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依存から抜け出すための処方箋
ゲーム依存症に対して、ゲームをしている時間を減らせばいいという動きがある中で、子どもたちの心のSOSに如何に目を向け、家庭環境など根本の原因に対応する、ゲームを無理やり取り上げてはいけない、といったことを具体的に教えてくれます。
はじめに
2019年、WHOがゲーム症(障害)を正式な疾患と認定したこともあり、日本でもネットゲーム依存への関心が高まっています。
厚生労働省の統計では、スマホやゲームに依存する中高生 は93万人にのぼるとされ、思春期のお子さんをもつ親御さんのなかには、不安に感じていらっしゃる方も多いでしょう。
たしかに、ネットゲームに没頭して日常生活に支障をきたす子どもは増えつつあり、大人は、なんとかして子どもからゲームを とり上げようと躍起になっています。
けれども、ネットゲームは依存症の形であって、原因ではあり ません。ゲームやネットを無理やりとり上げても、根本的な原因をとり除かなくてはなんの解決にもならないのです。
子どもを依存に向かわせるのは、心の苦痛です。多くの子どもは家庭や学校に居場所がなく、孤立に苦しんでいます。いわばゲームは、心に悩みを抱える子どもが生きのびるのに必要な 「心の杖」ともいえるのです。子どもがネットゲームに没頭したら、心のSOSのサインだと受け止めてみましょう。
本書を通して、ひとりでも多くの方が子どものSOSに気づき、 依存状態を脱し、ご家族に笑顔が戻ることを祈っています。
周愛荒川メンタルクリニック院長 精神科医
花田照久、
精神保健福祉士 社会福祉士
八木眞佐彦
*本書における「ゲーム」とは、インターネット、及びインターネットに接続して行う依存性の 高いゲームを指すため、「ネットゲーム依存」という名称を使っています。
CONTENTS
はじめに
Part1 家庭環境が子どもを依存に向かわせる!
自分の意思ではやめられないネットゲーム依存のサイクル
依存状態のチェック
スマホ、パソコンを放さない……。
うちの子、ゲーム依存症?
子どもがとり組む
ネットゲームだけに夢中になりすぎていない?
ネットゲーム依存の要因 ダ
メ人間だから依存するわけではない。
孤立感、不安、自己否定感などが影響
ネットゲーム依存の背景
いじめや叱責によりつまずき、 ひきこもり、ゲームにハマる
ネットゲーム依存のサイクル
日常のつらさをとり除く手段。
くり返すほど満足できなくなる
依存症とは
ネットゲーム、酒、薬物……。
苦痛をやわらげる効果がある
ネットゲーム依存とは
思春期の葛藤も影響。
子どもだからハマりやすい
ネットゲーム依存が生まれる家庭
父親不在、母親過干渉。
家庭に居場所がないと感じている
心的苦痛と自己治療
ゲームは苦痛に耐える心の杖。
とり上げると依存はひどくなる
新しい診断名「ゲーム症」。研究、治療の対象に
Part2
誰にも助けを求められない!
依存を招く心のSOSに目を向ける
ネットゲームのタイプと心的苦痛
ネットゲームのタイプから、子どもの苦痛の仮説を立てる
心的苦痛の原因①
学校や家庭に、苦痛を与える原因がないか見直す
心的苦痛の原因②
対人関係が苦手、感覚過敏……。
発達障害が影響している
心的苦痛の原因③
「よかれと思って」していることが依存を招いてしまう
障害の連鎖①
「孤立」と「懲罰」で依存が悪化。
相談できる場が必要…。
障害の連鎖②
依存で体に影響が出ることも。
それでもゲームはとり上げないで
発達障害との関係
依存の背景に発達障害の傾向。
知的ゆえにネットに向かう
親の理解と態度①
センセーショナルな報道に注意。
依存の奥底の声に耳を傾ける
親の理解と態度②
親がやれることは、 本人の置かれている環境の改善
孤立の回避①
子どもだけでなく親も孤立。
相談先とつながることが大事
孤立の回避②
対立ではなく応援&寄り添い。
まず精神保健福祉センターへ
*おもなネットゲーム依存の相談先
暴力の危険には
暴力に訴えたら、すぐ110番。
警察の生活安全課を頼る
子どもがとり組む
ゲームをしている自分について考えよう
現実世界での味方を見つけよう
Part3
ネットゲームを無理やりとり上げてはダメ
楽しみを増やし、日常に居場所をとり戻す
依存先の分散①
無理にゲームはやめさせず、 それ以外の「依存先」も見つける
依存先の分散②
バイトや刺激的なスポーツ、 犬の散歩も効果がある
適切なゲーム断ち環境
子ども自ら「制限したい」と言ったら、 時間の目安を提案する
依存への認識
ゲーム依存、不登校、退学……。負け組という認識を改める
依存先の検索
あえてネットを使って親も趣味探しを手伝う
日常生活の注意
発達障害の特性を理解し、子どもが安心できる場所をつくる
効果的な言葉
子どもには「ごめんなさい」ではなく「ありがとう」と言う
Part4
まず親が変わること!
子どもを依存から助けるための 親の接し方レッスン:
基本的な考え方
すべての会話を
プラスイメージの言葉に変える
Lesson① 状況把握
ゲームを始める状況を把握し、 親の対応を修正していく
Lesson② 暴力回避
キレるサインを見極め、 安全な対応をとる
Lesson3 攻撃回避
主語を自分にし、 気持ちを伝え、思いやりを示す
Lesson④ 感謝と称賛
ささいなやりとりでも、 ありがとうと伝え、評価する
Lessons⑤ おせっかい行動禁止
「よかれと思って」 やってきたことをやめてみる・
Lesson⑥ 自分への報酬
親自身のがんばりを認め、 自分の生活を豊かにする
Lesson⑦ 治療への誘導
子どもに変化が見られたら、 ゲームから離れる手伝いをする
専門医療機関・家族教室
専門家の助言を受け、 依存症の家族トレーニングを行う
おわりに
デザイン●酒井一恵
イラスト●坂木浩子