コア・テキスト国際経済学 (ライブラリ経済学コア・テキスト&最先端)

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基本的なモデル、概念を解説

この本は、国際貿易のモデル理論と外国為替の理論などについて解説しているテキストです。基本的な理論から比較的新しい題材まで取り上げており、テキストとしては標準的な内容です。近年注目されている経済政策や貿易政策を現実問題として考えられるきっかけになるかもしれません。

大川 昌幸 (著)
出版社 : 新世社 (2015/11/1)、出典:出版社HP

編者のことば

少子高齢化社会を目前としながら、日本経済は、未曾有のデフレ不況から抜け出せずに苦しんでいる。その一因として、日本では政策決定の過程で、経済学が十分に活用されていないことが挙げられる。個々の政策が何をもたらすかを論理的に考察するためには、経済学ほど役に立つ学問はない。経済学の目的の一つとは、インセンティブ(やる気)を導くルールの研究であり、そして、それが効率的資源配分をもたらすことを重要視している。やる気を導くとは、市場なら競争を促す、わかり易いルールであり、人材なら透明な評価が行われることである。効率的資源配分とは、無駄のない資源の活用であり、人材で言えば、適材適所である。日本はこれまで、中央集権的な制度の下で、市場には規制、人材には不透明な評価を導入して、やる気を削ってきた。行政は、2年毎に担当を変えて、不適な人材でも要職につけるという、無駄だらけのシステムであった。
ボーダレス・エコノミーの時代に、他の国々が経済理論に基づいて政策運営をしているときに、日本だけが経済学を無視した政策をとるわけにはいかない。今こそ、広く正確な経済学の素養が求められているといって言い過ぎではない。
経済は、金融、財の需給、雇用、教育、福祉などを含み、それが相互に関連しながら、複雑に変化する系である。その経済の動きを理解するには、経済学入門に始まり、ミクロ経済学で、一人一人の国民あるいは個々の企業の立場から積み上げてゆき、マクロ経済学で、国の経済を全体として捉える、日本経済学と国際経済学と国際金融論で世界の中での日本経済をみる、そして環境経済学で、経済が環境に与える影響も考慮するなど、様々な切り口で理解する必要がある。今後、経済学を身につけた人達の専門性が、嫌でも認められてゆく時代になるであろう。
経済を統一的な観点から見つつ、全体が編集され、そして上記のように、個々の問題について執筆されている教科書を刊行することは必須といえる。しかも、時代と共に変化する経済を捉えるためにも、常に新しい経済のテキストが求められているのだ。
この度、新世社から出版されるライブラリ経済学コア・テキスト&最先端は、気鋭の経済学者によって書かれた初学者向けのテキスト・シリーズである。各分野での最適な若手執筆者を擁し、誰もが理解でき、興味をもてるように書かれている。教科書として、自習書として広く活用して頂くことを切に望む次第である。

西村和雄

はじめに

現在、私たちの毎日の生活はさまざまな輸入品により支えられています。原油や鉱物資源などは言うに及ばす、衣料品、さまざまな雑貨、電気製品、マグロやえびなどの魚介類、肉類、野菜、果物といった食料品など、輸入品があふれています。他方、日本は自動車を中心とする輸送機器、精密機器、工作機械、アニメーションなどを世界中に輸出しています。また、巨額の資金が少しでも有利な金融資産や投資先を求めて、毎日世界中を飛び交っています。世界の多くの企業が国境を越えたグローバルな活動を行っています。
私たちは、このような海外貿易や企業のグローバルな活動からたいへん大きな利益を受けています。しかし、それを日々実感することは少ないのではないでしょうか。あたかもきれいな空気や水が安価に豊富に得られている恩恵を実感することが少ないのと似ています。
他方で、貿易は国内のすべての人々に等しく利益をもたらすとは限りません。貿易の拡大により海外の安い輸入品に押されて市場から撤退を余儀なくされた国内生産者も多くいますし、企業の海外移転による雇用の減少や地域経済の衰退も懸念されています。そのため、政府は貿易の利益が多くの人々にゆきわたることができるように、国内の所得分配、資源配分を調整する適切な経済政策を活用することが求められるでしょう。
本書は国際経済学をはじめて学ぶ方を対象にした国際経済学の入門書です。できるだけ多くの読者が国際経済学を学ぶ意義を知り、より進んだ学習に進む意欲をもってくれればと願い、現実のデータや具体例を取り入れてわかりやすい解説を心がけました。そのため、基本的な概念などの説明はできるだけかみ砕いたものにし、理論の説明も直観的に理解し易くすることを優先しました。
国際経済学は、おもに国際貿易理論と国際マクロ経済学で構成されており、国際貿易理論はミクロ経済学、国際マクロ経済学はマクロ経済学の応用分野と位置づけられており、ミクロ経済学やマクロ経済学を応用して理論の説明がなされます。
筆者は、国際経済学の入門科目を2セメスターで講義する科目を何年間か担当しています。1セメスターで、15コマの講義です。受講生にはミクロ経済学やマクロ経済学を履修していない学生も含まれており、履修している学生でもその理解の程度はさまざまに異なります。したがって、理論の説明の際には、まずそこで用いるミクロ経済学やマクロ経済学の基本概念をわかりやすく説明して、そのあとでそれらを用いて講義を進めます。そのため、限られた講義時間の中で取り上げるトピックスは、おのずといくつかの重要なものに限定せざるを得ません。
本書は「第Ⅰ部 国際貿易とその理論」、「第Ⅱ部 外国為替と国際マクロ経済」の2部構成となっています。それぞれを1セメスターで講義すると、1年間の講義で終えることができるようになっています。

