これならわかる決算書キホン50! 〈2021年版〉

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ビジネスストーリーを想像して読む

決算書を上手に読むコツは、常に数字の裏にあるストーリーを想像しながら数字と対峙することです。本書では、このような点を意識しながら、基本的な知識をわかりやすく説明するだけでなく、任天堂やオリエンタルランドなど、実際の企業の決算書を事例として盛り込んでいます。決算書のことが全く話からないビジネスマンや学生でもしっかり理解できます。

木村 直人 (著)
出版社 : 中央経済社 (2020/8/7)、出典:出版社HP

はじめに

短期間で驚くほど常識が変わってしまいました。新型コロナウイルスは、私たちの日常を一変させ、緊急事態宣言の解除後も経済活動の正常化は見えない状況です。新型コロナウイルスの蔓延が収束したとしても、第2波のリスクや今後来るかもしれない未知のウイルスを無視することはできませんから、以前のような日常を取り戻すことは難しいでしょう。私たちには、ポストコロナの時代に対応したニューノーマル(新常態)が求められているのです。

企業にとっても、これまでとはまったく異なる経営環境の中で、生き残っていくための戦略を練って実行に移さなければならない厳しい状況です。企業行動も大きく変わるでしょう。経営環境や企業行動が大きく変容すれば、業績などにも大きな影響を与えます。もちろん、個々の企業にどのような影響が生じるかについては、事業内容や業種の特性によっても大きく変わります。しかし、決算書を見れば、会計というビジネス上の共通言語を介して、それぞれの企業への影響を同じモノサシで測って理解することができます。

本書は、決算書のことがまったくわからないビジネスマンや学生の方を対象に、決算書の読み方の基本について解説しています。決算書に苦手意識を持つ方も多いのですが、決算書のことをあまり難しく考える必要はありません。決算書の数字は、企業が行なっているさまざまな活動を、会計という言語で翻訳した結果に過ぎません。ということは、決算書の数字の裏には必ず翻訳する前の情報、つまり企業のさまざまな活動があります。そのさまざまな企業活動を、会計という世界共通のビジネス言語を使って決算書に翻訳するのです。こう考えれば、「決算書の数字は必ずビジネスストーリーとつながっている」ということが理解できるでしょう。

決算書を上手に読むコツは、常に「数字の裏にあるストーリーを想像しながら数字と対峙する」ことです。本書では、このような点を意識しながら、基本的な知識をわかりやすく説明するだけではなく、実際の企業の決算書も事例として盛り込みました。ぜひ、ご自分の頭で数字の意味を考えながら読み進めてください。本書をお読みになった方が、「決算書を読む」ことを通じて、ビジネスの共通言語としての会計言語の基礎を築かれることを願ってやみません。

2020年6月
公認会計士 木村直人

■目次

第Ⅰ章 決算書のキホン!
1 そもそも決算書って?
→企業活動を会計のルールで数字に翻訳したもの
2 決算書は主に3つ!
→貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書を押さえよう
3 企業グループの決算書とは?
→グループ経営を行なっている場合は連結決算書をチェック
4 上場企業と非上場企業の違い
→決算書の作成ルールが大きく違う
5 IFRS(国際会計基準)って何?
→日本でも大企業を中心に導入が進んでいる
コラム 個別決算と連結決算はどこが違う?

第Ⅱ章 貸借対照表のキホン!
6 貸借対照表のしくみ
→左側と右側が必ず一致するからバランスシートという
7 流動と固定に分かれる意味
→資産・負債の性質によって、現金化のされやすさは異なる
8 流動資産の特徴
→現金化を予定するものと費用化を予定するものがある
9 固定資産の特徴
→減価償却という方法で長期間にわたって費用化される
10 資産のバランスで見る企業の特徴
→ビジネスの特性と資産の内訳をつなげて考えてみよう
11 負債の特徴
→負債の性質と流動・固定の分類をしっかりつかもう
12 純資産の特徴
→株主資本の内容を、元手と利益の蓄積に分けて理解しよう
13 貸借対照表の全体像はこう読む
→資金のバランスで財務健全性が把握できる
14 M&Aと貸借対照表
→「のれん」は買収者が評価した、目に見えない価値
15 不良資産と減損処理
→不良資産が正しく評価されているのかを意識しよう
16 繰延税金資産って何?
→将来の税金口減効果産と考える
17 貸借対照表ではわからないこと
→その落し穴にはまらないように知っておくべきこと
18 実践! 貸借対照表の読み方
→実際の企業の賃借対照表を見て構造を理解しよう
コラム 包括利益って何?

