【最新 – 防災・災害時の食について学ぶためのおすすめ本 – 普段の備えから被災時の調理まで】も確認する
日常生活の延長としての防災
本書は、災害時の食材や調理器具が限られた環境下でも作れる料理が多数掲載されたレシピ本です。即作れて即食べられるという意味の「即食」と「省エネ」をキーワードに、短時間でできるレシピが多数紹介されています。それだけでなく、災害に備えるためにはどのくらいの食料や水を備蓄しておけば良いのかなどの、災害に関する知識も述べられています。
「もしも」に備えて、食料備蓄のすすめ
今は、「震災後」ではなく、「震災がくる前」だと私は考えています。
東日本大震災から五年が過ぎましたが、震災後と考えると災害が過去のこととして遠ざかっていくからです。
今後も南海トラフ巨大地震や、首都直下型地震が予想されていますが、それでもどこか人ごとで「自分だけは大丈夫」と、災害対策に向き合うことを 避けていたところもあるのではないでしょうか。
そんな中、二〇一六年四月十四日、熊本地震が起きました。この熊本地震で多くの方が、災害は自分の身にもふりかかることとして、危機感をお持ちになったのでは……。
今を「震災前」と意識することで、災害に備えることの必要性が見えてくると思っています。
私は管理栄養士、日本災害食学会災害食専門員、防災食アドバイザーとして「災害食・防災食」、「備蓄食」の必要性とそのレシピをお伝えしています。また、家族の健康を気遣う母親としても、生きることと直結する「食料と水
の備蓄の大切さ」を、広くお伝えしていきたいと思っています。
私がおすすめするのは、日常生活の中での少し多めの食料備蓄。これは自然災害が起こったときだけではなく、病気やケガで、また新型感染症などによって家から出られない状況になったさいにも、食材のストックによって、当面の買い物をしなくてすむことからです。
でも、備蓄するだけで安心とはいきません。大切なのは備蓄しているものを「もしも」のときに活用することです。
災害時では致し方ないこととはいえ、備蓄食料をそのまま食べるのは味気ないもの。我慢して食べていると、食事がストレスになってしまいます。
災害時にも普段食べ慣れている味、好きな味のものを食べられることが、どれほど心を和ませることでしょう。
そこで本書では、災害時でもなるべく日常と同じ食事ができるように、機蓄に適した食材を使ったレシピをご紹介することにしました。
備蓄食材を使った料理は、災害時だけに食べる特別なものではありません。忙しくて食事作りに時間をかけられない方、お子様やご高齢の方から、普段あまり料理をしない方まで簡単に作ることができる、またアウトドアでも活用していただけるレシピです。
特別な材料を使わず、ライフラインが使えない状況でもおいしく食べられ
るように、火も水も包丁も使わない、名付けて「即食レシピー。
Step 1 では、ポリ袋に入れて混ぜるだけという超かんたん・時短レシピをご紹介します。
さらに、日常でほんの少し時間に余裕があったときに、食材をプラスして作ってみていただきたい「ひと手間アレンジ」レシピも考えました。
Step 2 では、災害時でも温かい料理が食べられるように、ポリ袋調理レシピをご紹介。災害時に温かいものを食べることは、生きる気力になります。湯気からたちのぼるいい匂いが嗅覚を刺激し食欲が増します。体が温まることによって心も温まる。しかもこのポリ袋調理は節水、光熱費節約にもなる「省エネレシピ」です。
そしてStep 3 では、「即食」「省エネ」を踏まえつつ、エネルギーチャージを考え、少しボリュームのある「整食レシピ」を考えました。
経験、体験したことはすべて自分の糧になります。普段から即食レシピやポリ袋を使った料理を作ってみてください。作り慣れた調理法が、「もしも」のときに、皆様のお役に立ってくれることを願っています。
目次
はじめに――「もしも」に備えて、食料備蓄のすすめ
身の安全が確保されたら、「食」で命を守りましょう
食の確保、何をどれだけ備蓄したらいいの?
