世界がぐっと近くなる SDGsとボクらをつなぐ本

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SDGsをもっと身近に

本書は、SDGsの17の目標に関連したテーマについて解説しています。現在世界で抱えている問題が包括的に理解できるようになっています。人間としての生き方を改めて考える必要を感じるかもしれません。

池上 彰 (監修)
出版社 : 学研プラス (2020/2/6)、出典:出版社HP

はじめに

このところSDGsという言葉をよく目にするようになりました。「持続可能な開発目標」という意味で、「エス・ディー・ジーズ」と発音します。世界中の国々が一緒になって、地球を住みやすい星にしようという取り組みです。

たとえば地球温暖化。世界が暑くなることにより、海水温が高くなり、日本にやってくる台風が強大化しつつあります。このままでは、「スーパー台風」と呼ばれる猛烈な台風がやってくるようになるでしょう。そうなれば今まで以上に、建物が倒れたり、川が氾濫したりするようになるでしょう。これでは、今までのような生活ができませんね。これは「持続可能ではない」ということです。「持続可能」とは、あなたの子どもや孫たちの世代にも、豊かな自然があり、きれいな水が飲め、みんなが健康に過ごせるような状態が残るようにすることです。

世界には、まだまだ貧困に苦しんでいる人々がいます。こうした人たちは、食べるものを作る土地をめぐって争うこともあるでしょう。飲み水を奪い合って戦争になるかもしれません。これでは持続可能とは言えませんね。

きれいな水が得られないと、病気になる人が出るでしょう。この病気が伝染病だとしたら、どうでしょう。現代は、飛行機に乗れば、世界のどこへでもあっという間に行くことができます。伝染病にかかった人が、飛行機に乗って、私たちの国にやってきたら、あなたやあなたの家族、友人が、病気に感染してしまうかもしれません。

水が大切なことや、病気の怖さなど、あなたは知っているでしょう。でも、どうして知っているのですか。それは学校で教育を受けているからです。学校で十分な教育を受けることができない子どもたちが、世界には大勢います。この子たちが、衛生観念を得られないままなら、伝染病は何度でも流行するでしょう。途上国の教育が充実するように応援することは、回りまわって私たちのためにもなるのです。世界はつながっているのですから。

こう考えると、「遠い国での出来事」と思っていたことが、身近な問題であることがあるのです。私たちの世界をよりよい場所にするためには、何が必要なのか。この本を通して考えてみてください。

2019年12月
ジャーナリスト 池上彰

池上 彰 (監修)
出版社 : 学研プラス (2020/2/6)、出典:出版社HP

目次

はじめに
目次
SDGsとは?
みんなでSDGsを考える:池上彰 SDGs 特別講義
1 [貧困]について知る。
2 [飢餓]について知る。
3 [健康]について知る。
4 [教育]について知る。
5 [ジェンダー]について知る。
6 [水]について知る。
7 [エネルギー]について知る。
8 [人間らしい働き方]について知る。
9 [インフラ]について知る。
10 [平等]について知る。
11 [まちづくり]について知る。
12 [消費と生産]について知る。
13 [気候変動]について知る。
14 [海の環境]について知る。
15 [生物多様性]について知る。
16 [平和と公正]について知る。
17 [パートナーシップ]について知る。
キーワード集
SDGsオススメ本紹介
索引

SDGsとは?

今、地球には77億人が暮らしています。
ですが、地球はさまざまな問題や限界に直面しています。
経済、社会、自然環境…どの面をとっても問題があるのです。
これらの問題に向き合うために、国連※は、2015年に「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」、通称「SDGs」を打ち出しました。
※国際連合のこと。1945年に設立され、平和や経済、社会、文化などのための国際協力の実現をめざす機関。

SDGsには、2030年までに達成すべき17個の目標があります。これらは地球を、そして私たちの世界を、将来にわたって持続させるための目標です。
SDGsが書かれた計画書は、その冒頭で次のように力強く述べています。

「我々はこの共同の旅路に乗り出すにあたり、誰一人取り残さないことを誓う。」
“As we embark on this collective journey, we pledge that no one will be left behind.”
この言葉は、「普通に」生活している人々に今一度、身の回りを見渡すことを求めるものです。そして、日本のような豊かな国にもじつは多くの問題があることを突き付けてくるのです。

SDGsは「途上国に暮らす人」や「世界で活躍したい人」だけのためのものではありません。この本を手に取ったあなたのための目標なのです。

SDGsを通して私たちの世界を見たとき、社会の現実とやるべきことがきっとわかるはずです。SDGsを知ることが、あるべき世界に向かう一歩になるのです。

池上 彰 (監修)
出版社 : 学研プラス (2020/2/6)、出典:出版社HP

みんなでSDGsを考える
池上彰 SDGs特別講義

この特別講義は、2019年10月、本書の作成にあたって、東京都市ヶ谷にある「JICA地球ひろば」で開かれました。
参加したのは、SDGsについて何も知らない5人の子どもたち、この講義を読み終えた時、みなさんは何を感じ、何をしようと思うでしょうか?