第Ⅲ章 損益計算書のキホン!
19 利益には段階がある
→企業の活動別の成果を正しく把握しよう
20 売上高と売上原価の特徴
→ビジネスの特性を踏まえた売上高の質を意識しよう
21 販管費の特徴
→売上原価との違いを意識して、大きなカテゴリーで捉えよう
22 営業外損益と特別損益
→何を特別項目とするかによって経常利益は変わってくる
23 税金も費用の一部
→法人税、住民税、事業税を差し引いて当期純利益を算定
24 貸借対照表と損益計算書のつながり
→当期純利益は、貸借対照表では利益剰余金の増加になる
25 会計方針の選択と損益計算書
→どの会計方針を選択するかによって利益も変わってくる
26 売上はいつ計上すればいい?
→2022年3月期決算から新しい収益認識ルールが適用
27 実践! 損益計算書の読み方
→実際の企業の損益計算書を見て構造を理解しよう
コラム 売上高と費用は連動する? しない?

第Ⅳ章 キャッシュ・フロー計算書のキホン!
28 キャッシュ・フロー計算書のしくみ
→損益計算書ではキャッシュ・フロー情報はわからない
29 企業の活動別に区分
→営業・投資・財務の3つの活動に分けて把握する
30 営業キャッシュ・フローの読み方
→利益とキャッシュ・フローのスレに注目する間接法とは
31 キャッシュ・フロー構造と企業の特徴
→キャッシュ・フローのプラス/マイナスから企業の状況を読む
32 フリー・キャッシュ・フロー
→企業価値の源泉となる、本当の意味で自由になるお金のこと
33 実践! キャッシュ・フロー計算書の読み方
→実際の企業のキャッシュ・フロー計算書を見て構造を理解しよう
コラム 利益とキャッシュ・フローのズレ

第Ⅴ章 決算書分析のキホン!
34 決算書を読んでわかること
→決算書の分析は経営分析の1つと理解しよう
35 比較分析の着眼点
→大きなところから分析して、徐々にブレークダウンしよう
36 実践! 前期比較
→数字の変化に「なぜ?」という感覚を持つのがスタート
37 実践! トレンド分析
→中長期を比較するからこそ見えてくることがある
38 実践! 同業他社比較
→同じようなビジネスなのに、業績に差が出る理由はどこにある?
コラム どの事業で儲かっているの?

第Ⅵ章 分析指標のキホン!
39 いろいろある利益率
→売上高に対して各段階利益はどのくらいの割合なのか
40 ROEとは?
→株主の持分に対してどれだけの利益を稼げているのか
41 ROAとは?
→総資産に対してどれだけの利益を稼いでいるのか
42 ROEを高めるには?
→借金を増やせば上昇するのはホント?
43 資産効率を高めるには?
→現金化のスピードアップが改善の鍵
44 1人当たり分析の発想
→1人当たりの生産性を上げれば企業は伸びる
45 短期と長期の視点で見る安全性
→貸借対照表の資金バランスはうまくとれているか
46 自己資本比率で測る安全性
→資金の調達源泉は偏っていないか
47 キャッシュ・フロー分析の視点
→損益では見えないものを見えるようにする
48 キャッシュ・フローで測る安全性
→キャッシュ・フローでより正確に安全性を診断できる
49 EBITDAとは?
→キャッシュ・フロー利益ともいわれる、本業の実力値
50 実践! 各種指標分析
→実際の企業の決算書からさまざまな分析をしてみよう
コラム なぜROEが重視されるのか?

〈巻末〉分析レクチャー
1 決算書de推理!
1 業種の違いを読み取れ!
2 キャッシュレス化への違いを読み取れ!
3 店舗の特徴の違いを読み取れ!
2 決算書分析レクチャー
1 オリエンタルランドの決算書分析
2 コナカのトレンド分析
3 同業他社分析レクチャー
1 ケンタッキーとモスバーガーの決算書比較
2 ゼネコン3社(大林組、鹿島建設、大成建設)の決算書比較
4 理解度テスト
1 日産自動車の決算書分析
2 ヤマトHDと佐川急便の決算書比較

木村 直人 (著)
出版社 : 中央経済社 (2020/8/7)、出典:出版社HP