はじめての民事手続法

【最新 – 民事訴訟がよく分かるおすすめ本】も確認する

「民訴」がズバッと理解できる

6つの架空ケースをもとに、手続の過程を具体的に解説しています。民事訴訟法の他にも、民事執行・保全法、家事事件手続法、破産法、民事再生法などの主要な手続法、また改正後の最新の内容までカバーされています。民事訴訟法をはじめて学ぶ人にとって、最適の入門書です。

上田 竹志 (著), 濵﨑 録 (著), 堀 清史 (著), 浅野 雄太 (著), 川嶋 四郎 (編集), 笠井 正俊 (編集)
出版社 : 有斐閣 (2020/4/13)、出典:出版社HP

はしがき

本書は、民事に関する手続法の全体を分かりやすく具体的に概観した入門書です。内容としては、民事訴訟法はもちろんのこと、民事調停法や仲裁法等を含むADR(裁判外紛争解決手続)、民事執行法、民事保全法、家事事件手続法、人事訴訟法、破産法、民事再生法等の主要な民事手続法の全体を、コンパクトにカバーしています。本書は、民事訴訟法自体の入門書としても用いることができるように、民事訴訟法の部分を多少多めに説明しました。はじめて民事訴訟法や民事手続法を学ぶ人にとっても、自学自習ができるように工夫しています。本書は、一定の水準を保ちつつ身近で分かりやすい民事手続法のテキストになることを目指したものです。民法、民事執行法等の改正については、2020年4月までに施行されるものを盛り込んでいます。

民事訴訟法は、「民訴」と略されることから、「眠素」ともよばれています。六法科目の中でも難しい法律科目の1つと考えられることが多いようです。しかし、民事訴訟法を中核とする民事手続法の世界は、様々な場面で起きる紛争を人々がよりよく解決するために築き上げてきた歴史の所産であり、人類の知恵の結晶とも考えることができます。日常的に生じる紛争を適切に解決したり予防したりすることは、人々がより豊かな生活や社会を築くために不可欠であるからです。

そこで、私たちは、6件の具体的な架空のケースをもとに、基本的な原則を踏まえながら具体的に手続過程を説明する方法で、本書を執筆しました。現実の社会に発生する紛争は、それぞれ1つひとつに個性があり、生身の人や企業等が当事者となっています。本書では、読者の皆さんができるだけ具体的なイメージをもちながら学べるように工夫しました。訴訟や手続は、山や川にもたとえることができると思います。本書は、これから登る山や下る川の、いわば簡潔で分かりやすい地図を提供したものです。あまり詳しくなりすぎないように工夫をし、できるだけ分かりやすい内容のものとなることを目指しました。手続の基本的なことや原則的なものを中心に概説していますので、より深く学びたい人には、本書を通読して手続法の全体像を理解した後に、より詳しい書物を読むことをお勧めします。

本書の執筆のために、6人の多様な世代の執筆陣が、長い時間をかけ深い議論を行いました。すべては、民事訴訟法・民事手続法の面白さを、1人でも多くの人々に共有してもらえるような入門書にするためです。このようないわば幸せなコラボレーションの果実を、少しでも多くの読者に味わってもらえればと、私たちは願っています。

本書の執筆・刊行に際しては、有斐閣京都支店の一村大輔さんから献身的で入念なサポートをいただきました。心から深く感謝を申し上げます。

2020年2月
川嶋四郎
笠井正俊

上田 竹志 (著), 濵﨑 録 (著), 堀 清史 (著), 浅野 雄太 (著), 川嶋 四郎 (編集), 笠井 正俊 (編集)
出版社 : 有斐閣 (2020/4/13)、出典:出版社HP

目次

序 民事手続法の世界へ
1民事手続法と「正義へのアクセス」
社会と紛争と手続
自力救済禁止の原則
民事手続と刑事手続
手続法の使命と人の役割
「正義・司法へのアクセス」

2民事手続は生まれ進化する
民事訴訟法から民事手続法へ
それでも民事訴訟法 一般法と特別法
各種の手続とその役割

第1編 民事訴訟法
第1章 裁判所
1裁判所の役割と種類等
裁判所とは
裁判所の種類
一般的な公正の保障 フェアーな制度
個別的な公正の保障 フェアネスの確保

2裁判所の権限と管轄
民事裁判権と管轄
管轄の具体的な規律 どこの裁判所が管轄をもつか

3訴訟と費用

第2章 当事者
1当事者概念
当事者とは 訴えれば原告、訴えられれば被告
当事者のよび方

2当事者の特定と確定
当事者の特定 原告が当事者を決める
当事者の確定 裁判所が当事者を確定する

3当事者権と二当事者対立構造
当事者たる地位と当事者権
応訴強制とは
二当事者対立構造とは

4当事者能力
当事者能力とは 訴訟制度を利用できる人
原則 人であること
例外 人でなくても

5当事者適格
(1)当事者適格とは何か

(2)当事者適格における原則
給付の訴えにおける当事者適格
確認の訴えにおける当事者適格
形成の訴えにおける当事者適格

(3)例外 第三者の訴訟担当
第三者の訴訟担当とは
第三者の訴訟担当の整理
法定訴訟担当 自分のための場合と、自分のためではない場合
任意的訴訟担当 あなたに訴訟を任せた
訴訟担当の効果