災害時にも大活躍、調理に役立つ便利用品
災害発生後の1人分・1週間の献立例
STEP1
即食レシピ 災害発生~3日目までに最適レシピ
ハイスピード・クッキング
食材をポリ袋に入れて混ぜるだけ
缶詰・レトルト食品・びん詰を使って、熱源不要
さばコーンおかか和え・トマトパン粉焼き
オーロラコーン+オーロラコーンサンドイッチ:
食後の洗いものを出さない節約法
チリコンカーン&ドライカレー+ チリコンカーンタコス&五穀米のドライカレー
ミックスビーンズのチーズ和え+生ハム&スモークサーモン巻き
ドライパックサラダ+巣ごもり卵
いかと大豆とひじきの煮物風+五目巾着焼き
あさりとひじきの青のり和え+具だくさん卵焼き
ひじきとコーンのなめたけ和え+厚揚げ具のせ焼き:
いわしのトマト煮風+地中海ドリア
さけとわかめのらっきょうサラダ+おろし和え
焼き鳥とカシューナッツのマヨ和え+鶏肉とカシューナッツの炒め物
ひよこ豆のフムス+ディップ&カナッペ:
大豆カレー和え&ゆかり和え+カレー豆ごはん&ゆかり豆ごはん
乾物は保存のきく、栄養価の高いおすすめ食品
ツナと切り干し大根のマ和え+ツナと切り干し大根の棒春巻き:
イタリアン切り干し大根+ロールキャベツ
切り干し大根のりんごジュース梅和え+しそ巻き切り干し:
さばとわかめのごま和え+さばわかめ餃子
ホタテのとろろ昆布和え+磯の香冷奴
ガスパチョ+具だくさんガスパチョ
さんまの冷や汁+さんまの冷や汁そうめん
ミックスビーンズのあんこ玉+どら焼き
大豆あんみつ/お麩チョコ
STEP 2 省エネレシピ 4日目~7日目までに最適レシピ
手早く作れる光熱費節約クッキング
カセットコンロと鍋、ポリ袋で作る温か料理
ピーラーで切って、混ぜるだけホタテと大根のサラダ
大根の海苔佃煮和え+冷やし海苔佃煮大根そば
いか人参+いか人参おやき
ツナと人参のごま和え十冷やし卵のせうどん
ポリ袋調理――ポリ袋1枚で作れる温かレシピ
ごはん&おかゆもポリ袋で作れる:
焼き鳥ひじきごはん
豆いかトマトごはん
さけコーンライス
なめたけさけごはん
お雑煮
カレー餅
オレンジパンケーキ
コーンパンケーキ
さんまとキャベツの煮物
親子煮+親子丼
マーボー高野豆腐&マーボー麺
高野豆腐とさんまの煮物
ビラビラ野菜のみそ汁/クリームコーンスープ
ようかん&フルーツかん
保温ジャークッキング
卵雑炊
鶏ささみ中華がゆ/スープ餅
STEP 3
整食レシピ 災害発生8日目~に最適レシピ
エネルギーチャージ・クッキングーしっかり食べて栄養補給、元気が出るレシピ
さば味噌じゃが
具だくさんシチュー
トマトコンビーフ煮込み
コンビーフとキャベツのチーズ蒸し
牛肉大和煮丼
切り干し大根の焼きそば風
お好み焼き餅.
芋けんぴ
カンパンアレンジレシピ
カンパンちょい足し.
カンパンピザ風/カンバンかりんとう
アルファ化米アレンジレシピ
焼き鳥なめたけごはん
野菜ジュースごはん/豆茶ごはん
「もしも」に備える知恵
「災害食」って、なんのこと?
どこに備蓄したらいいの?
在宅避難の場合は、まず冷蔵庫の食材の整理を
大地震のときは、家財道具が凶器になる?
わが家のルールを決めましょう
子どもの防災意識を高めるために、親ができること
「高齢者の低栄養に気をつけましょう
食物アレルギー対応は、多めの備蓄を心がけて
牛乳が手に入らない。どうしたらいいの?
非常持ち出し袋に何を入れたら?
食料と水の確保と同等に、トイレ対策が絶対必要
おわりにー「もしも」のときも笑顔でいるために
身の安全が確保されたら、「食」で命を守りましょう
■なぜ備蓄が必要なのでしょうか?
いつ起こるか予測できない自然災害。被害の程度によって避難所生活となることも考えられますが、本書では、幸いにも自宅に留まることができた場合を想定したレシピをご紹介します。
「もしも」のさいには、自宅に食料、水などの備蓄をしていなかったために、慌てて買い出しに走っても、ほしいものは手に入らないので、自分で備える「自助」が必要となります。
■災害に備えて、備蓄食料を選ぶポイントとは?