本書の初版は、2007年4月に出版されました。すでに8年がたち、この間多くの先生、読者の方、学生からコメントや感想をいただきました。また、テキストのデータや記述を新しく書き換えたいと思っていましたが、幸い新世社の御園生晴彦氏より第2版の改訂のお誘いをいただき、この度、新世社のご厚意により第2版を出版することができました。
第2版では、全体を通じて、データを更新したり、より適切なものに差し替えるとともに、多くの章で新しく必要と思われるトピックスを追加し、説明をより詳しくわかりやすいものとしました。たとえば、第1章では、上記のデータや記述の書き換えを行い、特にWTOの原則及びルール、パネルにおける紛争処理手続きなどについての記述を加えました。第4章のリカード・モデルの、とくに不完全特化の場合を含む貿易パターンの説明などをより詳しく書き換えています。第5章のヘクシャー=オリーン・モデルの説明では、初版と同様基本的に固定係数モデルにもとづいて説明していますが、第5節に補論として可変的投入係数モデルのケースについて、そのエッセンスを追加説明しています。
また、2014年1月から、国際収支表の記載方法が変わりました。そのため、第11章で、国際収支表の新しい記載方法とその見方を旧式の内容と比較しながら説明しています。
この第2版でも取り上げられなかったトピックスやモデルなどが多くありますが、読者がこれからさらに進んだ学習をする際に必要となる基本的なモデルをしっかり理解できるように丁寧に説明することを優先した構成としました。本書で基本を理解した読者にとっては、よりレベルの高いテキストに進むことは決して難しいことではないと思います。
本書は、読者が自分ひとりで十分に学習できるテキストになるように配慮しています。ミクロ経済学やマクロ経済学についての予備知識がなくても読み通せるように、本書の説明で用いる基本的な概念について必要に応じて解説しています。たとえば、第2章では、消費者余剰や生産者余剰の概念を、第3章では消費者の効用関数や無差別曲線、消費者の最適行動などを説明するために一定のページを割いています。また、第Ⅱ部では、マクロ経済学の基本的な概念である、国民所得の諸概念やIS曲線、LM曲線の概念などについて説明しています。一人でも多くの読者が国際経済学を学ぶ楽しさを知ってくだされば、本書の目的は達せられたと言えるでしょう。
本書の執筆に際しましては、多くの方々のご協力を得ました。筆者を本書の執筆にご推薦くださいました西村和雄先生(神戸大学経済経営研究所:特命教授)に心から御礼申し上げます。今回の改訂の作業でも、私の執筆は遅く、なかなか進みませんでしたが、新世社の御園生晴彦氏は忍耐強く、いつも親切に私の執筆を励ましてくれました。また、校正の段階では新世社の谷口雅彦氏にも大変お世話になりました。お二人のご協力に心から感謝申し上げます。
初版の出版の際には、立命館大学の同僚の先生方をはじめ多くの先生方から大変丁寧なコメントをいただきました。名前を挙げることは控えさせていただきますが、いただいた多くの貴重なコメントは今回の改訂に反映させていただきました。これらの先生方に心から御礼申し上げます。今回の改訂にあたり、立命館大学大学院経済研究科卒業生で客員研究員であった井口達也君、現在大学院生の楊晨さんには、データの収集、整理にご協力ただきました。心から御礼申し上げます。
最後に、私事にわたりますが、毎日の研究生活を支えてくれ、本書の執筆でもさまざまな形で協力してくれた妻の睦子、いつも元気をくれる娘の真莉菜、父・進、母・文子に心から感謝したいと思います。

2015年7月
大川昌幸

大川 昌幸 (著)
出版社 : 新世社 (2015/11/1)、出典:出版社HP

目次

第I部 国際貿易とその理論

1 世界の通商システムと日本
1.1 世界と日本の経済成長と貿易の拡大
1.2 戦後の世界の通商システムの誕生
戦前の保護主義化と経済対立
ブレトン・ウッズ協定とGATT(WTO)=IMF体制
1.3 GATT/WTOとその基本原則
無差別待遇の原則
貿易制限措置削減の原則
基本原則の例外措置
1.4 多角的関税引き下げ交渉
1.5 WTOの誕生
1.6 WTOの紛争解決手続き
1.7 WTOで認められている対抗措置
■練習問題