6訴訟能力
(1)訴訟能力とは何か
(2)どんな場合に訴訟能力が認められるか
(3)訴訟能力制限の効果

7訴訟上の代理

(1)法定代理人
制限行為能力者の場合
法人・権利能力のない社団の場合

(2)任意代理人(訴訟代理人)
弁護士代理の原則
訴訟代理人と本人の関係

第3章 請求と訴え
1訴訟上の請求
(1)訴訟上の請求とは
請求とは何か
「訴訟物」とは何か

(2)訴訟物の単位
権利義務の1つ1つが、そのまま請求になる
どのようなものが訴訟物になるのか

(3)請求の特定
請求の特定(原告が訴訟物を決める)
あいまいな請求は不適法
申立事項と判決事項

2訴え
(1)訴えとは何か
裁判所に判決を要求する
紛争の内容と、解決の形式

(2)給付の訴え
給付請求権のための訴え
給付請求権の実現方法

(3)確認の訴え
あらゆる権利のための訴え
判断したらどうなるのか

(4)形成の訴え
法律状態を変えるための訴え
形成すると、どうなるのか

3訴えの利益
(1)訴えの利益とは

(2)給付の利益
現在給付の利益
将来給付の利益

(3)確認の利益
確認の利益の判断要素
方法選択の適切性 ほかの訴えは使えないのか
対象選択の適切性 訴訟物は、現在の法的紛争に関するものか
即時確定の利益 法的紛争は生じているか

(4)形成の利益

4訴えの提起
(1)訴状の提出
訴えの起こし方
訴状の書き方
訴え提起の効果

(2)訴状の審査

(3)訴状の送達
送達とは受送達者 誰が書類を受け取れるか
「受け取ったことにする」送達制度
訴状送達の効果

(4)重複訴訟の禁止
(5)第一回口頭弁論期日の指定
(6)第一回口頭弁論期日の準備

第4章 審理
1口頭弁論
(1)口頭弁論とその多義性 口頭弁論にはいくつかの意味がある
(2)口頭弁論の必要性または必要的口頭弁論 当事者に審理を受ける機会を保障することが必要

(3)口頭弁論の諸原則
双方審尋主義とは
公開主義とは
口頭主義とは
直接主義とは

(4)手続進行面と内容面での裁判所・当事者間の役割分担

2争点・証拠の整理手続
争点整理手続の概要
各種の争点整理手続
争点整理
手続の完了

3弁論主義
(1)弁論主義の意義
弁論主義の意義
弁論主義の根拠
裁判のために必要な「資料」とは 主張資料と証拠資料の区別
事実の分類と弁論主義が適用される事実
弁論主義の適用が主要事実に限られる理由

(2)弁論主義の内容
当事者の事実・証拠に対する支配権
弁論主義の3つの原則

(3)主張原則・弁論主義の第1テーゼ
主張されない事実はないものとして
規範的要件、特に過失の問題
主張しなければ負けてしまう

(4)自白原則・弁論主義の第2テーゼ
両方ともそう言うならそのまま認めましょう
自白はどのような事実についてどういう場合に成立するのか
自白の効果

(5)証拠申出原則・弁論主義の第3テーゼ 当事者が出してこない証拠を調べることはできない

4釈明権

5当事者の情報へのアクセス
証拠保全とは
弁護士会照会とは
提訴前の証拠収集の処分等
提訴後の情報収集

6訴訟要件
訴訟要件とは
各種の訴訟要件

第5章 証拠
1証拠・証明
(1)証拠概念
証拠と一口にいっても
証拠方法とは
証拠資料とは

(2)証明
証明とは
疎明とは

(3)自白および顕著な事実
当事者が自白した事実
顕著な事実

(4)自由心証主義

2証明責任
(1)証明責任の意義
証明責任=真偽不明への備え
証明責任は訴訟中には動かない

(2)証明責任の分配
法律要件分類説の考え方が基本
当事者は、自己に有利な事実について証明責任を負う
有利か不利かは法規の構造で決まる

3証拠調べ
(1)証拠調べ総論
証拠の申出 この証拠を調べてください
証拠の採否の決定 この証拠を調べましょう/調べません
証拠調べの実施 はい、調べました

(2)証拠調べ各論
証人尋問 あなたが見聞きしたことを教えてください
当事者尋問 当の本人に聞きましょう
鑑定 専門家にお伺いしたい
書証 文書を読みます
文書提出命令 その文書、出してもらいます
検証 五感で調べます

第6章 訴訟の終了
1訴訟の終了事由
当事者の意思による場合
判決による場合

2当事者の訴訟行為による訴訟の終了
(1)判決でなくてもいい?