災害時だからといって「生きるためだけの食事」、「我慢して食べる食事」では元気も出ません。体に必要な栄養の確保と、「おいしい」という心の栄養を摂ることが大切です。
大きなストレスを受けているときに、おいしいものを食べることは、ストレス解消にもなります。
備蓄食材のセレクトポイント
●家族や自分が好きなもので、食べ慣れているものを選ぶ。
●常温保存ができるもので、使い切りサイズを選ぶ。
●ライフラインが停止したさいでも調理できるものを選ぶ。
これらを参考に、家族の人数、高齢者や乳児がいるかによって、用意する食料を変えてください。
■備蓄食料は、ローリングストック法で消費する
備蓄食料を非常時に食べるものと捉えると、保存したままにしてしまい、いざ必要となったときに、賞味期限切れということも起こります。普段使いをしながら、食べたらその分を買い足すようにしましょう。
ローリングストックの利点
●いろいろな食品を食べてみることで、その中から好みのものを備蓄できる。
●賞味期限切れによる廃棄を減らせる。
●日常的に食べていれば、災害時でも食べ慣れているものが食べられる。
食の確保、何をどれだけ備蓄したらいいの?
「とりあえず食料の備蓄をしたので安心」と思って、しまい込んでしまうと、いつのまにか賞味期限切れとなっていたり、必要に迫られて、そのまま食べるだけの味気ないものになってしまいます。
災害時でも、日常食が食べられれば、ほっと心がなごむことでしょう。普段使いをするための備蓄にしてください。これまで目安として「3日分」の備蓄がすすめられていましたが、現在では大規模な災害に備えて「7日分」以上の確保が推奨されています。
水
水は人間にとって必要不可欠なものです。
水分補給は、熱中症対策のほかにも、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクを軽減するためにも、大切な役目をもっています。健康維持にとって、一番の基本が水といえます。
●飲料用+調理用として【1人分】
1日分=3リットルをストックの目安に
7日分=21リットルのストックがあれば安心!
*ペットボトルの水の賞味期限は2年程度が一般的です。日常で使いながら買い足しておくことをおすすめします。
近年では5年、7年の年と長期保存できる水も市販されています。
注意ポイント
●2リットルのペットボトルの水は重いので、飲料用には500ミリリットルのペットボトルの備蓄も別にしておいたほうが安心。
●水には軟水と硬水があり、日本の水はほとんどが軟水。備蓄は軟水を。硬水はミネラル分が多く、飲み薬に悪影響を及ぼすこともあるので流が必要です。
〇生活用水として
飲料水のほかにも、多くの生活用水が必要となります。
わが家では使用済みのペットボトルに水道水を入れて保存しています。
ポリタンクを用意すると便利。水道水を入れて保存をしたり、断水のさいは給水拠点から水を調達することができます。
注意ポイント
●ポリタンクやペットボトルに入れた重い水を運ぶのには、台車やショッピングカートがあると便利。ただし段差や瓦礫などに注意が必要。
●2リットル用のポリタンクを持つのは重くて大変。10リットル用を2個用意するのがおすすめ。
食料
日常食として使いながら、常温で保存のきくものを備蓄。少し多めに備蓄し、使ったら買い足して、「もしも」に備えましょう。
主食―活動エネルギーの源
・米
※災害時には研がずに済む無洗米が便利
・レトルトごはん、レトルトおかゆ
・アルファ化米
・缶詰パン
・小麦粉、米粉、ホットケーキミックス、お好み焼き粉
・乾麺(うどん、そば、 そうめん、パスタ)
・カンパン
・餅
・クラッカー
・シリアル類ほか
副菜―ビタミン・ミネラルを確保
・切り干し大根、ひじき、わかめ、きざみ昆布などの乾物
・トマト、コーン、大豆などの缶詰
・らっきょうやピクルスなどのびん詰
・じゃがいも、さつまいも、大根、人参、玉ねぎなど日持ちする野菜
*梅干 ほか
主菜―良質タンパク質や脂質の供給源
・肉、魚、豆などの缶詰
・カレー、シチュー、ミートソース などのレトルト食品
・高野豆腐、お麩などの乾物
ほか
果物・菓子―おやつは心の栄養
・果物缶
・ドライフルーツ
・チョコレート、飴、ビスケット、煎餅 ほか
飲料一水分不足は不調のもと
・水
・お茶
・ジュース
・コーヒー、紅茶 ほか
調味料―使い終わる前に必ず補充
・みそ、しょうゆ、酢、塩、砂糖、食用油、ケチャップ、マヨネーズ、めんつゆ
