新事業企画・起業のための 実践ブロックチェーン・ビジネス

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ブロックチェーン・ビジネスの全容がわかる

ブロックチェーンとは何かを紐解きながら、金融・製造・サービス業、さらに政府や自治体でその技術をどう活用していくか、実際にどのようなビジネスが始まっているのか、豊富な事例と図解を使って紹介しています。技術の観点だけでなく実践的なビジネスの観点も分かるので、視野を広げるのに有用な1冊です。

株式会社ブロックチェーンハブ (著), 増田 一之 (監修)
出版社 : 日本能率協会マネジメントセンター (2018/4/29)、出典:出版社HP

はじめに

ブロックチェーンはインターネットに次ぐ革命と称されます。
本書の中でも述べていますが、インターネットは「情報交換のネットワーク」であり、ブロックチェーンは「価値交換のネットワーク」です。
分散型で透明性にすぐれ、改竄や二重支払いを防ぐことができ、中央管理者が不要なブロックチェーンは、ビジネスの可能性を広げ、社会をより良く変える期待があります。
ブロックチェーンが特に刺激的なのは、特定の誰かを信頼の基点にする必要がないため、「信用に関する問題」を解決する技術だからです。そして、取引のベースである「信用」が、ブロックチェーンの普及により、ビジネスの場においてどのように変わり、産業・社会をどのように変えるのか、未だ全貌が見えないワクワクするテーマだからです。

ところで、ブロックチェーンは、私にとってある意味デジャブーの感じがあります。
ブロックチェーンがインターネット革命に次ぐ革命と考えたとき、1995年から1997年頃にかけてのインターネットビジネス勃興期を思い起こします。
特に、1997年5月に翻訳刊行されたロバート・リード著『インターネット激動の1000日』を読んだとき、アメリカのインターネットビジネス草創期の群像を知り、血沸き肉躍る気持ちを持ったことを思い出します。同書により、1994年2月にマーク・アンドリーセンに、ジム・クラークから「ご存じないかもしれませんが、わたしはシリコン・グラフィックスの創業者です…」というeメールが届き、ふたりは翌朝午前7時30分にパロアルトのカフェ・ベローチで会ったことを知りました。そしてネットスケープ社が産みだされ、激動の1000日が始まります。本の中の登場人物たちの、新しい時代を創るという強烈な思いに圧倒されたものです。
また、1997年9月に邦訳が出たアンドリュー・グローブの『インテル戦略転換』では、競争構造を根本的に変える破壊的な環境変化のシグナルを見極めようとする、変質狂とさえいえる著者の迫力に衝撃を受けました。

当時私は、銀行の総合企画部に勤務し、「インターネットが金融をどう変えるか」という、頭取向けの報告書を書いていました。この2冊を読み、創業者の強烈な思い、インターネットの破壊力、産業の変革を身に染みるように感じ、インターネット革命に参加したいと思ったものでした。この思いが募り、その後、銀行を退職し、ベンチャーの世界に飛び込むことになりました。それから10社超の様々なハイテクベンチャーを創業することになったのは、大変感慨深いものがあります。
1997年の話を持ち出したのは、現在のブロックチェーン革命にインターネット革命と同じ大変革の匂いを感じるからです。デジャブーの感覚です。

2014年にビットコインを知り、2015年にブロックチェーン関連ビジネスに乗り出そうと決意し、2016年1月7日に株式会社ブロックチェーンハブ(略称:BcH、HP: https://www.blockchainhub.co.jp/)を創業しました。株式会社ブロックチェーハブは、1年目には、ブロックチェーンに関する教育とコミュニティー作りから始め、2年目の2017年からは、創業前から起業家と共に歩む、創業仲間としてのベンチャーインキュベーション事業に乗り出しています。
そして2018年4月現在、BcHスタートアップは7社になっています。まだ、よちよち歩きの会社が多いのですが、これらの会社がブロックチェーン革命の大波の中で産業変革に寄与することを心から祈ります。

