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農起業を成功させる7つのステップ
脱サラ農業に興味があっても、「何から手をつければ良いのか」「失敗するのではないか」など不安が多いでしょう。本書は、自ら脱サラ農業をしながら、農業専門コンサルタント・農業スクール代表として多くの「農業素人」に就農サポートを行なっている著者が、ゼロから農業を始めるためのノウハウや経営手法についてまとめて紹介しています。
はじめに
皆さん、はじめまして。合同会社エースクール農業起業塾代表の田中康晃です。本書は、脱サラ農業に興味があるのだけど「一体、何をどうすればよいかも、何から手を付けたらよいかも、さっぱりわからない」とお悩みの方に向けて、まさにゼロから農業を始めるためのノウハウや経営手法についてまとめた「脱サラ農業の教科書」です。
後でお話しするように、私自身も脱サラして農業を始めました。私の場合、現在はこれに加えて、農業コンサルティングや農業スクールも行なっていて、毎日、多くの農業を目指す方達と接しています。そのほとんどが、農業経験も農業との関係もない「全くの農業素人の方」です。農業コンサルティングを開始してから約1年、農業スクールと農業経営を開始してから約6年になりますが、この間、たくさんの「農業素人の方達の就農に向けてのサポート」を行なってきました。本書では、私自身の脱サラ農業の経験やコンサルティング経験、農業スクールを通じて出会った生徒さんの悩みや、その解決策、農業スクールの授業内容などを、ひとつのノウハウとしてまとめました。
本題に入る前に少しだけ、私の自己紹介も兼ねて「私自身の脱サラ農業」の体験談をお話しさせてください。私が最初に農業に興味を持ったのは、30歳前後の2001年頃、会社勤めで毎日忙しくしていた頃です。実際に就農したのが2011年なので、農業に興味を持ち始めてから、実際にトラクターを持って農業を開始するまでには、10年ほどの歳月がかかっています(その間もずっと農業には携わってきましたが、それは後述します)。
ちなみに、私の前職の会社は農業には全く関係がありませんし、全国各地に出張が多い営業職で、お客様も農業とは全く関係がない業種の方ばかりです。前職での仕事は順調で、これといった不満があるわけでもなく、厳しい会社ではありましたが、先輩、同僚、後輩にも恵まれ、楽しく仕事をしていました。そんな中、たまたま近所に新しく「家庭菜園」ができて、利用者募集の説明会がありました(このような情報が気になるというのは、もともと心の奥底の部分では、農業には関心があったからだと思います)。
それで、本当に気軽な気持ちで参加したら、どこか新鮮で心地よく、それが楽しくて「まさに感覚的に惹かれて(楽しそうなので)、始めてみた」というのが、今思えば、農業への始まりだったかもしれません。
30mほどの区画を借りて、何もわからないまま農業書を片手に、お隣さんにも聞きながら、トマト、ナス、すいか、じゃがいも、たまねぎ、きゅうり、かぼちゃなど、いろいろな野菜を育てていました。当然、すぐにはうまくできるものでもなく、不格好な野菜ばかりでしたが、見た目はともかく、やたらおいしかったのを覚えています。きっと自分で作ったからなんでしょうね。当時は、とにかく畑仕事が楽しくて、休みには毎週通っていました。そうするうちに、自然と「職業としての農業はどんなだろうか?」と興味が深まっていき、「もっと農業が知りたい」「農業を始めるにはどうすればよいのだろう?」と思うよう になりました。
そこで、自治体に設置されている「新規就農相談センター」という農業に関する相談窓口に、とにかく行ってみることにしました。このとき紹介された農家見学ツアーや体験ツアーにも参加しました。その他にも、さまざまな役所や相談窓口にも行きました。ただ、結局「農業を知る」にも、各種ツアーでは観光客の一人でしかなく、さらに「農業を始めるための方法」については、窓口ごとに答えは違うし、疑問は解消されるどころか深まるばかりでした。しかも当時の私は、「農地もない」「技術もない」「お金もない」状態でしたので、まずは「農地を見つけてから来て」「どこかで研修を受けてきて」とか、さらには「お金を貯めてから相談に来て」というような感じで、ほとんど相談にすら応じてもらえず、門前払いに近かったのを覚えています。ただ、今振り返ってみますと、このような対応をされたのも、もしかしたら仕方がなかったのかもしれません。