2 貿易の基本モデル(1): 部分均衡分析
2.1 市場の部分均衡分析
2.2 需要曲線と消費者余剰
市場の取引とその利益
消費者余剰
個人の需要曲線と市場の需要曲線
2.3 供給曲線と生産者余剰
生産者余剰
市場の供給曲線
2.4 自給自足経済での市場均衡
2.5 貿易の自由化と貿易利益
■練習問題

3 貿易の基本モデル(2): 2財の貿易モデル
3.1 はじめに
3.2 消費者行動の理論
3.3 自給自足経済の均衡
自給自足経済
社会的厚生
3.4 自由貿易均衡:小国経済の場合
■練習問題

4 リカード・モデル
4.1 リカード・モデル
4.2 絶対優位と比較優位
4.3 生産可能性フロンティア
4.4 相対価格と貿易パターン
4.5 世界市場での相対価格の決定
4.6 自由貿易均衡と貿易利益
4.7 絶対優位と賃金水準
■練習問題

5 ヘクシャー=オリーン・モデル
5.1 リカード・モデルとヘクシャー=オリーン・モデル
5.2 固定係数モデル
5.3 リプチンスキー定理
5.4 ヘクシャー=オリーン定理
5.5 ストルパー=サミュエルソン定理
5.6 要素価格均等化定理
5.7 (補論)可変的投入係数のヘクシャー=オリーン・モデル
等産出量曲線
企業の費用最小化行動
可変的投入係数の場合の生産可能性フロンティア
自給自足均衡と自由貿易均衡
■練習問題

6 不完全競争と国際貿易
6.1 不完全競争市場の特徴
6.2 国内独占と自由貿易:小国の場合
自給自足経済での独占市場の均衡
自由貿易均衡
6.3 輸出企業の価格差別化とダンピング
6.4 製品差別化と産業内貿易
独占的競争市場の企業行動
独占的競争市場の貿易の自由化
産業内貿易と産業内貿易指数
■練習問題

7 完全競争と貿易政策
7.1 貿易政策の手段
関税
非関税障壁
7.2 関税の効果:小国の場合
7.3 関税と生産補助金および消費税
生産補助金の効果
消費税の効果
7.4 関税と輸入数量割当ての同等性
7.5 関税の効果:大国の場合
7.6 有効保護の理論
■練習問題

8 不完全競争と貿易政策
8.1 はじめに
8.2 国内市場が独占の場合の関税と輸入数量割当ての効果
小国の独占企業の場合
大国の独占企業の場合
8.3 外国の独占企業に対する輸入関税
8.4 戦略的貿易政策
小国の輸出補助金の効果について:完全競争市場の場合
戦略的貿易政策:輸出補助金の場合
8.5 保護貿易の政治・経済的背景
幼稚産業保護論
保護貿易の政治・経済的背景
■練習問題

9 生産要素の国際移動
9.1 国際間の資本移動とは
9.2 国際要素移動の基礎理論
リカード・モデルにおける労働移動の効果
2生産要素モデルでの資本移動の効果:財貿易のない場合
9.3 貿易と資本移動の関係
自由貿易の下で両国が不完全特化する場合
自由貿易の下で両国が完全特化する場合
■練習問題

10 地域経済統合とその理論
10.1 地域経済統合とは
10.2 WTOと地域経済統合
10.3 地域経済統合の基礎理論
10.4 日本の経済連携協定
■練習問題

第II部 外国為替と国際マクロ経済

11 海外取引と国際収支
11.1 フローとストック
11.2 国民所得勘定と対外取引
11.3 開放経済と国際収支
国際収支表
近年の日本の国際収支の推移
■練習問題

12 外国為替市場と外国為替レート
12.1 外国為替レート
外国為替レート
実質為替レート
実効為替レート
12.2 外国為替市場
外国為替市場
12.3 為替相場制度と外国為替レートー
金本位制
調整可能な釘付け相場制(アジャスタブル・ペッグ制)
変動相場制
12.4 外国為替相場の変化と貿易収支
マーシャルラーナー条件
Jカーブ効果
12.5 直物為替相場と先渡為替相場
為替リスク
直物取引と先渡取引
金利裁定
■練習問題

13 外国為替相場の決定理論
13.1 アセット・アプローチ
外国資産の邦貨建て予想収益率
13.2 購買力平価説
購買力平価説
絶対的購買力平価説と相対的購買力平価説
■練習問題

14 外国貿易と国民所得水準の決定
14.1 開放マクロ経済の国民所得の決定
財・サービス市場のマクロ経済モデル
開放マクロ経済の国民所得の決定
14.2 需要の変化の影響
輸出の増加
政府支出の増加
■練習問題

15 開放経済のマクロ経済政策
15.1 マンデル=フレミング・モデル
マンデル:フレミング・モデル
IS-LM分析
国際収支均衡線
15.2 固定相場制下の財政・金融政策
資本移動が不完全な場合
資本移動が完全な場合
15.3 変動相場制下での財政・金融政策
資本移動が不完全な場合
資本移動が完全な場合
■練習問題

文献案内
参考文献
練習問題略解
索引

大川 昌幸 (著)
出版社 : 新世社 (2015/11/1)、出典:出版社HP