裁判官! 当職そこが知りたかったのです。 -民事訴訟がはかどる本-

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本書は、訴訟代理人が知りたいことだけを裁判官に尋ねた、2日間のロングインタビューをまとめたものです。書面の作成、証拠提出、証人尋問、判決、控訴に至るまでや、裁判所内部の実態や裁判官の人間関係などにも触れられています。業界内の人だけではなく、裁判や裁判官に興味のある人も楽しめる一冊です。

岡口 基一 (著), 中村 真 (著)
出版社 : 学陽書房 (2017/12/9)、出典:出版社HP

まえがき

民事訴訟に関する新しい書籍が、毎年、何十冊も現れては消えていきました。そのほとんどが、訴訟マニュアルか学術書です。最近のトレンドは、基本書には書かれていないけれど、訴訟代理人の「実務のこういうことこそ知りたかったんだ」という知識をてんこ盛りにまとめたものです。しかし、そういうタイプの書籍も、そろそろネタが出尽くした感があります。読み手も書き手も弁護士であるため、どうしても、話題が似通ってくるのです。有効な訴訟戦略をたてるためのノウハウを習得するには、弁護士同士で感じたことを教え合うだけでは限界があります。

相手の手の内を知るという意味でも、訴訟指揮をする立場にある裁判官に、民事訴訟について感じるところを話してもらう企画があってもいいのではないでしょうか。また、個人的に、「世間知らずな裁判官」と「依頼者を説得できない弁護士」というとらえ方や両者の間にある相互不信のようなものに光を当ててみたいという思いがありました。これまで、書籍、企画問わず面白そうなものには首を突っ込んできた私ですが、このたびたどり着いたのが、民事弁護士が民事裁判官にインタビューするという企画であったわけです。

しかし、とおりいっぺんの話しかしてくれない裁判官では、無難な話に終始し、ネタになりそうな中身が出てこないおそれがあります。加藤新太郎元判事、須藤典明元判事、園尾隆司元判事、山室恵元判事、原田國男元判事、中込秀樹元判事……。法曹であれば誰でも知っている個性派の裁判官が何人もいた時代は過去のものとなり、今は、裁判官がサラリーマン化してしまっているという声も聞かれる時代です。いや、現職の裁判官の中にも、個性あふれる方が一人だけいました。SNSで赤裸々なプライベートを汚しまくっている方が。そう、岡口基一裁判官です。SNSは「オフ」の場と割り切っているため、かえって、「オン」の話題は発信していません。岡口裁判官に、仕事の本音を語ってもらう場があったなら面白いのでは……?思い立ったが吉日。岡口裁判官に打診したところ、すぐに快諾の返事がありました。

とんとん拍子で企画は進み、訴訟代理人が知りたいことだけを裁判官に尋ねる、二日間のロングインタビューが実現したというわけです。本書は、そのエッセンスを、一冊の本にまとめたものです。本書の内容は、書面の作成、証拠提出、証人尋問、和解、判決、そして控訴に至るまで豊富なトピックが盛り込まれています。さらに民事訴訟の知識にとどまらず、これまでどんな本にも書かれていなかった、裁判所内部の実態、具体的には、合議の進め方、足案の仕方、裁判官の人間関係にまで触れています。裁判官が考える訴訟戦略のポイントから、知られざる裁判所内部の様子まで、目から鱗の情報がオンパレードの本書の中には、これまでとは違った新しい訴訟代理人に生まれ変わるためのヒントがきっとあるはずです。

オフではなくオンで本音を語る。まさに本邦初公開、魅惑の開口ワールドをご堪能ください。

弁護士 中村真一

岡口 基一 (著), 中村 真 (著)
出版社 : 学陽書房 (2017/12/9)、出典:出版社HP

CONTENTS

まえがき

CHAPTER 01 書面
裁判所から見た「いい書面」「悪い書面」
要件事実の知識の有無が最も表れる書面
訴状のファーストインプレッション
見落とされがちな「よって書き」
代理人の印象は訴状で決まる
書面はゴテゴテ飾るべからず?
書面を読むタイミング
しょうもない主張につきあう必要は?
エモーショナルな書面の効き目
基本的事実の主張の欠落
書面を送るべきはファックスか郵送か
やたらと長い書面
いつも自分の主張で終わりたい代理人

CHAPTER 02 立証
高裁裁判官がまず読むのは証拠説明書?原判決?
被告欠席が見込まれるときに出しておくべき証拠
証拠の表記方法あれこれ
立証責任のない当事者にどの程度事情を明らかにさせる?
証拠調べにより証明すべき事実の確認
「過時提出主義」の「適時」とはいかに

CHAPTER 03 尋問
陳述書には何を記載するべきか
「尋問バッチリだったのにこの判決?」という疑問が生じるワケ
補充尋問についての考え方
導間で変わる印象。
証拠調べ期日前の準備
介入場間と補充尋問
尋問の和解への影響は?
弾刻証拠を裁判官はどう見ているか

CHAPTER 04 和解
和解のメリット・デメリット
県民性と和解のゆくえのカンケイ
「7割」和解を成立させる裁判官が語る
手元不如意の場合
やっぱり和解してください

CHAPTER 05 審理の終結
弁論の終結~判決までの裁判官のお仕事
最終心正ができるまで
判決までのスケジュール感
部長の心証やいかに
「合識の充実」の取組み
裁判官同士のコミュニケーションの変容
最終準備書面、コレを書いたら勝たせたる

CHAPTER 06 判決
上級審への移番は考慮するのか
和解協議が判決に影響?
代理人の腕のよし悪しが判決に及ぼす影響
起案合成
審理期間の長さは気になる?

CHAPTER 07 控訴
双方から控訴される判決
高裁裁判官が控訴審でまず着目すること
控訴代理人の見立てと筋と
控訴の思旨は大抵どこか間違っている?
双方控訴・附帯控訴などの事情の影響は?
【書式】控訴の部と控訴の都合に対する答弁
控訴審における和解

CHAPTER 08 裁判所から見た内外のお仕事事情
ブラックボックス? 裁判官の異動時の引継ぎ
異動を控えた裁判官
主張まとめメモの提出要請
処理して行くか置いて行くか
裁判官の宿題事情
事件処理「以外」にはこんなことをしています
裁判官に求められる資質
裁判官の仕事の魅力
裁判官はしんどい?
民事系裁判官のスキルが光る場面
高裁から見た管内の裁判官
裁判官に信頼されている代理人
裁判官から見た最近の若い代理人
裁判官がやりやすい代理人
裁判官よ、外に出よう

CHAPTER 09 これからの民事訴訟を語らうこと
民事訴訟の質は今がピーク?
なぜ今がピーク?
失われる旧様式判決
消えゆく要件事実教育
要件事実教育の担い手やいかに
専門訴訟の課題
マニュアル化とAI

おまけ 裁判事! 岡口さんのこと、教えて!
同業者との距離感
知られざる裁判所の飲み会
この仕事はここがつらいよ
ポストの問題
これだからこの仕事はやめられない
「被害者を助ける」なかれ
岡口さんはどうして裁判官に?
書籍の執筆はいつどうやって?
岡口流の情報収集術
SNSとのつきあい方
司法試験は4回め
弁護士には、なってみたい?

あとがきにかえて

岡口 基一 (著), 中村 真 (著)
出版社 : 学陽書房 (2017/12/9)、出典:出版社HP