雑談力が上がる話し方――30秒でうちとける会話のルール

【最新 – 雑談力を高めるためのおすすめ本 – 知っておきたい話し方、テクニック】も確認する

雑談力を鍛えられる

雑談とは、会話を利用して場の空気を生み出す技術のことです。会話というよりも「人間同士のお付き合い」に近いものです。人間関係が希薄化しつつある現代において、雑談力を身につけることは、強く生き抜く力を身につけることそのものです。本書は、雑談力が上がるルールやマナー、テクニックなどを紹介していきます。

齋藤 孝 (著)
出版社 : ダイヤモンド社 (2010/4/9)、出典:出版社HP

はじめに

「沈黙は怖い。でも雑談は苦手」な人が増えている

エレベーターに乗ったら、時々見かける同じマンションの住人がいました。「お、おはようございます」すかさずあなたも、一 「あ、おはようございます」そして、そのまま下を向いて携帯電話の画面を見るフリ。なぜなら、そのあとの会話が続かないから……。
通学・通勤の最寄り駅。改札口で偶然あなたは先輩に会いました。そして一緒に学校・会社に向かうことに。先輩とはふた言、三言をきいたことがあるだけで、特に親しいわけではない。いったい何を話していいのやら。….気まずい。互いの沈黙が長く感じます。
さて、新学期の教室。新しい部署のオフィス。勉強会、パーティの会場。
見渡せば、知らない人ばかり。せっかくの知り合うチャンスだけれど、自分からどうやって声をかければいいのか、きっかけがつかめない。
こんな悩みを持つ人、多いのではないでしょうか。私の教え子の大学生たちも、こうした悩みを抱えています。いや、正直に言えば、思春期の私もそうでした。
実は、今まで紹介した場面で発揮するものは、トーク術ではありません雑談をする力。相手との距離を縮め、場の空気をつかむことです。そしてここで忘れてはいけないのが、話し上手と雑談上手は違うということです。
雑談についてよくいわれる2つの誤解があります。

1 初対面の人やあまり親しくない人と、何を話していいのかわからない
2 雑談なんて意味がないし、する必要なんてない。時間のムダ

1については、先ほど述べたとおり。必要なのは会話力ではなくコミュニケーション力。それもちょっとしたルールや方法を知り、やってみるだけで、誰でも身につくものなのです。口下手な人、シャイな人、安心してください。 やり方はこのあとご紹介します。
また、雑談は時間のムダと考える人も少なくありません。
おそらく、天気の話や「今朝ウチの猫がね……」なんて話を聞いて何の意味があるんだと疑問に思っているからでしょう。
しかしながら、これも不正解。あとで詳しく説明しますが、雑談というのは会話ではなくコミュニケーション。「中身がない話」であることに意味があるのです。
少し、肩の力が抜けたでしょうか。

知らない人でも、年上の人でも、顔見知り程度の人でも、すぐ気軽に打ちとけて、変な沈黙もなく、話が続いている。しかも、とっても楽しそう。こんな人を見て「うらやましいな」と内心思ったことがある人もいるでしょう。
かつては、ご近所さんや親戚、兄弟などといった、社会の中で自然と雑談力は鍛えられ、知らぬうちに身につきました。ところが現在は、近所の人の顔さえわからない状態。雑談そのものに触れる機会も少なくなりました。
となると、当然、先のように「気まずくなる」「沈黙してしまう」「何て話しかければいいのかわからない」といった悩みを抱える人も急増してきます。
そんなこともあり、私は大学の授業で、生徒同士、あえて知らない人と自己紹介をし合うといった「雑談力を鍛えるレッスン」をおこなっています。効果はテキメン。ちょっとの練習で、誰もが身につけられるものだったのです。

たった30秒で、あなたという人間が見破られている!