ブロックチェーンの始まりは、2008年にサトシ・ナカモトという謎の人物が発表した10ページに満たないビットコインに関する論文でした。それから10年経過し、ブロックチェーンの真価が理解されてきました。今後、ブロックチェーン革命にこの本の読者を含め、多くの仲間が参加し、新しい産業を興していくことを期待します。

本書は、第1章から第6章までと第9章を増田一之が執筆し、第7章は新日本有限責任監査法人の榊正壽シニアパートナー、第8章はTMI総合法律事務所の北島隆次弁護士が執筆しています。北島、榊両氏は増田一之が早稲田大学大学院経営管理研究科で行っている講義「ブロックチェーンによるビジネス変革」の中で講義された内容に即し、執筆しています。
増田一之が執筆するにあたっては、株式会社ブロックチェーンハブの仲間たちとの常日頃のディスカッションが背景になっています。特に、斉藤賢爾、久保健、谷口勝男、堀鉄彦の各氏とは頻繁でオープンな議論をしてきました。今後もこれらの仲間たちと、まだ見ぬ未来を見通すための努力を継続したいと思います。
また、本書執筆には、日本能率協会マネジメントセンター出版事業本部の根本浩美氏に大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。

2018年4月
移転したての株式会社ブロックチェーンハブの日本橋本町事務所にて
増田一之

株式会社ブロックチェーンハブ (著), 増田 一之 (監修)
出版社 : 日本能率協会マネジメントセンター (2018/4/29)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 ブロックチェーンの基礎知識とビジネス活用の可能性
1 仮想通貨を支える技術
●ブロックチェーンはビットコインの基盤技術
●ビットコインとブロックチェーンの関係
2 ブロックチェーン技術の基礎知識
●ブロックチェーン技術の特徴① 改竄の難しさ
●ブロックチェーン技術の特徴② 二重支払いの防止
●ブロックチェーン技術の長所
●ブロックチェーン技術の三大機能
3 インターネット革命、そしてブロックチェーン革命
●インターネット発明以来の産業革命
●ブロックチェーン技術を使う意味

第2章 ブロックチェーン技術の基本
1 ブロックチェーン技術の概要と特徴
●ビットコインの基盤技術
●ブロックチェーンの仕組み
●P2Pネットワーク
●二重支払いの防止
2 ビットコインの概要
●ビットコインの発行上限
●トランザクションの概要
●マイナーの役割とインセンティブ
●ブロックチェーンの仕組みのユニークさ
3 イーサリアムの概要
●スマートコントラクトを実現するプラットフォーム
●活用が期待される用途例
4 ブロックチェーンの課題
●技術的課題
●持続性に関する課題
5 派生技術
●アルトコインを生み出す技術
●サイドチェーン
●パブリック型とプライベート型/コンソーシアム型
●コンソーシアム型の事例
●ブロックチェーン以外のプラットフォーム

第3章 仮想通貨にかかわるビジネス
1 仮想通貨のプレイヤーたち
●市場拡大により登場したプレイヤー
●マイナー
●取引所・販売所・交換所
●ウォレットサービス
●ペイメントプロセッサー
●金融サービス
●インフラツール提供会社
2 仮想通貨を取り巻く政策課題

第4章 金融分野のブロックチェーン・ビジネス
1 ブロックチェーンアプリケーションの概観
●金融系
●非金融系
2 ブロックチェーンの金融分野への活用
●海外のケース
* R3コンソーシアム
* リップル
* UBS
* アブラ
* サトシペイ
* ファンダービーム
* スキューチェーン
* タリースティックス
* テザー
* ファルコンプライベートバンク
国内のケース
* 三菱UFJ銀行
* 一般社団法人ブロックチェーン推進協会
* みずほフィナンシャルグループ
* SBIホールディングス
* 日本取引所グループ
3 金融分野への影響
●通貨
●送金
●決済
* クレジットカード
* 銀行口座不要の場合
●資金調達
●運用
●商業銀行
●中央銀行
* 日本銀行
* 海外の中央銀行
* 中央銀行が発行する法定デジタル通貨のメリット
* 中央銀行が発行する法定デジタル通貨のデメリット
●保険業
●新しいタイプの銀行—マーケットプレイス銀行—はどうなるか