池上:この特別講義では、私たちが住んでいる日本だけではなく、世界のことをみんなで考えてみようと思います。そのカギとなるのが「SDGs」。
SDGsを簡単に説明すると、世界の国々はいろいろなことで対立しているけど、「同じ地球に暮らす人間として、これだけは共通の目標として2030年までに達成しよう」と決めた17の目標のことなんだ。
今日、講義するのは「JICA地球ひろば」という場所。この地球ひろばでは、今、ゴミ問題の展示が行われています。ゴミ問題はSDGsにも関わっているんだ。さあ、展示物を見ながら、考えていこう。

1 ゴミ問題と食品ロス

みんな、ゴミの分別はしているかな?
●子ども:燃やすゴミと燃やさないゴミ?あとはリサイクルできるゴミ?
えー、間違ってはいないんだけど、少しざっくりしている…という印象ですね(笑)。
まずは、この展示物を見てみましょう。4つあるゴミ袋をはかりの上にのせると、国名と、その国の1人当たりの1週間分のゴミの量がわかるというものなんだ。さあ、日本は一体、どれだろう?
●これかなあ。
お、いちばん大きいのを選んだな。<15.5kg>…これはアメリカだね。さあ、アメリカと比べて、日本はどれくらいだろう。
●これ!
じゃあ、のせてごらん。<6.7kg>。…日本はこれだね。アルゼンチンは<8.0kg>、ブルキナファソは<2.7kg>だ。
ゴミは豊かな国や今まさに発展している国で多くなるんだけど、日本のようにリサイクルや分別が進んでいる国はゴミの量が抑えられたりする。
●日本、すごい。
でも、ゴミはもっと減らせるはずなんだ。「食品ロス」って言葉は聞いたことがある?食べようと思えば食べられるのに、コンビニエンスストアなどでは賞味期限がギリギリになった商品を、ぽいぽい捨ててしまう。でも、そんなふうに食べ物をゴミとして捨てずに、うまく世界中のゴミ問題だけではなく、飢餓問題まで解決することができるかもしれない。
ところで、日本の食品ロスの45%は家庭から出ているんだよ。冷蔵庫の奥に入れていて、賞味期限が切れてしまったり、ずっと前に買っていたのを忘れて同じものを買ってしまったりしたりしたことはない?冷蔵庫の中身を確認するということが、立派な食品ロス防止になるわけ。これは君たちにもすぐにできることだね。

2 「4R」でプラスチックゴミを減らそう

さあ、次はプラスチック問題だ。
●海に捨てられたプラスチックを、魚とか亀とかが食べてしまうんですよね?
そう、その通り。じつは海に捨てられたものだけではなくて、多くのプラスチックゴミは川から流れ着いていることが、最近の研究でわかったんだ。川に捨てたものが海に流れ着いたり、道に捨てたものが風で川に落ちたり、海に着くまでの経路はさまざまなんだね。
魚や亀や海鳥は、食べてはいけないものだとわからずに、プラスチックを口にしてしまう。プラスチックは分解されないから、ずっと胃の中に残ってしまう。
さらに言えば、プラスチックは強い日差しに当たるとバラバラに砕けて、細かくなる。それを魚が食べるよね。じゃあ、その魚を食べるのは…?
●人間!
そう。プラスチック問題は他人事じゃないんだ。巡り巡って、私たち人間のもとに返ってくる。
最近は、スーパーでレジ袋が有料になったりしているね。中国では、国全体で禁止しているほど。ヨーロッパも広い範囲で禁止している。アメリカ・カナダも一部地域で禁止している。日本では、エコバッグの利用を推奨しているだけ。それで本当にいいのかな?
環境問題が叫ばれるようになってから、新しいレジ袋が世界中で生まれているんだ。ここにも展示されているね。プラスチックは分解されないのが特徴なんだけど、自然に還るように作られたのが、この「生分解性プラスチック」によるレジ袋なんだ。これ、何が原料か分かるかな?ヒントはね、飲みものの中に入っていて最近ブームになっている…。
●あーーー、タピオカ!
正解!タピオカはキャッサバが原料。このレジ袋には「I AM NOT PLASTIC(=私はプラスチックではありません)」と書かれているね。キャッサバでできた自然にやさしいレジ袋、ということなんだ。
そして、海洋へ流出するプラスチックゴミの代表格、ストロー。今、紙ストローや木のストローの開発が進んでいるね。
「3R」って学校で習った?
「Reduce=リデュース」「Reuse=リユース」「Recycle=リサイクル」の3つのことだね。最近は、もう一つRが増えた。それは何かというと「Refuse=リフューズ」。これは、「断る」という意味。ゴミになるレジ袋はいりません、ということ。こうすることで、ゴミが減らせると考えられているんだ。