当時の私は「自分が何をしたいのか?」「何のために農業なのか?」の考えなど、ほとんどない状態です。だから、相談を受けた人も、きっと「この人に農業をさせても大丈夫なのかな?」と思ったに違いありません。とにかく行ってみようというだけで行ったり、場当たり的に相談したりしたら、相談された方も迷惑です。相談する本人自身ですら何を求めているのかわからないのですから、相談された方は答えようもありません。その後も、農業をもっと知りたいと思い、野菜の作り方などの書籍はもちろん、農業経営に関する書籍、インターネット、農業白書、統計データなども読み漁りました。当時の私は「門前払い」が相当悔しかったのかもしれません。とにかく農業を始めるための方法が知りたいと、自分で調べることにしました。
そこで、農業を始めるための方法は、実は「法律で定められている」ということを知り、さらにその法律は「農地法が基本になっている」ということがわかりました。そして、このような農地法などの法律を扱う「行政書士」という職業も知ることができました。ここで少し軌道修正して、「私のような農業を始めたくても始められない人の手助けをしたい」と思うようになり、会社勤めの傍ら、行政書士資格を取得。3歳のとき、会社を辞め脱サラして、農業専門の行政書士事務所を始めました。 「農業参入コンサルティング」の開始です。当時、そんな行政書士事務所などなければ、民間企業でもこのようなサービスはほとんどありませんでした。ですが、やはり私のように困っている方はたくさんいて、お客様も増えてきました。
ただ、コンサルティングの場合、私とお客様とが1対1でサービスを提供させていただくことになり、どうしてもお客様への費用負担が増えてしまいます。結果的に、お客様は企業が多くなり、個人で脱サラ農業したいという方へのサービス提供はできませんでした。個人の方からご相談をいただく場合もありましたが、どうしても対応ができない状態です。そこで、個人の方でも対応が可能なように、1対1のコンサルティングだけではなく、1対複数のサービスが可能な「農業スクール」を開始することにしました。
ご協力いただける農家さんの仲間もでき、農業実習は農家さん、就農手続きや経営に関するところは私が担当して、農業スクールを開始しました(現在は、農業実習も含め、すべて対応しています)。私も一緒に農業スクールの実習に参加することで、農業の現場作業を学んでいきました。それと同時に、タイミングよく、インターネットの情報から最適な農地を見つけることができ、農業スクールにも理解を示してくださったので、すぐに農地を借り受けることができました。このタイミングで合同会社エースクールを設立、農業スクールとともに、私自身も念願の農業を始めることができたというわけです。脱サラ農業の部分でいいますと、私の場合、途中回り道がありましたが、足かけ10年ほどでの脱サラ農業実現です。現在は、農業スクールとともに、農業経営では「いちご」「いちじく」「スイートコーン」等を栽培し出荷しています。
私自身の農業経営もコンサルティングも、まだまだ完成されたものではなく、発展途上です。それでも、脱サラ農家の先輩として、また、多くの脱サラ農家の先輩方をすぐ近くで見てきた者として、皆さんにとって少しでもお役に立てればと思い、本書を執筆させていただきました。本書を通じて、皆さんの脱サラ農業の「手引き」を示すとともに、本書を活用いただき、既存の農業にはない、新たな感覚を持った「脱サラ農業者」がたくさん生まれることを願っております。皆さんが始める農業で、日本農業の未来はもっと明るくなるはずです。私と一緒に明るい未来を作っていきましょう!