第5章 非金融分野のブロックチェーン・ビジネス
1 ブロックチェーンの非金融分野への応用
●三大機能をどう活かすか
●経済産業省による5つの分類
2 産業分野への応用
●地域通貨
* 飛騨信用組合
* 近鉄グループホールディングス
●ポイントプログラム
* ロイヤル
* 国内企業
●デジタルコンテンツ所有権管理
* アスクライブ
* その他の海外事例
●音楽著作権
●所有権管理
* エバーレジャー
●トレーサビリティ
●サプライチェーン
* プロビナンス
●電力取引
* パワーレジャー
* 日本の事例
●シェアリングエコノミー
* コミューターズ
* アーケードシティー
●シェアリング兼IoT
●IoT
●個人間取引マーケットプレイス
●本人確認
●教育
●予測市場
●エシカル消費推進
●旅行業
●データ流通
3 公共分野への応用
●デジタル政府
●法人登記
●土地登記
●その他
4 DAOによる自律分散型組織
5 世の中の変化への影響
●トラストレスな社会の到来
●通貨の概念の変化
●売買活動の効率化
●企業グループ内の効率化
●プロシューマーの増加
●仕事はどう変わる?

第6章 ブロックチェーン・ビジネスの投資動向
1 ブロックチェーン分野への投資動向
●ベンチャーキャピタルの投資動向
●インベスターの投資動向
●仮想通貨の投資ツール
2 ICOの動向
●ICOの3つの目的と他の資金調達手段との違い
●ICOのメリットとデメリット
●ICOで使われるトークン
●ICOのフロー
●ICOへの投資動向
●ICOの問題点
●政府対応
* エストニア
* アメリカ
* 中国
* 韓国
* 日本

第7章 ブロックチェーン・ビジネスの会計と税務
1 会計基準等の制度整備の動向
●企業会計基準委員会による会計基準の整備
2 仮想通貨にかかわる会計上の論点
●棚卸資産としての評価
3 企業会計基準委員会による会計基準検討
●ビットコインを前提にした基準の開発
●仮想通貨の利用者に必要とされる処理についての検討事項
●ASBJによる会計基準の検討ポイント
●ASBJと業界団体との意見交換
●「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」の概要
●仮想通貨分別管理に関する基準
●仮想通貨交換業者の財務諸表監査
●ICOと規制
●ブロックチェーン技術のビジネス適用とリスク・内部統制

第8章 ブロックチェーン・ビジネスの法務と知財
1 ブロックチェーン・ビジネスの法務
●関係する法律
2 実務に必要な法律知識
●仮想通貨
●ICO
●権利証明
●スマートコントラクト
●その他の法的論点
3 ブロックチェーンと知財
●オープンイノベーションであることの考え方
●特許出願と特許紛争の状況
●商標についての考え方

第9章 ブロックチェーン・ビジネスのつくり方
1 ビジネスを考えるポイント
●現状認識
●ブロックチェーン技術の特性レビュー
●ビジネス企画の留意点
●ブロックチェーン技術の定着パターン
●当面狙うべき4つのユースケース
●長所活用と短所補完のユースケースの検討
●短期・中期・長期それぞれの検討
2 スタートアップのポイント
●起業を考える目安
●ビジネスモデルを考える
●ビジネスプランを立てる
●マーケティングを考える
●リスクを考える
●組織の考え方
3 ベンチャーのファイナンスの留意点
●資金繰りの考え方
●エンジェルとベンチャーキャピタルについて知っておくこと
●ストックオプションについて
●資本政策について

おわりに

株式会社ブロックチェーンハブ (著), 増田 一之 (監修)
出版社 : 日本能率協会マネジメントセンター (2018/4/29)、出典:出版社HP