3 水問題と教育の関係

次は水の展示。日本では、蛇口をひねれば水が出るのが当たり前。その水を飲んでお腹をこわすこともない。でも、途上国では決して当たり前のことではないんだ。水道がない国もあるし、地下から水を汲むための井戸さえない国もある。じゃあ、どうすると思う?
●川まで汲みにいく、とか…?
その通り。子どもが何kmも歩いて、山を越え、谷を越え、川や湧き水のあるところまで水を汲みにいく。重いバケツを持って、家と水のある場所とを何往復もするんだ。すると、当然、学校には行けなくなる。
これが子どもの生活にどう影響するか。学校に行けないと、「文字の読み書きができない」「衛生の知識がない」という問題が出てくるんだ。たとえば、そのまま親になると、子どもが熱を出した時に、消毒されていない水を与えてしまうことがあるかもしれない。すると、子どもは下痢を起こして、脱水症状にある。親は、何もわからず、水分を与えようと、汚れた水をまた飲ませる。途上国では、子どもが下痢で死んでしまうことが、決して少なくないんだ。こんな悲劇はなくしたいよね。水道を完備とまではいかなくても、途上国でも、せめて井戸がもっと増えればいいよね。そうすれば、遠くの川や湧水地まで数時間かけて行かなくて済んで、子どもたちは学校に通えるようになる。水問題を解決すると、さまざまな問題の解消にもつながるんだ。

4 現在のSDGsの達成率は?

ここは、世界中の国が、どれくらいSDGsを達成できているかがわかるコーナーなんだ。パネルの光った色が、それぞれの達成状況を教えてくれる。緑色が「達成」、黄色が「もう少し」、オレンジが「まだまだ」、赤は「まったくできていない」。どこの国から見てみる?
●全員:日本!

日本は156か国中、15位。展示は2018年度の達成状況。2019年度は、目標2がオレンジ、目標9が緑、目標14がオレンジ。
じゃあ、日本を見てみよう。あれ、達成できているのは「教育」だけだぞ。
●「飢餓をゼロに」が黄色だけど、どうしてですか?
君たちに身近な問題でいうと、「子どもの貧困」って聞いたことがない?たとえば、夏休みが終わって学校が始まると、以前より痩せてしまっている子どもがいる。なぜかというと、夏休みは給食がないから。食べるものがないほど貧しくはないけれど、栄養バランスの取れた食事ができるほど豊かではない。そういう家庭も少なくないんだ。そんな家庭の子どもたちのためにあるのが「子ども食堂」。家が貧しくて満足な食事ができない子どものために、安く、あるいはただで食事を提供しようっていう取り組みをしているんだね。
次にアメリカも見てみようか。…あれ、緑が一つもないね。じゃあ、最後にSDGs達成率1位のスウェーデンを見てみよう。…うん、緑が多いけど、黄色も多い。1位の国でも、できていないことがたくさんあるんだね。それだけ難しいことを、世界中の国々が達成しようと努力しているということなんだ。
最後にSDGsの17個の目標を解説していきましょう。

5 自分事としてのSDGs

❶貧困をなくそう
❷飢餓をゼロに
貧困には「絶対的貧困」と「相対的貧困」があります。前者は、世界的に見て貧しい状態。後者は、国内のほかの人に比べて貧しい状態です。たとえば、日本でも貧困や格差が広がっていて、「子ども食堂」や無料学習支援が全国的に進んでいます。絶対的貧困をなくすのも大事だけれど、豊かな人と貧しい人との差がなるべく少ない国づくりが必要とされているんだ。

❸すべての人に健康と福祉を
日本は、国民みんなが健康保険に加入する「国民皆保険」という制度を取り入れています。一方、アメリカでは、誰もが健康保険に入っているわけではない。そのため、保険に入っていない人は症状が深刻な状態になるまで、病院に行かない。行けないんです。日本では当たり前のように感じる医療保険制度は、世界的に見て、とても恵まれたものなんだね。

❹質の高い教育をみんなに
❻安全な水とトイレを世界中に
日本では、義務教育で中学校まで通いますね。高校などへの進学率も約99%。でも、世界には小学校に通えない子どもがたくさんいる。その理由の一つが、先ほど話した水問題なんだ。
安全な水が手に入ると、さまざまな問題が解決する。一部の途上国では、まだ水洗式のトイレが一般的ではなく、不衛生な環境にあります。日本でも、私が子どもの頃は「ぼっとん便所」という、汲み取り式のトイレでした。世界でも、清潔な水洗トイレが増えるといいですよね。