合同会社エースクール 農業起業塾 代表 田中康晃
目次
はじめに
1章 1年後にムリなく就農できる7つのステップ
1 1年後に就農するために必要な7つのステップ
就農フローチャートでスムーズに脱サラ農業しよう
2 第1ステップ 開始~6カ月目 理想のライフスタイルをイメージする
農業を始めるのは手段にすぎない
幸せな脱サラ農業への第一歩
「なぜ農業なのか?」理想のライフスタイルを確認する作業
理想のライフスタイルと農業
3 第2ステップ 3カ月~6カ月目 情報を集める
情報集めをする前の準備
本物の情報を得る
統計データから読み解く
4 第3ステップ 6カ月~10カ月目 農業体験してみる
農業体験や農家見学に行く
農家見学をする
5 第4ステップ 6カ月~2カ月目 農業シミュレーション
週末農業で農業シミュレーションをしてみる
栽培シミュレーションをする
経営シミュレーションをする
6 第5ステップ 3カ月~2カ月目 理想のライフスタイルを実現する営農計画づくり
営農計画を作る
7 第6ステップ 3カ月~2カ月目 農業研修を受ける
農業研修の目的
農業研修の形態
研修先の選び方・研修の順番
8 第7ステップ 12カ月目 脱サラ~就農
ゆとりを持った農地探し
いよいよ脱サラ農業スタート?
2章 ゼロから農業を始める前に知っておくべきこと
1 就農に立ちはだかる6つの壁
誰もがぶつかる就農の問題点
お金の壁
農地の壁
地域の壁
技術の壁
法律の壁
経営者の壁
2 農業を取り巻くトレンド
新規就農者数から見るトレンド
新規参入企業の動き
法人化の動き
6次産業化の動き
国の農業政策のトレンド
3章 脱サラ農業6つの壁を超える実践ノウハウ
1 お金の壁を超える 〜営農計画・資金計画の作成~
結局、いくら必要なのか?
営農計画を作る意味
営農計画の作成
本物に近付ける
お金を準備する。
2 農地の壁を超える ~農地探しの実践~
農地探しの方法
3 地域の壁を超える ~地域との調和~
地域の資源を使わせてもらうのが農業という仕事
4 技術の壁を超える ~栽培技術を身に付ける~
就農までに必要な栽培技術のレベル
未熟な栽培技術をカバーする栽培システム
未熟な栽培技術を前提とした農業経営とは
5 法律の壁を超える 〜法律を知る~
農業初心者こそ、法律を味方に付けよう
農地法の許可
利用権の設定
会社で農業を始める方法
個人で就農すべきか会社で就農すべきか
6 経営者の壁を超える ~経営者になるということ~
お金を支払って売上を上げるのが経営の王道
4章 強みを生かす脱サラ農家の経営術
1 戦うマーケットを考える
競争をなるべく避けて生き残ろう
2 冷静な自己分析から強みを生かす戦略
競争相手がいないところで戦う
強みを借りるのもひとつの手
3 どこにフォーカスするかにより競争を避ける戦略
鮮度にフォーカスする
栽培方法にフォーカスする
4 収益ポイントを検討する
どこで収益を得るか?
5章 ライフスタイル別農業モデル
1 「ゆったりとした田舎暮らし」を実現する農業モデル
5年後の売上600万円を目指す「いちじくモデル」
2 「家族4人、農業で生計を立てる」ことを目標にした農業モデル
5年後の売上2000万円以上を目指す「いちごモデル」
3 企業的経営で収益を上げることを目的にした農業モデル
5年目の売上5000万円以上を目指す「水耕栽培モデル」
6章 幸せな脱サラ農家が増えるために必要なこと
1 農業者仮資格制度の創設
農地情報も得られやすくなる仕組み
2 兼業農業スタイル
脱サラ組もムリなく起業しやすくなる
3 農地情報のマッチング
農地情報は各地域の連携がポイント
4 農業周辺サービス
農業経営の発展につながるサポートも増えてきた
おわりに