(2)訴えの取下げ
はじめからなかったことに
取り下げたあとは

(3)請求の放棄・認諾

(4)訴訟上の和解
「訴訟上の」和解があるということは
和解をするメリットは

(5)訴訟上の和解の効力

(6)和解の既判力
何が問題なのか
3つの考え方
判例の考え方

3裁判所の終局判決による訴訟の終了

(1)裁判とは
判決・決定・命令の違い
判決の種類

(2)判決の成立
判決言渡しまでの流れ
判決書の中身

(3)判決の確定

第7章 判決の効力
1言渡しによって生じる判決効

2確定判決の効力
執行力とは
形成力とは

3既判力
(1)すべての確定判決に共通して生じる効力
(2)既判力の根拠

(3)既判力の作用
既判力が意味をもつのは、後の手続でだけ
積極的作用と消極的作用
前訴と後訴の訴訟物が同一の場合
訴訟物が同一でなくても既判力は作用する

4既判力の基準時
既判力はいつの時点の判断について生じるか
既判力の遮断効とは

5既判力の客体的(客観的)範囲
(1)判決の主文への限定(原則)
既判力は判決のどの部分の判断に生じるか
なぜ、理由中の判断には既判力が生じないのか

(2)判決理由中の判断でも既判力が生じる場合(例外)
理由中でも蒸し返せないのは
相殺の抗弁に関する具体例

(3)判決理由中の判断の拘束力と信義則
判決理由中の判断の拘束力とその必要性
信義則による拘束力

6既判力の主体的(主観的)範囲
(1)判決の相対効

(2)第三者への既判力の拡張(例外)
訴訟で争った主体ではないけれど……
訴訟担当の被担当者
口頭弁論終結後の承継人
請求の目的物の所持者

(3)対世効

第8章 複数請求訴訟
複数請求訴訟とは
請求の併合とは
訴えの変更とは
反訴とは
中間確認の訴えとは

第9章 多数当事者訴訟
1多数当事者訴訟とは

2共同訴訟
共同訴訟とは
通常共同訴訟とは
必要的共同訴訟とは

3訴訟参加
訴訟参加とは
補助参加とは
独立当事者参加とは
共同訴訟参加とは
訴訟告知とは

4訴訟承継
訴訟承継とは
当然承継とは
申立承継とは

第10章 上訴・再審
1上訴とは何か
(1)当事者による不服申立ての方法
当事者の不服申立ての機会としての上訴
三審制とは
審級制度とは
人事訴訟の場合
決定・命令の場合

(2)上訴制度の必要性と目的
上訴制度の必要性
判決確定の必要性
上訴制度の目的

2控訴
(1)控訴の要件
(2)控訴の利益

(3)控訴審の審理と判決
続審制とは
控訴審の判決
不利益変更禁止の原則
附帯控訴とは

3上告
(1)上告理由と上告受理申立ての理由
上告理由とは
憲法違反・重大な訴訟手続上の違法
その他の法令違反
最高裁判所への上告受理の申立て

(2)上告審の審理と裁判
上告審の判断の対象
上告審の審理と判決

4抗告
(1)上訴としての抗告
即時抗告と通常抗告
抗告ができない決定
文書提出命令申立てについての決定と即時抗告
再抗告とは

(2)許可抗告

5再審
再審とは
再審事由とは
再審の手続

上田 竹志 (著), 濵﨑 録 (著), 堀 清史 (著), 浅野 雄太 (著), 川嶋 四郎 (編集), 笠井 正俊 (編集)
出版社 : 有斐閣 (2020/4/13)、出典:出版社HP