「雑談は意味がない、時間のムダ」と言う人に、もうひとつお話ししたいことがあります。
雑談というのは、あなた自身の人間性とか人格とか社会性といったものがすべて凝縮されている。そしてその「すべて」をたった30秒の何気ない会話の中で見破られてしまっているということです。
ある人に「いやぁ~今日は久しぶりにいいお天気ですね」と、話しかけたとします。そのとき、「なんでそんなことを聞くんですか?」「だから何なんですか?」と雑談を拒むようなとげとげしい返事をされたら「あれ、この人は危ないから離れよう」とか、「なぜ自分への敵意をむき出しにするんだろう」などと感じます。無視されたら、重苦しい空気に耐えられないでしょう。こうやって私たちは、無意識のうちに、この人に近づいていいのかどうかを、雑談 という“リトマス試験紙”を使って瞬時に判断しているのです。

とはいっても、精神的に不安定なときなどは、日々の受け答えがとげとげしくなったり、変にぎこちなくなったりします。そこで「気まずい空気を相手が感じてるな」 とわかっている分には、まだいいんです。
問題なのは、それさえ感じないとき。要するに、相手との関係性を持たないほうが普通は苦しくなるのだけれど、それを持つという発想がないとか、「持たなくても大丈夫ですから」とかいうふうになったとき。そういう人に対して、私たちは「あの人は社会性に欠けてるな」という感じを得るのです。
逆に、何気ない会話を心地よく進められる人、場の空気を一瞬で和ませることがで きる人だったら……。
ピエール・ブルデューというフランスの社会学者は、「面接などでリラックスして人と打ちとけて話せるということ自体、すごい。非常に高い能力だ」と言っています。そしてその高い能力を身につけるのは、人間関係が豊かな環境で育った家の子のほうが有利だと。

つまり、その人が豊かな人間関係の中で育ってきたんだということや、人格的な安定感のあることが雑談から伝わってくるということ。
初対面の人同士でもリラックスして雑談できるような精神の安定感を持っている、すなわち社会性がある。そこまでのことが30秒で見破られてしまうというわけです。
先ほど、雑談は単なる話術ではないと言いました。あなたが人から信頼され、人に安心感を与え、社会性がある人だと評価される。そしてそこから気持ちのいい関係性やつながりに発展したり、もっと言えば多くの人から愛されたり、仕事などでは大きなチャンスを得ることもある。たった30秒のムダ話には、そのような大事な意味があることを忘れないでください。

気まずくならない能力=雑談力があると、 人間関係も仕事も一気に開ける

この本では、考え方と具体的な方法を挙げて、「雑談って何だろう、気まずくならない話し方や受け答えってどうすればいいんだろう」という問いに答えています。
優秀な営業マンは、ほとんど商品の話をせず、雑談ばかりしているといいます。会社の経営者もそうです。学校の先生も同じ。授業がうまい先生は、適度に雑談も入れつつメリハリある授業を行います。人気の落語家も、つかみの雑談が巧みです。

そう、相手との「気まずさ」を解消し、場の空気を作り、互いの距離を縮める能力である雑談力を身につけることで、人間関係も仕事も一気に開けます。
そして人から好かれ、愛され、信頼されることによって、自分に自信が持てるようになります。あなた自身の評価も高まります。 5秒あれば、すぐにできます。
ちょっとしたルールさえ知っていれば、口下手でも雑談上手になれます。
近頃、どうすれば話が途切れないか、会話が続くかといった本が売れているようです。
雑談を「間を持たせる方法」などととらえてしまうと、いかにもテクニックであるような印象を受けるかもしれませんが、その本質は違います。
あなた自身をより高め、本来持っているあなた自身の魅力を最大限に発揮するために。
周囲の人に安心感や信頼感を与え、より多くの出会いやチャンスをつかむために。社会性とコミュニケーション能力という、人生を豊かにし、仕事はもちろんのこと、あらゆる場面で必要とされる最強の能力を自分のものにするために。ぜひ今日から雑談力を身につけてみませんか?
もちろん何気ない会話やバカ話を心から楽しむためにも、本書は役立つと思います。さっそくはじめましょう!