・チューブ調味料(お好みで) ほか
※開封した調味料は、冷蔵庫で保管が必要なものが多くあります。停電のさいには、保冷酒を入れた保冷バッグに移し、早めに使いきりましょう。
注意ポイント
●高齢者、幼児、食物アレルギーや慢性疾患などを持っている方が家族にいらっしゃる場合は、その状況に合わせた食品の備蓄が必要となります。
1人分・1週間の備蓄食品例
名古屋市が行ったアンケートでは、東海地震が予知され警戒宣言が発表された場合、80パーセントの方が買い物に行くと答えているそうです。小売店舗にある在庫だけでは、足りなくなることが予想されるので、各ご家庭での備蓄が必要となります。大規模な災害に備えて「7日分」の備蓄をおすすめします。
■主食
・アルファ化米…7個
・レトルトごはん、レトルトおかゆ…3個
・缶詰パン…3缶
・乾麺(うどん、そば、そうめん、パスタ)…1袋
・シリアル類…1袋
・米、もち…適宜
■主菜
・肉・魚・豆などの缶詰…7個
・カレー、シチュー、ミートソースなどのレトルト食品…7袋
■副菜
・切り干し大根、ひじき、わかめなどの乾物…2袋
・スイートコーン缶、大豆缶など…7個
・じゃがいもなど(あれば)…5個
■果物・菓子
・果物缶、ドライフルーツ、チョコレート、飴、ビスケット、煎餅など…適宜
■飲料
・水…2ℓ×8本
・お茶、ジュース…500mℓ×10本
災害時にも大活躍、調理に役立つ便利用品
カセットコンロ
温かいものを食べると、心が落ち着くもの。電気が復旧するまでの熱源の確保のために、カセットコンロとボンベは必需品です。
注意ポイント
便利なカセットコンロとはいえ、使い方を間違えると大きな事故につながります。
①2台以上並べて使用しない。→熱がこもり、ボンベが過熱、爆発することがある。
②大きな調理器具を使用しない。→熱がこもり、ボンベが過熱、爆発することがある。
③コンロを覆う大きな台付きの魚焼き器を使用しない。→熱がこもり、ボンベが過熱、爆発することがある。
④コンロに指定されているボンベを使用する。→指定外のボンベを使用すると、ガス漏れや火災の原因になる。
⑤密閉した室内や、テント、車内で使用しない。→一酸化炭素中毒の危険がある。
ポリ袋
大き目の45リットルから、大小サイズ違いを用意。水を入れたり、食事のさいには食器を包んだり、調理のさいはボウル代わりにも使用できます。
ガスボンベ
ガスボンベは、1本約60~90分使用できるので、15~18本あれば安心(政府推奨による)。
注意ポイント
ガスボンベの保管方法と場所には注意が必要です。湿気が少なく、温度変化が小さな場所に保管。ガスボンベも普段から使って買い足すオローリングストックをおすすめします。
使い捨て食器(割り箸、紙コップ、皿など)
洗いものを出さないために、用意しておくと便利です。
クッキングシート
フライパンに敷いて調理すれば、油を使わずに調理ができて、洗いものを出さずにすみます。
ウェットティッシュ
手拭きや、体拭き、使った調理器具などを拭くために。
スープジャー
保温目的だけではなく、調理道具としても活躍します。
保冷バッグ
保冷剤を入れて食品保存や、冷蔵が必要な調味料などの保管に。
アルミホイル
フライパンに敷いて調理をしたり、器や蓋がわりとしても使用できます。
発砲スチロール
保冷が必要なさいの食品保存や、保温調理にも使えます。
レジ袋
水の運搬に使える。また段ボール箱にかぶせて水入れとしても使用できます。
調理バサミ、ピーラー、スライサー
包丁がわりに活用できるので、まな板を使わずにすみます。
使い捨てポリエチレン手袋
調理のさいに、食材に直接ふれないようにしたり、また、手にケガなどをしたさいの調理にも必要。
ラップフィルム
皿にかぶせると、洗いものを出さずにすみます。
食中毒に注意
衛生環境が悪化する災害時に気をつけたいのが食中毒です。
注意ポイント
①使い捨て手袋やポリ袋を使い、なるべく食材に触らない。
②作ったものは、すぐに食べる。
③食べ残しは、思いきって廃棄する。
災害発生後の1人分・1週間の献立例
ある日、ある時、突然に発生する地震。その精神的ダメージによって、直後は食欲も出ず、食事にまで頭がまわらないことでしょう。それでも、私はおいしい食事を摂ることで、生きるエネルギーが得られると確信しています。
災害発生後から1週間分、備蓄食材を使った献立例を作成しました。作り方は各レシピの掲載ページをご覧ください。