同一労働同一賃金 対応の手引き

【最新 – 同一労働同一賃金について学ぶためのおすすめ本 – 法律の解説から実務の対応まで】も確認する

実務に役立つ同一労働同一賃金に関する解説

同一労働同一賃金に関する主要な裁判例を、基本給、手当、賞与・退職金等の項目別に詳細に分析した上で、ガイドライン、主要裁判例を踏まえた、実務的な対応について解説しています。Q&Aも掲載されており、実務上非常に役に立つ一冊となっています。

TMI総合法律事務所 働き方改革サポートデスク (著, 編集)
出版社 : 労務行政 (2019/7/24) 、出典:出版社HP

はしがき

我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面し、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが重要な課題になっています。このような状況を受けて、働き方改革関連法が2018年6月29日に成立し、2019年4月1日には時間外労働の上限規制、5日間の年次有給休暇の時季指定義務、2020年4月1日には、同一労働同一賃金に関する規制が施行されることになっています。

同一労働同一賃金については、2018年6月1日に二つの重要な最高裁判決(ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件)が出されました。これらの判例は、期間の定めがあることによる不合理な労働条件を禁止した改正前の労働契約法20条の解釈について統一的な見解を示しており、2020年4月に施行される改正法の解釈にも重要な影響を与えるものとなります。以上のように、同一労働同一賃金に関する実務的な対応は待ったなしの状況であり、その実務的な対応について、様々な裁判例が出ているものの、未解決の分野も多く、また、企業にとっては人事制度の見直しに直結する問題でもあり、その対応には多くの労力が必要となります。

そこで、本書は、同一労働同一賃金に関する主要な裁判例を詳細に分析するとともに、実務的な対応も含めた全般的な解説をすることを目指したものです。本書は、弊所で労働法を専門に取り扱う弁護士約20名で組織した働き方改革サポートデスクのメンバーで執筆したものであり、働き方改革サポートデスクとしては今後も企業の皆様に様々なサービスを提供していきたいと考えております。

本書を担当していただいた労務行政研究所の井村憲一様には示唆に富んだご意見をいただきました。心より御礼申し上げます。本書が、企業の皆様や実務家の方にとって、同一労働同一賃金規制への実務対応の一助となれば幸いです。

2019年6月
執筆者を代表して
TMI総合法律事務所
弁護士 近藤圭介

TMI総合法律事務所 働き方改革サポートデスク (著, 編集)
出版社 : 労務行政 (2019/7/24) 、出典:出版社HP

目次

同一労働同一賃金への実務対応チャート

第1章 いわゆる同一労働同一賃金とは
1 政府の狙い

2 いわゆる同一労働同一賃金規制の中身
[1] 対象
[2] 規制内容
[3] 知っておくべきポイント
[4] 違反した場合に考えられる労働者からの法的請求
(1) 労働契約に基づく地位確認請求およびその地位に基づく賃金請求
(2) 不法行為に基づく損害賠償請求
(3) 会社法429条1項に基づく損害賠償請求

3 法改正の概要
[1] 概要
[2] 不合理な待遇の禁止(パート有期法8条)
[3] 差別的取り扱いの禁止(パート有期法9条)
[4] 福利厚生施設(パート有期法12条)
[5] 待遇の説明義務(パート有期法14条)
[6] 実行確保措置の整備(パート有期法18条)
[7] 紛争解決手段の整備(パート有期法23条~25条)

第2章 主な裁判例の動向
1 主な裁判例の一覧

2 ハマキョウレックス事件
[1] 正社員と契約社員の職務の内容、人材活用の仕組み、賃金体系等の比較
[2] 1審、2審、最高裁判決の結論の比較
[3] 最高裁判決の要旨
[4] 分析
(1) 本判決の不合理性の判断
(2) 法改正後の本判決の意義等

第3章 同一労働同一賃金ガイドライン
1 概要

2 総論部分のポイント
[1] 「第1 目的」
[2] 「第2 基本的な考え方」

3 本指針の性格

第4章 「不合理」と判断されないために(短時間・有期雇用労働者)
1 基本給
[1] 基本給とは
[2] ガイドラインの解説
(1) ガイドラインの基本的な考え方
(2) ガイドラインが示す具体的な例
[3] 参考裁判例の解説
[4] 実務上の検討