齋藤 孝 (著)
出版社 : ダイヤモンド社 (2010/4/9)、出典:出版社HP

目次

はじめに――「沈黙は怖い。でも雑談は苦手」な人が増えている3
1章 トークや会話術とは違う、雑談の5つのルール
01 雑談のルール1 雑談は「中身がない」ことに意味がある
02 雑談のルール2 雑談は「あいさつ+a」でできている?
03 雑談のルール3 雑談に「結論」はいらない
04 雑談のルール4 雑談は、サクッと切り上げるもの
05 雑談のルール5 訓練すれば誰でもうまくなる

第2章 これで気まずくならない! 雑談の基本マナー
06 目の前の相手の、「見えているところ」をほめる
07 「内容」よりも「行為」に意味がある
08 「いや」「しかし」はNG。まずは肯定・同意から
09 口下手でもできる、相手の話に「質問」で切り返す術
10 雑談のベストバランスは、相手8対自分
11 「で、何の話をしてたんだっけ?」が理想形
12 切り返しは、相手の言葉の中にある
13 雑談にオチはいらない。『すべらない話」でなくていい
14 机とコーヒーカップがあるだけで、一気に話しやすくなる。
15 一問一答は拒絶と同じ。「一問二答以上」が返しのルールの
16 ベストタイムは、すれ違いざまの0秒
17 「自意識」「プライド」のハードルを下げると、ラクになる方
18 日常生活のトラブルは、絶好の雑談チャンス
19 悪口は、笑い話か芸能ネタにすり替える

第3章 すぐにできる、雑談の鍛え方&ネタの仕入れ方
20 相手との「具体的なフック」をひとつ見つける
21 あの人にはこの話題。『偏愛マップ』で鉄板ネタを把握
22 今が旬のリアルタイムな話題は、仕入れたらすぐに使うり
23 日々の疑問は、そのまま雑談ネタになる
24 雑談の練習相手に最適なのは、赤ちゃん、ワンちゃん、オバちゃん
25 困ったら「アメちゃん」。自分のコミュニケーションツールを持つ
26 「誰々が言ってた話」も、有効なネタになる
27 タクシーは雑談ネタの仕入れと練習ができる、最高の場所
28 1ネタ知って10ネタ広げる、具体的な方法。
29 年代別 鉄板雑談キーワード をチェック

第4章 ビジネスに使える雑談力
30 面接の雑談で、柔軟性と切り替え能力が試される
31 ニュートラルな人は雑談がうまい
32 組織での評価も人望も、つまるところムダ話ができる人かどうか
33 企画会議は飲み会のように、飲み会は企画会議のように
34 「私語禁止」より「ながら雑談」
35 「また行きたい」と思わせるのは、料理よりも雑談のうまい店
36 社長の仕事は雑談と決断
37 雑談力はビジネスのセーフティネットになる。

第5章 人、マンガ、テレビ。あらゆる達人からテクを学ぼう
38 『課長バカ一代』に学ぶ、バカ話の心地よいテンポ
39 国分太一君に学ぶ、「覚えている」能力―――顔は忘れても、雑談は忘れな
40 大阪人に学ぶ、リアクション雑談術
41 落語に学ぶ、つかみと本題の切り換えテク
42 イチローのヒットを支える、グリフィーのくすぐり

第6章 雑談力は雑草力。厳しい時代を「生きる力」そのもの
43 雑談で、つながりを確認する
44 私たちの中にある、「甘え上手」を取り戻す
45 人は誰もが、本当は話したがり屋
46 大人は若者のムダ話を聞きたがっている
47 知らぬ間に私たちは、雑談に影響されている。
48 集中力を高めるために、あえて雑談タイムを入れる
49 雑談でデトックス。雑談でガス抜き
50 日本人の共感力を生かして英会話力アップ―雑談相づちイングリッシュ

おわりに――雑談力は、生きることそのものか

齋藤 孝 (著)
出版社 : ダイヤモンド社 (2010/4/9)、出典:出版社HP