第11章 簡易手続
1少額訴訟
(1)少額訴訟とは
(2)少額訴訟の提起
(3)審理

(4)判決および執行
判決の内容
執行の内容

2督促手続
督促手続とは
督促手続の流れ

第12章 民事紛争の解決手続の諸相 ADR、和解・調停・仲裁、非訟
1ADR 裁判外紛争解決手続
ADRとは
ADRには

2和解・調停・仲裁
(1)和解

(2)調停(民事調停)
調停の種類
民事調停とは
民事調停の手続
調停に代わる決定

(3)仲裁
仲裁とは
仲裁の手続
仲裁と調停

3訴訟と非訟
非訟とは
非訟には
「訴訟の非訟化」とその限界

第2編 家事紛争に関する手続
第13章 家事調停
1家事調停の意義と手続
家事調停とは
家事調停の手続

2人事訴訟・家事審判との関係
人事訴訟と家事調停
家事審判と家事調停

3調停調書

4調停手続の中でされる審判
合意に相当する審判
調停に代わる審判

第14章 家事審判
1家事審判の意義と手続
家事審判とは
家事審判の手続

2審判
審判の内容・告知・不服申立て
義務の履行をさせる方法

第15章 人事訴訟
人事訴訟とは
人事訴訟の手続と判決
人事訴訟における民事訴訟事項の併合・附帯処分

第3編 民事保全法・民事執行法、倒産法
第16章 民事執行
1民事執行制度の趣旨・目的

2民事執行の意義と種類
民事執行の意義・執行機関・執行当事者
民事執行の種類

3強制執行
(1)債務名義と執行文に基づく強制執行の申立て
債務名義とは
執行文とは

(2)金銭執行の種類と手続
金銭執行の種類
金銭執行の手続の流れ
差押えとは
換価とは
満足とは
執行対象財産の特定とそのための制度

(3)非金銭執行の種類と手続
非金銭執行の種類
直接強制とは
間接強制とは
代替執行とは
子の引渡しの強制執行とは
意思表示の擬制

4担保権の実行手続

5民事執行をめぐる不服申立ての方法
(1)違法執行と不当執行の違い
違法執行とは
不当執行とは

(2)請求異議の訴え
(3)第三者異議の訴え

第17章 民事保全
1民事保全制度の概要
(1)民事保全とは
(2)民事保全制度の趣旨・目的

仮差押えは何のために用いられるのか
係争物に関する仮処分は何のために用いられるのか
仮の地位を定める仮処分は何のために用いられるのか

2民事保全の手続
(1)手続の概要

(2)保全命令の要件と審理手続
保全命令の要件
保全命令の審理手続

(3)保全命令の担保の提供
(4)保全命令の申立てについての裁判に対する不服申立ての方法

3仮差押え
仮差押えの意義と要件
命令の内容とその執行の効果

4係争物に関する仮処分
(1)係争物に関する仮処分の意義と要件

(2)命令の内容・類型とその執行の効果
不動産所有権の移転登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分
占有移転禁止の仮処分
係争物に関する仮処分の効果

5仮の地位を定める仮処分

第18章 倒産処理手続の基礎
1倒産処理手続の意義
(1)倒産とは

(2)倒産処理手続がなぜ必要か
倒産処理手続の必要性① 債権者間の平等の確保と過度の圧力防止
倒産処理手続の必要性② 債務者財産の最大化
倒産処理手続の必要性③ 債務者の経済的再建

2倒産処理手続の種類
(1)法的整理と倒産ADRと私的整理、清算型手続と再建型手続

(2)各倒産処理手続の意義
法的整理によらない倒産処理手続の意義
法的整理の意義

(3)法的整理の種類
清算型手続の種類
再建型手続の種類

第19章 法人の倒産
1法人の破産
(1)破産手続の流れ

(2)破産手続の機関
破産裁判所とは
破産管財人とは

(3)破産手続の開始
破産手続開始申立てとは
破産手続開始決定とは
破産手続開始原因とは
破産手続開始時の手続
破産手続開始決定の効果

(4)破産者の財産の取扱い
破産財団とは
否認権とは
双方未履行双務契約とは

(5)破産者に対する権利の取扱い
破産債権とは
財団債権とは
取戻権・別除権・相殺権とは

(6)配当、破産手続の終了
配当とは
破産手続の終了

2法人の再生
(1)再建型手続の概要
再建型手続の意義と種類
再生手続の流れ

(2)再生手続の開始
申立て
開始決定

(3)再生計画
再生計画案の提出
再生計画案の決議
再生計画の認可と効力
再生計画の遂行

第20章 個人の倒産
1個人の倒産手続の概要
(1)個人の倒産手続の意義

(2)個人の倒産処理手続の種類
消費者破産とは
個人再生手続とは
特定調停とは

2個人の破産手続の概要

3免責
(1)免責の意義

(2)免責の申立てと要件
申立手続
免責の要件

(3)免責の効果
免責の効果と復権
非免責債権とは

事項索引
判例索引

上田 竹志 (著), 濵﨑 録 (著), 堀 清史 (著), 浅野 雄太 (著), 川嶋 四郎 (編集), 笠井 正俊 (編集)
出版社 : 有斐閣 (2020/4/13)、出典:出版社HP