ストーリーでわかる財務3表超入門―お金の流れで会計の仕組みが見えてくる

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物語形式で会計の仕組みを理解する

会計の勉強は難しいと思われがちですが、お金の出入りを表すお小遣い調や家計簿が理解できる人なら誰でも理解できます。本書では、会計知識ゼロの主人公と一緒に、アクセサリー販売の会社を作り、仕事の現場で様々な経験をしながら、会計の本質と全体像を学んでいきます。

國貞 克則 (著)
出版社 : ダイヤモンド社 (2011/2/18)、出典:出版社HP

はじめに

会計の勉強は難しいと思われがちですが、お小遣い帳や家計簿が理解できる人なら誰でも理解できます。本書は、お小遣い帳や家計簿に代表される収支計算書の知識レベルで財務会計の仕組みが理解できるように工夫した本です。

私たちは子供の頃から、お金の動きを表す表としてはお小遣い帳や家計簿などの収支計算書しか見たことがありません。しかし、企業は「損益計算書」や「貸借対照表」といった、社会人になる前には見たこともない表を使って会社の活動を説明します。

そもそも、「損益計算書」とか「貸借対照表」といった特殊な表はなぜ必要なのでしょう。会社の活動を説明するのに収支計算書だけではダメなのでしょうか。実際、企業以外の組織や団体は収支計算書しかつくっていません。自治会も同窓会もPTAも、その組織の会計報告は収支計算書によって行われます。そのような小さな団体だけではなく、市区町村も都道府県も国も「歳入」「歳出」といった収支計算書しかつくっていません。

なぜ、企業だけが「損益計算書」とか「貸借対照表」といった特殊な表を使うのでしょうか。それは、企業が利益をあげるための団体であり、人為的に定められた事業年度(通常1年間)の活動について報告しなければならないことや、資本家から資本を集めて事業を行っていることなど、企業という団体の特殊性と関係があります。

実は私も、社会人になってしばらくの間は、「損益計算書」も「貸借対照表」もよくわかってはいませんでした。私が会計を理解できたと思えたのは、自分で会社を設立したときのことでした。当時のなけなしの会計知識を使って「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュフロー計算書」の3つの表をつくり、3か年の事業計画を数字でシミュレーションしてみました。そのとき、これら3つの表がつながっていることがわかり、初めて会計の仕組みが理解できたように思えたのです。

会計はそれぞれの表の構造を個別に勉強しただけでは理解できません。会計を理解するには、3つの表のつながりと全体像を把握したうえで、会計の数字を事業実態との関係の中で勉強することが効果的なのです。

本書では、会計を理解するために、「法人とは何か」「資本主義とは何か」といった「そもそも論」から説き起こし、「損益計算書」とか「貸借対照表」といった特殊な表がなぜ必要なのかを説明していきます。

会計の仕組みは実はとても簡単なものです。前述したように、現金の出入りを表すお小遣い帳や家計簿、つまり収支計算書が理解できる人なら必ず誰でも理解できます。会計の仕組みを理解し、損益計算書や貸借対照表が読めるようになることは、ビジネスパーソンとしての共通言語を身につけることであると同時に、仕事をするうえでたくさんのメリットがあります。

会計が理解できれば間違いなくビジネスを見る視点が広く高くなります。そのことは皆さんの長い社会人人生の中で大きな財産となっていくことでしょう。さらに言えば、会計の仕組みが理解できれば、皆さんご自身の人生自体も広く高い視点で眺められるようになるはずです。

また、会計が理解できれば先が読めるようになります。事業のリスクがどこにあるのかを予測し、大きな問題が発生する前に手を打つことができます。リスクを予測するだけでなく、数字で将来の事業ビジョンを想像してみることもできます。将来の事業ビジョンを具体的な数字で描くことができれば、そのビジョンを実現するためにいま何をすべきかもより明確になってきます。

このように、理解できれば大きなメリットがある会計ですが、どうも会計は難しいとか、会計の勉強は大変だといった悪いイメージがあります。本書は、興味を持って会計を勉強していただくために物語形式にしました。

社会人経験4年の主人公である寺坂あかねが勤めていた会社を辞め、自分の会社を設立して事業を興します。皆さんも寺坂あかねと一緒に、「企業とは何か」「会計とは何か」について考えながら読み進めていただきたいと思います。

それでは物語を始めましょう。

登場人物

寺坂あかね てらさか あかね・26歳
主人公 小さな貿易会社に勤める社会人経験4年のOL。会社勤めをしながら土日を中心に高校時代の友達(神崎良江)と一緒にアクセサリーなどを販売していた。この度、勤めていた会社を辞め、自分の会社を設立して、ストーンを中心にしたアクセサリー販売の事業を始める。

寺坂龍一 てらさか りゅういち・55歳
あかねの父 経営コンサルタント 40歳のときに脱サラし、中小企業の社長を支援する経営コンサルタント業を営む。米国ピーター・ドラッカー経営大学院でMBA取得。日本橋に事務所を構え、千葉県浦安市のディズニーランドの近くに住んでいる。