❺ジェンダー平等を実現しよう
❿人や国の不平等をなくそう
日本でも最近、一部の大学の医学部入試で、女性の合格者を減らすための意図的な操作があったことが発覚しました(2018年)。女性は医師になっても、結婚して家庭に入ったり、出産して子育てをしたりと、長くは働けないと思われているからです。
でも、それはおかしい。これって、差別だよね。男性も女性も平等であるべきです。私たちは、生まれる国や性別を選ぶことができないからこそ、理不尽な不平等はあってはならないのです。

❼エネルギーをみんなにそしてクリーンに
⓭気候変動に具体的な対策を
日本では、電気のない生活は考えられないよね。日本の電気の多くは、火力発電で生み出しているものです。石炭や石油を燃やして、電力を生み出すしくみです。しかし、石炭や石油を燃やすと、二酸化炭素がたくさん出て気候変動につながる。気候変動というのは、主に地球温暖化のことです。その影響に一つに、南極の氷がとけることによる海水面の上昇があり、将来的に水没してしまう島があると言われています。
最近話題のグレタ・トゥンベリさん。彼女は国連のサミットでスピーチし、世界中のリーダーたちに対して、温暖化対策への行動をしてください、と訴えました。

❽働きがいも経済成長も
経済成長というのは、国が豊かになることです。ただ、その成長を支える人たちが、いやいや働くのではなく、喜びを感じながら働ける環境をつくろうという目標です。
みなさんは、日本の「過労死」という言葉が海外でもそのまま通じるのを知っていましたか?海外の言葉に訳せない。なぜなら、海外では、働きすぎて死ぬなんていうことが考えられないからです。このところ、「働き方改革」が叫ばれているように、日本は働き方を考えなおすタイミングとなっていますね。

❾産業と技術革新の基盤をつくろう
⓬つくる責任 つかう責任
国が豊かになるには、人々が働く場所が必要ですよね。そのために必要なのが産業です。また、技術革新によって産業が発展すると、新しい仕事が生まれます。
一方で、先ほど話したプラスチック問題。プラスチックは便利だけれど、分解されないので地球にゴミが増えてしまう。それでは、私たちが地球に住み続けられなくなってしまいますよね。そのため、さきほど見たような木製のストローや、土に還る生分解性プラスチックによるレジ袋が開発されています。それが、地球に暮らす私たちの責任ですよね。

⓫住み続けられるまちづくり
この目標は台風や地震など、自然災害に対する防災のことでもありますが、環境問題にも関連しています。近年、日本で台風の被害が頻繁に発生しているのは、温暖化によって海水温が上がっているからとされています。こうした環境の変化に対応できるまちづくりが求められているのです。
すでに気づいている方も多いでしょうが、SDGsは一つひとつがつながっているんですね。

⓮海の豊かさを守ろう
⓯陸の豊かさも守ろう
プラスチックゴミは、海を汚すだけではなく、魚などが食べてしまう問題もあります。その魚を誰が食べるのか? 私たちでしたよね。安心して魚を食べ続けるためにも、海を守る必要があるということです。
また、森というのは、生物の食物連鎖が生まれる場所です。同時に、木々には二酸化炭素を吸収して酸素を出す役割もある。土には、雨が降った時に、水を蓄えて洪水や土砂災害を防ぐ役割もあります。だからこそ、森林破壊や砂漠化はふせがなければならないんですね。

⓰平和と公正をすべての人に
世界では、まだ戦争をしている国があります。中には、水争いが原因になっているものもある。言い換えれば、地球の環境をよくすることで、新しい戦争が起きないようにすることができるんです。

⓱パートナーシップで目標を達成しよう
豊かな国はこれからもずっと豊かであり続けられるように、そうでない国は豊かになっていけるように、17の目標達成をめざして協力し合いましょう、という目標。先ほど見た各国の達成状況が、2030年にはより改善しているといいですね。

最後に、みんなの感想を教えてくれるかな?
●本当に達成できるのかなって思う。
そうだね。でも、目標を掲げるっていうのも大切なことなんだ。全部は達成できなかったとしても、少しでも前に進めるといいよね。
●自分で出来る範囲で、温暖化対策にも取り組みたいと思いました。
その通り。あまり一生懸命になりすぎると、どこかで疲れてやめてしまう。だからこそ、持続可能な、できる範囲でやっていくことが大事だと私も思います。

池上 彰 (監修)
出版社 : 学研プラス (2020/2/6)、出典:出版社HP