2 各種手当
[1] 役職手当・資格手当
[2] 特殊作業手当
[3] 特殊勤務手当
[4] 精皆勤手当
[5] 食事手当(給食手当)
[6] 家族手当
[7] 住宅手当・単身赴任手当
[8] 地域手当
[9] 通勤手当・出張旅費
[10] 時間外労働手当・深夜労働手当・休日労働手当

3 賞与
[1] 賞与とは
[2] ガイドラインの解説
(1) ガイドラインの基本的な考え方
(2) ガイドラインが示す具体的な例
[3] 参考裁判例の解説
[4] 実務上の検討
(1) 賞与の性質に応じた不合理性の判断
(2) 賞与の性質決定
(3) 実務上の対応

4 退職金
[1] 退職金とは
[2] ガイドラインの解説
[3] 参考裁判例の解説
[4] 実務上の検討
(2) 退職金の性質決定
(3) 実務上の対応

5 休職・休暇・福利厚生
[1] 休職
[2] 年次有給休暇
[3] その他の法定外休暇
[4] 福利厚生施設
[5] 社宅・社員寮

第5章 「不合理」と判断されないために(定年後再雇用)
1 長澤運輸事件の概要
2 正社員と再雇用社員の賃金等の比較
3 1審および控訴審の判断の比較
4 最高裁判決の概要

5 本判決の分析
[1] 労働契約法20条における不合理性の判断基準
[2] 本件における労働条件の相違の不合理性
(1) 再雇用社員の特殊性
(2) 能率給および職務給
(3) 精勤手当
[3] 今後の実務対応

6 その他裁判例

7 労働条件の提示自体が不法行為となる場合
[1] 事案の概要
[2] 判決内容の検討
[3] 本件が実務に与える影響

第6章 「不合理」と判断されないために(労働者派遣)
1 不合理な待遇の禁止
[1] 派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇(派遣先均等・均衡方式)
[2] 派遣元における労使協定で定める以上の待遇(労使協定方式)
[3] 内容変更時の情報提供義務
[4] 追加情報の提供その他の協力配慮義務
[5] 派遣料金の交渉における配慮

2 派遣労働者に対する説明義務の強化
[1] 派遣先均等・均衡方式の場合
[2] 労使協定方式の場合

3 適正な就業の確保等
4 紛争解決
5 違反時の制裁
6 今後の対応

第7章 違法状態の是正
1 待遇差是正に向けた各社の動き

2 違法状態の是正
[1] 待遇(労働条件)の変更による違法状態の是正
(1) 非正規従業員の待遇改善
(2) 正規従業員の待遇の引き下げ(不利益変更)
(3) 非正規従業員の待遇改善(正規従業員化)
[2] 職務の内容等の見直し
[3] ガイドラインが示す不適切な是正方法
(1) 待遇水準の低い通常の労働者を設けること
(2) 不合理な待遇の相違等が残る形での職務内容等の分離

3 待遇差是正に向けて

第8章 同一労働同一賃金をめぐるQ&A
Q1:「同一労働同一賃金」規制の適用対象
Q2:法違反の制裁
Q3:ガイドライン違反の場合の制裁
Q4:「賃金」以外への適用の有無
Q5:退職金・企業年金制度の有期雇用者への適用
Q6:基本給の決定要素が複数ある場合の対応
Q7:人材獲得・定着を目的とした待遇差
Q8:ある手当の代わりに他の手当を支給する取り扱い
Q9:非正規雇用の処遇改善で利用できる助成金
Q10:異動による不合理な待遇差の解消
Q11:同一労働同一賃金の実現と年功型賃金制度

資料1 短時間労働者であるか否かの判定方法
資料2 同一労働同一賃金裁判例集

TMI総合法律事務所 働き方改革サポートデスク (著, 編集)
出版社 : 労務行政 (2019/7/24) 、出典:出版社HP