寺坂順子 てらさかじゅんこ・52歳
あかねの母 専業主婦 事業を始める娘をひやひやしながら見守っている。

寺坂藤吉 てらさか とうきち・83歳
あかねの祖父 サラリーマン時代は銀行に勤めていた。定年退職まで銀行に勤めたが、実は自分で事業をやってみたかった。現在は悠々自適でゴルフ三昧の生活。孫娘のことがかわいくてしょうがない。千葉県市原市在住。

寺坂房子 てらさか ふさこ・79歳
あかねの祖母 専業主婦 夫の寺坂藤吉同様悠々自適の生活。

倉橋哲也 くらはしてつや・40歳
龍一の友人 投資顧問会社社長 ハーバードビジネススクールでMBA取得。30歳のときに、大企業での将来を嘱望された地位を捨て、日本の若者を育成するために独立して教育会社を設立。主人公の父親と親交があり、父親の会社の非常勤取締役でもある。立ち上げた教育会社が大成功し、現在は投資顧問会社を経営している。

神崎良江 かんざき よしえ・26歳
あかねの友人 共同経営者 主人公の小学校時代からの親友。美人で人当たりがよい。高校を卒業して就職した会社は長く続かず、派遣社員としていろいろな会社を転々としていたが、どの仕事にも興味がわかず、主人公と一緒に土日にアクセサリーを売ることに一生懸命になっていた。主人公と一緒に事業を始める。

片岡理恵 かたおか りえ・19歳
あかねの会社の従業員 従業員募集広告に応募してくれた女性。高卒で就職先がなくアルバイトを続けていた。仕事の経験はあまりないが一生懸命働いてくれる気持ちのいい子。19歳とは思えないほど細かいことによく気がつく。

國貞 克則 (著)
出版社 : ダイヤモンド社 (2011/2/18)、出典:出版社HP

目次

はじめに
登場人物

第1部 あかね、アクセサリー販売の会社をつくる
SCENE1
2月中旬 あかねの自宅
父に会社設立の準備について教わる
法人とは何か
SCENE2
3月初め 銀行近くの喫茶店
父から100万円の出資を受ける
会社は誰のものか
SCENE3
3月中旬 銀行
新会社への融資を断られる
どんぶり勘定の収支計算書
SCENE4
3月下旬 祖父の自宅
おじいちゃんに融資を依頼する
会社は信用がすべて
第1部のポイント

第2部 原宿のお店で営業開始
SCENE 5
4月初め 原宿のお店
開店に必要なお金は?
現金の管理(収支計算書)が基本
SCENE6
5月初め 原宿のお店
広告宣伝を打ちたいけれど
売上と経費の管理
SCENE7
5月下旬 あかねの自宅
秘密兵器の導入で会計はどうなる?
収支計算書の限界
SCENE8
6月初め 日本橋の事務所
父に会計の基本を教わる
複式簿記の仕組みと財務3表
SCENE9
10月初め 日本橋の事務所
半年間の活動をお金の面から整理する
財務3表を一体にした会計理解法
SCENE10
10月中旬 原宿のお店
このままでは1年経っても赤字のまま?
財務3表で年間の事業を見通す
第2部のポイント

第3部 事業は大きくなっているのに、 お金が足りない?
SCENE11
12月中旬 原宿のお店
売上をとるか、商売の信念か
経営方針をめぐる対立
SCENE12
2月初め 日本橋の事務所
年度末にお金が足りなくなる?
掛け商売の落とし穴
SCENE13
2月初め あかねの自宅
現金が足りなくなって、倒産?
資金繰りのピンチ
SCENE14
2月中旬 丸の内のオフィス
投資顧問会社に出資を依頼する
売掛債権担保融資
SCENE15
2月中旬 ホテルのバー
先輩経営者たちの想い
それぞれの世代の貢献と創造
SCENE16
2月下旬 原宿のお店
借入金を返済すると財務3表はどう変わる?
買掛金の支払いと借入金の返済
第3部のポイント

第4部 1年間の経営の成績表――決算と配当
SCENE17
3月末 日本橋の事務所
年度末の棚卸しについて教わる
決算整理(減価償却、棚卸し、税金)
SCENE18
4月中旬 日本橋の事務所
株主に対して利益をどのように還元するか
配当とは何か
SCENE19
6月上旬 あかねの自宅
株主総会と経営計画発表会の回想
経営の面白さ
第4部のポイント

第5部 財務3表の知識をビジネスの現場で使うために
5−1 財務3表を正確に理解する
(1)PLを理解する
(2)BSを理解する
(3)キャッシュフロー計算書(CS)を理解する
(4)間接法CSについて
5−2 国際会計基準(IFRS)も基本は同じ
第5部のポイント

おわりに

國貞 克則 (著)
出版社 : ダイヤモンド社 (2011/2/18)、出典:出版社HP