
などなど、さまざまなトラブルにも適切に対応することができます。なぜなら、そうした処理はマクロによってほぼ自動的に行うことができるので、データ処理のための操作に多くの時間を費やすことなく、なるべく多くの時間を、報告書作成を含めた後処理に使えることを確認するためです。

著者一同

岩田 安雄 (著), 小田 真由美 (著)
出版社 : カットシステム (2016/11/1) 、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1部 計画編

第1章 アンケート調査とは
1.1 社会調査とは
1.2 調査対象
1.3 調査主体
1.4 調査目的
1.5 調査内容
1.6 調査方法
1.7 アンケート調査とその方法
1.8 アンケート調査のプロセス

第2章 アンケート調査の企画
2.1 調査テーマの決定
2.2 調査目的の決定
2.2.1 実態調査
2.2.2 提案調査
2.3 既存調査資料の収集、分析
2.3.1 官庁統計
2.3.2 学術調査
2.3.3 民間調査
2.3.4 インターネットの有効活用
2.3.5 政府統計の総合窓口(e-Stat)の活用
2.3.6 添付ファイルの形式
2.4 調査仮説の設定
2.4.1 仮説とは
2.4.2 なぜ、調査仮説が必要か
2.4.3 仮説設定のアプローチ
2.4.4 統計データの傾向
2.5 調査対象者の選定
2.5.1 全数調査
2.5.2 標本調査
2.6 調査方法の決定
2.7 調査企画書

第3章 アンケート調査票の設計
3.1 質問の形式
3.2 質問の区分
3.3 質問文の設計
3.4 選択肢の設計
3.4.1 択一項目の選択肢
3.4.2 評定項目の選択肢
3.4.3 複数選択項目の選択肢
3.4.4 計量項目の場合
3.5 質問順序の考察
3.6 調査の協力依頼文
3.7 質問票の最終確認

第2部 実践編

第4章 アンケート集計システムの利用法(利用者マニュアル)
4.1 アンケート集計システムの概要
4.1.1 保護ビューの解除
4.1.2 Excelマクロの利用
4.1.3 ブックの構成
4.1.4 メニュー画面(「Top」シート)
4.2 データ定義とそのエラーチェック
4.2.1 データ定義
4.2.2 データ定義エラーチェック
4.3 データ入力とそのエラーチェック
4.3.1 データフレームの作成
4.3.2 回答データの入力
4.3.3 データエラーチェック
4.4 単純集計
4.5 クロス集計
4.5.1 集計パラメタ入力
4.5.2 択一項目の集計
4.5.3 複数選択項目の集計
4.5.4 数値項目としての集計

第5章 アンケート調査の実施
5.1 質問票の回収とその整理
5.1.1 目視チェック
5.1.2 ナンバリング
5.1.3 アフターコーディング
5.2 データ入力
5.2.1 OMRの利用
5.2.2 OCRの利用
5.2.3 手入力
5.3 エラーチェック
5.3.1 範囲エラー
5.3.2 条件エラー
5.3.3 回答数エラー
5.4 回収サンプルの確認

第6章 集計と分析
6.1 カテゴリーデータの集計・分析
6.1.1 カテゴリーデータの単純集計
6.1.2 カテゴリーデータのクロス集計
6.1.3 カテゴリーデータの検定
6.2 計量データの集計と分析
6.2.1 要約統計量
6.2.2 計量データのクロス集計
6.2.3 相関分析
6.2.4 回帰分析
6.3 グラフの活用
6.3.1 棒グラフ
6.3.2 円グラフ
6.3.3 帯グラフ
6.3.4 3Dグラフ
6.3.5 箱ひげグラフ
6.3.6 散布図
6.3.7 ヒストグラム

第7章 顧客満足分析
7.1 データの収集
7.2 データの整理
7.3 縦組み表への入れ替え
7.4 標準化とCSグラフ
7.5 改善度指標の計算

第8章 調査報告書の作成
8.1 文章の種類
8.1.1 研究論文
8.1.2 リポートとは
8.2 分かりやすい文章
8.2.1 句読点の使い方
8.2.2 二重否定を用いない
8.2.3 正確な表現
8.3 慎むべき表現
8.4 文章の仕上げ
8.4.1 構想と確認
8.4.2 文章の透明感
8.5 調査報告書の作成
8.5.1 調査報告書とは
8.5.2 調査報告書の構成
8.5.3 調査報告書の要約
8.5.4 調査報告書の具体例

第3部 事例編

第9章 学園祭研究発表の来場者アンケート
9.1 アンケート調査の企画
9.1.1 背景
9.1.2 調査目的
9.1.3 仮説の設定
9.1.4 調査対象の選定
9.1.5 調査方法の決定
9.1.6 アンケート企画書
9.2 アンケート帳票の設計
9.2.1 回答者属性についての質問
9.2.2 研究発表についての質問
9.2.3 健康に対する意識についての質問
9.2.4 協力依頼文の作成
9.2.5 質問票の最終確認
9.3 アンケートの実施
9.3.1 アンケート集計の準備
9.3.2 データの入力とエラーチェック
9.4 集計とグラフの作成
9.4.1 アンケート回答の集計(単純集計)
9.4.2 単純集計とグラフ(円グラフ)
9.4.3 クロス集計
9.4.4 クロス集計とグラフ
9.5 報告書の作成
9.5.1 アンケート調査の概要
9.5.2 来場者のプロフィール
9.5.3 健康に関する意識と研究発表に対する感想について
9.5.4 感想と実践したいこと
9.5.5 感想と見やすさ
9.5.6 健康に関する意識と動機づけの関連について
9.5.7 考察

第10章 社員食堂の満足度調査
10.1 アンケート調査の企画
10.1.1 背景
10.1.2 調査目的
10.1.3 調査仮説の設定
10.1.4 調査対象者の選定
10.1.5 調査方法の決定
10.2 アンケート調査の設計
10.2.1 回答者属性についての質問
10.2.2 社員食堂についての総合評価
10.2.3 社員食堂についての個別評価要素
10.2.4 協力依頼文
10.2.5 質問票の最終確認
10.3 アンケート調査の実施
10.3.1 回収サンプルの確認
10.4 集計と分析
10.4.1 総合評価
10.4.2 個別要素
10.4.3 顧客満足分析
10.5 報告書の概要
10.5.1 アンケート調査の実施状況
10.5.2 調査回答者の属性
10.5.3 個別要素ごとの評価
10.5.4 改善項目
10.5.5 まとめと提言

参考文献
索引

岩田 安雄 (著), 小田 真由美 (著)
出版社 : カットシステム (2016/11/1) 、出典:出版社HP